「ドイツ地裁、Google“AIによる概要”の誤りはGoogleに責任があると認定」「KADOKAWAに公取委がまた勧告、こんどはフリーランス法」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #719(2026年6月7日~13日)

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 2026年6月7日~13日は「ドイツ地裁、Google“AIによる概要”の誤りはGoogleに責任があると認定」「KADOKAWAに公取委がまた勧告、こんどはフリーランス法」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

お知らせ

恒例の出版ニュース特番が今回はなんと3部制! 登壇者9名の豪華布陣で2026年上半期を振り返り&掘り下げます。リアル会場とオンラインのハイブリッドで6月27日開催です!

政治

KADOKAWAに公取委が勧告へ…フリーランスのライターらに取引条件を明示せず〈読売新聞(2026年6月8日)〉

また!? と思いましたが、今回はフリーランス法の適用です。2024年「レタスクラブ」への勧告は下請法違反でした。当時、フリーランス法は施行直前でしたが「これは恐らく『フリーランス保護法も、少額であっても見逃しませんよ』という公取委からのメッセージ、つまり『見せしめ』でしょう」と書いたことを思い出しました。しかし結局、改善されなかったのですね。上場企業でさえこのありさま。

読売の記事は事前リークでKADOKAWAだけが取り上げられていますが、フタを開けたら同時にヘリテージにも勧告が行われています。「フリーランス法も取適法(旧下請法)も、出版業界の商慣行が規制当局に狙い撃ちされているのは明らか」って以前から警告していたのですが、届いてないんだなあ。

ちなみに今回は両社とも資本金1000万円以上ですが、「下請法の親事業者には資本金1000万円以下という制限がありますが、フリーランス新法にはそういう制限が存在しない点が大きな違い」です。中小零細出版社でも、フリーランス法は適用されますからね!

【下山進=2050年のメディア第80回】読売vs.パープレキシティ 著作権法改正をめぐる因縁の対決が始まる〈AERA DIGITAL(2026年6月9日)〉

「因縁の対決」ってなんだろう? と思ったら、以下の記述にびっくり。

特筆すべきは、パープレキシティ側のアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の弁護士大渕哲也は、著作権法の改正・改訂を検討する文部科学省の諮問機関である文化審議会の著作権分科会の委員を長く務めているということだ。

わお! そういうことですか。新聞社などから目の敵にされてる著作権法第30条の4をはじめとした「柔軟な権利制限規定」導入の中心人物、と見られているわけですね。私は、大渕氏はダウンロード違法範囲拡大のときの悪印象が強いです。

ちなみに、読売新聞社長の山口寿一氏の言う「AIが新たな表現物を生成して権利者を脅かす恐れのあることを政府が示したことはなかった」というのは真っ赤な嘘だと指摘しておきます。知的財産戦略本部次世代知財システム検討委員会の報告書(2016年)には、AI創作物と人間の著作物が競合する可能性などが当時からしっかり示されています。

そもそも、「柔軟な権利制限規定」を検討していたときの文化審議会著作権分科会に日本新聞協会は委員を送り込んでいるじゃありませんか。つまり、自分たちが加わって行った著作権法改正ですよ。「知らなかった」なんて言い訳は通用しないでしょ。

英首相、アップルやグーグルに「子どもが裸を撮影も送信もできない」デバイス制御を要請〈CNET Japan(2026年6月10日)〉

Appleが以前、iCloudとメッセージアプリに児童性的虐待記録物(CSAM)の検出機能を導入しようとして、プライバシーの侵害だと強く批判されて延期したのを思い出しました。結局、これって現時点でも未導入ですよね。

Googleのほうは、Googleドライブなどにそういう画像をアップロードすると一発で永久BANされるようなので、すでに検出機能はあるみたいですが。子供と一緒にお風呂に入っている家族写真でBANされ、アカウントを永久に失ったという声をときどき目にします。

特定の機能を子供だけ利用できないようにするには年齢認証が必須で、非常にハードルが高い。だったら年齢関係なく禁止してしまえ、というのが往々にしてテック企業のとりがちな解決策です。今回も、Appleがどう出るか次第かなあ……。

「侵害したもの勝ち」防ぐ規定検討 知財推進計画2026の概要判明〈朝日新聞(2026年6月10日)〉

代理集団訴訟制度は面白いと思います。ただ、そもそも知財推進計画っていつも、検討中は非公開で進められているのが「なぜ?」と感じてしまいます。こうやって新聞などマスメディアにリークされた断片的な情報しか事前には出てこないんですよね。なんとももにょる。

