
《この記事は約 15 分で読めます(1分で600字計算)》
2025年7月13日~19日は「中国でBL作家が一斉摘発」「LLMスパム汚染」「Google DiscoverにもAIによる要約機能が追加」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- お知らせ
- 政治
- 社会
- 経済
- 技術
- Google検索結果の変化が加速? 1ページ目の48.8%が2年で入れ替わる時代のコンテンツ作り | Moz – SEOとインバウンドマーケティングの実践情報〈Web担当者Forum(2025年7月14日)〉
- ChatGPTの結果がLLMスパムに汚染され始めた〈海外SEO情報ブログ(2025年7月14日)〉
- Following YouTube, Meta announces crackdown on ‘unoriginal’ Facebook content(ユーチューブに続き、Metaも「独創性のない」フェイスブックコンテンツの取り締まりを発表)〈TechCrunch(2025年7月14日)〉
- メタ、「超知能」開発に数十兆円を投資 巨大データセンター構築〈日本経済新聞(2025年7月15日)〉
- Google DiscoverがAIによる概要を生成〈海外SEO情報ブログ(2025年7月16日)〉
- お知らせ
- 雑記
お知らせ
ポッドキャストを今後は不定期更新にします
今回のポッドキャストはなにについて話すかが決まらず、1日中考えあぐねていました。基本的には「週刊まとめ」のタイトルに採用した事柄を掘り下げるという方針です。が、今回は「秀和システム承継企業確定」については発端の船井電機買収の件がよくわからない(闇が深そう)ので掘り下げるのが難しい。「米国AI著作権法論議の記録帳」は、前回のポッドキャストですでにけっこう掘り下げている。「Cloudflare、AIボットのクロール状況を可視化」も、前回のポッドキャストですでにけっこう掘り下げている。という状況で、ハテ? どうしようかなと過去に語ったことを振り返っていたら、1日消えました。
こういうときにお便りがあると助かるのですが、残念ながらストックもない状態でした。経験上、ネタがないときに無理に絞り出すとろくなことにならないので、お休みしました。まあ、忙しくて更新できないってケースはともかく、今回みたいに「以前に深掘り済み」って形でネタ切れになる事態はあまり起きないとも思うのですが、週1回無理に更新するのではなく、深掘りしたいネタがあるときに更新するという形で、頻度を少し落とそうと思っています。
新コーナー「ぽっとら」を開始しました
5年前にいちど更新停止したポッドキャストをなぜ再開したのか?〈HON.jp News Blog(2025年7月16日)〉
「ぽっとら」は、Podcast Transcription(ポッドキャストの文字起こし)の略です。半年分くらい溜まってますので、しばらく断続的に更新していきます。ストックがなくなったら、ポッドキャストの配信に合わせて更新する感じで。うちの常連読者は、恐らくテキストのほうが読んでくれると思っています。それでもポッドキャストをやっているのは、常連とは違う層にも届けたいから。両面作戦です。
週刊ダイヤモンド書店販売中止/トムソン・ロイターがAIスタートアップ企業に勝訴[ぽっとら]〈HON.jp News Blog(2025年7月17日)〉
振り返ってみると、当初は「2つか3つ(の話題)を深掘り」という方針を立てているんですが、3つの話題回はゼロ、異なる2つの話題回が2回で、他はすべて1つの話題を掘り下げてました。このときは再開初回ということもあり、前半と後半がぜんぜん違う話題という珍しい回です。
経産省「書店活性化に向けたアクションプラン」とICタグ[ぽっとら]〈HON.jp News Blog(2025年7月18日)〉
まだこの時点だと、「AIによる需要予測」に懐疑的ではあるものの、それは明言せず「うまくいくのかな。どうでしょうね。」とお茶を濁しています。いま思うと、この時点ではっきり言ったほうが良かったな、という感じがします。
東京・札幌・沖縄で作家・編集者・デザイナーが3日間集まり“本”を創り上げていくパブリッシングイベント「NovelJam 2025」開催!
