「2026年出版展望」「Meta詐欺広告問題をスローニュースが追求」「文化庁著作権普及啓発プロジェクト」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #700(2026年1月25日~1月31日)

【写真】矢口書店(photo by TAKANO Ryou)
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 2026年1月25日~1月31日は「2026年の出版展望」「Meta詐欺広告問題をスローニュースが追求」「文化庁著作権普及啓発プロジェクト」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

総合

2026年の“出版”はどうなるか?〈HON.jp News Blog(2026年1月30日)〉

 やっと書けました。例年にも増して大苦戦です。元旦から書き始めたので、ほぼ1カ月がかり。もう1年の12分の1が終わってしまいました。約2万4000字ありますが、無駄に膨らませたりはしていないつもりです。じっくりご覧いただけたら幸い。

政治

漫画・アニメ・グッズの海賊版被害、昨年10兆4000億円…経産省が対策強化へ〈読売新聞(2026年1月26日)〉

 電子書籍系の団体であるABJは、海賊版サイトで読まれた数×平均単価を「被害額」と呼ぶのを避けて「タダ読み」と表現しているのですが、経産省、CODA、そしてメディアは、そういう配慮なしに「被害額」と言ってしまうのだなあ……と思ってしまいました。まあ、経産省が対策強化するというのは良いことではありますが。

世界最大規模のマンガ海賊版サイトが閉鎖 日本の業界団体が告発〈朝日新聞(2026年1月29日)〉

世界最大の漫画海賊版サイト「BATO.TO」運営者を中国で刑事摘発〈一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(2026年1月29日)〉

 菊池健氏が先週の「マンガ業界Newsまとめ」で海外の報道を先に拾っていましたが、CODAの発表を受けて国内メディアでも報道されました。改めて、おめでとうございます!

なお、NTTソルマーレが全米市場向けに展開する電子書籍ストア「MangaPlaza」においては、「BATO.TO」の閉鎖直後から1日あたりの売上額が約2倍に伸長したとの報告を受けています。

 倍増とはすごい。「漫画村」が潰れた後、電子コミック市場が急拡大したのを思い出します。

特別講義「伊東敦『苦闘15年。集英社担当者が語るマンガ海賊版の歴史と対策』」を開催〈明治大学(2026年1月28日)〉

 そんな動きがあったタイミングでちょうど、海賊版対策に尽力している集英社・伊東敦氏による特別講義のレポートが公開されましたのでピックアップしておきます。

SNS詐欺広告対策、台湾の規制に学べ 米テックへの「お願い」効かず〈日本経済新聞(2026年1月27日)〉

 この「台湾の規制に学べ」というのは、広告主の身元確認と開示を罰則付きで義務付けした法律のことです。以前、この規制導入により詐欺広告を一掃できたというオードリー・タン氏のインタビュー記事がありました。自由民主党のプロジェクトチームもヒアリングしています。Metaには政治家も怒ってるみたいですから、規制導入はもう既定路線という印象です。

「日本はカモにされていた」Metaがいかにして日本政府を欺いていたのか、その「工作」を明らかにする【プラットフォーマーに問う①】〈SlowNews | スローニュース(2026年1月27日)〉

 前掲の日経新聞は、Metaに関するロイターのスクープについて「筆者は現時点で『裏』を取れていない」と書いていますが、スローニュースはそのスクープを書いたロイターの記者にさっさと独占インタビューしています。やるなあ。スローと言いつつ動きが速い。今後もこういう動きを続けてくれることを期待して、メンバーシップに入ることにしました。

文化庁による著作権普及啓発プロジェクト「著作権について知っておきたい大切なこと」始動~クリエイターの思い、弁護士解説動画、Q&A等の発信~〈文化庁(2026年1月28日)〉

 この事業のまとめサイト「著作権について知っておきたい大切なこと」が、めちゃくちゃバズってました。二次創作について「ネットに公開するなら原則として『許可を取ることが必要』です」「しかし、沈黙は『公認』ではありません」などと、従来より踏み込んだ書き方をしている点がいろいろな方のツボを刺激したっぽいです。

文化庁、初めて「二次創作」の著作権問題を解説 異例の対応にSNS注目…「グレーゾーン」に踏み込んだ理由は〈J-CAST ニュース(2026年1月29日)〉

 そのバズった件について、文化庁の方にコメントをとってます。そうか、初めてでしたか。審議会とか委員会なんかではもう当たり前のように話題になっていたから、むしろちょっと意外でした。

 個人的に、この「著作権について知っておきたい大切なこと」に書かれていることのポイントは「許可を取ることが必要」の前で「原則として」と留保している点だと思います。原則はそうなんだけど「許可を求められても困る」という権利者の声もあるわけで。

 実際、いちいち許諾を求められたら実務上手間がかかって仕方ないというのもあります。だから「まずは『クリエイターがガイドライン(利用ルール)を出しているか』を確認してみましょう」という形にしているのでしょう。

