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2019年2月25日~3月3日は「ダウンロード規制自民総務会了承先送り」「ebookjapan統合」「2018年コミック市場」」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
違法ダウンロード範囲拡大関連
DL違法化、日本漫画家協会が声明「人権の制約につながることが決してないように」〈弁護士ドットコム(2019年2月27日)〉
https://www.bengo4.com/internet/n_9305/
とうとう日本漫画家協会からも丁寧で十全な審議を要望する声明が。「原作のまま」「権利者の利益が不当に害される場合に限定」などの要求は、明治大学・知的財産法政策研究所とほぼ同じです。
DL違法化「必要な議論尽くされた」「バランスの取れた内容」…文化庁の説明資料入手〈弁護士ドットコム(2019年2月28日)〉
https://www.bengo4.com/internet/n_9306/
文化庁が2月22日の自民党文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議で説明した資料を入手、公開しています。
スクショ違法化、自民部会からも懸念「範囲限定すべき」〈朝日新聞デジタル(2019年2月28日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASM2X52FVM2XUCVL00R.html
2月22日の自民党文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議が、文化庁案のまま承認してしまったのは先週のメルマガでもお伝えしましたが、その際、馳浩・元文部科学相などから懸念の声が上がっていたという情報が。馳氏は、2012年の録音録画ダウンロード刑事罰化の際に尽力していた印象が強かったのですが、今回はブレーキをかける側に回っているようです。これぞ政治、か。
コンテンツ海外流通促進機構、ダウンロード違法化拡大に「正当で合理的」と見解〈ねとらぼ(2019年2月28日)〉
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1902/28/news100.html
CODAの見解というか、後藤健郎氏個人名での意見です。CODAの役割は「海外における」海賊版対策で、役員に名前を連ねているのは音楽系・映像系が中心。唯一、KADOKAWAが例外ですが、出版系の団体ではないという認識12023年3月18日追記:これはこのコメントを書いた時点ですでに誤りでした。お詫びして訂正します。Internet Archiveで調査したところ、公式サイトの会員企業・団体に講談社・集英社・小学館の名前は2017年3月まで無かったのですが、2017年4月以降に追加されていることに、いまごろになって気づきました。そこがこのタイミングで声を上げるというのは……?22023年3月18日追記:つまり、2月21日の講談社・野間社長による「ダウンロード違法化の範囲は制限するべき」という発言は、CODA会員社の立場から成されたものであったことになります。【脚注に追記有】
ダウンロード違法化拡大、自民総務会が了承先送り〈朝日新聞デジタル(2019年3月2日)〉
https://www.asahi.com/articles/ASM314VP6M31UTFK012.html
まさかの総務会差し戻し。驚きました。MANGA議連(マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟)会長の古屋圭司衆議院議員が、「原作のまま」「権利者の利益が不当に害される場合に限定」という提案を行うなど、尽力していたようです(↓)。
https://twitter.com/DaisukeP/status/1101624104950484992
まだどうなるかわかりませんが、そのまま通らなかった点についてはひとまず評価したい。ただ、「(関係者への)説明不足だ」「理解が得られていない」というのは、ちょっと違うような。「説明して誤解を解く」ことが求められているわけではありません。権利者側からも出ている懸念や反対意見は決して誤解ではありませんし、反対意見や慎重意見があまり存在しないかのように突っ走っている文化庁にこそ問題があると思うのです。
[論点スペシャル]ダウンロード規制の拡大 波紋〈読売新聞オンライン2019年3月2日〉
https://www.yomiuri.co.jp/commentary/20190301-OYT8T50100/
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会主査代理で今回の私的ダウンロード違法範囲拡大推進派の大渕哲也氏と、慎重派の中山信弘氏&赤松健氏のオピニオン。この記事に関連して高木浩光氏が「初期段階で大野課長補佐がこの大渕委員の初期案に頼って進めてしまい、後戻りできなくなった」のが実情らしいとTwitterでつぶやいていました(↓)。マジか。
DL違法化「文化庁は与党に正確な情報を提供していない」知財法専門家が批判レポート〈弁護士ドットコム(2019年3月3日)〉