今年もやります! 10月11日から13日の開催です。ただいま参加者募集中。もうすぐ締切! 詳細は上記リンク先の開催概要をご確認ください。クラウドファンディング、法人協賛も募集しています。
政治
総務省がAI担当部署を新設 国際ルール・振興策など一体対応〈日本経済新聞(2025年7月16日)〉
国際戦略局内にAI政策推進室を新設した。これまで生成AIの国際ルールを話し合う「広島AIプロセス」や国内事業者向けのAI指針は別々の部署が対応していた。技術開発への支援も含めて一体で担う部署を設けてAI政策を円滑に進める。
ここを読んで「あれ?」と思ったんですが、「(総務省内でも)別々の部署が対応」ってことですかね? たとえば経済産業省は、国内のAI開発力強化のため「GENIAC(ジーニアック)プロジェクト」を2024年2月からやっているとアピールしてました。内閣府にはAI戦略会議があります。なんか省庁間での縄張り争いが起きそうな気が。
公取委「法違反つながりかねない取引慣行が存在」 書協・雑協にフリーランス法違反防止策を要請〈The Bunka News デジタル(2025年7月18日)〉
フリーランス法は前からずっと繰り返し注意喚起してきましたから改めて言わせてもらいますが、こういう指導をされる前にちゃんとしましょうよ、ほんと。恥ずかしい。
社会
中国、BL作家を一斉摘発 若者価値観に危機感か〈NEWSjp(2025年7月14日)〉
台湾にある投稿サイトに、中国本土から投稿している方々が摘発されているそうです。国による表現規制とはこういうものだというのをまざまざと見せつけられている感があります。恐ろしい。くわばらくわばら。日本はこうならないようにしたい。
ところで記事の内容とは直接関係ないのですが、この記事を配信している「NEWSjp」について、聞いたことがない、怪しいメディアではないか? といった声が若干見受けられました。運営企業のノアドットは共同通信デジタルとヤフー(現・LINEヤフー)の合弁会社です(2015年設立)。まあ、サイト名とかドメインまでコロコロ変わっているから、正直、怪しまれるのも無理はないとは思います。
第7回 続「本を売る」ことに魅せられて〈草彅主税(2025年7月14日)〉
「ロングテールは幻想」について、少し異論があります。ロングテールはもともと「在庫や返品の概念がないデジタルコンテンツの場合、事実上無限の棚がある」というのが前提です。だから、そこから物理メディアに拡張した「巨大倉庫から発送するなら実質ロングテールでは?」とか「超巨大書店なら実質ロングテールでは?」みたいな話が当てはまらないのは、むしろ当然だと私は思っています。
丸善の年間の稼働点数が6万タイトル超というのは素直にすごいと思いますが、電子書店は約100万点以上が在庫切れしない形で販売され続けています。物理メディア販売に比べると、電子メディア販売はあまり売れないテール部分が半端じゃない長さだから「ロングテール」なのです。
世界に広がるファクトチェック 巨大ITとの連携は? BBCとAFPの担当者に聞く〈朝日新聞GLOBE+(2025年7月14日)〉
BBCは公共放送なので、政府の予算によるファクトチェックです。これだと政府発信情報のファクトチェックが立場的にやりづらくなります。AFPにもフランス政府からの資金が入っていますが、巨大IT企業の支援が大きいそうです。これも同様に、巨大IT企業発信情報のファクトチェックが立場的にやりづらくなります。
しかしこういう「お金にはなりづらい」活動を、どこからの支援も受けずに運営することは難しいというジレンマがあります。これはうちも他人事ではありません。一般市民から直接、広く浅く資金を援助される体制が理想的とは思うのですが。
芥川賞・直木賞はともに該当作なし 1998年1月以来、27年ぶり〈朝日新聞(2025年7月16日)〉
記事の内容ではなく、記事の出し方についてひとこと。こちら、初出時のタイトルは「第173回芥川賞は『該当作なし』 2011年7月以来、14年ぶり」でした。その後、直木賞も該当なしとなったことにより、同じURLで記事タイトルと内容を更新しています。しかも、更新したことはどこにも記載がありません。
