「書協、生成AI対応契約書ヒナ型を準備」「NotebookLMに他人の著作物をアップするのは合法?」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #709(2026年3月29日~4月4日)

【写真】ジュンク堂書店 名古屋店(photo by TAKANO Ryou)
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 2026年3月29日~4月4日は「書協、生成AI対応契約書ヒナ型を準備」「NotebookLMに他人の著作物をアップするのは合法?」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

お知らせ

2026年5月4日(月)開催の文学フリマ東京42に「HON.jp Books」として出店します。ブース位置は南3-4ホール こ-47〜48です。出版創作イベント「NovelJam」の合本などを販売する予定です。

政治

共産・社民系が清瀬市長当選 自公系現職は「だめ」、図書館存続訴え〈朝日新聞(2026年3月30日)〉

これはすごい。問答無用の市政に対し、市民がノーを突きつけた形に。閉館の時点で蔵書はどうなったんだろう? とか、指定管理者での運用に切り替えたばかりだけど、いまから3館増やす場合の運営体制はどうするんだろう? などなど、細かな事情がわからないからなんとも言えませんが、いろいろ大変そう。でも、そういう道を市民が選んだのです。素晴らしき民主主義。

旧図書館、解体を中止 渋谷氏、新市長の公約配慮 清瀬 /東京〈毎日新聞(2026年4月3日)〉

続報。うわ、もう内装撤去まで終わってる段階まで進んでたんですね……その状態からリノベーションしなきゃいけないのか。解体業者への違約金もあるだろうし、いろいろ大変です。でも、そういう道を市民が選んだのです。素晴らしき民主主義。

本の在庫管理にICタグ、書店に補助金…万引き防止にも一役〈読売新聞(2026年3月31日)〉

出版業界ニュースまとめ」の古幡瑞穂氏が朝イチでこの記事を見たときは、鍵付きハードペイウォールで「ICタグ 書店に補助金…出版社支援なく普及課題」というタイトルだったそうです。印刷版紙面も同タイトルだった模様。一般公開にしてくれたのはありがたいですし、ウェブ向けには違うタイトルにするのも最近ではふつうにあることですからべつに良いんですけど、ニュースまとめ人としては公開後に変えないで欲しいとは思います。

さておき、これは3月31日に開催された経済産業省「第3回 出版産業における返品削減研究会」のとりまとめ案が3月30日に判明したというニュース。つまりこの報道は恐らく、資料を先に配布されている委員の誰かからとりまとめ案を先に入手して書かれた、ということになるのでしょう。研究会開催当日の朝にこういう記事が出ることの意味について考えてしまいます。研究会の議論にも影響しますからね。

そういう意味で「出版社支援なく普及課題」という見出しには、「出版社を支援してほしい」という読売新聞社の要望が強く出ているなあ、と感じました。良いんですよ? ポジショントークしても。でも、グループ傘下に中央公論新社がいる当事者であると、関係性開示もすべきじゃないかしら。

社会

Facebookの「コミュニティノート」拡大に監督委員会が苦言、実効性に疑問〈CNET Japan(2026年3月30日)〉

X(旧Twitter)のコミュニティノート(イーロン・マスク氏が買収する以前から「バードウォッチ」の名称で試験運用されていた)は、私は高く評価しています。誤情報への対策として効果的という研究結果もすでに出ています。

でもMeta(FacebookやInstagram)のコミュニティノートって、まだアメリカだけでテストしてるのですよね。だから私はまだ一度も見たことがありませんし、実際にどうやって表示されるのかすら知りません。というか、もういきなり「ファクトチェックを廃止してコミュニティーノート方式にします」って発表でしたから、当初から「コスト削減のための言い訳」にしか見えなかったんですよね。

ちゃんとやるつもりなら、ファクトチェック機関への依頼をいきなり止めたりしないでしょう。当時、提携していたファクトチェック機関は「寝耳に水」だったそうですから。コミュニティノート方式への移行期間を設けていない時点でただの詭弁。調べてみたら、Meta自身が「ファクトチェック活動を支援するプログラムに1億ドル以上を拠出してきた」と報告していた(そして現在では消えている)ページを見つけました。

