《この記事を読むのに必要な時間は約 15 分です(1分600字計算)》
2025年11月30日~12月6日は「産経系ウェブメディアで盗用」「Cloudflare控訴」「Google Discoverがニュース見出し無断書き換え」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- 政治
- 社会
- 経済
- マンガ輸出:日本はデジタル、欧州は紙。「ミスマッチ」をどう埋めるべきか?〈Kataho@フランクフルト(2025年11月30日)〉
- AI覇権争い、グーグルがChatGPTに追いつかない理由〈Bloomberg(2025年11月30日)〉
- AIはマンガ家の“過酷な制作環境”を救えるか 「作家専用AI」で絵柄を再現する「THE PEN」の挑戦:まつもとあつしの「アニメノミライ」〈ITmedia NEWS(2025年12月3日)〉
- Meta signs commercial AI data agreements with publishers to offer real-time news on Meta AI(メタ社がパブリッシャーと商用AIデータ契約を締結、メタAIでリアルタイムニュースを提供)〈TechCrunch(2025年12月5日)〉
- 技術
- 「Rakuten TV」、“買い切り動画”を販売終了へ 購入済みでも2027年以降は視聴できず〈ITmedia NEWS(2025年12月1日)〉
- コンテキストの腐敗(Context Rot)とは?:AI・機械学習の用語辞典〈@IT(2025年12月4日)〉
- GoogleがAIによるニュース見出しの書き換えを実験、その内容がひどいと海外メディアが指摘【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2025年12月5日)〉
- 現代のSEOは量より質、低品質1000ページ削除で検索トラフィック爆上げ事例【SEO情報まとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2025年12月5日)〉
- お知らせ
- 雑記
政治
<独自>インボイス負担軽減措置、期限延長見送りで調整 「8割控除」課税逃れに悪用も〈産経ニュース(2025年11月29日)〉
げー! ペイウォールの向こう側が読めてませんが、図から判断するに、それって海外にグループ会社があるレベルの大手企業による悪事じゃないですか。延長しないことで割を食うのは中小企業と、登録番号を取得していないフリーランスなのに……。
インボイス巡る特例、課税逃れに利用か 財務省指摘〈日本経済新聞(2025年12月1日)〉
日経は契約しているので、ペイウォールの向こう側も読めました。財務省からの指摘だったんですね。施行直前にねじ込まれた例外的な措置を、なにがなんでも早期に潰してやるという強い意思を感じる。
公明、自民に税制改正めぐり提言 インボイス負担軽減措置の延長〈日本経済新聞(2025年12月2日)〉
お! と一瞬思ったんですが、そういえば公明党はいまはもう野党でしたね。
新聞記事複製巡りコンサル会社を不起訴 東京地検〈日本経済新聞(2025年12月2日)〉
これは恐らく5月に報道された、新聞社や出版社の記事約1万3000本を無断で社内共有していた事件の続報と思われます。当時の報道では、警視庁が起訴を求める「厳重処分」の意見を付けたとか、容疑も認めているという話だったんですけどね。不起訴の理由は明らかにされていないそうです。「関心高い事件では公表を検討するよう周知」ってニュースがあったばかりですが、本件は世間の関心が低かったのかな。
米クラウドフレアが控訴、海賊版サイトめぐり「5億円の賠償命令」判決に不服〈弁護士ドットコム(2025年12月4日)〉
まあ、これは予想していた通り。最高裁まで戦うことになるんでしょうね、これは。
社会
「スマホのせいで若者の読書離れ」は真っ赤な嘘…じつは子どもたちは「紙の本」を意外なほど読んでいる「衝撃の実態」(飯田 一史)〈現代ビジネス | 講談社(2025年11月30日)〉
新聞業界はNIE(News In Education.教育に新聞を!)という運動を展開してロビイングも行い、学校図書館への配架予算が付くに至った。一方、雑誌や書店業界は同様の運動をしてこなかったし、今もする気配が見えない。
いちおう指摘しておきますが、MIE(Magazine in Education:「雑誌を教育に」)活動も存在はしています。日本出版学会に研究部会がありますし、関連論文もいくつか公開されています。ただ、学術研究関連に留まっており、業界を上げての活動になっているわけではありません。だから、存在が認識されてなくても仕方ないとは思います。
毎日新聞、米AIパープレキシティに抗議 記事無断利用「著作権侵害」 共同、産経も〈毎日新聞(2025年12月1日)〉
日経、読売、朝日はすでに訴訟しているのに、毎日、産経、共同はただの抗議書ですか……これは以前から何度か指摘してますけど、「著作権侵害に当たる」という主張なら、「提訴も視野に入れる」とかぐだぐだ言ってないで、さっさと訴えればいいのに。とくに本件は、すでに他社が先行しているわけですから。相乗りすればいいじゃない。
あと、隙あらば「法整備」って主張をしてきますけど「著作権侵害に当たる」と断言できるなら、現行法でも勝てる自信があるってことですよね。ならば、法整備は要らないのでは?
