「講談社、著者向けポータルサイト提供開始」「EUが生成AIコンテンツの識別表示を義務化」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #726(2026年7月26日~8月1日)

【写真】マックス書店 名駅店(photo by TAKANO Ryou)
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 2026年7月26日~8月1日は「講談社、著者向けポータルサイト提供開始」「EUが生成AIコンテンツの識別表示を義務化」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

政治

【社説】国が日本語学習プログラム創設 選別でなく共生のために〈朝日新聞(2026年7月28日)〉

以前どこかで「これから日本は人口減社会だから、出版市場の縮小は避けられない。それに抗う方策のひとつは『日本語話者を増やすこと』だ」という趣旨のことを書いた記憶があるのですが、掘り出すことができませんでした。なのであらためて記しておくことにします。この記事は日本に来た外国人のための学習支援に関する社説ですが、それ以外にも、海外に設置する日本語学校とか、オンラインで学べる日本語教室などに、もっと力を入れていいと思うのですよね。結果、日本語出版市場の縮小を緩やかにできる、かもしれない。

EU、生成AIコンテンツに識別表示義務 禁止行為なら制裁金63億円〈日本経済新聞(2026年7月31日)〉

うおー! EUはこういう動き素早いですね。主にディープ・フェイク対策のようです。日本でも2018年ごろから総務省でさまざまな議論や検討が行われ、プロ責法が情プラ法に変わるなど法的な対策も行われてはいるのですが、ここまで強い罰則規定を設けるところまでは進んでいないのが現状です。

ちなみにHON.jp News Blogはアイキャッチの一部に画像生成AIを使っていますが、必ずキャプションにモデルとプロンプトを記載するようにしています。以前は実験もかねてStable Diffusionを使ってましたが、Adobe Fireflyが出てから切り替えました。Photoshopとillustratorを使っているので、コンテンツクレデンシャルのメタデータに対応しているはず。

社会

アメリカの作家団体が公開したAI契約条項が、すばらしく現実的だった〈矢澤竜太 / Ryuta Yazawa /LYE(2026年7月25日)〉

「学習」と「参照」がきっちり区別されているのですね。すばらしい。「AIに食わせる」みたいな雑な言い方は、学習と参照の区別ができなくなるので避けたほうが良いと私は考えています。とはいえ、RAGと要約と対話まで分けるのは、ちょっとやりすぎでは? という気もしますが。どれも「参照」ですから。まあ、そういう用途の違いがありますよね? わかってますよ? と交渉の材料にするためには良いかもしれませんが。

総務省、「令和8年版情報通信白書」公開、特集でAI利活用に関する調査や研究動向などを紹介〈INTERNET Watch(2026年7月27日)〉

毎年恒例の。そういえば情報通信白書は生EPUBを配信しているのですよね。平成8年版はまだありませんが、平成7年版をダウンロードして、EPUBに対応したGemini Notebook(旧NotebookLM)に放り込んでみました。画像の図版にしか書いてないこともきっちり読み取ってくれますね。いろいろ捗りそう。

ChatGPTが著名作家の正確な文体模倣を拒否へ。しかし特徴や雰囲気を捉えた文章なら出力可能〈テクノエッジ TechnoEdge(2026年7月29日)〉

文章のスタイルを正確に模倣するのと、同じような特徴の文章にするのがどう違うのかはなかなか想像しにくいところですが、米国の著作権法では、一般的にアイデアの具体的な表現のみを保護し、著者のより抽象的な文体までは保護しません。しかし、AIが模倣して生成した文体が、原作者の作品と「実質的に類似」していると判断される場合には、著作権侵害にあたる可能性があるとのことです。

「アイデアの具体的な表現」という一節がなにがなにやら……「アイデア」は保護対象ではなく、「表現」は保護対象、というのは著作権法の原則です。「米国の著作権法では」とありますが、アイデアが保護されないのは日本の著作権法でも同じです。そして、「文体」はアイデアの範疇にあるとされています。その辺りの説明が、ちょっととっちらかってる印象です。

問題は、アイデアと表現のあいだに境界線を引くのが難しいところです。権利侵害になるかどうかは個々の事例で類似性によって裁判で判断されます。依拠性の話は、AI学習か参照させたかなどの話が絡んできてさらにややこしい。

9月19日は小説家と小説の日〈ふじたにおさむ(2026年7月29日)〉

はい、というわけで、9月19日は世田谷文学館で朗読フェスティバル「NovelRecital」というイベントを開催します。発端は藤谷治氏のnote「小説の朗読・販売イベントは必要だ!」です。こちらが昨年10月20日公開ですから、準備に約1年かかりました。公式サイトの「NovelRecital(ノベルリサイタル)とは?」にも書いたのですが、これは「出版にとってのライブ」とはなにか? の答えのひとつだと私は考えています。まもなく一般入場チケットの販売を開始します。お楽しみに。