「知的財産推進計画2026」について(決定)〈知的財産戦略本部(2026年6月12日)〉

出てきた内容を見ても、検討中は秘匿しなきゃいけないような内容には思えないのです。なぜ伏せるのだろうか。

デジタル教科書、2030年度使用へ改正法成立 教員の活用力問われる〈日本経済新聞(2026年6月10日)〉

デジタル教科書法が成立…紙・併用含めて選択、「デジタル漬け」など健康や学習面での課題多く〈読売新聞(2026年6月10日)〉

日経新聞と読売新聞で報じ方が真逆すぎて苦笑い。読売新聞は相変わらず、デジタルのデメリットだけ挙げて、アクセシビリティの観点は皆無です。紙にもデジタルにもメリットとデメリットがあるのに、紙はメリットだけ、デジタルはデメリットだけを挙げて比較したら、そりゃ紙に軍配上がりますよ。

社説:デジタル教科書 紙を重視する現場の声生かせ〈読売新聞(2026年6月12日)〉

この社説もそう。紙推しのポジショントークすぎる。読売新聞のサイト内を検索しても、デジタル教科書をアクセシビリティの観点で取り上げた記事が見つけられないのですよね。「読書バリアフリー」なら辛うじて、市川沙央氏の芥川賞受賞に関連した記事が数本あるのですが。

教科書はデジタルと紙どちらがいい? 東大生の6割が「デジタル教科書」に賛成も…意外と根強い紙派の本音〈東洋経済オンライン(2026年6月9日)〉

こういう調査ですら、アクセシビリティの観点が皆無なのだから頭が痛い。紙が良い人は、紙で良いんですよ。紙じゃダメな人がいることにも想像力を働かせてほしい。だから、ハイブリッドという選択肢が用意されたのですから。それさえ防ごうとする動きがあることを大いに懸念しています。

「AIによる概要」、グーグルの法的責任は? ドイツの裁判所が判断〈朝日新聞(2026年6月11日)〉

すごい判決が出ました。「AIによる概要」は検索結果ではなく、Google自身の発言であると。つまり、プラットフォームとして免責されずに、AIの発信した内容に責任を負うメディアとして扱われるわけです。

まあ本件の場合、完全に嘘八百の出力で詐欺企業扱いしちゃった事例だからというのもあるでしょうけど。裁判所から「AIによる概要説明には『検索結果にすら記載されていない主張』が含まれている」と指摘されています。

とりあえずまだドイツの地裁判決レベルだからどうなるかわからないですけど、もしこの判決がグローバルでスタンダードになると、AI検索結果には誤出力が許されない世の中になりますね。「ハルシネーションはそのAIを開発した企業の責任」ってことに。それはそれですごいな。

【独自】「クールジャパン機構」廃止案 政府検討へ、累積赤字が拡大〈NEWSjp(2026年6月12日)〉

内閣府知的財産戦略推進事務局の推進している「クールジャパン戦略」を止めるという話ではなく、官民ファンドのクールジャパン機構が統廃合の検討対象になる見通しというニュースです。登記社名は「株式会社海外需要開拓支援機構」なのですね。知らなかった。

失敗事例として記事に名前が挙がっているスパイバー株式会社は「クモ糸の遺伝子を元に人工構造タンパク質の新素材を開発・生産する山形県鶴岡市の慶應義塾大学発ベンチャー」だったそうです。なんか「クールジャパン」という言葉のイメージからだいぶかけ離れてる気がします。出資時のプレスリリースには「日本が強みとする最先端の素材・繊維開発技術を活用したものづくりを世界のファッション・アパレル市場に発信」とありました。

なんというか、うーん……。クールジャパン戦略が始まったころのことをあらためて調べてみたら、国立国会図書館「調査と情報」第804号(2013年10月18日)に「クールジャパン戦略の概要と論点」という記事があったのを見つけました。

当初は、漫画、映画、放送、音楽、ゲーム等のコンテンツ産業を指すことが多かったが、近年では、食、ファッション、地域産品、観光等の産業まで広がっている。

なんか、冒頭に書かれたコレがそもそもの問題の発端なのでは。対象範囲をコンテンツ産業以外にも拡大したことで、軸足がブレた感がある。「クモ糸の遺伝子を元に人工構造タンパク質の新素材」なんて、クールジャパンで扱う事業じゃないと思うんですよ。まあ、そもそも自分で自分のことを「クール」とか言っちゃうのがクソダサいわけですが。「“シャレ”だった」らしいし。

社会

ルビフル大賞2026――日本語表示の標準化に貢献したW3Cがルビ朋賞を受賞&村井純氏スピーチ〈D for Good! by Impress Sustainable Lab.(2026年6月8日)〉

おめでとうございます! というか、ルビ財団すごいな。こんな賞まで設けたんですね。本気だ。

ルビ(ふりがな)の半分は優しさでできている〈シュッパン前夜 編集部(2026年6月12日)〉

ルビは振るにこしたことはないのですが、編集者の立場からすると負担は増えるので悩ましい部分はあります。振る手間、校正する手間を合わせると、1.5~2倍ぐらいは手間が増えるイメージです。

そうなんですよね……確実に手間が増える。かけた手間のぶん売上が増えるかというと、そんな簡単な話でもなかったりするわけで。でも、その「半分の優しさ」によって、地味にかもしれないけど、未来の読者が増えるかもしれない。動画や音声に負けないようにするには、そういう地味な努力が必要なのかもしれません。