 ガイドラインって、事前許諾なんですよね。あらかじめ、ここまでの範囲だったら利用してもいいですよと許諾している「パブリック・ライセンス」なのです。代表例はクリエイティブ・コモンズ。ただ、その「ここまでの範囲」をギリギリ踏み越えないラインを探ろうと綱渡りしちゃう人もいるから、話がややこしくなるわけですが。

文化庁 著作権普及啓発プロジェクト 畑健二郎が創作活動における権利を考える〈コミックナタリー(2026年1月28日)〉

 こちらはそのプロジェクトのうちのひとつ、クリエイターとのコラボ企画です。権利者サイドの「心境」は人によって異なる(怒る人もいる)のでさておき、著作権や商標権など創作の実務に関わることについて、弁護士の方がきっちり答えてくれているのが参考になると思います。

MCF、アップルとグーグルの新規約は「スマホ新法に違反」。改善求める意見書を公表〈ケータイ Watch(2026年1月30日)〉

 確かに、アプリから外部ページへ遷移したユーザーの追跡を義務付けてすべての取引内容を報告させる(そして手数料を課す)というのは、ちょっとおかしくないですか? と言いたくなりますね。

 ところで、この意見書を公表したモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)ってどういう企業が加盟しているんだろう? と思い会員社一覧を確認したら、「グーグル合同会社」があるのに気づいて驚愕しました。当事者が会員社にいるのに、こういう意見書を出せるのですね。アップル(もしくはiTunes)は入ってないみたいですが。

【画像】MCF会員社一覧より

社会

国公私立大学図書館協力委員会、「図書館等公衆送信サービス」先行実施館インタビュー記事を公開〈カレントアウェアネス・ポータル(2026年1月26日)〉

 遠隔複写が法改正で公衆送信(PDF)に対応した件のその後について。インタビューから引用します。

東京本館だけで1日20件前後、関西館の方が多く、子ども図書館との合計で1日50件ほどです。最近では月1,000件を超える申し込みがあります。

 私が思っていたより断然多いですね……おみそれしました。念のため調べてみたら、令和6年度(つまりPDF対応が始まる前)の遠隔複写処理件数は25万件でした。紙の複写依頼の5%くらいといったところ。公衆送信の補償金は最低でも1件500円なので、SARLIBに入ってくる補償金は年間600万円から。私が思っていたよりは多いけど、これで制度として成り立つのかなあ?

2026年のBluesky予測〈Bluesky(2026年1月28日)〉

3. Blueskyで過ごす時間は減る(そして、ここで見つけた面白い活動をする時間が増える)

 面白い予想。Googleが「自社のウェブサイトにユーザーが留まる時間をできるだけ短くすることを目標にしている会社は、世界中でもおそらくGoogleだけでしょう」と自負しているのを思い出しました。Blueskyの運営も同じような考えを持っているということですよね。

 ちなみに、まだ「BackRub」という名称だった検索エンジン(のちのGoogle)をポータルサイトのエキサイトへ売り込みにいったら、あまりに優秀すぎてユーザーの滞在時間が短くなるからダメだと言われた創業期のエピソードが、私は大好きです。スティーブン・レヴィ『グーグル ネット覇者の真実』で明かされています。

 しかし改めて考えてみると、いまのGoogle検索に出てくる「強調スニペット」や「ナレッジパネル」や「AIによる概要」や「AIモード」って、その「自社のウェブサイトにユーザーが留まる時間をできるだけ短くすること」とは逆行しているような気がするんですけどね。

電子図書館の導入自治体5年で4倍 長野は全域、400人の村も2.5万冊〈日本経済新聞(2026年1月30日)〉

 日本経済新聞が、電流協の発表に合わせてかなり気合いの入った特集を組んでいます。ただ、ちょっと引っかかってしまった記述がありました。

電子書籍は再販制度の対象外で、出版社が自由に価格設定できる。

 えーっと、前半の「電子書籍は再販制度の対象外」も後半の「出版社が自由に価格設定できる」も、それぞれ単独では正しいのですが、文の前後が繋がっていません。まるで「再販制度の対象外」だから「自由に価格設定できる」ように読めてしまいますが、そうではありません。

 そもそも「メーカー」「小売店」に定価販売を強制するのは独占禁止法違反です。ところが、書籍・雑誌など一部の品目は例外的にメーカーによる価格拘束が認められています。だから再販売価格維持契約(再販制度)を結ぶことで、出版社は書店に対し定価販売が強制できるのです。

 ところが「電子書籍は再販制度の対象外」なので、本来なら「出版社が販売店に対し定価販売を強制できない」あるいは「電子図書館サービス事業者は自由に価格設定できる」と続くのが正しい文章でしょう。記事にある「紙の本の2〜3倍高いのが相場」というのは、電子書籍の場合、定価ではなくメーカー希望小売価格なのです。

 また、再販制度の対象品目である紙の書籍でも、出版社自身が販売する際の価格設定は自由です。実際、出版社直販(ブックフェアや著者向け販売など)では値引きが行われることもあります。だから「出版社が自由に価格設定できる」も、決して間違ってはいません。