生成AI検索サービス、なぜ著作権侵害? 「ただ乗り」防ぐ法整備を〈毎日新聞(2025年12月1日)〉
「体細胞を初期化」や「『時計の針』を巻き戻し」といった表現は同一だった。
うーん、類似性の主張には弱いような。この短いフレーズに著作権が認められたらむしろ大変なことになりそう。国立国会図書館デジタルコレクションで「体細胞を初期化」を検索したら30件出てきました。初出は1999年かな。「時計の針を巻き戻し」は61件、初出は1927年のようです。わりとありふれた表現。
というか、事実だけを抽出してパラフレーズされた場合、著作権侵害だと認められる可能性は低いかもしれないという視点のほうが重要かもしれません。そういう意味で法整備が必要って主張をするなら、理解はできます。賛同するかどうかは別として。
共同通信加盟の48社がPerplexityの「ただ乗り」に抗議。誤情報拡散も指摘〈PC Watch(2025年12月2日)〉
対Perplexityって、「AI開発・学習段階(30条の4 / 非享受利用)」というより、「生成・利用段階(47条の5 / 軽微利用)」が主な争点になるはずなんですよ。あんまりそういう観点の解説を見かけないのが不思議なんですけど。
NYタイムズ、米AI新興パープレキシティを提訴 著作権侵害で〈日本経済新聞(2025年12月6日)〉
アメリカでもPerplexityに対する新たな訴訟の動きが。個人的には、robots.txtを無視してクロールしてくるなど大変お行儀が悪い企業なので、コテンパンにのされたほうがいい気がしています。べつに日本の新聞社を嫌っているわけではなく、主張してることがなんか変、と言ってるんです。
産経新聞社運営のネットメディアが記事盗用、11月に5本〈朝日新聞(2025年12月2日)〉
うーわ。「お詫び」はこちら。DeNA「welq」などのキュレーションメディアが剽窃で問題になったのは2016年。もうすぐ10年が経つわけですが、いまごろになって新聞社がこんなことやって……まあ産経だし、って思っちゃいけないんだろうなあ。
「エモグラム」記事盗用問題、1年前の毎日新聞に学べなかった産経新聞、経営難の2社で続いた不祥事は偶然ではない 【西田亮介の週刊時評】PV狙ってスベる新聞社、「戦略的撤退」が検討される時期にきた〈JBpress(2025年12月5日)〉
毎日新聞の事例を忘れてました。そうですよねぇ……扇情的な週刊誌やスポーツ紙と同じ土俵で戦ってしまうと、同じ穴の狢になっちまうだけですもんね。このままだと、どんどん信頼を失っていくと思う。いまはどこに力を注ぐべきなのかを見誤ってる感があります。
「特集」新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと | 経済/ビジネス〈株式会社 共同通信社(2025年12月3日)〉
そういう意味で、『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』(集英社新書)というタイトルには「それってどうなんだろう?」と思ってしまったんですよね……バズらせなきゃいけないの? って。まあこのタイトルは集英社主導で決めたのかもしれませんが。
いや、紙面という限られたスペースに対し最適化された文章の書き方と、スペースの制約が事実上存在しないウェブメディアでの文章の書き方は、自ずと異なるのはわかりますよ。新聞向けの逆三角形って、スペース調整のために後ろから削っても問題ないようにするための書き方ですし。
でも「バズを狙う」って、扇情的な週刊誌やスポーツ紙、あるいは、まとめサイトなんかと、新聞が同じ土俵で戦うことになるわけなんですよね。ほんとうにそれでいいのか? という。ちなみに、「長文記事(2千~4千字程度)」って記述を見て、私は真顔になってしまいました。まあ、そこはウチがおかしいのかも。
経済
マンガ輸出:日本はデジタル、欧州は紙。「ミスマッチ」をどう埋めるべきか?〈Kataho@フランクフルト(2025年11月30日)〉