ネット中傷対策、透明性に差 Xなど4社回答せず―情プラ法1年でアンケート・時事通信〈時事ドットコム(2026年4月1日)〉

X、掲示板「爆サイ」の湘南西武ホーム、動画共有「ニコニコ」のドワンゴは複数回連絡したが、返答がなかった。

おおっと、X(旧Twitter)や爆サイはともかく(こういうのに返答しなくてもおかしくないという意味で)、ドワンゴはまずいんじゃないですか? 上場企業の子会社ですし。株主から突かれそう。

関係性開示:ドワンゴ(旧ブックウォーカー)には、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。しかし、本欄のコメント記述は筆者の自由意志であり、対価を伴ったものではありません。忖度もしていません。

NotebookLMに他人の著作物をアップロードしたら著作権侵害?〈STORIA法律事務所(2026年4月1日)〉

そうか、こうやって整理されると理解しやすいですね……確かに、企業や自治体は「私的使用目的」ではないから、著作権法第30条の4(非享受目的の利用)の権利制限じゃないとクリアできません。つまり、企業や自治体での利用は、自前の資料か著作権の発生しない事実やデータに限る必要があることになります。実際の現場でそんな運用してるかしら? あるいは、日本複製権センターとの契約でクリアできるかしら?

Claude Codeのソースコードが流出…アンソロピックは著作権でこれまでと反対の立場に〈Business Insider Japan(2026年4月3日)〉

Anthropicはこれまで他人の著作物を無断で生成AIの開発に利用してきたわけですが、こんどは逆に自社の著作権を盾に、自分自身が流出してしまったソースコードの削除申請を行っている、という皮肉たっぷりの記事。「因果応報」とか「身から出た錆」みたいな言葉が思い浮かんでしまいました。

作家・綾辻行人さんの作品装う“偽本”がAmazonに出現 本人が注意喚起 「誰かがAIで作ったようです」〈ITmedia AI+(2026年4月3日)〉

以前、吉本ばなな氏を詐称する本が出版されていた事件がありましたが、それとほぼ同じような事件が再発生しました。ただ、記事が出た日の夜にはもう、検索しても出てこなかったです。本稿執筆時点でも同様。もう消えちゃったみたい。

ちなみに吉本ばなな氏の事件当時、これは著作権法121条(著作者名詐称罪)が適用されるはずでは? と疑問を投げかけ、ポッドキャストでも話題にしましたし、その書き起こし記事でも問いかけたのですが、いまだに謎が解けません。ご存じの方がいたら教えてください。

経済

出版業界団体、生成AI使用の指針作成へ 作家との契約書にも明記〈日本経済新聞(2026年3月29日)〉

先にフォローしておくと、指針(ガイドライン)の策定については良いと思います。総務省・経産省連名で出ている「AI事業者ガイドライン」にはAI利用者向けの指針もありますので、ぜひ参考にしてください。そのうえで、契約書ヒナ型の改訂には「待った」と言いたい。記事には以下のような記述があります。

ネット上の情報を学習して出力する生成AIの特性をふまえ、本の原稿が著者とは別の人物の権利を侵害していないことを契約書で保証する。

著者の立場で考えたとき、これは最大級に警戒すべき事態だと脳内でアラートが鳴りました。そもそも現状のヒナ型(PDF)ですでに著者には「本著作物が第三者の著作権、肖像権その他いかなる権利をも侵害しないこと(略)を保証する」ことが求められています。第15条(内容についての保証) です。

生成AIが登場したからといって、このうえなにが追加で必要なのか? と強い疑問があります。たとえば「AIを使っている場合は必ず事前に出版社へその旨を告知すること」みたいな? それはどこまでが「AIを使った」ことになる? なんかもう「ケガレを避ける」レベルの話になってません?

