「KADOKAWAの筆頭株主、ソニーグループから“物言う株主”オアシスに」「AIの出力結果を検証もせずそのまま用いるとこうなる」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #708(2026年3月22日~28日)

【写真】Rakuten OptimismのKoboブース (photo by TAKANO Ryou)
noteで書く

《この記事を読むのに必要な時間は約 16 分です(1分600字計算)》

 2026年3月22日~28日は「KADOKAWAの筆頭株主、ソニーグループから“物言う株主”オアシスに」「AIの出力結果を検証もせずそのまま用いるとこうなる」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

米国防総省の取材規制は違憲 連邦地裁、報道の自由侵害と判断〈日本経済新聞(2026年3月21日)〉

米政府のアンソロピック排除を一時差し止め 米地裁〈日本経済新聞(2026年3月27日)〉

2月には相互関税にも違憲判決が出ましたが、こちらも。政府の暴走を司法がきっちり止めています。まだ三権分立が生きてますね。ただし問題は、違憲判決が出て止められるまでは、暴走できてしまうこと。

第1回 新たなクールジャパン戦略ワーキンググループ〈知的財産戦略本部(2026年3月23日)〉

「新たなクールジャパン戦略」については以前にも言及しましたが、なによりまず「クールジャパン」って“自ら”言うのをやめましょうよ。めちゃくちゃダサい。ほんとに。見るたび「おれってクールじゃん?」ってドヤ顔してる人を幻視しちゃうんですよ。大原ケイ氏に以前書いてもらった「クールジャパンは“シャレ”だった?」もご参考に。

コンテンツ輸出拡大へODAで海賊版対策 外務省、まず東南アジア〈日本経済新聞(2026年3月25日)〉

インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニューの工程表(PDF)は2025年版でもまだ「ブロッキング」が消えていないので注視し続けているのですが、政府開発援助(ODA)を活用という話が出てきたのは初めてかも。「知的財産推進計画2026」に盛り込まれるのかしら? ちなみに改めて確認してみたら、工程表に外務省が登場したのは2021年4月9日版からでした。

SNS企業に激震、収益構造に影響も-米国で中毒性指摘した画期的評決〈Bloomberg(2026年3月26日)〉

未成年SNS依存「メタ・Googleに責任」、中毒招くアルゴリズム 米地裁〈日本経済新聞(2026年3月26日)〉

「SNSは児童の性的搾取や中毒を生む」、米国で2つの“画期的”な評決〈INTERNET Watch(2026年3月27日)〉

SNSサービスを運営する企業にとっては、けっこうヤバめな陪審表決が出ています。アメリカの場合、投稿されるコンテンツについては通信品位法230条で免責されるのですが、今回の評決はコンテンツではなくプラットフォームの設計に問題がある、という判断。まあ、まだ地裁判決ではありますが、Bloombergによるとこういう不名誉は「しばしば政府による規制の強化につながる」そうです。

社会

感謝の言葉 と「出版流通販売インフラの変貌と現在の危機」〈出版・読書メモランダム(2026年3月23日)〉

小田光雄氏の遺稿となった『新文化』2024年2月29日号掲載記事の転載とのこと。ブログの更新もこれが最後になるそうです。おつかれさまでした。あらためてご冥福をお祈りいたします。

お詫び〈NEWSポストセブン(2026年3月23日)〉

見出しだけだとなんのお詫びかわからん……これは、「週刊文春」2026年3月19日号(3月12日発売)で新たに発覚していた、従業員(当時)が取引先に性的行為を要求していた問題に関する編集部のお詫びです。小学館公式は記事が出る前日、3月11日の時点で謝罪しているのですが、編集部はなぜこのタイミングなのか。

「お詫び」の末尾には「週刊ポスト 2026年4月3日号掲載」(3月23日発売)とあります。恐らく、紙面に載せたお詫びをそのまま掲載したのでしょう。ウェブだけ先にお詫びを出すとか、タイトルを「お詫び」だけにしないとか、そういう工夫はしない編集部なのですね。いちおうトップページにこの記事へのリンクが貼ってあることは確認できましたが、見つけられますかね? ページ内検索しないとたぶん無理。

「AIはニュース記事を利用するが出典を明記しない」カナダの大学調査で判明〈Media Innovation(2026年3月24日)〉

これはGoogle「Gemini」を使っていると、いつも感じます。最初の出力でソースを出してくることがほぼないのですよね。毎回「ソースのURLをくれ」と追加命令しています。面倒くさいけど、言えば出るようになっただけマシ。ChatGPTは、以前はともかく、最近は最初からソースのURLが出てきますね。

「100分de名著」公式Xが14年で閉鎖、その理由は? 「運用者の怒りを感じる」「モヤモヤする」SNS困惑〈J-CAST ニュース(2026年3月26日)〉

なにこれぇ……「求められる成果水準に達することができず」って理由が謎すぎます。NHKのネット本業化以降の流れを考えると「目立ちすぎちゃダメ」などという通常とは真逆の要求だったのではないか? と邪推してしまいました。日本新聞協会が断続的に圧力をかけてますからねぇ……NHKのインターネット業務が以前より不便になったのは、そういう圧力のせいですから。

