「著作権法第30条の4は契約で上書きできるか?」「Googleが英国規制でAI検索記事引用防止機能を提供」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #718(2026年5月31日~6月6日)

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 2026年5月31日~6月6日は「著作権法第30条の4は契約で上書きできるか?」「Googleが英国規制でAI検索記事引用防止機能を提供」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

お知らせ

恒例の出版ニュース特番が今回はなんと3部制! 登壇者9名の豪華布陣で2026年上半期を振り返り&掘り下げます。リアル会場とオンラインのハイブリッドで6月27日開催です!

政治

公共調達の「買いたたき」防止 中小企業14万社、官公庁の発注を判定〈日本経済新聞(2026年5月30日)〉

おお、これは素晴らしい。図書館への書籍納入で値引きを要求されちゃうような状況が、これで変わるかしら?

デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 青少年保護ワーキンググループ(第5回)配布資料〈総務省(2026年6月2日)〉

第一次報告書(案)が公開されています。ざっと目を通しましたが、フィルタリングだけでなく、アプリストアのレーティングも論点になっていたんですね。メルマガ増刊号で小学館「名探偵コナン公式アプリ」が、Google Playでは3+(全年齢)、App Storeでは13+と大きく判断が揺れていることなどを指摘しましたが、まさにそういう話が挙がっていました。

Google、AI検索の引用を拒否可能に 世界で機能提供へ〈日本経済新聞(2026年6月4日)〉

イギリスの規制当局CMA(Competition and Markets Authority)がGoogleに対し、AIの回答でコンテンツがどのように表示されるかをパブリッシャー側で管理できるようにしなさいと指示したそうです。恐らく事前にCMAと協議していたのだと思いますが、CMAの指示と同日、Googleは管理機能のイギリス限定での提供開始と、機能テスト完了後はグローバルに展開しますという予告をしました。

現状では、Google-Extendedをブロックしても学習用には使われないだけなので、AIの回答で参照させないようにするにはGooglebotをブロックするしかありません。しかしそれをやってしまうと、Google検索結果一覧にも出てこなくなります。これが今後は、Google検索結果一覧には従来通り表示されるけど、AIによる概要やAIモードには使われないようにできるようになると。

メディア各社はたいへん好意的に捉えてらっしゃるのですが、これって単にAIの回答結果からの流入がゼロになるだけだと思うのですよね。だから個人的には、むしろデメリットになるような気がするんですけど。「そもそも表示されない」より「表示されるけどあまりクリックされない」ほうがマシじゃないのかな?

ちなみに、イギリスの一部メディアではすでにSearchConsoleでAI検索のパフォーマンスレポートが見られるようになったそうですが、「クエリ」「クリック」「ページ・クエリごとのインプレッション」「CTR」などが表示されないそうです。めっちゃ出し渋ってるな!

関連する動きなのでついでに。これは現時点ではアメリカ限定ですが、クリエイターとパブリッシャー向けの「検索プロフィール」機能が新たにリリースされたそうです。ただし利用条件は「YouTube、Instagram、Xのいずれかで10万人以上、またはTikTokで30万人以上のフォロワーを有していること」と、けっこう厳しい。うちはいちばん多いX(旧Twitter)でも1万未満なので、ぜんぜん無理。

社会

「デジタル教科書不要論」は子どもをどう見ているのか〈豊福晋平 Shimpei Toyofuku(2026年5月31日)〉

俵万智氏の「デジタル教科書不要論」は、なぜ共感されるのか〈豊福晋平 Shimpei Toyofuku(2026年6月1日)〉

佐藤学氏のデジタル教科書批判は何を見落としているのか〈豊福晋平 Shimpei Toyofuku(2026年6月2日)〉

国際大学GLOCOM・主幹研究員・准教授で日本デジタル・シティズンシップ教育研究会JDiCE共同代表理事の豊福晋平氏による、「デジタル教科書不要論」へのカウンターです。私は、けっこう納得できる論考だと思うのですが、デジタル教科書否定派の多くはこの論考を読みもしないだろう、という諦念もあります。