これは一般論ですが、契約書の文面を確定するプロセスって条件闘争なんですよ。少しでも自分たちに有利な形にしようとするせめぎ合いが起きます。私も、たった一言の変更を認める・認めないで超大手企業の法務部門と壮絶なバトルを何度かやったことがあります(もう20年くらい前の話ですが)。

まあ、これはヒナ型なので、そのまま使わず交渉して内容を修正すればいい話ではあります。ただ、大半がいち個人である著者って、組織で対抗できる出版社に比べたら圧倒的に不利なんですよ。要らない条項がヒナ型に入っちゃってると、いざ契約書締結という段階で毎回「ここは削って」みたいな交渉が発生することになるわけです。それ、本ができる前に疲弊しちゃいますぜ。

書協 生成AI関連WG発足 出版契約書ヒナ型の一部改訂へ〈The Bunka News デジタル(2026年3月31日)〉

上記の日経よりもう少し詳しい記事が後追いで出ました。さすが業界紙。ヒナ型は前述の第15条以外に、第16条と第24条にも手を入れる予定とのことです。どう変わるかは書かれていないので、想像してみます。

第16条は二次的利用の委任ですから、学習用データあるいは参照用データとして出版社からAI開発事業者に著作物を提供しやすくすることが目的でしょう。いちいち著者へ許諾をとらなくてもいいような条項を入れる可能性が考えられます。

第24条は第三者による著作権侵害があった際の対応ですから、なにか問題があったとき出版社が代理人として戦えるようにするような条項に変える感じでしょう。出版社側にも相応の義務を追加しないとバランスが合わないから、これは妥当かも。

いずれにしても「代わりに交渉してくれるならありがたい」と思う著者もいれば、「著者の権利を奪うつもりか」と憤る著者もいるでしょう。さて著作者団体側がどう出るか。私は警鐘を鳴らしておきます。

技術

Exposé of parasite SEO firm Clickout Media removed from Google(寄生的なSEO会社チェックアウト・メディアの暴露記事がグーグルから削除されました)〈Press Gazette(2026年3月30日)〉

事実無根のDMCA削除申請にGoogleが応じてしまったという事件。記事がアップデートされていて、幸い1日で復旧した旨が報告されています。よかった! 以前、Googleは年間35億件の削除申請を受けているという報道もあったので、多少のミスもあるのだろうとは思います。ただ今回の件は、Lumenへのリンクがあったので確認してみましたが、これで通っちゃうのかよ! と驚くような雑な申請でした。ザル審査か。怖い怖い。

記事や広告の発信元を読者が識別 OP技術研究組合、実証実験に成功〈朝日新聞(2026年3月31日)〉

Originator Profile(OP)技術研究組合のプレスリリースを読んでちょっと驚いたのですが、単にメディアの発信者情報を証明するだけでなく、広告取引における透明化の実証も行っていたんですね。「実際の広告配信システム(DSP/SSP)を経由し、OP技術が付与された広告バナーを配信」したそうです。

あと、国際標準化に向けた動きも進んでいて、W3Cの年次総会「W3C TPAC 2025」で技術仕様を世界に向けて公開・発表したそうです。W3Cでの議論では「C2PAとの連携」みたいな話も出ていたようです。社会実装される日が楽しみです。

オールドメディアがAIを活用して何が起きたか、合成オーディエンスへの壁打ち、記事は読者ごとに変化する時代に 【生成AI事件簿】多様な読者ペルソナを構築、新刊のタイトルや装丁をシミュレーションする出版社まで登場〈JBpress(2026年4月1日)〉

以前私は「AIリサーチの学術研究、購買意向調査で『精度90%』到達」という日経報道を見て、短絡的に「悪く言えば調査結果の捏造」と否定的な見解を述べたのですが、そうか、AIによる仮想オーディエンスとして社内検討用に用いるのですね……そういう方向での想像が及んでいなかった自分が恥ずかしい。反省します。

お知らせ

新刊について

新刊『ぽっとら Podcast Transcription vol.1 ~ 詐欺広告や不快広告・金融検閲・生成AIと著作権・巨大IT依存問題など、激変する出版界の広範な論点を深掘りしてみた。』を刊行しました。ポッドキャストファーストという試みです。今後も続けたい。

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日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

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雑記

桜が咲き始めた……と思ったら雨続きで、気づいたらもうかなり散ってしまってました。とほほ。

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 937 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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