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2023年4月2日~8日は「Twitter APIの唐突な遮断で多数のサービス終了発生」「アメリカでも生成AI規制への動き」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
【目次】
政治
先週は「AIと政治」に絡む話題が多かったのですが、論点のベクトルがそれぞれ異なり、どれも結構重要なので、必然的にピックアップ件数も多くなっています。大変だこれ。
AI企業の活動、法規制を 米大統領、情報保護訴え〈共同通信(2023年4月5日)〉
「ChatGPTはプライバシー侵害」イタリアに続いてEU各国もChatGPTの利用禁止を検討中?【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2023年4月6日)〉
先週、本欄にはピックアップしませんでしたが、イタリア当局がChatGPTへの利用者のアクセスを停止するという動きがありました。他のEU各国も利用禁止を検討中で、とうとうアメリカ政府まで法規制に乗り出す構えを見せています。ポイントは、いずれも「個人情報保護」を問題としている点でしょう。「著作権」ではないのです。
画像生成AIの学習について絵描きにアンケートを取った結果と今後の考察〈よー清水|note(2023年4月6日)〉
だから、こちらの意見は、気持ちは理解できるのですが、個人情報保護と著作権の話が混ぜこぜになってしまっており、説得力が欠けるものになっています。また、諸外国とは異なり、日本ではすでに著作権法第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)によりAI学習用途なら著作物は無断利用可能になっています。「悪法もまた法なり」です。それが「気に入りません」と言われても、すでに施行された法律を変えるには大変な困難を伴います。
だから、すでにある条項をうまく活用することを考えたほうがよいと思うのです。法30条の4には「ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」という但し書きがあります。攻めるべきなのはここでしょう。たとえばイラストレーターなら「AIは人間より短期間に大量生産できてしまうので、絵柄の無断学習は『著作権者の利益を不当に害することとなる場合』に相当するのでは」といった訴えが有効的かもしれません。
焦点:「作者」はいったい誰なのか、AI生成作品が招く著作権論争〈ロイター(2023年4月6日)〉
AI生成作品についてこういう論争があるのは確かですが、「法改正が必要だ」という話にまでは至っていません。この記事でも触れられている「猿の自撮り」事件もそうですが、著作権は人間による表現にのみ発生するので、AI生成作品に著作権は発生しないのが大前提。ただし、どこまで人の手が介在したら著作権が認められるのか? という境界線の見極めは必要で、その確認がなされているに過ぎません。立法ではなく、司法の判断が必要。「アイデアと表現の境界線」などと同じ話と言っていいでしょう。
チャットGPT、教育指針作成へ 文科省、思考力低下の懸念配慮〈共同通信(2023年4月6日)〉
欧米が「個人情報保護」のために規制に動き出しているのに対し、日本政府は教育現場での利用について「思考力低下につながるとの懸念」から指針を取りまとめるという話が出ています。これはこれで、Wikipediaに対する拒絶反応と同じようなことが起きそうな懸念があります。初等・中等教育はともかく、高等教育では「生成AIをいかに活用するか?」を考えたほうがよさそうです。
その点、東京大学が「利用禁止するだけでは問題は解決しません」という声明文を発表していたり、甲南女子大学が「AIとの共創を学ぶ授業を4月より展開」というプレスリリースを配信していたりというのは、我が意を得たりと思いました。
ChatGPT、何が問題か 元グーグル社員「非常に無責任で無謀」〈朝日新聞デジタル(2023年4月6日)〉
