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第1部 デジタル出版とは?
【目次】
第1章 デジタル出版の定義
そもそも「デジタル出版」とはなんでしょうか? そんな言葉の定義から始めたいと思います。回りくどいようですが、同じ言葉を見聞きしても、人によって受け止め方が異なる場合があるからです。
デジタル出版とはなにか?
一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)公式サイトの「電子出版とは」によると、デジタル出版(電子出版)には「狭義」のものと「広義」のものがあるとされています1日本電子出版協会「電子出版とは」(※JEPAでは「電子出版」と表記されているが、本稿では「デジタル出版」表記に統一した)
https://www.jepa.or.jp/jepa/denshi/。狭義のデジタル出版は「いわゆる電子書籍」と説明されていますが、要するに、紙に印刷・製本された書籍や雑誌の延長上にある「プリント・レプリカ」のことでしょう。
いっぽう広義のデジタル出版には、音声や映像の再生も可能なマルチメディア系コンテンツや、ブログ、プリント・オン・デマンド(POD)なども例示されています。JEPAは、「時代と共に変化する電子出版の領域を固定的に捉えるのではなく、ハードウエア、コンテンツ、チャネル、フォーマットなど多面的な視点」で広く捉えるとしています。
私はプロローグで「Project Gutenberg」のことを、「世界初のデジタル出版」と呼びました。ウェブニュースや、Twitterへの投稿もデジタル出版の一種だと言いました。これらはもちろん、広義のデジタル出版です。
そもそもデジタルとはなにか?
ではそもそも「デジタル」とはなんでしょうか? 精選版日本国語大辞典(小学館)によると、「デジタル」とは「データを有限桁の数値で表現する方法。連続量で表現するアナログに対して用いる」です。では「アナログ」はどうか? というと「数値を長さ、角度、電流といった連続した物理量で示すこと」とあります。
デジタルとアナログ
この違いはグラフで示すと分かりやすいでしょう。この図の黒い線が連続した物理量=アナログのイメージで、マス目を塗ってデコボコした山になっているのが有限桁の数値による表現=デジタルのイメージです。実はデジタルのほうが誤差は大きいことが分かります。なお、この図を拡大すると、「アナログ」としている黒線も実はデコボコした山になっていることがわかります。あくまでイメージです。
ところで、実はコンピュータが登場する前から存在するデジタル計算器があるのをご存じでしょうか? 答えは「そろばん」です。そろばんは、平成29年告示の小学校学習指導要領にもまだ載っていて、小学校3年生と4年生で習うことになっています2文部科学省 平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm。ただ、そろばんは知っていても、これがデジタル計算機であると認識している方は、意外と少ないようです。
いっぽうアナログ計算器には、「日時計」「天球儀」「計算尺」などがあります。計算尺は私も使ったことがありません。たとえば飛行機のパイロットが、円形計算尺付き回転ベゼルの腕時計で飛行データをアナログ的に計算していたそうです。
両手の指10本は210
では、両手の指10本を使うと、いくつまで数えられるでしょう? 同じ組み合わせは不可とします。
1本の指につき、指を折った状態(0)と伸ばした状態(1)の2パターンが10本ですから、210=1024通り。つまり「0から1023まで」が正解となります3第1関節や第2関節の曲げ伸ばしまで考慮するともっとパターンは増えるが、ここでは話を単純化している。
これは、0と1の数値(digit)で表現する2進法(BIN:Binary Number)での数え方です。digitには「指」という意味もあります。指が1本なら1ビット、5本なら5ビットと、扱える情報量が増えるというわけです。
一般的には10進法(DEC:decimal)が使われることが多いと思いますが、2進法や16進法(HEX:Hexadecimal)との変換で、いちいち指を折って数えてはいられません。Windowsなら「電卓」アプリの「プログラマー」モードで、Macなら「計算機」アプリで簡単に変換できます。10進法で999は、2進法で1111100111、16進法で3E7と表記されます。なお、OCTは8進法(octal)です。
デジタル化とネットワーク化
なぜこんな話をするかというと、コンピュータは内部的にあらゆる情報を0と1の2進法で処理しているからです。文字・色・画像・音声・映像といったさまざまな種類の情報(表現メディア)は、数値化することによりコンピュータで簡単に処理できるようになりました。これを「デジタル化」と言います。有限桁の数字で表すため、多少の誤差があります。捨てた情報がある、とも言えるでしょう。
デジタル化された情報は、複製(コピー)しても劣化しない性質を持っています。その劣化しない情報が、情報通信網を通じて離れた場所にあるコンピュータでそのまま再現できるようになったわけです。これを「ネットワーク化」と言います。
いまでは、手のひらサイズまで小さくなった超高性能なコンピュータであるスマートフォンがほぼ1人1台レベルまで普及しました。このことが、新聞・雑誌・書籍・テレビ・ラジオ・郵便・電話といった既存の情報メディアに、激変を巻き起こすことになったのです。
この「情報」を「デジタル」で処理する技術が、IT(Information Technology:情報技術)とか、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)と呼ばれているのです。
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