https://www.bengo4.com/internet/n_9322/
文化庁が自民党文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議での説明に使った資料を、文化審議会著作権分科会の議事録を元に明治大学知的財産法政策研究所部会資料検証ワーキンググループがファクトチェック、検証レポートを公開(↓)しました。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/20190303kensyou2.pdf
検証レポート「文化審議会での議論について、①4人の慎重派委員の意見そのものを省略、②2人の慎重派委員の主張の重要部分を省略、③慎重派の委員2名の意見の一部だけを切り取り積極派であるかのように誤導、④積極派の人数を「水増し」するなどの処理を行って」いると批判しています。つまり、自民党部会はこの資料に「騙されて」承認してしまったわけで、これは自民党議員も怒ってしかるべきではないかと。
国内(その他)
講談社「DAYS NEO」に週刊少年マガジン編集部が加入 ~ 18誌200人の編集者と出逢えるマッチング型マンガ投稿サイトに〈HON.jp News Blog(2019年2月25日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/21522
別途独自の投稿サイト「マガジンデビュー」をやっている週刊少年マガジン編集部が、とうとうDAYS NEOにも参入。音羽以外の他社にも参加を呼びかけています。
「eBookJapan」と「Yahoo!ブックストア」がサービス終了、ヤフー・イーブック共同運営「ebookjapan」へ一本化〈HON.jp News Blog(2019年2月26日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/21531
記事化した時点では「新刊オート便」や「欲しい本に追加」といった機能が実装されておらず、「約束が果たされるのかどうかが注目される」と書きましたが、「新刊自動購入」は2月28日にギリギリ実装。「ほしい本に追加」的機能は未実装(「あとで買う」は実装されているが、カゴに入れてから購入前に保留するという機能なので、気軽には使いづらい)となりました。eBookJapanの「新刊オート便」の設定は、継承手続をすれば引き継がれるようです。ただ、Twitterを検索すると、まだ結構不満の声が多いようです。そのいっぽうで、Yahoo!ブックストア側から見ると、新機能や支払方法の追加が行われている状態になっており、いろいろ考えさせられます。
2018年コミック市場は紙+電子で前年比1.9%増の4414億円と成長基調へ ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2019年2月26日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/21536
だいたい事前に想定していたとおりの着地でした。なお、今後は「電子コミック誌」の数字を出すのを止めるとのこと。同じストアで売ってると区別するのが難しいでしょうし、物流と違って区別する意味があまりないとも言えますが。単品販売、サブスクリプション、アプリ系の「先読み」機能みたいな特殊課金を分けるほうが有意義かも。できるなら。
リーチサイト『はるか夢の址』の運営者に実刑判決――リンクの法的位置づけと、どの行為が犯罪とされたか〈HON.jp News Blog(2019年3月1日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/21585
骨董通り法律事務所 for the Arts 弁護士 二関辰郎氏による、リーチサイト『はるか夢の址』運営者の実刑判決についての解説コラムを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき転載しました。
海外
パブリックドメイン絵画のデジタル版を勝手に作るのは違法とするドイツの判決〈HON.jp News Blog(2019年2月27日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/21559
ドイツ連邦裁判所(最高裁)の判決。なにがなにやらという感じですが、とりあえず「館内撮影禁止」を破ったらダメなのは日本でも同じ。著作権の問題に踏み込んでいるのはどういうことなのか……この記事を書いてくれた大原ケイさんも、ちょっと複雑すぎるからと解説を諦め、短い記事にしたという経緯があります。法律の専門家に解説を依頼したいところ。どなたか立候補いただけませんか。
英ブッカー賞の新スポンサーはカリフォルニアのIT長者夫婦〈HON.jp News Blog(2019年2月28日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/21582
ウェールズ出身のアメリカ人夫婦がスポンサーに。マイケル・モリッツは、タイム誌の記者をやっていたこともあったり、GoogleやPayPalなどの取締役を務めたこともあるそうです。
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