「生成AIの回答、口コミより信頼できる」 買い物の情報源として……博報堂調査〈ITmedia AI+(2026年6月2日)〉

うーわ。いや、口コミがステマに汚染されちゃって信頼度が低くなっているのは同意しますが、だからといって生成AIの出力も似たようなもんですよね。口コミを参照しつつ、客観的評価を装った出力をしているわけですよ。誤字・脱字がなく整った読みやすい文章だから、つい鵜呑みにしがちなのはわかる。でも自分の詳しい分野で確かめると、AIがどれだけホラ吹きかを痛感させられます。世の中の認識は怖い。

ニュース 「AIを信頼する? それとも信用しいない? 」2万人規模調査の結果は?〈AI Watch(2026年6月2日)〉

同日に似たような調査結果が。タイトル「信用しいない」は「信用していない」でしょうかね。根本的には「AIを信じる信じない」というより、AIが参照可能な領域に公開された情報をどこまで信用するか? という話になる気がします。

今年に入って文学賞への応募数が軒並み爆増したと聞いて思い当たる要因が一つしかない…→「”小説が書けない”というだけで小説家になれなかった埋もれた才能たちが芽吹いたんだな」〈Togetter(2026年6月3日)〉

わはは。以前、稲田豊史氏が「匠の100点か、無料の75点か」と表現していたのを思い出しました。AIは、だれでも75点の出力を容易にします。それで十分な領域はそれでいいでしょう。でも創作の領域では、それは単なる「凡庸な作品」です。問題はそれが暴力的なまでの「数」で圧倒してくる点でしょう。

こうなると次は、審査の下読み段階でAIを使って評価するのがスタンダードになりそう。なんらかの評価軸を与えて同条件で判定させるような形にする必要がありそうではありますが。恐らくそういうチューニングになっていると思うのですが、原稿をチェックさせたとき「褒めすぎ」感があるんですよね。

不適切コンテンツへの広告表示で78%が「企業印象悪化」、Momentumが500名対象の意識調査を公開〈Media Innovation(2026年6月4日)〉

数年前にJIAAが同じような調査をしたときは、不快/不適切なメディアに掲載された広告への評価や信頼度が下がるという回答は36.0%でした。調査方法や対象・聞き方も異なるので、単純比較はできませんが。JIAAは逆の「不適切な広告が掲載されたメディアへの印象悪化」についても調べています。不快/不適切な広告を掲載しているメディアへの評価や信頼度が下がるという回答は50.9%でした。つまり、おかしな広告がメディアへ及ぼす悪影響のほうが大きいのですよね。でも、本調査で逆は調べていないようです。広告主のブランドセーフティだけ。なんでや。

漫画は紙とデジタルどっちがいい? 脳活動を測ってみると差が出た〈朝日新聞(2026年6月4日)〉

東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)らの研究グループが

紙推し派で有名な方ですね。記事だけでは詳細がわからないため、東京大学のプレスリリースを確認してみました。「MRI装置内でデジタル画面付きのゴーグルで読む」とあるのですが、それがどういうゴーグルなのか、詳しいことがプレスリリースには書いてありません。

気になって「PLOS ONE」で公開された論文を参照してみたら、被験者は解像度800×600(SVGA)×3(RGB)のゴーグル型ディスプレイを装着し、見開きごとに20秒で自動ページめくりされる環境でマンガを読んだそうです。なんという悪条件。

そして、そういう状況でも紙と電子で正答率に有意差はないという結果が出ています。ただし、電子は紙より反応時間が長く、脳に余分な負荷が生じていて、ストーリーが十分に咀嚼できていなかったと。うん、まあ、なんというか、そんな悪条件で比較されたら、そりゃそういう結果になってもぜんぜん不思議じゃありません。