中国の文化・観光部、2025年の文化・観光発展統計公報を公表:公共図書館に関する統計も掲載〈カレントアウェアネス・ポータル(2026年6月10日)〉

数字を見て驚いたんですが、中国全土の公共図書館数は3253館なのですね。日本の公共図書館数は3318館(2025年)ですから、日本より少ない。知りませんでした。人口比で言うと10分の1くらいということに。うーむ。

経済

“コンビニ書店化”はなぜ広がらなかったのか 本を売るほど「本離れ」が進む理由:スピン経済の歩き方〈ITmedia ビジネスオンライン(2026年6月10日)〉

書店併設型コンビニ「ローソンマチの本屋さん」に触れないのはなぜ? 一時無書店状態だったところへ出店した立山町役場店の事例もあるのに。ちょうどこの記事の翌日にも、書店のない横浜・緑園にオープンというニュースがありました。地味に増えています。

まあ、とはいえ全国でもまだ30店舗くらいなので、認知されてなくても無理はないですが。もともとスリーエフがやっていたから、神奈川県には多いです。私は、以前よく通っていた道に書店併設型スリーエフがあったのと、実家の自治体には書店併設型ローソンがある(帰省したとき見に行った)ので、たまたま縁があったから知っているのですが。

Authors Guild Looks at Why Author Incomes Are in Decline(オーサーズ・ギルドが著者収入減少の理由を調査)〈Publishers Weekly(2026年6月10日)〉

この調査は「現状」を調べたもので、過去に同様の調査は行っていないようなので、過去からどのように変化しているかは不明であることに注意が必要です。Authors Guildのリリースと調査結果の詳細PDFも確認しましたが、2009年から収入が42%減少という調査(2019年発表)と、今回の調査は別のものです。

講談社がインドに出版社 日系大手初、まず「進撃の巨人」など200作〈日本経済新聞(2026年6月13日)〉

おー、すごい。すでに現地で紙の海賊版が蔓延っていて、正規輸入版との価格差が大きいので、現地生産でコストを下げて海賊版に対抗するとのこと。でもデジタルはやらないのですね。まだ早いという判断なのでしょうか。

紙の高騰に出版社が危機感 共同調達・豪華本に活路〈日本経済新聞(2026年6月13日)〉

豪華本はフィジカル出版の強みを活かす、良い方向性だと思います。廉価版のコンビニコミックとか、ほとんど見かけなくなりました。「安い」メリットは、デジタルで十分なんですよね。

技術

DC3サービス終了のお知らせ〈CELSYS(2026年6月2日)〉

HON.jp Booksでも一時期採用していましたので、もちろん事前にお知らせはもらっていましたが、お知らせが出ていることに気づくのが遅れました。いろいろお世話になったので恨み言を吐くのは避けますが、なんというか……うちみたいな小規模事業者は、結局どこかのプラットフォームに依存せざるを得ないわけなんですよね。そのプラットフォームが先に逝ってしまうと、利用する側ではなんともできないことをあらためて痛感させられました。Google+が終わったときも、似たような喪失感を覚えたなあ。R.I.P.

Amazon implements Story So Far to the Kindle(アマゾンがキンドル「これまでのストーリー」機能を実装)〈Good e-Reader(2026年6月9日)〉

Authors Guildによる懸念表明もなんのその、Kindleにまた新しいAI機能「Story So Far」がリリースされました。日本は対象外です。しかし記事を読んでも、Amazonのプレスリリースを読んでも、「Recaps」との違いがわかりづらい。「Recaps」は既に読んだ本の復習用、「Story So Far」はいま読んでいる本の既読箇所までの復習用、ということみたい。また、「Ask this Book」はアシスタント機能(チャットボット?)で、基本は既読箇所までだけど、本全体に関する質問もできる、と。似たような機能にいちいち違う名前をつけないで欲しいなあ。

【重要】Peatixを装った不審なメッセージ・メールにつきまして|参加者ヘルプ〈Peatix ヘルプ(2026年6月11日)〉

現在進行形で、うちにも次から次へと詐欺メッセージが届いています。参加側でしか使っていないアカウントには来ていないので、主催者だけが狙われているものと思われます。恐らく、イベントページの「主催者へ連絡」機能が悪用されているのでしょう。最初はPeatix公式を装ったメッセージで、今日は参加者を装ったメッセージに変わりました。出版系のイベントでも利用されている方が多いと思いますが、くれぐれもお気を付けください。Peatixには長年お世話になりましたが、この対応次第では次からもう乗り替えざるを得ないかも……どこがいいだろう?

お知らせ

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

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日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
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雑記

明日6月15日の予報は最高気温20度、明後日は29度と乱高下するようです。キツイなあ。みなさんも体調にはくれぐれもお気を付けください。(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 950 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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