書店は何のための場所なのか?データから見えた価値を11,000字で言語化する〈松本健太郎(2026年3月26日)〉

これは素晴らしい調査。書店関係者は必読でしょう。「書店の皆さんが考えておられる価値はヘビーユーザー向けでは」という指摘は耳が痛いと思います。稲田豊史氏・菊地悟氏との鼎談で言えば「右上」だけになっている、という話でしょう。

ただ、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍かかる(1:5の法則)というマーケティングの経験則もありますし、ある程度は仕方のないことだとも思いますが。ライトユーザー・ノンユーザーにどうやって来店してもらうか? という問題は、あらためて考えてみたいです。以前はその来店動機が、主に「雑誌」だったわけですよね。

大阪市:中之島図書館の指定管理者に応募ゼロ、府「直営」に逆戻りでイベント・市民講座が大幅縮小に…人件費高騰が影響か〈読売新聞(2026年3月26日)〉

図書館業務止まっちゃうのでは? と思ったら、図書館施設を利用した催し物の企画運営の話でした。「本の貸し出しなど従来の図書館業務については、別の業者に委託しているため影響はないという」とのことです。

“AI不使用”の作品に「AI生成」と誤表記――電子書籍配信「クロスフォリオ出版」が謝罪〈ITmedia AI+(2026年3月27日)〉

そもそもAI作品不可のプラットフォームなのに、なぜそんな誤表記が出てしまったのか……本稿執筆時点で記事末尾には、経緯などについて「返答次第追記する」とだけあり更新されていないようですが、公式サイトには3月27日付(記事が出た日)で「経過報告」が出ていました。

取次入稿用フォーマットにAI作品をラベリングする項目があり、作家から入稿された書誌データをそのフォーマットへ落とし込む際に「仕様設計の問題と後発の不具合が重なり、誤ってAIの項目に判別情報が振られてしまいました」と説明されています。影響範囲は8名12作品とのこと。うーん……Excelでのコピペ作業ミス、かなあ。

ちなみにウチが利用している電子取次の入稿フォーマットには、現時点でAI作品か否かの項目はありませんでした。商業出版物として扱われているので、そもそもフォーマットが違うかもしれませんが。AI作品か否かが入稿時に問われるのって、個人で直接取引できるところくらいかも?

AIが不適切と判定した約200冊の本が学校の図書室から撤去される、「一九八四年」「チェンソーマン」「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「ワンパンマン」など〈GIGAZINE(2026年3月27日)〉

うーわ。AIの出力結果を検証もせずそのまま用いるとこうなる、という典型的な事案でしょう。そもそもアメリカの学校では保守主義団体の働きかけで規制法ができちゃった州もあり、いわゆる「禁書」が増えているという状況もありますから、こうなるのをある程度見越したうえでAIに責任転嫁してるだけかもしれませんが。

経済

Books、BooksPROに4月から新機能 書店・図書館の発注や裁定制度対応に〈新文化オンライン(2026年3月24日)〉

JPRO説明会資料はこちら動画はこちら。資料はひととおりチェックしましたが、気になったのは電子書籍に関する話がほとんどないこと。JPRO利用出版社(者)数や登録点数・配信率などの情報が開示されているあたりで、以前なら「電子書籍の登録状況」についても言及されてたはずなのですが。モバイルブック・ジェーピーとの提携で自動登録されるようになってから、あまりこのあたりの話を聞かなくなった気がします。

売れないのは小説か、届け方か 時代に逆行した小学館の文芸誌『GOAT』、累計42万部の衝撃〈ITmedia ビジネスオンライン(2026年3月25日)〉

なんかタイトルに違和感が。「売れないのは」から続く言葉として期待されるのは「理由」ですが、「小説か、届け方か」って異質なものが併置されるのは変ですよね? だいぶ言葉が足りてない気がする。私なら「小説だから売れないのか、届け方の問題か」とするかな。

「GOAT」に関しては以前から何度も言っているように()、そもそも赤字の販価を許容している小学館がすごいと思います。よっぽど余裕のある企業じゃないと、この経営判断はできないですよ。

OpenAI、動画生成アプリ「Sora」終了へ なぜ? 理由を聞いた〈CNET Japan(2026年3月25日)〉

判断が早い……というか、あまりにいろんなところへ迷惑かけすぎじゃありませんかね? ディズニーまで巻き込んでたのに。OpenAIはいま、どんどん信用を失ってる気がします。

