JEPA電子出版アワード2019一般投票受付開始 ~ 締め切りは12月6日23時

JEPA電子出版アワード2019

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 一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)は11月25日、「電子出版アワード2019」の一般投票受付を開始した。投票締め切りは12月6日23時。

 JEPA電子出版アワードは、日本の電子出版の普及と技術の向上を目的とし、2007年に開始された。今回で13回目の開催。ノミネート作品の中から、だれでも投票できる一般投票と、会員社の投票を集計して選ばれる。ジャンルとノミネート作品は以下のとおり。

デジタル・インフラ賞

 電子出版市場で基盤としての大きな役割を果たした(それが期待される)インフラサービスに与えられる賞。主に、電子書店、SNS、課金、購読システム、コミュニケーションなどが対象。

note(ピースオブケイク)

https://note.com/
 文章、写真、イラスト、音楽、映像などを手軽に投稿できるクリエイターと読者をつなぐサービス。最近では書籍と連動したクロスマーケティング展開や、メディア事業者の配信プラットフォームとしても利用されるなど、ブログの枠を越えたインターネット時代の出版プラットフォームの可能性を広げている。

Libry(Libry)

https://libry.jp/
 既存の問題集や教科書、参考書などを電子化した上で、紙の教材にはない機能が付加されたデジタル問題集。7社の出版社と提携し数学、英語、物理、化学、生物の5科目に対応。取り扱い書籍数は約120点。「学習履歴機能」だけでなく、以前学習した問題を忘れそうなタイミングでレコメンドする「復習支援」機能、さらには苦手そうな問題をレコメンドする「挑戦問題」機能を実装。

bREADER Cloud(インフォシティ)

https://infocity.co.jp/product/breaderCloud.html
 クラウド型電子書籍リーダーで、専用のクラウドストレージに保存した電子書籍をWebブラウザ及びiOS/Android向け専用アプリケーションで読むためのオンラインサービス。環境を選ばずに電子書籍を閲覧できるブラウザビューアとユーザの読書スタイルに合わせて自由自在に本を読むことができる専用アプリケーションの組み合わせで、「いつでも」「どこでも」蔵書にアクセスできる環境を提供。紀伊國屋書店学術電子図書館 KinoDen、ひかりTVブックが採用。

LibrariE & TRC-DL(JDLS&TRC)

https://www.trc.co.jp/information/190416_trc.html
 総務省が推奨するウェブアクセシビリティの手順書である「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に基づき、JIS X 8341-3:2016の適合レベル「AA」に準拠。視覚障害者等が利用する「視覚障害者利用支援サイト(テキスト版サイト)」のユーザインタフェースを拡充。

Gaze-On(ボイジャー)

https://www.voyager.co.jp/products/go/
 高精細Webギャラリー公開システム。最大43億画素の画像表示に対応する、緻密な作品をスマートフォンやPCで楽しむことができるソリューション。画像内に注目ポイントと説明文などを設定できる。

スーパー・コンテンツ賞

 今年登場または話題になった、よく売れた電子書籍作品およびそのパッケージやアプリケーション。主に電子書籍単体、全集、コンテンツ関連企画、電子書籍アプリなどが対象。話題性やユニーク性、成功したもの、売れたものを重視する。

日経電子版Pro ギフト機能(日本経済新聞社)

https://support.nikkei.com/app/answers/detail/a_id/3211/
 日経電子版の新機能。日経電子版で配信されている有料会員限定記事および電子版Pro会員限定の記事を、会員以外の方にギフトできる。 記事を受け取ったユーザは、日経電子版にログインをしなくても記事を読むことが可能となる。

LINE entry(LINE)

https://entry.line.me/
 小学生対象のプログラミング学習プラットフォーム。教材はLINE、放送大学、千葉大学が共同で開発した。最大の特徴は「無償」。LINEはCSRの一環として本プロジェクトを進めているため、プログラミング学習環境、オリジナル教材、出前授業など、LINE entry内で提供されるコンテンツはすべて無償。

文学YouTuberベル(ベル)

http://bellelinwall.com/
 ブックチューバーとして、書評を中心に読書の魅力を伝える動画を配信。インターネット上では「読書メーター」「ブクログ」などSNS的読書コミュニティはあったものの、YouTubeという若者に人気のプラットフォームを本のパブリシティとして展開するのは新たな動き。