GoogleがAIの秘密プロジェクトで軍と契約していることを知り、反発して辞めた方による問題提起です。先に挙げたような論点も含め、懸念すべき点がよくまとまっていると思います。しかし、AI推進派が「中国との軍拡競争というストーリーでAIを説明しようと」するというのは、端的に言って「事実」なのですよね。先月にはすでにバイドゥがChatGPT対抗のプロダクトを発表していますし、今月に入ってテンセントやアリババも追従する動きを見せています。「遅れを取って良いのか?」という話になるでしょう。それは難しいので、欧米の政府は「個人情報保護」からまず攻めている、というところなのでは。想像ですが。
テンセント、中国版「ChatGPT」を開発中 類似プロダクト競争激化〈36Kr Japan(2023年4月4日)〉
中国アリババ、社内AIテストにユーザー招待-ChatGPTに対抗〈Bloomberg(2023年4月7日)〉
中国は「金盾(グレート・ファイアウォール)」でシステム的にインターネットを検閲・ブロックしていますから、ChatGPTも自由には使えません(VPNでの接続も規制されそうという情報がありました)。それゆえ、安全に使える国産AIへのニーズが高いというのも理解できます。
ChatGPTに「贈収賄で服役した」と嘘プロフ流された市長、OpenAIに訴訟準備〈テクノエッジ TechnoEdge(2023年4月6日)〉
こちらは、生成AIがしれっと嘘をつくハルシネーション(幻覚)問題が、とうとう裁判沙汰になりそうというニュース。同姓同名の取り違えならともかく、存在しないプロフィールが捏造されるという声も多数ありましたので、侮辱や名誉棄損になるような出力も中にはあるでしょう。
この記事の最後のほうには「ちなみに米国著作権局は先日、AIが出力した画像や文章その他の作品には、著作権が認められないとすることをガイダンス文書に示しました。それによると、AIが出力した文章による名誉毀損は、誰が責任を負うことになるのかもはっきりしていないことになりそうです」なんてことが書いてありますが、それはさすがに勇み足でしょう。
単なる事実とかありふれた表現など、人間による表現でも著作権が認められない場合があります。たとえば「バカ」の2文字はありふれた表現なので著作権は発生しませんが、だれかに向けて言ったら侮辱罪になる可能性があります。つまり著作権が発生するか否かとは関係なく、ふつうに情報の発信元――この場合、OpenAI社に責任があるって話になると思いますよ。
コンテンツ産業の拡大提言 経団連、海外市場で3倍に〈共同通信(2023年4月7日)〉
経団連が政府に、コンテンツ産業の拡大振興支援を求める提言を発表しました。この提言をまとめた委員会の委員長は、DeNA会長の南場智子氏です。経団連は重厚長大な製造業を中心とした組織というイメージがありますが、コンテンツ産業にももっと力を注いで欲しいという提言が出てくるようになったのは、個人的には喜ばしいことだと思います。提言の詳細はこちら。
社会
※デジタル出版論はしばらく不定期連載になります。ご了承ください。
情報処理推進機構(IPA)のサイトが刷新されるもあちこちリンク切れ、みんなガチギレ – やじうまの杜〈窓の杜(2023年4月3日)〉
大量のリンク切れをIPAが謝罪 ~重要コンテンツは原則、全件リダイレクトへ〈窓の杜(2023年4月4日)〉
官公庁系の公式サイトはリニューアル時にリダイレクトを設定しないことが多い印象がありますが、なんと情報処理推進機構(IPA)がやってしまいました。直近、4月16日に行われる情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の勉強に支障があると、困っている声が観測できました。よりによってIPAが、というのがみんなの怒りに火を付けた感があります。
個人的には以前、文化庁公式サイトがリニューアルしたとき、同じようなリンク切れをやらかしたのを思い出しました。自著『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の出版翌月に、本に記載した文化庁の参考URLが404を食らうという。ふざけんなって思いましたよ……ほんと。
ちょっと待て文化庁、サイトリニューアルはいいけど、大事な記事のURL変えるなよ……「著作物が自由に使える場合」のページが404になってるじゃないの。何考えてんの!http://t.co/mg9aCCodN4 @prmag_bunka
— 鷹野凌@HON.jp📚 (@ryou_takano) May 28, 2015
WEBメディア「ほんのひきだし」リニューアルのお知らせ~書店への集客をより強化するメディアに全面刷新~〈日本出版販売株式会社のプレスリリース(2023年4月3日)〉