ちなみに、この論文の掲載誌「PLOS ONE」は「査読を従来の雑誌よりも簡略化し、方法とそこから導かれる結果の解釈が妥当かどうかのみ審査し、中身のインパクトは問わない」方針で運営されているオープンアクセスジャーナルとのことです。なるほど。

それはさておき、私は普段、iPad Pro(12.9インチ・2732×2048ピクセル)でマンガを読んでいます。それでも画像の解像度が低めだと、ルビが潰れていて拡大しても判読が難しい場合があったりします。Kindleストアが日本へ来たころは、1280×800ピクセルが標準でした。そのころ電子化されたマンガは、けっこうキツイです。

つまり、固定レイアウト型であるマンガは、ディスプレイ解像度と画像解像度のどちらかに問題があれば、読みづらくなってしまう性質があるのです。本実験の場合、ディスプレイ解像度の問題がかなり大きいように思います。まあ、そういう意味で「紙媒体のほうが脳活動という面では優れている」という結論にあまり異論はないのですけど。

でも、紙と電子のどちらにも、メリットデメリットがあるわけです。私の場合、電子版の「場所をとらない」「(リフロー型なら)検索できる」というメリットはあまりに大きい。最近は目が弱体化してきたので「文字を任意で大きくできる」のもありがたい。そういったメリットにはまったく目を向けず、デメリットばかりを強調する言説には強い抵抗感を覚えます。

たった3行の設定が変える、「答えを出すAI」から「問い返すAI」で考える余白を【EducAItion Times】〈こどもとIT(2026年6月5日)〉

設定画面で「Claudeへの指示」欄に、「聞かれたことにのみ、簡潔に答えること」「思考が必要な場合、全ての解答を一度に出さずに、試行錯誤するための質問を記述形式で挟むこと」「先回りした提案、過剰な同調を入れないこと」の3つを指示しておくと良いそうです。

確かに、勝手に先回りして「答え」っぽい文章を長文で出力してきたり、もっとこういう方向で掘り下げてみる? みたいな要らん提案をしてきたりというのが邪魔くさいから、あらかじめ制限しておくというのは良いかも。とくにこどもには。

まあ、うちのGeminiの場合、パーソナライズ設定に「外部参照して生成した回答には末尾に必ず出典を付ける」って指示してあるのに、ちょいちょい忘れてたりするのですけどね……「URLは?」って尋ねると謝罪されるんだけど、それで出力してきたURLがぜんぶ捏造だったり。とほほ。

「自作のAI学習・改変を防ぐための契約は?」 日本漫画家協会が回答〈ITmedia AI+(2026年6月5日)〉

非享受目的なら無断で利用できる(AIに学習させられる)という著作権法第30条の4の権利制限規定を、契約で上書きできるという回答です。踏み込んでるなあ……これ、強行規定か否か? は、意見が割れてるんですよね。まだ判例がありませんので。契約でのオーバーライドは不当条項になる可能性を指摘する声もあります。

Manga’s the Hot Category Bringing Cool Kids to the Library(マンガが人気急上昇中!クールな子供たちを図書館へ呼び込む)〈Publishers Weekly(2026年6月5日)〉

Manga fans seem, librarians say, to be more flexible about reading digital vs. print editions.(図書館員によると、マンガファンはデジタル版と紙版のどちらを読むかについて、より柔軟な姿勢を持っているようだ)

というわけで、電子図書館「OverDrive」でもマンガのリクエストが増えているそうです。日本みたいに選書方針でマンガが避けられる、みたいなことはないのかな。

経済

「編集者は書き手を育てるべきか?」で議論に…「マンガ業界は新人を育成してる」と指摘する人が見落とす重大論点〈東洋経済オンライン(2026年6月1日)〉

毎週大量に売れる雑誌の利益があるため、すぐには金にならない新人をデビューさせる「育成コスト」を出版社が難なく負担することができたのだ。

んー? これって、広告がふんだんに掲載されるタイプの雑誌には言えたことですが、マンガ誌には当てはまらない話のような。昔からマンガ誌は「本誌だけだと赤字」という話をよく聞きます。単行本やグッズの販売・アニメ化などで収益化するんですよね。

