「書協、AI対応の出版契約書ヒナ型公開」「トムソン・ロイター、対ロス事件で控訴審判決も勝訴」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #734(2026年9月27日~10月3日)

【写真】オリオン書房 ノルテ店(photo by TAKANO Ryou)
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2026年9月27日~10月3日は「書協、AI対応の出版契約書ヒナ型公開」「トムソン・ロイター、対ロス事件で控訴審判決も勝訴」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

政治

トラック新法に基づく適正原価、新聞協会など7団体「段階的導入を」…首相に要望書「混乱や物価高招く懸念」〈読売新聞(2026年9月28日)〉

有識者検討会が7月から開催されていて、制度の詳細はまだ議論している途中なのですね。いま要望書提出でも、間に合うのかな?

【下山進=2050年のメディア第88回】出版界『今そこにある危機』 元経産大臣齋藤健は文化安全保障を主張する〈AERA DIGITAL(2026年9月29日)〉

当時読売の社長は渡辺恒雄。田中さんによれば、渡辺さんとの連合軍で、なんとか鶴田委員会に、出版や新聞の意義のわかる作家をいれて、方向をひっくりかえしたいのだと言った。

公取委が再販制度を「当面存置」と判断した裏で、ナベツネが暗躍していたのですか……これは知らなかった。ちなみに私は、再販制度が「当面存置」となったことにより、出版業界が抜本的な改革を行う機を逃したと思っています。

後知恵のIFですが、まだ書店に体力が残っていたこのタイミングで時限再販本格導入だけでもやっておけば……と思わずにはいられません。

とはいえ、1992年に時限再販を本格導入した音楽CDショップやレンタルの現在を見ると……というのはあります。音楽産業はその代わり、ライブイベントがめちゃくちゃ伸びてますけどね。

声優 津田健次郎の生成AI訴訟、東京地裁が棄却 一方で「声もパブリシティ権の保護対象」と認める〈KAI-YOU(2026年9月30日)〉

棄却理由は「もう削除されているから」なので、それはもう致し方ないことでしょう。それでも「声が保護対象」と司法に認められたのは、非常に大きいと思います。

政府系の海外調査って検証されてます?=仏出版事情を例に〈Kataho@フランクフルト(2026年9月30日)〉

文化庁が公開したデロイトトーマツの調査レポートの脚注URLに ?utm_source=chatgpt.com という記述が残っているとの指摘です。なめられてますねぇ……いや、ChatGPT使うなって話ではなく、そういう記述を残したまま政府機関へ納品してしまったうえ、そのまま公開しちゃう政府機関のチェック体制の甘さ、という話です。少なくとも400万円の仕事じゃない。雑。

AAP, Authors Guild Applaud Decision in ROSS Copyright Infringement Case(AAPと作家組合、ロス著作権侵害訴訟の判決を称賛)〈Publishers Weekly(2026年10月2日)〉

Thomson ReutersがAI企業のROSS Intelligenceを訴えた裁判で、地裁に続き控訴審でも「フェアユースではない」という判断でThomson Reutersが勝利。「画期的な判決」みたいな見出しを付けているメディアもありますが、基本的には地裁と同じ判断です。弁護士・福井健策氏による地裁判決時の解説はこちら。ちなみに、ROSS Intelligenceはもう倒産しているのですね。コテンパンだ。

Third Circuit affirms in Thomson Reuters v. ROSS: The Court Gets Merger Wrong and Does a Disservice to Fair Use(第3巡回区控訴裁判所はトムソン・ロイター対ロス事件で判決を支持した。同裁判所はマージ(理論)の判断を誤り、フェアユースに不利益を与えた)〈Authors Alliance(2026年10月2日)〉

この判決、AAPとAuthors Guildは称賛していますが、「公共の利益」がモットーの作家団体Authors Allianceは「マージ理論(the merger doctrine)」の判断を誤っていると批判しています。日本の著作権法で言えば「ありふれた表現」として創作性が否定され著作物ではないと判断されるケース、ということになるでしょうか。面白い。これは専門家でも意見が割れそう。アイデアと表現の境界線はほんとうに難しい。

Google「AI要約」訴訟、米メディアの訴え棄却 連邦地裁〈日本経済新聞(2026年10月2日)〉

こちらはメディア側の敗訴。そもそも「両者の間で明確な合意や契約が存在せず、反トラスト法違反の要件を満たさない」という判断です。Googleがメディアのウェブサイトへトラフィックを送り込んでいたのも勝手だし、そのトラフィックがGoogleの施策変更で減ってしまうのも勝手だ、ということになるでしょうか。

社会

課長にするなら残る|柏書房取締役/元筑摩書房代表取締役社長 菊池明郎さん(出版フィールドワークプロジェクト vol.13)〈出版フィールドワークプロジェクト(2026年9月28日)〉

菊池 一つは出版業界だけじゃなくて、訪問販売そのものが問題になった豊田商事事件(*)の影響ですね。訪問販売に対して規制がものすごく厳しくなって、この業界の月販会社もどんどんダメになっていった。

おお、証言が出てきた。書店の外商――全集や教材などの戸別訪問販売がいまはほとんど行われなくなっている理由は、恐らく割賦販売法や訪問販売法(現・特商法)による規制強化の影響であると私は推測していたのですが、どうやら合ってたみたいですね。

図書館に年1,317億円。1冊貸すのにいくらかかっているか〈自治体データビジュアライズ(2026年10月2日)〉

これ、無粋を承知の上であえて指摘すると、たとえば札幌市図書・情報館みたいに「貸出しない図書館」の場合、ゼロで除算することになっちゃいますよね。貸出だけが図書館の価値じゃない。まあ、それについては本文に書かれてますが、逆にその部分を読まずに批判している人も散見され、うーん……という気分に。

