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2025年1月12日~18日は「KADOKAWA自社工場で重版の3割をカバー」「2025年出版関連動向予想」「電子出版としての紙の本作り」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- 総合
- 政治
- 社会
- 経済
- 技術
- 個人向け「Microsoft 365」にCopilot統合で30~40%値上げ〈ITmedia NEWS(2025年1月17日)〉
- 24年「フィッシング」最多 偽サイト誘導148万件〈日本経済新聞(2025年1月12日)〉
- ソニーG、ブロックチェーン一般公開 ファンの交流促す〈日本経済新聞(2025年1月14日)〉
- ポストCookieからハイブリッドCookieの時代へ/必要な対応とは?【IM簗島氏×アタラ杉原氏】〈MarkeZine(2025年1月15日)〉
- BOOX、13型E Inkを採用したAndroid搭載モノクロ電子ペーパー端末「BOOX NoteMax」〈ITmedia PC USER(2025年1月17日)〉
- お知らせ
- 雑記
総合
2025年出版関連の動向予想〈HON.jp News Blog(2025年1月15日)〉
毎年恒例の年始予想です。大苦戦して1月もすでに半分が過ぎてしまったわけですが、ようやく公開まで漕ぎ着けました。今年の予想(というか、私が注目していること)は「【雑誌】脱広告ビジネスモデル」「【書籍】読書バリアフリー対応」「【漫画】コンテンツ輸出の拡大」「【教育】図書館の役割が重要化」「【技術】サイバー犯罪は自分事」です。なんとなく文字数を揃えてみました。2025年も引き続きよろしくお願いいたします。
政治
解説講演「台湾iWIN事件」~児童ポルノ対策法制における創作表現の扱いをめぐる論争~〈うぐいすリボン(2025年1月11日)〉
台湾で、非実在作品まで規制の対象が広がりそうだったのをギリギリのところで防いだ事件のあらましです。討議の重点が「性的搾取図画の認定基準」に置かれようとしていたのを、「法律の正当性という根源的な問題の議論」に導いたやり方は参考になります。各論ではなく総論、そもそもなんのための法律なのか? という根源に立ち返るべし、ということですね。
SARTRAS共通目的事業「インターネット上の著作権侵害等に対する個人クリエイター等による権利行使の支援」を開始します〈文化庁(2025年1月14日)〉〈文化庁(2025年1月14日)〉
これ、素晴らしい事業ですね。個人クリエイターが削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求する際の費用を一部支援するそうです。1件あたり上限150万円(申請時に預かる自己負担額1万1000円を除く)とのこと。無断転載されても専門家に相談するとそれだけで費用倒れになってしまうことが問題視されてましたから、これで今後は泣き寝入りせずに済むはず。ヘタすると申込みが殺到するんじゃないかしら? 無断転載したうえで自作宣言する輩もいるので、悪用されなければいいなとは思いますが。
TikTok規制法、最高裁も「合憲」判断 発効を支持〈日本経済新聞(2025年1月18日)〉
あれまあ。個人的には「難癖にもほどがある」と思う法律ですが、悪法もまた法なりですから、いかんともしがたい。あとはトランプ氏が大統領就任後にどうするか。就任式が1月20日なので、1月19日にはいちど止まるかも……と思っていたら、自主的に止めました。ユーザーが別の中国企業の類似サービス「小紅書」に流れているというのがなんとも言えない。それ、そのうちそっちも止められるだろ。ちなみに、アメリカだけの話なので、日本のサービスは普通に稼働したままです。
社会
ドイツなど60超の大学・機関がX中止 「価値観相いれず」〈日本経済新聞(2025年1月11日)〉
Twitterがイーロン・マスク氏に買収されてから「オーナーの意向に沿うコンテンツが好まれるようになった」というのが利用を停止する理由とのことです。フランス パリ市も似たような動きをしています。これ、イーロン・マスク氏が大統領選挙でトランプ氏にすり寄っていったのが決定打だったのでしょうけど、なんだか正直「いまごろ?」と思ってしまいました。ちなみに私の個人アカウントは、2023年4月に起きたAPI遮断事件を契機に、新規投稿はきっぱり辞めました。とはいえ、HON.jpの公式アカウントはまだ止めていないので、あんまり人のことは強く言えないのですが。事業のことを考えると、止めづらい。
漫画家の終活 紙原稿どうする〈ほりのぶゆき(2025年1月12日)〉
タイトルを見て「マンガ原画アーカイブセンター」のことをすぐ想起して、冒頭には出てこなかったのでちょっとドキドキしながら読み進めたら、やっぱり「マンガ原画アーカイブセンター」の話でホッとしました。相談したら、非常に丁寧な対応をしてくれて、無事に預けることができたそうです。素晴らしい! 遠慮は要らないってことですよね。
E2762 – 図書館の電子書籍貸出しに関するドイツ経済研究所の調査報告書〈カレントアウェアネス・ポータル(2025年1月16日)〉
ウィンドウ戦略(一定期間図書館に利用させない期間を出版社が設ける)を行った場合、紙も電子も販売数や売上高が増加し、行わなかった場合は減少する、という調査結果が出ています。とはいえ、ウィンドウ戦略は「ベストセラーになるような高い需要が見込まれる書籍で特に多く行われる傾向にある」そうなので、大場博幸氏の調査結果とも矛盾はしていません。変曲点はどのあたりなんだろう?