うーん……あくまで「マンガ輸出」に焦点を絞った論考とはいえ、ちょっと考え込んでしまいました。日本もマンガ以外の電子出版市場はまだ小さいわけですから。「例えば、直近のデータだと、2025年上半期のドイツの書籍売上における電子書籍の割合は、7.8%にとどまっています」とありますが、日本もマンガを除いた電子書籍市場は452億円です(2024年実績)。紙書籍は5678億円ですから、書籍売上における電子書籍の割合は約7.4%と、ドイツより低いです。
つまり、世界の出版市場の中で日本のマンガだけ異様に電子化が進んでいる特異点になっていると捉えたほうがいいのかもしれません。あと、「MANGA Plus by SHUEISHA」のように無料で海外展開されているアプリの存在も無視できないでしょう。これは、デジタルでマンガを読む習慣を付けてもらうための試みのひとつなのですから。
AI覇権争い、グーグルがChatGPTに追いつかない理由〈Bloomberg(2025年11月30日)〉
これも、うーん……と考え込んでしまいました。偏ったサンプルしか持っていないSimilarwebのデータでchatgpt.comとgemini.google.comを比較してなにがわかるのか? という気がします。Google検索に組み込まれたAI OverviewsやAI ModeもGeminiですし、モバイルアプリにも使われているわけで。まあ、それはMicrosoftのCopilotにも言えることですが。
OpenAI、対Google「非常事態」宣言と米報道 3年前と形勢逆転〈日本経済新聞(2025年12月2日)〉
Bloombergの論考と真逆の話が直後に出てきて、思わず笑ってしまいました。まあ当然のことながら、当事者のほうがしっかり危機感持ってますね。
AIはマンガ家の“過酷な制作環境”を救えるか 「作家専用AI」で絵柄を再現する「THE PEN」の挑戦:まつもとあつしの「アニメノミライ」〈ITmedia NEWS(2025年12月3日)〉
この「THE PEN」ですが、9月にForbes JAPANが先駆けて取り上げてました。ただ、著作権についての説明があまりに酷かったため、ツールそのものに着目しそびれてました。トホホ。Adobe Fireflyと同じように、権利関係をクリアにしたAIを用いるというアプローチなのですね。まだ市場には投入されていませんが、今年中にリリースとのこと。期待。
Meta signs commercial AI data agreements with publishers to offer real-time news on Meta AI(メタ社がパブリッシャーと商用AIデータ契約を締結、メタAIでリアルタイムニュースを提供)〈TechCrunch(2025年12月5日)〉
えーっと……Meta社はこれまで、FacebookやThreadsなどのニュースフィードに記事の投稿をあまり出てこないようにするアルゴリズムにしたり、パブリッシャーへのレベニューシェアを止めてしまったりしてきたわけですが。生成AIにとって、新鮮で信頼性が比較的高いニュース記事が有用であることに気づいて、また歩み寄ってきたってことなんですかね? いちど蹴飛ばされた相手とよくまた契約する気になるなあ。
技術
「Rakuten TV」、“買い切り動画”を販売終了へ 購入済みでも2027年以降は視聴できず〈ITmedia NEWS(2025年12月1日)〉
出版とは直接関係しないトピックスですが、「サービス終了で消えるコンテンツ」という地続きの問題なので取り上げました。結局これも「DRMによるユーザー囲い込み」が原因なんですよね。しかし、動画だと「フォーマットがバラバラ」みたいなこと言い出す人は観測できませんが、電子書籍だとなぜかそう言う人がけっこういるという。
コンテキストの腐敗(Context Rot)とは?:AI・機械学習の用語辞典〈@IT(2025年12月4日)〉