Why Salt Lake Tribune is gambling one third of revenue by ditching paywall(ソルトレイク・トリビューンが有料購読制を廃止することで収益の3分の1を賭ける理由)〈Press Gazette(2026年6月1日)〉

非営利メディアのビジネスモデル転換について。確かに、記事をウォールドガーデンに置くと、検索に引っかからなくなるしAIに引用もされないから「無料領域で流布される言説が定説になってしまう」問題にぶち当たるんですよね。とくに意見が割れるような事象に関しては、ウォールドガーデンに置くと負けてしまう可能性が高くなるように思います。

日販GHDとトーハンの26年3月期、そろって最終赤字 輸送コスト増〈日本経済新聞(2026年6月1日)〉

29日の決算記者会見で富樫建社長は「取次事業の撤退も検討しなければならない環境が迫っているという危機感を持っている」と述べた。

この日経記事が珍しく全文一般公開されているからか、この日販社長の発言が話題になっているようです。でもこれって、1月に緊急開催された文化通信社特別セミナー「トラック新法成立後の世界 ~滅びの危機か、再生の夜明けか~」で日本出版取次協会・近藤敏貴会長(トーハン)がすでにがっつり語っていることなんですよね。「何年も前から言われていること」という声もありました。そろって最終赤字という事象とセットじゃないと、届いてなかったのかなあ。

「AIを使え」から「あまり使うな」へ、米企業が半年で生成AIの利用制限に動き始めた理由 【生成AI事件簿】トークン消費の急増でROIを問い直す経営層、日本企業の社員がいま備えるべき3つのこと〈JBpress(2026年6月2日)〉

最近、生成AIの料金プランがどこも従量課金制に変わってますよね。そりゃこうなるよね感。単純にコピーを流通させるモデルと違い、問いに対し毎回カスタム回答を返す生成AIには、膨大な計算資源が必要になります。そのため、生成AIはいつまで経っても限界費用がゼロに近づかない(コストが気にならなくなるほど安くならない)のではないか? という仮説を立てています。端的に言えば、フリーミアムが使いづらいのではないでしょうか。Googleには莫大な利益を生む広告システムがあるので、検索に組み込んで無料で利用させてもコストが吸収できると思いますが、他社はそうはいかないでしょう。

出版物貸与権管理センター、使用料徴収額8億4000万円〈新文化オンライン(2026年6月4日)〉

ピークは2021年の約21億円。店舗も激減してるし、あと数年で制度そのものが消滅しそう。端緒となった「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」の設立宣言では「新古書店と呼ばれる大型二次流通店の増加」と「コミック喫茶と称される施設の拡大」が問題視されていたんですよね。つまり、ブックオフとマンガ喫茶をぶっ潰そうと振り上げたはずの拳が方角を変え、なぜか書籍・雑誌にも貸与権を! という振り下ろし方になって生まれた制度です。

技術

Kindle for Windows 11 now available(キンドル・フォー・ウィンドウズ11が利用可能になりました)〈Good e-Reader(2026年6月4日)〉

「Kindle for PC(レガシーKindleアプリ)」は6月30日でサポート終了しますが、その代替アプリがWindowsストアのネイティブアプリとして提供開始されました。ところが現時点で日本からMicrosoft Storeのページへアクセスすると「利用できません」と表示されちゃいます。いわゆる「おま国(お前の国には売ってやらない)」状態……日本語縦書きの対応がまだちゃんとできていないのでしょうか?

お知らせ

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

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日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
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雑記

HON.jpの11期、2025年度の会計報告書暫定版ができました。いま監事の方に確認してもらってる最中です。総会の準備もやらなければ。ちょっといま同時多発的に仕事がてんこ盛りで大変な状況ですが、順番に片付けていくしかありません。負けないぞ!(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 949 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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