電子出版としての紙の本作りは、1990年代に見た夢の実現かもしれない〈HON.jp News Blog(2025年1月17日)〉
フリーライターの納富廉邦氏に、インターネット普及以前の“電子出版”から現在の“軽出版”ムーブメントに至るまでを概観・考察するレポートを寄稿いただきました。原稿を一読して、私より少し上の世代の話ということもあり、冒頭の『Alice』(シナジー幾何学)のことがわからず調べてみることに。国立国会図書館にあるのは見つけましたが、残念ながら「利用環境がないため利用不可」でした。入手困難資料というか閲覧困難資料。動画で雰囲気はわかりますが、実際にプレイすると印象ぜんぜん違うんでしょうね。
経済
KADOKAWA、丸善ジュンク堂書店出版社売上初の1位に 躍進の原動力はラノベと児童書?〈Real Sound|リアルサウンド ブック(2025年1月13日)〉
トーハン・日販などの作品別ランキングの上位にKADOKAWAはあまり入っていないけど、出版点数が多い&コンスタントに売れていることが出版社別売上1位という結果に繋がったのではないか、という分析です。しかもこれ、サイバー攻撃の影響込みですもんね。すごいわ。
まあ、だから私は、作品別ランキングの上位の傾向だけを分析して何かを語るみたいな真似は、怖くてできないんです。100位まで分析してもまだ足りないかもしれない。それだけの多様性があるのが出版の世界ですから。
ロイター研究所が「2025年の展望」、ニュースメディアはプラットフォーム依存脱却とAI活用が焦点〈Media Innovation(2025年1月13日)〉
やっぱりそこ(プラットフォーム依存脱却)ですよね。この記事を読んだのは、2025年予想の原稿を書いている段階でしたが、真っ先に挙げた「脱広告」の領域をもう少し広げて「プラットフォーム依存からの脱却」も訴えるべきかなと感じました。それもあって「プラットフォームへの依存度を高めることは、彼らに生殺与奪の権を握らせること」という一節を加えています。
note、Googleと資本業務提携 生成AI「Gemini」を活用〈日本経済新聞(2025年1月14日)〉
グーグルがnoteの第三者割当増資を引き受け、発行済み株式総数の6.01%を取得する形での資本業務提携です。プレスリリースはこちら。なお、この記事ではちゃんと「noteには日本経済新聞社が出資している」と情報開示しています。偉い!
KADOKAWA、100部からマンガ印刷 多品種戦略を支える〈日本経済新聞(2025年1月15日)〉
ところざわサクラタウンのデジタル印刷工場についての詳報です。マスコミへの公開は初めてだったのですね。残念ながらHON.jp News Blogにはお声がけいただいておりません。新書・文庫だけでなく、マンガもすでにやっていたのですか。知らなかった。また、「オンデマンド印刷機はインクジェット」と言われることが多いと思うのですが、実は「インクジェットではない」とあり、ちょっと驚きました。
あと、書店からの直接注文を受けて増刷分を直送しているのは知っていたんですが、「取次は商流だけで物流は介さず」なのですか。その認識はなかった。どうやら決済機能を取次に委託しているような形になっているようです。ということはもしかしたら、出版科学研究所の統計上は「取次ルート」になっているかもしれませんね。確認が必要だ。
他にも「デジタル印刷は約2万点に対応」「現在は重版の3割をデジタル印刷でカバー」「同社の24年3月期の返品率は26.8%に下がった」など、興味深い数字がいろいろ出てきて大変勉強になりました。しかもこれ、サイバー攻撃の影響込みですもんね。すごいわ(2回目)。
KADOKAWA 出版製造流通DX「BECプロジェクト」初公開 営業・製造・物流を三位一体でデジタル化 返品率の低減、販売機会の拡大など実現〈The Bunka News デジタル(2025年1月16日)〉
「必要な本を、必要な人に、必要な時に」持続可能な出版業界を目指す「出版製造流通DXプロジェクト」が本格化 -デジタル製造書籍部数が累計3,000万部を突破- | ニュースリリース〈KADOKAWAグループ ポータルサイト(2025年1月16日)〉
報道の後追いでプレスリリースも出ています。恐らく、もともとその予定だったんでしょうけど。報道に出ている数字はおおむねプレスリリースでも公開されているので、ペイウォールに阻まれて読めない方はこちらを確認するといいでしょう。ちなみに、文化通信に書かれている「全国約1800店舗に導入」は、日経にもプレスリリースにも載っていません。質疑応答で口頭の説明だったのかな?
