デジタル出版物を閲覧できる情報通信機器の普及状況 ―― デジタル出版論 第4章 第1節

デジタル出版論

第4章 情報通信機器とOS

《この記事は約 17 分で読めます》

第2部 デジタル出版の流通

 第2部では、デジタル出版の過程、すなわち「生産」「流通」「利用」という3つのプロセスのうち、「流通」について概説します。

第4章 情報通信機器とOS

 第3章の最後で私は、デジタル出版では「物流」がない代わりに、「情報の流通」にどれだけ力を注ぐかが重要だと述べました。たとえば、ブログで新しい記事を公開したとします。ただ単に公開しただけでは存在が認識されないため、誰にも読んでもらえません。ではどうすれば読んでもらえるか? つまり、その記事を公開している場所までユーザーをどうやって集客するか? という、情報の流通施策が必要となります。

 その情報の流通を考えるうえで、まず念頭に置かねばならないのは、情報通信機器(端末)がユーザーにどれだけ普及しているか? です。前述のように、デジタル出版は「コンテンツとメディアが別(第1章第2節)」になっているので、「端末と電気が必須(第3章第8節)」というデメリットがあります。それゆえ、利用ユーザー数は端末の普及台数に依存します。端末の数を、利用者の数が上回ることは、基本的にはないと考えていいでしょう1端末ごと貸すなど無料で一時的な利用はあり得る。

デジタル出版物が利用できる端末

 では、デジタル出版物が利用できる端末には、どのようなものがあるでしょうか? 必要条件としては、➀ディスプレイがある、②インターネットへ接続できる、③ウェブブラウザまたはビューアアプリが利用できる、などが挙げられます。主なものは、以下のとおりです。

パーソナルコンピュータ(パソコン)

 個人で所有する情報通信機器として、最初に普及したのが「パーソナルコンピュータ(パソコン)」です。パソコンからインターネットへ接続するには、インターネットサービスプロバイダ(ISP)との契約や通信回線などが必要となります。日本で初の商用ISPが始まったのは1992年ですが2JPNIC「インターネット歴史年表」より。AT&T Jens株式会社の「SPIN」が日本で最初のインターネットサービスプロバイダとされている。https://www.nic.ad.jp/timeline/、本格的な普及開始は1995年のMicrosoft「Windows 95」日本語版発売がきっかけでした。また、2000年代前半に登場したNTT「フレッツ」やソフトバンク「Yahoo! BB」などのブロードバンドインターネット接続サービスも、パソコンの普及に大きな影響を与えました。

 パソコンには、据え付けで利用する「デスクトップ型」と、持ち運びが容易な「ノート型」があります。デスクトップ型のディスプレイは別売になっている場合が多く、置き場所や用途に合ったサイズを選ぶことが可能です。小さなものでも14インチ以上、実用を考えると20インチ以上で、なかには40インチ以上という製品もあります。また、パソコンのディスプレイとして使えるテレビもあります。

MacBook Air
MacBook Air
 ノート型のディスプレイは、10インチから16インチくらいのモデルが中心です。多くの場合、ディスプレイと本体&キーボードがヒンジで繫がっていて、折りたたみが可能になっています。デスクトップ型もノート型も、ディスプレイの表示は横向き、つまり横に長いものが一般的です。中には回転させて縦向き、つまり縦に長い状態にできるものもあります。

 基本ソフトとも呼ばれるオペレーティングシステム(Operating System:OS)には、前述のMicrosoft「Windows OS」のほか、Apple「macOS」、Google「ChromeOS」、オープンソースの「Linux OS」などがあります。いずれもデジタル出版物の閲覧はもちろん、メール、メッセージ、ウェブ、音楽、映画、ゲーム、プログラミングなど、非常に広範かつ汎用的に利用できます。

 デジタル出版物の閲覧には、Google「Chrome」やMicrosoft「Edge」やApple「Safari」やMozilla「Firefox」などのウェブブラウザがそのままビューアとして利用できる「ブラウザビューア」が提供されている場合もあれば、Adobe「Acrobat Reader」やBPS「超縦書」など汎用的に利用可能なビューアアプリのインストールが必要だったり、電子書店専用アプリが用意されている場合もあります。ビューアアプリは無償で提供されている場合も多いです。

 パソコンの世帯保有率は約7割です3総務省「令和4年版 情報通信白書」データ集(第3章第8節)より。以下同様。https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nf308000.html。詳しくは後述しますが、近年はやや下降気味になっています。ただ、学校や職場での利用なども考慮すると、利用率や利用頻度はまだそれなりに高いと言えるでしょう。

スマートフォン(スマホ)

iPhone SE2
iPhone SE2
 パソコンに次いで普及した個人向け情報通信機器は、「携帯電話(フィーチャーフォン)4俗称で「ガラケー(ガラパゴスケータイ)」などと呼ばれることも多いが、筆者はあまり好きな呼称ではないため、なるべく避けるようにしている。」です。日本では2003年にパケット通信料定額サービスが登場し、本格的なモバイル通信の普及が始まります。携帯電話(移動体通信)の回線を使い、どこでもインターネットへ接続可能な環境が整備されたのです。「ケータイコミック」「ケータイ小説」といったデジタル出版物の配信サービスも、2004年ごろからフィーチャーフォン向けに提供されていました。ところが2010年ごろから「スマートフォン(スマホ)」が急激に普及し、いわゆる「スマホシフト」が起きます。

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脚注

  • 1
    端末ごと貸すなど無料で一時的な利用はあり得る。
  • 2
    JPNIC「インターネット歴史年表」より。AT&T Jens株式会社の「SPIN」が日本で最初のインターネットサービスプロバイダとされている。https://www.nic.ad.jp/timeline/
  • 3
    総務省「令和4年版 情報通信白書」データ集(第3章第8節)より。以下同様。https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nf308000.html
  • 4
    俗称で「ガラケー(ガラパゴスケータイ)」などと呼ばれることも多いが、筆者はあまり好きな呼称ではないため、なるべく避けるようにしている。

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著者について

About 鷹野凌 706 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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