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2019年1月14日~20日は「政府、海賊版ブロッキング法制化を断念」「出版デジタル機構がメディアドゥを吸収合併」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。
国内
著作権保護期間が延長された世界でも、できることはたくさんある #著作権延長後〈HON.jp News Blog(2019年1月11日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/14964
先週のメルマガでうっかり、ピックアップするのを忘れていました。シンポジウム「著作権延長後の世界で、我われは何をすべきか」全編の詳細レポートです。
海賊版「ブロッキング」法制化断念 政府、広告抑制など総合対策で対応〈産経ニュース(2019年1月14日)〉
https://www.sankei.com/economy/news/190114/ecn1901140005-n1.html
昨年開催された海賊版対策会議(タスクフォース)ではブロッキングの是非について議論が紛糾、「中間まとめ」が出せないという異例の事態となりました。結局、政府はブロッキングの法制化は断念する方針で固まったとのこと。なお、リーチサイト規制と私的ダウンロード違法範囲拡大は、1月28日に召集される通常国会で審議される予定になっています。
漫画アプリ「課金派」増える 無料だけでは我慢できず〈日本経済新聞(2019年1月15日)〉
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO39951100R10C19A1H34A00
韓国の調査会社Mobile Index社による「2018年マンガアプリ総決算」の推計で、2018年のマンガアプリ市場規模は約380億円だったとのこと(↓下記URL参照)。“今回のレポートで使用されるデータは「アプリケーション」における売上推定値のみ、分析致しました” とあり、アプリ内決済をやっているアプリだけが調査対象になっています。つまり、Apple ID決済を迂回しているKindleストアなどは、この調査の対象外です。
固定レイアウトのEPUBファイルがブラウザ上から誰でも簡単に作成できるツールをブックウォーカーが無償で提供開始〈HON.jp News Blog(2019年1月15日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/15025
A.固定レイアウトEPUBを、B.ブラウザ上で、C.見開きの状態を確認しながら、D.誰でも利用可能なツールが、新たにリリースされました。ブックウォーカーへの会員登録だけ必須ですが、無料で利用可能です。以前コルクが提供していたツール「Magnet」(↓参考)がサービス終了してしまったため、代替サービスが出てきたのは嬉しいのですが、できればモバイル画面にも対応して欲しいところ。
出版デジタル機構がメディアドゥを吸収合併し電子取次事業などの集約予定を発表 ~ 存続会社は名称をメディアドゥに変更、新設立の出版デジタル機構がW3CやJPOなどと連携協力〈HON.jp News Blog(2019年1月16日)〉
https://hon.jp/news/1.0/0/15065
ついに吸収合併。電子取次業界2位のメディアドゥは、業界1位の出版デジタル機構を2017年3月に子会社化しています。しかし、出版デジタル機構「が」メディアドゥを吸収合併というのが興味深い。出版デジタル機構のほうが取引先が多く、決済システムが効率化されていることが理由とのことです。そして、吸収合併した上でメディアドゥに社名変更するというのも、若干ややこしい。
なお、出版デジタル機構は新会社として設立し直されるわけですが、W3CやJPOなど非営利的な業界横断事業を担うというのは、旧出版デジタル機構が設立当時掲げていた「非競争領域に共通基盤を」という理念を思い出しました(↓参考)。
省人化と小売――ふうせんかずら探訪と考察〈マガジン航(2019年1月16日)〉
https://magazine-k.jp/2019/01/16/cashless-bookstore/
敏腕書店営業・湯浅創氏による、無人店舗・セルフレジ・キャッシュレス決済で事業を展開している奈良の「ふうせんかずら」という書店のレポート。事前登録が必要な会員制である点が大きなポイントになっているようです。面白い試みであるのは間違いないのですが、誰でも出入り可能な大規模店舗ではちょっと難しそう。
海賊版誘導サイト運営者に実刑 「ただ読み」なお野放し〈日本経済新聞(2019年1月18日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO4015742018012019EA2000/
海賊版リーチサイト「はるか夢の址」の運営・管理者に実刑判決。弁護士・福井健策氏によると「著作権では過去最高レベルの厳しい量刑」とのことです(↓当該ツイート)。
https://twitter.com/fukuikensaku/status/1086051492383997952
ただ、このケースの場合、運営者が自ら違法アップロードしていた点がポイントで、リーチサイトの運営そのものが著作権侵害幇助かどうかは判断されていません。
出版 ネット対応遅れ 海賊版誘導サイトに実刑 収益モデル構築急務〈日本経済新聞(2019年1月18日)〉
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO4012592017012019TJ1000/
「はるか夢の址」の運営・管理者に実刑判決が下ったことを受けての論考。“日本の出版社の多くは書籍向けの原稿をそのままネットに載せたり、販売が「巻」単位だったりと印刷物中心の発想からなかなか脱却できずにいる” とあります。
ただ、最大手級の電子書店「めちゃコミック」は、巻単位ではなく話売りです。また、多くのマンガアプリでは、連載過去話を話売りしています。また、「先読み機能」のような仕掛けもあります。デジタルマンガについて言えば、日本はそれほど遅れていないという認識でした。
逆に、先日「中国・韓国のビジネスモデルはもっと進んでいるから、日本へ輸入すべきだ」という意見も某所で耳にしました。実際のところは、どうなのでしょう?
海外
GoogleとWordPress.com、中小ニュースメディア向けプラットフォーム「Newspack」立ち上げ〈ITmedia NEWS(2019年1月15日)〉
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1901/15/news054.html
2月から参加申込み開始とのこと。中小ニュースメディアを運営する者として興味津々なのですが、「正式版は月額1000~2000ドルになる見込み」というのはちょっとキツイ……。
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