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2026年3月15日~21日は「アシェット、AI利用疑惑の小説を販売中止・回収」「BOOK☆WALKER GlobalがReadium LCP DRM採用へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
【目次】
政治
政府、SNS詐欺広告の規制検討 身元確認案も浮上、被害増加で〈47NEWS(2026年3月18日)〉
日経の編集委員が以前「台湾の規制に学べ」という論考を公開していましたが、台湾が詐欺広告を激減させた先行事例を、日本政府も踏襲する方向で検討しているようです。まあ、自由民主党のプロジェクトチームもオードリー・タン氏にヒアリングしていますから、既定路線ではあります。Metaが政府を怒らせた。
しかし、記事には「SNS詐欺広告」とありますけど、詐欺広告が出るのはSNSだけではありませんよね。なにせ、読売新聞にさえサポート詐欺広告が頻出していたわけですから、ふつうにウェブメディアも規制対象でしょ……と思っていたのですが、情プラ法で指定された大規模事業者だけになる可能性も? アドネットワーク経由まで網に掛けられるかしら?
社会
大手出版の雑誌記事「まとめサイト」に無断転載疑い 2万本を公開、広告収入1億円超〈産経ニュース(2026年3月18日)〉
ACCSのプレスリリースには「記事の一部」が無断転載されていたとありました。たくさんある記事の中のいくつかという意味なのか、文章などの一部という意味なのか判別できず。後者なら著作権法第32条(引用)の権利制限が使える可能性もあると思うのですが、すでにサイトが削除されているということは引用要件をまったく満たしていない感じだったのでしょうか。ちょっと気になる。
『本を読めなくなった人たち』と、なぜか“本”に含めてもらえない雑誌やマンガ〈HON.jpメールマガジン(2026年3月19日)〉
3月18日に開催された「Media Innovation Conference 2026」のセッション「『本を読めなくなった人たち』を読んで考える出版とマーケティング」に、著者の稲田豊史氏、本の中に登場する菊地悟氏(KADOKAWA)とともに登壇してきました。今回のメルマガ増刊号はそのセルフレポート+αです。
時間が足らないのは事前にわかっていたのでセッションでは省いたネタも、後半に盛り込んであります。一般に言われる「不読者」や「不読率」と本書で使われている「非読社会化」という言葉のニュアンスの違いや、不読率60%超に含まれてしまう雑誌やマンガだけ読んでいる人、という話です。他にも省いたネタはありますけど、今回はこれくらいにしておきました。
リニューアルした三省堂書店の神保町本店、行ってみた。〈シュッパン前夜 編集部(2026年3月19日)〉
前半は三省堂書店本店内覧会のレポートですが、後半は私たちのセッションについてでした。「編集の独立」の話に食いつくとは思わなかった。まあ、経営陣から単に「ターゲットを変えろ」と言われても言うこと聞かない編集者は多いでしょうし、作りたい本が作れないなら会社を移っちゃう人も多い気がする。
経済
アマゾンから「重要なお知らせ」 報酬変更に嘆く配達員、法的問題は〈朝日新聞(2026年3月14日)〉
フリーランス法または取適法(旧下請法)違反だと思うのですが、どうなんだろう? 「元公取委の専門家」や「公取委に相談した人」の声はとれていても、公取委の見解そのものは残念ながらまだわかりません。アマゾンがフリーランス法や取適法のことを把握していないはずがない(二重否定)ですから、どこまで許されるか試しているのかもしれません。すぐにガッツリ締め上げて欲しいところ。こんなのスルーしたらアカンですよ。
Hachette pulls horror novel Shy Girl after suspected AI use | Books(アシェット社、AI使用の疑いでホラー小説『シャイ・ガール』の販売中止)〈The Guardian(2026年3月20日)〉
Shy Girl, Big Questions: What The Hachette-Ballard Affair Tells Us About Publishing’s Unpreparedness For The AI Age(内気な少女、大きな疑問:ハシェット・バラード事件が示す、出版業界がAI時代に備えていない現状)〈The New Publishing Standard(2026年3月20日)〉
販売中止・回収ということで、けっこうな騒ぎになっています。複数のソースから経緯をざっくりまとめると、
- セルフパブリッシングからの商業出版
- セルパブ時代からそこそこ売れていたが、AI使用を疑う声もあった
- 英国で昨秋発売された商業版は、ニールセンによると1800部売れていた
- Reddit、Goodreads、YouTubeなどで、AI使用疑惑の声がバズった
- アシェットが内部調査を行い、販売停止と回収を発表した(どうやら初のケース)
- 著者はAI利用を否定、知人(編集者?)が勝手に使ったと主張している
- 自己申告による「人間が書いたことの証明」に意味はあるのか?