本稿執筆時点であらためて確認したら、選考委員のコメントなどを追加する再更新により記事がさらに長くなっていました。うーん、そういう更新の仕方は、できればやめて欲しい。更新できるのがウェブの良さでもあるのですけど、せめて履歴を残して欲しい。
正しさを「証明する」のではなく「疑いたい」…新聞記者の仕事が「科学的」だと言える理由〈WEBアステイオン(2025年7月16日)〉
正しさを証明したいのではなく、むしろ正しさを疑いたい。武田さんが論考の中で、「現実のジャーナリズムは訂正が得意ではない」と指摘しているが、それはもしかしたら、自らが常に正義の側に立っていると考える“病”が原因となっているようにも思う。
とくに新聞は「自らが常に正義の側に立っていると考える“病”」にかかっているケースが多いように思います。ここで言われていることはつまり、理論の正しさを証明する「検証主義」ではなく、理論が常に批判にさらされる「反証主義」であるべき、ということなのでしょう。反証可能性を持つ理論のみが「科学」であるという、カール・ポパー氏による主張です。反証可能性を持たない理論は「疑似科学」である、と。学生にも「鵜呑みにせず『それほんと?』と疑え」と指導していますが、私自身が常にそうできているか? と言われると、ゴメンナサイ。
経済
ヴィレッジヴァンガードがファン離れで大量閉店 独自色支える人材追いつかず〈日本経済新聞(2025年7月14日)〉
祖業の書店を取り巻く環境は厳しい。書籍やCDはネットに押され、実店舗の購入が急減。同社の連結売上高に占める書籍の割合も15年間で減少し、足元は10%に満たない。
まるで昔はもっと書籍の割合が大きかったかのような書きぶりですけど、けっこう前から10%前後でしたよ? 念のため2006年からの数字が載ってる古い記事で数値を確認してみましたが、書籍売上の割合は2006年19.3%、2007年18.3%、2008年15.5%、2009年13.5%、2010年12.3%、2011年11.8%、2012年10.8%です(この記事には構成比がないので電卓を叩きました)。
これはつまり、全社の売上がまだぐんぐん伸びていた時期に書籍売上は伸びていないため、13年前にはすでに構成比で10%前後になっていたということです。ヴィレッジヴァンガードは「遊べる本屋」ってキャッチコピーに騙される人も多いのですが、本もちょっとだけ置いてる「雑貨屋」なんですよ。地元愛知の発祥ですから初期の倉庫風店舗にも行ったことがありますけど、雑貨だらけの店内に「これを本屋と名乗っちゃう?」と思ったのを覚えています。
コンデナストとハーストがAmazonのAIショッピングアシスタント向けのコンテンツ提供で合意〈Media Innovation(2025年7月15日)〉
こういう、メディアがAIにエサを与える代わりに対価を得る提携がどんどん増えています。確かに新たな収益源ではあるのでしょうけど、人間の書いた記事がAIのエサになるのを是として良いものなのかどうか。この場合、学習用というより、出力(要約)用途なのでしょうけど。
技術
Google検索結果の変化が加速? 1ページ目の48.8%が2年で入れ替わる時代のコンテンツ作り | Moz – SEOとインバウンドマーケティングの実践情報〈Web担当者Forum(2025年7月14日)〉
こうやってデータで傾向を示されると、体感していることが裏付けられます。数字で語られると納得しやすい。つまり、Googleのアルゴリズムは「新しい記事ほど優れている」と判断する傾向があるので、古い記事は放っておくとだんだん検索流入が少なくなるのです。要は、メディアを運営するなら新しい記事を更新し続けないといけないという、ある意味、当然の話。
ChatGPTの結果がLLMスパムに汚染され始めた〈海外SEO情報ブログ(2025年7月14日)〉
Googleのアルゴリズムがハックされ検索結果上位をスパムが汚染する「ブラックハットSEO」のことを想起します。数日前に、ChatGPTが外部検索エンジンをBingからGoogleに変更か? という話題もありました。なんだかんだ言ってやっぱり、スパムとずーっと戦い続けているGoogle検索が強いのですよね。たまに負けてアホになりますけど。