英ホラー小説がホラーな展開に。恥じらう少女じゃいられない〈オーディオブックファンクラブ(2026年3月26日)〉

出版停止になった『シャイ・ガール』問題について。私の先週のコメントに、めっちゃ言及いただいてる。いつもお読みいただきありがとうございます。

ではこういうケースはどうでしょう。著者が原稿をすべて万年筆で書いた「人間純度100%」の英語小説があったとします。

これはあくまで仮定の前提なのですが、この「人間が手書きした原稿」にも落とし穴があると考えておくべきでしょう。つまり、人間が書いたように見せかけるためにAIが出力した文章を手で書き写して原稿化みたいな可能性も大いにあり得るわけです。編集者の立場からすると、手書き原稿だから安心、とは言えない。

KADOKAWA、オアシスが筆頭株主に 議決権比率11.89%〈日本経済新聞(2026年3月27日)〉

香港系投資ファンド・オアシスが、ソニーグループを抜いてKADOKAWAの筆頭株主に。「物言う株主」だそうで、いろいろ面倒くさいことになりそうですね。ソニーグループに「買い増ししてください」ってお願いすることになるかも。

AI使用疑惑の小説、米で出版中止 曖昧な「人間が執筆」の線引き〈日本経済新聞(2026年3月28日)〉

こちらも『シャイ・ガール』問題。

問題は全面的にAIに依拠した作品を申告せず使った疑わしい原稿を事前にどう見抜くかだ。

問題はそこか? うーん、微妙に違うような。問題の本質は、質の低いコンテンツが出版社のチェック機能をすり抜けて商品化してしまったことですよね。今回の場合、そこそこ売れてる自己出版作品を、アシェットがろくにチェックもせず出版しちゃったことが問題なのでは。これも、AIの出力結果を検証もせずそのまま用いるとこうなる、という典型的な事案だと思うのですよ。

要するに、ゲートキーパーが役割を果たしていない。世に出たらすぐ「AI臭がする」と疑われるような低品質コンテンツが、出版社の名の下に世へ送り出されたしまったことが問題(恥)なのであって、「全面的にAIに依拠した作品をどう見抜くか?」なんて、はっきり言えばどうでもいい。だって、人間が書いても低品質なものは、山ほどあるわけですから。人間だろうとAIだろうと、ダメなものはダメ。エンタメコンテンツなら「面白いこと」がすべてですよ。

技術

Google Search is now using AI to replace headlines(グーグル検索がAIを使って見出しを置き換えるようになった)〈The Verge(2026年3月20日)〉

The Vergeは昨年末にGoogle Discoverでニュース見出しの無断書き換えテストが行われていると報道していますが、こんどはGoogle検索結果の見出しも一部改変が行われ始めているとのこと。真逆の意味に捉えられかねない改変は酷い。当時もコメントしたんですが、こういうテストをするなら事前に同意を得たメディアだけを対象にして欲しい

あと、なんか知らないうちに、そのGoogle Discoverの無断改変はすでにテストを終え、恒久的な仕様になっているみたい。マジか。抗おうとしても、ニュースの見出し程度の長さだと著作権が発生しない可能性もあるんですよね……。

Sakana AI、新AIモデル「Namazu」発表 AIチャット「Sakana Chat」も公開〈ITmedia NEWS(2026年3月24日)〉

試しにちょっと使ってみましたが、結果をソース付きで丁寧にまとめて出力し、存在しない情報は「ない」と回答してくれますね。ただ、GeminiやChatGPTなどに比べると処理が圧倒的に遅い……けっこう待たされます。

「NotebookLM」にEPUB/PPTXファイルのサポート、AIによるスライド修正などの機能強化〈窓の杜(2026年3月26日)〉

EPUB出力に対応したわけではなく、EPUBファイルを参照データとして取り込むことができるようになった、とのこと。生のEPUBファイルを自分で持ってる人って、世の中的にはまだ少なそうですよね。私は自分で作るから持ってますけど。

Xの投稿画像に「AIで生成」のラベルが自動的に付く現象、一部ユーザーからは「AI生成じゃないのに勝手に付いてしまった」という報告〈電ファミニコゲーマー(2026年3月26日)〉

もしかして、C2PAのチェックを始めた? と思いPhotoshopでAI塗りつぶしをした画像を投稿して検証してみたのですが、そんなことはなかった。

お知らせ

新刊について

新刊『ぽっとら Podcast Transcription vol.1 ~ 詐欺広告や不快広告・金融検閲・生成AIと著作権・巨大IT依存問題など、激変する出版界の広範な論点を深掘りしてみた。』を刊行しました。ポッドキャストファーストという試みです。今後も続けたい。

HON.jp「Readers」について

HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。

日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

メルマガについて

本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算号数、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行号数です。

雑記

春眠暁を覚えずと言いますが、朝はふつうに起きられるのに、暖かいからか昼間に眠くなってしまいます。この時期、午後は眠気や欠伸と戦いながら仕事……(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

noteで書く

広告

著者について

About 鷹野凌 936 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

0 コメント
高評価順
最新順 古い順
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る