- そもそもアシェットは発売前の編集プロセスでなぜ気づけなかったのか?
という感じです。なんか箇条書きにするとAI出力っぽいですが、人力です。念のため。発端となった The New York Times の記事はハードペイウォールの向こう側で読めていないのですが、AIか否かの調査対象になったのはセルパブ版ではなく商業版のようです。
出版はどこまでAIを許容するのか―『Shy Girl』販売中止騒動〈mizuho furuhata(2026年3月22日)〉
「出版業界ニュースまとめ」の古幡瑞穂氏がこの騒動について考察しています。個人的に「どこまでAIを許容するのか」という問いに、もう意味はないと思うのですよね。すでに制作現場ではガンガン使われているはずですから。「AIがないともう本は作れない」なんて声を聞いたこともあります。だから、AI不使用を契約で縛るってのも、ナンセンスだと思うなあ。
私はこれは、AIを使うことそのものが問題なのではなく、根本的に「品質管理がなってない」って問題だと思うのですよ。アシェットがゲートキーパーとして機能していない。まあ、人間が書くよりAI出力のほうが誤字脱字が少ないぶん、ちゃんと書けているように見えてしまうのかもしれませんが。「ノーチェックなら必ず事故る」という認識を、改めて叩き込む必要がありそう。でも、AIが出力した文章って、なんか目が滑るんですよね……。
技術
Bookwalker has rebranded itself, is launching a new website and apps(ブックウォーカーがブランド名を変更し、新しいウェブサイトとアプリをリリースします)〈Good e-Reader(2026年3月19日)〉
英語版コンテンツを北米向けに配信している「BOOK☆WALKER Global」が、ブランド名を「BookWalker」に変更するのと、Readium LCP DRMを採用してユーザーを囲い込まないようにするシステム変更を行うそうです。
ブランド名は、日本語圏以外だと☆が入力できないんじゃないかな……と思っていたので、良い判断だと思います(☆を入れるのは角川歴彦氏のこだわりと聞いた記憶があるのですがソースが見つからない)。Readium LCPについては、昨年12月にJEPAでセミナーが行われていますので参考まで。日本でも今後、導入するところが出てくるかもしれません。歓迎されると思うなあ。
ところで、「BOOK☆WALKER Global」って昨年3月31日付でドワンゴ(旧ブックウォーカー)からM12 Media LLC(旧 J-Novel Club LLC)に移管されたんですね。気づいてなかった。ドワンゴとの繋がりは親会社経由で間接的になったわけですが、いちおう関係性開示しておきます。
AIリサーチの学術研究、購買意向調査で「精度90%」到達 発展の軌道へ〈日本経済新聞(2026年3月21日)〉
これは……「調査を仮想実施」「LLMを用いて再現」って、「AIリサーチ」というより「AIシミュレーション」と呼ぶべきなのでは。悪く言えば「調査結果の捏造」ですよね。仮想的に行ったのちに実際の調査を行うなら良いのですが、水は低きに流れますから、いずれ実際の調査は省いてAI出力だけを「調査結果」として報告するようになるでしょう。っていうか、あらゆる分野の調査レポートを乱造している「調査会社」って、そういう手法を使っているのでは。
お知らせ
新刊について
新刊『ぽっとら Podcast Transcription vol.1 ~ 詐欺広告や不快広告・金融検閲・生成AIと著作権・巨大IT依存問題など、激変する出版界の広範な論点を深掘りしてみた。』を刊行しました。ポッドキャストファーストという試みです。今後も続けたい。
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日刊出版ニュースまとめ
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雑記
カンファレンスを取材いただいた記者さんから写真が送られてきたのですが、顔が丸い……アンパンマンみたい。ダイエットが必要ですねこれは。(鷹野)






