技術
個人向け「Microsoft 365」にCopilot統合で30~40%値上げ〈ITmedia NEWS(2025年1月17日)〉
Google Workspace、追加料金なしでGemini利用可能に。ただし3月から値上げ〈PC Watch(2025年1月16日)〉
MicrosoftもGoogleも、Office系の生成AIはアドオンサービスとして展開してきたのですが、ここへ来て既存サービスに組み込む形で通常プランの値上げに走っています。こういうのっていわゆる「抱き合わせ商法」じゃないですかね? 公取委案件の匂いがする。
ちなみにMicrosoft 365 Personalは、Copilotを含まない「クラシック」というプランが用意されたらしいのですが、ヘルプの記述通りに操作しても私の画面にはその「クラシック」の選択肢が表示されないというわけのわからない状態になっています。同じようにダメな人と、切り替えできた人がいるから不思議。ABテスト? バグ?
24年「フィッシング」最多 偽サイト誘導148万件〈日本経済新聞(2025年1月12日)〉
2025年予想に「【技術】サイバー犯罪は自分事」を入れたのは、もちろん2024年のKADOKAWAの被害が念頭にあったからですが、こういう「過去最多」という情報にも後押しされました。警鐘を鳴らしておいたほうがよいな、と。ちなみに、ランサムウェア被害の3分の2は中小企業だそうですよ!
ソニーG、ブロックチェーン一般公開 ファンの交流促す〈日本経済新聞(2025年1月14日)〉
ソニーみたいな大企業が、ブロックチェーン基盤事業に「いまから参入」というのが驚き。しかもこれ、オープン型なのですね。「コミュニティーの創出を後押し」ということで、資本を入れたKADOKAWAにも「これを使え」って話になるかも? 少し気になって過去の動きを調べてみたら、KADOKAWAがサミー、グッドスマイルカンパニー、ウルトラスーパーピクチャーズと共同で設立したNFTサービスの企画・開発・運営会社は、2024年9月にサミーが吸収合併して消滅していました。ありゃま。
ポストCookieからハイブリッドCookieの時代へ/必要な対応とは?【IM簗島氏×アタラ杉原氏】〈MarkeZine(2025年1月15日)〉
こんどは「ハイブリッドCookie」ですか……なんかまた新しいカタカナ語で煙に巻かれている気分です。正直、メディアが発信しているコンテンツを無視してユーザーを追跡するリターゲティング広告(リタゲ)にそこまで固執する必要あるのか? と思うのですけど。リタゲは効果があるから好んで使われているというのは百も承知なんですが、コンテンツと関係ない広告が表示されることによるメディア価値の棄損がいまのこの状況を招いているとも言えるんじゃないでしょうか。
BOOX、13型E Inkを採用したAndroid搭載モノクロ電子ペーパー端末「BOOX NoteMax」〈ITmedia PC USER(2025年1月17日)〉
あれ? 「OSとしてAndroid 13を採用」はいいんですが、Google Play対応かどうかが書かれていませんね……大事なのはそこなのに。SKTの商品ページにも載っていません。ホーム画面のアイコンに「Play Store」が見えるので、恐らくいままで通りこれも対応なんでしょうけど。なんで訴求しなくなっちゃったんだろう?
お知らせ
新刊について
新刊『ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた』12月1日より各ネット書店にて好評販売中です。1月からKindle Unlimited、BOOK☆WALKER読み放題、ブックパス読み放題にも対応しました!
「NovelJam 2024」について
11月2~4日に東京・新潟・沖縄の3会場で同時に開催した出版創作イベント「NovelJam 2024」から16点の本が新たに誕生しました。全体のお題は「3」、地域テーマは東京が「デラシネ」、新潟が「阿賀北の歴史」、沖縄が「AI」です。
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雑記
スタンディングデスク環境を整えましたが、立ちっぱなしもあまり良くないという情報を目にしたので、座面高約66cmのハイチェアを購入。ときどき座るようにしています。(鷹野)
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