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2020年4月27日~5月10日は「コロナ禍での緊急事態延長も一部制限緩和で書店や図書館が再開へ」「米出版社の許諾ガイドライン」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
【目次】
国内
販売概況 2020年3月期 販売実績は5.6%減 新型コロナウイルスが各ジャンルの販売に影響〈公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所(2020年4月24日)〉
出版月報4月号が刊行中止(5月号と合併)になったことに伴い、販売概況7ページ分が公式サイトで公開されています。気づくのが遅れて、前回ピックアップし損ねました。前年比5.6%減に留まっていますが、本格的な影響が出るのは全国に緊急事態宣言が広がった4月以降でしょう。
共感を呼び称賛された『武漢日記』が一転、海外版の翻訳出版で批判と中傷に晒されたわけ〈HON.jp News Blog(2020年4月27日)〉
北京大学の馬場公彦氏に、中文圏の出版事情について解説コラムを連載いただくことになりました。1回目は『武漢日記』翻訳版の顛末について。「日本語版を読んでみたい」という反響が結構多かったのが印象的です。
電子図書館サービス「LibrariE」の大学・学校への導入数が100館を突破〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年4月30日)〉
日本電子図書館サービス(JDLS)の一般書を中心とした電子図書館サービス、紀伊國屋書店が販売代理店になっているのは学校向けが中心ですが、ようやく100館突破です。じわじわと増えてきてますね。コロナ禍のいま、恐らく問い合わせも増えているのではないでしょうか。
ボイジャーの電子書籍リーダー「BinB」をアリスブックスが採用〈ICT教育ニュース(2020年4月30日)〉
同人作品の通販サービス「アリスブックス」が、電子書籍の販売サイトを開始。ボイジャーのブラウザビューア「BinB」が採用されています。規約によると「配信が停止している商品は、閲覧権の有無に関わらず閲覧不可」となるそうです。むむむ。
【新型コロナ】日本図書館協会が時限的な公衆送信要望、書協「各著作権者へ」〈文化通信デジタル文化通信デジタル(2020年5月1日)〉
前回のピックアップ(↓)で、日本図書館協会が日本書籍出版協会ほか10団体(1カ所増えた)に要望を出していて、「権利者側がこれを受け、今後どのような対応をするか、注目です」とコメントしたのですが、
書協は「各著作権者への許諾申請を」と回答したとのこと。まあ、出版社が勝手に許諾はできないので、それが筋ではあります。後述の、大原ケイ氏のコラムと関連。
図書館休館「研究に悪影響」 大学生ら9割、継続困難と訴え〈共同通信(2020年5月3日)〉
有志による「図書館休館対策プロジェクト」による調査。私も大学教員(非常勤)ですが、調査結果が出てから調査が行われていたことを知りました。ぐぬぬ。詳細はこちら(↓)。
“防止策前提”に図書館など開放へ 13都道府県でも…〈FNNプライムオンライン(2020年5月3日)〉
対処方針、経済活動を一部容認 公園、図書館は全国で再開〈共同通信(2020年5月4日)〉
緊急事態は延長されましたが、一部制限が緩和されることに。「感染防止策をとったうえで」という前提ですが、喜ばしいことです。書籍消毒機のメーカーに、通常の10倍ほど依頼が来ているという報道もありました(↓)。
新型コロナ:人気作家の代表作、電子書籍化続々 コロナ外出自粛で〈日本経済新聞(2020年5月5日)〉
メルマガ#79(HON.jp News Blogでは4月27日配信)で東野圭吾氏の作品電子化について触れましたが、他にも森絵都氏、百田尚樹氏など、これまで電子化に慎重だった作家が「自ら」出版社に提案しているケースが増えてきているとのこと。日経の記事では触れられていませんが、「カドブン」で宮部みゆき氏作品の特別配信も始まっています(↓)。だいぶ潮目が変わってきた感がありますね。
5月7日から営業再開の書店情報(5月7日時点)〈新文化(2020年5月7日)〉
連休明けからの書店営業再開状況についてまとまっています。紀伊國屋書店、三省堂書店、くまざわ書店、有隣堂、未来屋書店、明正堂、文真堂書店が再開しています。ちなみに、リブロプラス系は、連休中も開いてたところがわりと多かった模様。
saveMLAK、「COVID-19の影響による図書館の動向調査(2020/05/06)」の結果を発表〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年5月8日)〉
5月5日9時から5月6日16時にかけての調査。休館は前回より4ポイント増え、92%になっています。ただ、前述の政府方針もあってか、5月8日までに1692館中245館が開館予定になっています。また、休館中でも、郵送貸出や宅配、電話やメールでのレファレンスなど、非来館型サービスが行われている実態も明らかになっています。
図書館は動き続ける 宅配で本を貸し出し、試み広がる [新型コロナウイルス]〈朝日新聞デジタル(2020年5月8日)〉
前述の save MLAK の調査報告を受け、宅配サービスの実施状況について取材・記事にしています。学校でも行われているところがあるんですね。
メディアドゥ 学校向け電子図書館初期導入費の無料キャンペーン開始〈文化通信デジタル文化通信デジタル(2020年5月8日)〉
学校向け電子図書館サービス「School Digital Library」の、初期導入費用と初年度の月額運用費を無料とするキャンペーン。太っ腹。いまがチャンス!
教委による遠隔授業、文科省が著作権管理者へ配慮要請〈リセマム(2020年5月8日)〉
またしても「格別の御配慮」の要請。こんどは文科省からです。授業のために、教員が資料を作成するノウハウが充分にないため、制度の対象外である「教育委員会が作成・配信」することについて御配慮いただきたい、という要請となります。少しずつ「要請」の範囲が広がっている感。他に手はないのでしょうか。
海外
外出制限で増える無料コンテンツ、文化産業への脅威に 国連機関が警告〈AFPBB News(2020年5月1日)〉
WIPOの事務局長が「知的財産権の例外を認め著作権を無視するよう文化部門に求める要求が多数舞い込んでいる」と懸念を表明しているとのこと。日本の場合、そういう要望が文科省や文化庁といった行政機関から「お願い」ベースで降ってくるというのが、ちょっと変じゃないか? と思わずにはいられないのが正直なところ。
NYタイムズ、増収増益 1~3月期、電子版伸びる〈共同通信(2020年5月6日)〉
広告収入は他のメディア同様に落ち込んでいるにもかかわらず、電子版契約者数が伸びて増収増益に。すごい!
コロナ禍対応で米出版社が迅速に「許諾ガイドライン」を更新できた理由〈HON.jp News Blog(2020年5月7日)〉
大原ケイ氏のアメリカ出版業界解説。日本の出版社も permission 部門を作りましょうよ、という提案でもあります。なにかあるたび著者にお伺いを立てる「甲乙協議の上」ではなく、権利を譲渡する代わりに「常に author’s best interest(著者にとって一番有益になるように)に従って出版活動をしなければならない」という契約を結ぶ、と。「品切重版未定」で権利だけ留保しているより、よっぽど誠実に思えます。
英国における電子書籍等への付加価値税(VAT)が2020年5月1日からゼロ税率に:新型コロナウイルス感染症への対応の一環として予定を早めて実施〈カレントアウェアネス・ポータル(2020年5月8日)〉
2020年12月からゼロ税率化の予定だったのを、前倒しで実施です。紙の本や新聞は従来からゼロ税率だったのですが、電子書籍・電子雑誌・ジャーナルやニュースサイトのオンライン購読などには20%のVATが化せられていました。なお、オーディオブックは適用対象外とのこと。そこで線が引かれるか。
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