大漢和辞典デジタル版(大修館書店)

https://www.taishukan.co.jp/daikanwa_digital/
 同社創業100周年記念企画。本文表示はページの画像で、検索対象は『大漢和辞典』の全親字51,110字。漢字/大漢和番号/ユニコードの直接検索に部首/総画/音訓/部品の複合検索も。商品形態はUSBメモリのパッケージで、PCにインストール。

岩波新書eクラシックス100(岩波書店)

https://www.iwanamishinsho80.com/post/e-classics100
 岩波新書の定番ロングセラーから活版・写植時代の青版・黄版を中心とした100タイトル107点を初めて電子化。ほぼすべてがリフロー型で、旧字体は新字体に改められている。「新書」というスタイルを創造された老舗出版社が、デジタルデータが存在しない活版からのEPUBを作った努力を評価したい。

エクセレント・サービス賞

 電子出版市場で特定の機能を実現するサービスに与える賞。インフラ的なものでも、小規模なもの、特定の対象者のもの、一時的なものなどはこれに該当。ありとあらゆるサービスが対象。主にユニーク性や企画性を重視する。

アル(アル)

https://alu.jp/
 数万件以上のマンガのデータベースを元に、作品のファンが見どころを投稿したり、おすすめ作品を投稿できるサービス。この他、日々発売されるコミックの新刊通知や、現在、ネット上で無料配信されているマンガの紹介など、ネット時代に合わせたマンガと読者をつなぐサービスへとして成長している。

LINEノベル(LINE)

https://novel.line.me/
 出版社・レーベル提供の小説作品を「読めば無料」システムで提供。ユーザー投稿作品はLINEで独占せず、提携出版社と情報共有して書籍化オファーを行うことができる。令和小説大賞も同時に開催。ストレートエッジ三木一馬氏を統括編集長に迎えるなど、意欲的。

MANGA Plus by SHUEISHA(集英社)

https://mangaplus.shueisha.co.jp/(※日本からはアクセスできない)
 週刊少年ジャンプ連載タイトルの最新話が、全世界を対象(日本、中国、韓国を除く)とし、日本と同時に無料で読めるサービス。英語とスペイン語に対応。ジャンプ編集部が直接運営し、海外の海賊版に正規版を同時配信という正攻法で対策、効果を上げているという点を評価したい。

DAYS NEO(講談社)

https://daysneo.com/
 「一度に21誌250人の編集者出逢える」場所をうたい、投稿者が編集者からの担当オファーを逆指名できるマッチング型の漫画投稿サイト。ユーザーは同一IDでイラスト投稿サイト「ILLUST DAYS」、小説投稿サイト「NOVEL DAYS」にログインできるなど、漫画・イラスト・小説の連携した展開も可能に。

Kindleインディーズマンガ(Amazon)

https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/manga
 「Kindleストア」でマンガ作品が無料公開できるサービス。総額2000万円の「インディーズ無料マンガ基金」が創設され、人気作家には毎月分配金が支払われる。新進気鋭の漫画家を発掘、育成するとともに、読者向けにより多くの作品を提供し、漫画作品の選択肢の幅を広げることを目指す。

ハピプラ(集英社)

https://one.hpplus.jp/
 集英社が発行する8つの女性誌の公式ウェブメディアとキュレーションサイトからなる女性誌メディアネットワーク。通販サイトのFALG SHOPとも連携。2012年11月にスタート。現在1日100本以上の記事を配信し、2019年8月にはUU数が1,000万を突破。集英社ファッション誌のブランドを強化、雑誌のデジタルシフトの一つの方向性を示している。

チャレンジ・マインド賞

 新しい技術やサービスの試みに対し贈られる賞。まだ成功とは言えないが、先駆的で挑戦的な試みを対象とする。主に新規性や意欲を重視し、ある程度の規模を目指したもの。

DiSEL(アソビモ)

https://www.disel.io/
 これまでの電子出版では実現しにくかった、ブロックチェーンを活用した、コンテンツリサイクルマーケット。対読者だけではなく、対出版社に向けたレベニューシェアを含めた新しいビジネスモデルの構築に取り組む。今後の電子出版ビジネスの新たな形となるか注目したい。