‘Genius’ novel sold in six and seven-figure deals at auction pulled over suspected AI use(「天才」小説がオークションで6桁から7桁の価格で落札されたが、AI使用の疑いで取り下げられた)〈The Bookseller(2026年7月31日)〉

「AI使用疑惑で出版取り下げ」の新たな事例です。取り下げられた著者は取材に対し「執筆過程を記録したタイムスタンプ付きの草稿、メモ、日付入りのWhatsAppメッセージも保管している」と主張しているとのこと。AI検出ソフトのスコアが決定的な証拠とされたようで、誤判定の可能性もありそうです。なんだか魔女狩りの様相を呈してきました。

経済

KDDIがAIサービス「Buffmee(バフミー)」発表、出版・専門メディアのコンテンツと連携〈ケータイ Watch(2026年7月28日)〉

こちらのラインアップは「朝日新聞、産経新聞、ケータイ Watch、ダイヤモンド・オンライン、オレンジページ、鉄道ファン、ラーメン Walker、宅建士 合格ナビ」などとのこと。この記事だけだとわかりづらいですが、記者発表会のレポートによると拡張検索生成で参照された回数に応じたレベニューシェアの仕組みになっているようです。7月22日にソフトバンクが発表したプラットフォーム「GaranAI」は新聞社・通信社系のコンテンツが中心でした。なんというか、海外勢を含め同じようなことをいろんなところがバラバラに取り組んでいるなあ、という印象があります。

漫画家の告発が問う出版社の支援体制 講談社は創作環境に配慮〈日本経済新聞(2026年7月28日)〉

初出時のタイトルは「講談社、IP時代に漫画家との信頼再構築 契約・支払い見やすく」でした。いろいろトラブルが発生している中、ちゃんと契約を結ぼう、ちゃんと契約条件を見える化しよう、という動きがあるのは健全だと思います。しかし、こうやって日本もだんだんアメリカ流の契約社会に変わっていくのでしょうか。

大原ケイ氏に以前寄稿いただいたコラム「歴史を扱う本にウソが見つかった時、アメリカの出版社ではどう対処しているのか?」では、「every fact is true, and that its accuracy is the writer’s sole responsibility(著者が述べている事実は全て真実であり、それが正確であるかは著者の全責任となる)」とされていました。

また、「コロナ禍対応で米出版社が迅速に『許諾ガイドライン』を更新できた理由」では、「アメリカの出版契約は grant of rights つまり権利譲渡なのだが、そのぶん出版社には常に author’s best interest つまり著者にとって一番有益になるように出版活動をしなければならない」とされていました。ビジネスですもんね。

技術

画像・PDF・テキスト原稿をブラウザだけでEPUB化できる無料ツール「EPUB工房」を公開しました〈EPUB工房(2026年7月26日)〉

これは面白い。「でんでんコンバーター」や「Romancer」は原稿をサーバーにアップロードして変換するサービスですが、こちらの変換処理はすべて利用者のブラウザ内で完結するそうです。WebAssembly上で動作するPython実行環境(Pyodide)をブラウザ内に読み込む形になっているとのこと。

最近、CSVの分割(スプリッター)で同じようにブラウザ内で完結するサービスを見たことがあったのですが、EPUBでも可能なんですね。「LeME」のようにローカル環境へインストールするアプリもありますが、それはそれで「会社のセキュリティが厳しくてインストールできない」といった声を聞いたこともあったので、うまくニーズを拾っているように思います。

チャットボット(ベータ版)を公開しました〈HON.jp News Blog(2026年7月30日)〉

HON.jp News Blogの過去記事をナレッジベースとし、拡張検索生成(RAG)で回答を返すチャットボットを設置しました。主に自分が過去に書いたことを掘り出しやすくするためです。キーワード検索だとなかなか目当ての記事が見つからないのですよね。とくにうろ覚えの場合に。

プラットフォームはDifyのセルフホスト版と、Geminiを使っています。最新の市場規模を尋ねているのに古い情報を参照してしまう挙動がなかなか直らなかったのですが、試行錯誤の末ようやく「そろそろお知らせしてもいいかな?」くらいの性能になりました。しかしこんどは上半期の情報が無視される……ままなりません。

「痺れるほどにミスを繰り返す」Gemini 3.6 Flashは変わった? 公開から1週間、当初のおバカ回答を今検証する〈ITmedia NEWS(2026年7月28日)〉

上記チャットボットをテストしているとき、出たばかりのGemini 3.6 Flashに設定を切り替えたのですが、それ以前より性能が落ちてるな……と感じていました。プロンプトが悪いのかと思ったら、モデルの問題だったとは。とほほ。いまは少し古いバージョンを設定してあります。

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クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

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日刊出版ニュースまとめ

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雑記

夕方になるとゲリラ豪雨が発生する季節になりました。昔は「夕立」と呼んでいたはずですが、最近はそんな風情のある言い回しもあまり聞かれなくなっています。道が川になるレベルで降りますもんね。むしろ「スコール」と言いたくなる。(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 962 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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