これは興味深い。私の周囲でも、AIと長いあいだやり取りしているとだんだん回答の質が落ちてくる、つまり、AIがアホになる症状を体験した方を何人か目撃したんですが、用語がもうあるんですね。コンテキストウィンドウのサイズ(トークン数)の問題だと思っていたんですが、上限を増やしても「腐敗」によって回答が劣化するとのこと。うーん、大規模言語モデル(LLM)の限界なのかな。
GoogleがAIによるニュース見出しの書き換えを実験、その内容がひどいと海外メディアが指摘【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2025年12月5日)〉
これは酷い。The Vergeの元記事を確認してみましたが、だいたいどれも4語以内という縛りで圧縮を試みていたようです。“like if we’d written a book and the bookstore decided to replace its cover.(まるで、私たちが本を書いたら、書店が表紙を張り替えるのと同じです)”という例えがわかりやすい。こういうテストをするなら、事前に同意を得たメディアだけ対象にして欲しい。
現代のSEOは量より質、低品質1000ページ削除で検索トラフィック爆上げ事例【SEO情報まとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2025年12月5日)〉
ピックアップの5番目「グーグル検索の利用者数は減っていない! 大手新聞社の誤報に惑わされるな」は、11月26日付日経新聞「Google経由のサイト訪問、日本でも3割減 AI要約の浸透で」への批判と思われます(記事内ではどこの報道かは伏せている)。
辻正浩氏の「そんな変化が起きてたらネット広告関連の数字がもっと激変して大騒ぎになってるはず」という指摘は確かに。そもそも、Googleの広告売上はまだ伸びているわけですもんね。私もこの記事には「ヴァリューズがどういうデータの取り方をしているか次第」と、辻氏とは違う視点から疑義を唱えています。
お知らせ
年末恒例の出版ニュース振り返りはリアル会場から配信します! 登壇者と直接会いたい方、全編視聴したい方は、Peatixでチケットをご購入ください。配信は前半だけ無料です。12月26日(金)19時受付開始、19時30分配信開始!
新刊について
『ぽっとら Podcast Transcription vol.1 ~ 詐欺広告や不快広告・金融検閲・生成AIと著作権・巨大IT依存問題など、激変する出版界の広範な論点を深掘りしてみた。』を上梓しました。ポッドキャストファースト、つまり音声コンテンツの書籍化という試みです。
HON.jp「Readers」について
HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。
日刊出版ニュースまとめ
伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary
メルマガについて
本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算号数、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行号数です。
雑記
2016年に買ったiPad Pro(第1世代)が3回目のバッテリー膨張を食らいました。3回ともホームボタン側がぱっくり開いてしまう症状です。1回目と2回目はApple公式で修理(というか新品交換)してもらったんですが、さすがに今回はもう「Appleが販売店への供給を停止した日から7年以上が経過」した「オブソリート製品」の扱いに。つまりもう公式の修理サポートは受けられません。幸い、近くの修理屋さんへ持ち込み無事にバッテリー交換できました。1万2800円ナリ。これでまだもう少し戦える。(鷹野)

