 でも「電子書籍は再販制度の対象外」と「出版社が自由に価格設定できる」を繋げて書いてしまうと、誤解を招いてしまうことを危惧します。記事を読んですぐ、日経のお問い合わせフォームに指摘を送っていますが、本稿執筆時点では修正されていません。

スマホの画面を埋め尽くす「おかしな広告」の《儲けのからくり》…裏で起こっている「取り引き」(週刊現代)〈マネー現代 | 講談社(2026年1月30日)〉

日本は「詐欺広告」天国…世界中からカモにされる理由(週刊現代)〈マネー現代 | 講談社(2026年1月30日)〉

 前編はユーザーが騙される「詐欺広告」の話なのに、後編に入ったら急に広告主から広告費を詐取するアドフラウドやMFAの話が混入して、でも最後のページでは「詐欺広告」に騙されないよう気をつけましょうという結論。なんか構成がおかしい……というか、煙に巻かれた印象があります。ユーザーが騙される話と、広告主が騙される話はベクトルが違うので、混ぜないほうがいいのでは。

経済

2025年出版市場(紙+電子)は1兆5462億円で前年比1.6%減、コロナ前の2019年とほぼ同規模 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2026年1月26日)〉

 出ました。ほぼ年末に推計したとおりになりました。紙の「1兆円割れ」や「50年前と同水準」は、本文には書きましたが、タイトルにはあえて入れませんでした。キャッチーだから、入れたほうが読まれるのはわかっていたんですけどね。JEPAセミナーでも言いましたが、インフレ率を考慮したらいまさらな話ですから。グラフの画像はいつもどおり「ご自由にご利用ください」です。

ネット広告に「楽天ショック」 AIで制作・運用、RIZAPは8割内製〈日本経済新聞(2026年1月28日)〉

 生成AIの進化によりクリエイティブの内製化(つまり広告主自身による制作)が急激に進んでいるようです。正直、最近のウェブ広告は AI Slop が進んでいるようにも感じています。AI出力の絵って、パッと見た感じだと厚塗りでリッチな表現なんですが、細部がダメな場合が多いから、逆に手を抜いてるように思えちゃうんですよね。

文化通信社 トラック新法で特別セミナー 近藤取協会長、取引条件変更など訴える 物流・小売側から改善策も〈The Bunka News デジタル(2026年1月30日)〉

 デジタル印刷活用推進共同宣言の記者発表会を取材したとき、取協の近藤会長(トーハン)が「直接経費が250億円くらい上がる」「書店の返品運賃も100億円上がる」と発言していた(そのときは口頭だけで資料はない)のですが、その発言を拾ったメディア報道が見つからなくて困惑していました。

 このセミナーではしっかり資料も公開したうえで、苦境を訴えていたようです(こちらは私は取材していない)。取次事業からの撤退か、出版流通の取引構造を大きく変えての事業継続か、出版社へ二択を迫っているあたりに、相当な覚悟を感じます。ただ、2026年展望にも書いたのですが、再販制度や委託販売を堅持したまま、抜本的な改革は可能なのでしょうか?

技術

グーグル、AI概要への情報利用をサイト側が「拒否」できる機能を検討へ〈CNET Japan(2026年1月30日)〉

Google ‘exploring updates’ to let publishers opt out of AI Overviews(グーグル、パブリッシャーがAI概要をオプトアウトできるよう「アップデートを検討中」)〈Press Gazette(2026年1月28日)〉

 現状では、「AIによる概要(AI Overviews)」や「AIモード」はGoogle検索の機能の一部という扱いになっているため、学習用データを採集するボット「Google-Extended」をrobots.txtでブロックしても、「AIによる概要」や「AIモード」に利用されることは防げませんでした。

 これをイギリスの競争市場庁(CMA)が問題視し、オプトアウトできるようにする規制案のパブコメを募集したところ、Googleからその機能を検討するという見解が示されたそうです。ほんとうにやるのか、やるけどイギリスだけ対応になるのか、はたまた、全世界向けに対応するのか。今後の動向に要注目です。

お知らせ

イベントについて

毎年恒例の出版ニュース振り返り番組はアーカイブチケットが1月31日までPeatixで購入可能です!

新刊について

新刊『ぽっとら Podcast Transcription vol.1 ~ 詐欺広告や不快広告・金融検閲・生成AIと著作権・巨大IT依存問題など、激変する出版界の広範な論点を深掘りしてみた。』を刊行しました。ポッドキャストファーストという試みです。今後も続けたい。

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日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

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雑記

 theLetterへの移行が無事に終わってひと安心。自分宛の事前テストメールが迷惑メールフォルダ入りしたから、ちょっと心配だったんですよね。むしろ、いままでの配信システムより開封数は少し良いくらいになりました。購読者数も、いままではなかなか増えず一進一退だったのですが、ほぼ同時に始めたReader Revenue Managerの効果もあってか、好転しています。良かった! 今後もコツコツと改善していきます。(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 924 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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