ポルト(スタディプラス)

https://porto-book.jp/
 大学受験生向け電子参考書の定額読み放題サービスが2019年7月スタート。大学受験の主要科目である5教科・17科目の参考書、30点(2020年には100点へ)が月額980円(税別)で読み放題。参考書ごとに進捗率や正答率がわかり、反復学習に便利。さらに、英語の参考書の多くは、ネイティブな発音による読み上げ機能がある。

近代科学社Digital(近代科学社)

https://www.kindaikagaku.co.jp/kdd/
 出版機会がなかなか得られない理工系大学の研究者等を対象としたオンデマンド型出版サービス。電子書籍とPOD(プリント・オンデマンド)の組み合わせにより、出版コストを大幅に削減することで、さまざまな書籍の出版機会を提供。販売面では、近代科学社が持つ書籍取次経由で利用できるのが特徴。

技術書典(TechBooster/達人出版会)

https://techbookfest.org/
 技術普及のためのお祭りイベント。技術書を中心として、出展者はノウハウをアウトプットし、来場者はこの場にしかないおもしろい技術書を探す、技術に関わる人たちがつながる場。すでに7回開催されており、2020年2月に第8回の開催が予定されている。

NovelJam(HON.jp)

https://www.noveljam.org/
 著者と編集者とデザイナーが集まってチームを作り、数日間で小説の執筆、編集、表紙の制作、本の販売までを目指す、短期集中型の作品制作企画。いわゆる「ハッカソン」を出版・創作に展開し「ライブ・パブリッシング」という概念を提唱している。2019年には第4回目を開催。

エキサイティング・ツール賞

 規模の大小は問わず特定機能を実現するソフトウェア、ハードウェアまたはその組み合わせを対象とする。主に技術的な観点を重視する。技術的な高度さ、ユニークさ、シンプルさ、インターフェイスなど。

読書室 Microsoft Store(各ベンダー)

https://www.microsoft.com/ja-jp/store/collections/thereadingroom
 Microsoft EdgeのEPUBリーダー機能撤廃に伴い、Microsoft Storeにて、EPUBリーダー集を、DAISYコンソーシアムと協力してアップしている。2019年11月現在、まだ目新しいリーダーが登場していないが、今後、この場から、定番となるWindows PC向けEPUBリーダーの登場が期待される。

KindleキッズモデルとFire HD 10タブレット キッズモデル(Amazon)

https://www.amazon.co.jp/dp/B07NMZ8644
https://www.amazon.co.jp/firehd10kidsmodel
 子ども向けのデバイス。「Kindleキッズモデル」は、数週間持続のバッテリーと「Amazon FreeTime Unlimited」からダウンロード可能な1,000冊以上のタイトル、キッズカバー、2年間の限定保証。「Fire HD 10 タブレット キッズモデル」は、10.1インチディスプレイ、長時間バッテリー、「Amazon FreeTime Unlimited」の1年間分とキッズカバー、2年間の限定保証。

EPUBpack(イースト)

https://www.epubpack.com/
 テキストPDFからリフロー型EPUBを半自動制作。電書協ガイド準拠のEPUBをクラウドで管理できる。10数年のAdobe社との提携による「PDFライブラリ」と電子出版アワード2013大賞を受賞した「でんでんコンバーター」のノウハウが活用されている。PDFからの構造化テキストの抽出もユニークな技術である。

iWork(Apple)

https://www.apple.com/jp/iwork/
 アップル公式アプリ(mac、iOS)のPages(文書作成)、Numbers(スプレッドシート)、Keynote(プレゼンテーション)が、ようやく日本語の縦書き表記に対応。

BOOK☆WALKER 電子コミック作成ツール(ブックウォーカー)

https://author.bookwalker.jp/epub
 ブラウザ上で jpg や png 形式の画像データをドラッグ&ドロップするだけで、マンガ、写真集、イラスト集、実用書などの固定レイアウト形式EPUBファイルを簡単に作成できるツール。

参考リンク

日本電子出版協会 電子出版アワード2019 候補作品リスト

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著者について

About 鷹野凌 788 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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