Following YouTube, Meta announces crackdown on ‘unoriginal’ Facebook content(ユーチューブに続き、Metaも「独創性のない」フェイスブックコンテンツの取り締まりを発表)〈TechCrunch(2025年7月14日)〉
Instead, Meta’s focus is on the reposting of others’ content, either on spam accounts or those that pretend to belong to the original creator.(Metaは、スパムアカウントや元のクリエイターを装ったアカウントによる他者コンテンツの再投稿に焦点を当てている)
この取り締まりはいまのところFacebookだけのようですが、いずれInstagramやThreadsでも同じような対策が行われるでしょう。Instagramはあまり見ていないので分かりませんが、Threadsでは「おすすめ」に無断転載アカウントが次から次へと出てきてうんざりしています。片っ端からミュートしてますが、まだまだ増殖しているようです。いずれやってくる大粛正の予感。まあ、AI判定による誤BAN問題も起きているようですが。Metaだし。
メタ、「超知能」開発に数十兆円を投資 巨大データセンター構築〈日本経済新聞(2025年7月15日)〉
楽天、新たな生成AI開発 経産省が支援 大規模言語モデル〈日本経済新聞(2025年7月15日)〉
Metaの「数十兆円を投資」という記事を直前に見てしまったので、経産省の支援ってどれくらいの規模なんだろう? というのが気になってしまいました。「GENIAC」公募要領によると、助成額は合計で100億円以内とのことです。実施予定先一覧には楽天を含め24社載っているので、平均約4億円。ま、まあ、データセンター地方拠点整備事業費補助金など、他にも支援はありますが……1社が自己資本で「数十兆円を投資」できてしまうのと比べると、あまりにスケールが違う。ため息。
Google DiscoverがAIによる概要を生成〈海外SEO情報ブログ(2025年7月16日)〉
おお……まさかDiscoverにまでAIによる概要を適用してくるとは。ちょっと想定外。導入されたのはまだアメリカだけみたいですが、Discoverからの流入も激減することになりそうです。Discoverは、メディアにとって新たな流入元として重要視されつつある段階なので、もう少し丁寧に普及を図っていくものだと勝手に思い込んでいました。容赦ないな!
お知らせ
ポッドキャストについて
5年ぶりに再開しました。番組の詳細やおたより投稿はこちらから。
新刊について
新刊『ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた』各ネット書店にて好評販売中です。Kindle Unlimited、BOOK☆WALKER読み放題、ブックパス読み放題、シーモア読み放題にも対応しました!
「NovelJam 2024」について
11月2~4日に東京・新潟・沖縄の3会場で同時開催した出版創作イベント「NovelJam 2024」で新たに誕生した16点の作品を合本にしました!
HON.jp「Readers」について
HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。
日刊出版ニュースまとめ
伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary
メルマガについて
本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算号数、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行号数です。
雑記
先週の雑記で「今年の夏は、まだ本気出してない感じがします」なんて書いたんですが、まだ梅雨が明けてなかったんですね。7月18日に「関東甲信、北陸、東北南部が梅雨明け」というニュースがありました。ちょうどこの日、九段下の駅を降りて坂道を登って汗だくになりました。日曜日の朝、参議院選挙で投票所まで徒歩で往復したら、やはり汗だくになりました。本気の夏がいよいよやって来た!(鷹野)