経済

本にも「業務用」が必要になる?──日販×Anthropic問題から考える「本の値段」の未来〈フォレスト出版(2026年9月26日)〉

こういう「同じ商品でも値段が違う」というのは、データベースの有償提供では当然の考え方だと、以前の職場で叩き込まれたことを思い出しました。通常1ユーザー=1ライセンスでいくら、なのですが、利用目的と影響範囲次第で提供価格が変わります、と。もう20年くらい前の話ですが。

「少年ジャンプ+」が編集者 林士平との業務委託終了を発表 『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』などを担当〈KAI-YOU(2026年9月30日)〉

集英社「少年ジャンプ+」のリリースは「(業務委託を)終了させました」とやや不穏な印象を与える表現になっています。林氏側の発表は、現在連載中の4作品は各漫画家と直接契約を結ぶことで編集業務を継続するとのこと。なにがあったんだろう?

新聞記事の情報を整理する生成AI「ELNET AI」が10月1日提供開始〈AI Watch(2026年9月30日)〉

クリッピングとニュース記事検索サービスの「ELNET」に拡張検索生成が搭載です。記事の利用度に応じた対価を新聞社・通信社に還元し、もちろん学習用途には使わないとのこと。ど本命がど正攻法できた! という印象です。問題はどこのモデルを使うかなのですが、プレスリリースにも記述はありませんでした。想像するに、NTTが開発した大規模言語モデル「tsuzumi 2」でしょうか? 昨年10月以降は新情報がないところがいささか不安……。

メディアドゥ ネットギャリー社を売却 発売前ゲラWeb閲覧「ネットギャリー」は継続〈The Bunka News デジタル(2026年10月1日)〉

最初にメディアドゥのプレスリリースを見たとき、日本語版「NetGalley」の運営はどうするんだろう?(リリースには記述がない)と思ったのですが、そこをしっかり取材している文化通信素晴らしい。

関係性開示:メディアドゥには、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。しかし、本欄のコメント記述は筆者の自由意志であり、対価を伴ったものではありません。忖度もしていません。

紙の本が消える前に 書店、流通、製本業が取るべき進路を3氏に聞く〈朝日新聞(2026年10月2日)〉

あくまで民間の契約ですから、その気になれば再販契約はやめられます。

出版社側の立場としては、再販契約を結んだままでもやめられます。定価ではなく小売希望価格で提供したいなら、再販契約書がヒナ型通りなら、出版社側が「定価」と表示しなければいいだけ……と私も思っていたのですが、実際にやってみるとそれほど単純な話ではありませんでした。

実は、システムが対応していないというケースがあります。HON.jp Booksレーベルの紙本は、実験的に小売希望価格【非再販】表示にしています。その場合、日本図書コード管理センターの手引きでは価格コードを「00000」の5桁で表記するルールになっています。

そのルールに従ったのに、某取次から「価格コード00000の二段バーコードだと物流システムが対応できない」と扱いを断られてしまったのです。2025年のことなので、わりと最近の話です。定価拘束以外の本が存在することを想定したシステムになっていないようなんですね。トホホ。

「価格コードだけの問題なら00000を小売希望価格に変更したバーコードのシールを貼ればいいですか?」って確認を入れたら応答がなくなったので、もしかしたら断り文句だったかもしれませんが。また、他の取次には打診していないので、その某取次のシステムだけの問題かもしれません。でも「定価表記じゃないと扱ってもらえない」って事例があったことは事実です。

書協 AI関連事項対応の出版契約書ヒナ型を公開 将来の新技術も念頭に〈The Bunka News デジタル(2026年10月2日)〉

新契約書ヒナ型と解説を確認しましたが、3月に準備開始と報道されたときに私が危惧していたような、著作者にだけ一方的な義務を課すような形ではないようです。甲乙どちらにも義務がある。24条には手を入れなかった。まあ、これなら妥当なのでは。

技術

「タイムズカー」不正アクセス、免許証画像など約160万件が漏洩〈日経クロステック(2026年9月30日)〉

完全にジャンル違いのニュースですが、免許証画像の漏洩って相当ヤバイので、他山の石として。先週はほとんど毎日のように不正アクセスのニュースが流れていて、佐川急便やヤマト運輸などもやられています。ほんと明日は我が身ですねぇ……。

AI時代のコンテンツマーケ! 現場の「一次情報」「独自の経験」から最高のコンテンツを作る方法【SEOまとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2026年10月2日)〉

「(生成AIは)同じ質問でもおすすめ商品がコロコロ変わる」とか「APIでのテストは『実際の画面』とは異なる」あたりは頭に入れておきたいところ。つまり、1回だけのテスト結果とか、APIでのテスト結果は、参考にしちゃいけないってことです。まあ、生成AIは短期間でバージョンアップしてアルゴリズムもコロコロ変わりますから、振り回されないようにしたい。「こういう出力が生成AIっぽい」とか、ほんといましか通用しないバッドティップスだと思います。

お知らせ

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

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日刊出版ニュースまとめ

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雑記

10月4日(日)は文学フリマ福岡です。移動含め朝から夜までかかります。そう、メルマガ原稿の危機です。なのでいまこれは10月3日(土)の夜に書いています。まだ明日の準備も終わっていません。ひえー(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 973 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事(出版産業研究部会 部会長) / 明星大学 デジタル出版論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / 著書『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』(2026年・HON.jp Books)、『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)、共著『電子書籍ビジネス調査報告書2026』(インプレス)など。

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