関連して。こちらは「リニューアル時にリダイレクトを設定しない」のではなく、リニューアルを期に過去のコンテンツを大量に消すという、ちょっとびっくりするような措置を行っています。「月間平均のページビュー数は170万を超える」とありますけど、過去記事へのアクセスもけっこうな割合を占めていたのでは? と思うのですけどね。
たとえば、2019年に配信された文化通信社 星野渉氏による「“ドイツモデル”からみる出版業界の将来 各社が問われる「マーケットイン」の姿勢とは(Internet Archive)」など、いま読んでもためになるような記事がごっそり消えています。全件を確認したわけではないのですが、一部は残っているのが逆に謎。
ちなみに、HON.jp News Blogで「ほんのひきだし」を取り上げた記事は79件ありました。個人ブログ時代と合わせると100件近く。そういう「バックリンク」ってウェブサイトの資産だと思うのですが、こうも容易く捨ててしまうとは……いや、まあ、結局のところ他所のメディアの話ですから、「好きにすれば?」なんですけど。もったいないなあ、と。
博報堂、雑誌からジャニー喜多川氏巡る記述削除 広報が判断…「ビジネスパートナーへの配慮のため」〈J-CAST ニュース(2023年4月3日)〉
続報。先週の時点では、顛末を公開した矢野利裕氏が「おそらく」と前置きした事情が、想像通りだったことが判明していました。広告代理店の広報誌みたいな雑誌ですし、そうじゃなくても編集と営業がぶつかるのはよくある話。むしろ「本記事は、ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所への配慮の観点から、博報堂広報室長の判断により一部表現を削除しています」という記述がよく許されたなあと、感心するくらい。
ちなみに、この記事の最後には「小野氏は今回の号で編集長を退任となり」とありますが、退任はこの号の制作前から決まっていたことなのだそうです。書かれていることは事実ではあるけど、その「前から決まっていたこと」という情報が無いので、あたかも本件をきっかけに退任したかのような印象を与えてしまうのが怖い。
これもメディアの怖いところですね。メディアの闇をメディアの闇が覆うという。 https://t.co/u06cTn29Mi
— 小野 直紀|Naoki Ono (@ononaoki) April 3, 2023
学校で「なぜ本を読むのか」のサポートが必要、子どもが本嫌いになる3大理由〈東洋経済education×ICT(2023年4月7日)〉
小・中学生向けに読書教育プログラムを提供する、元カリスマ書店員・田口幹人氏の活動についての記事です。これは恐らく東洋経済側の問題だと思うのですが(理由は後述します)、リード文がいきなり「子どもたちの読書離れが進んでいる」から始まるのが、正直、萎えます。本文にはその根拠が書かれていますが、それがなぜ「2020年の大人を含めた読書世論調査(毎日新聞)」なのか。首を傾げてしまいました。
学校の話なのですから、大人を含めない学校読書調査を引っ張ってくるべきでしょう。もっとも、小・中学生の平均読書冊数は長期的には増加傾向が続いているので、「子どもたちの読書離れが進んでいる」というリード文に反する情報になってしまいますが。学校読書調査の長期推移グラフを見れば一目瞭然。20世紀の子供たちに比べたら、21世紀の子供たちのほうがはるかに本を読んでいるのですよね。
ただ、短期的には、直近の第67回調査(2022年)で中学生の不読者割合が急に増えているのが気になっています。そういう「事実」を切り口にするなら、素直に頷けるんですけど。前から何度も指摘していますが、枕詞みたいに「出版不況がー」とか「読書離れがー」って言うの、やめましょうよ。取り組みそのものは素晴らしいと思うのに、もったいない。
ちなみに、田口幹人氏は過去のインタビューで“「活字離れ」の前半の20年間までは、出版販売金額は右肩上がりで増え続けてきました”という「事実」をちゃんと指摘しています。今回の「若者の読書離れといわれて今年で46年目」という言葉も、出版販売金額が右肩上がりで増えていたころからそう言われ続けてきたという文脈だったのでは? と思うのですけどね。だから、恐らく東洋経済側の問題ではないか、と。
経済
【弁護士が解説】インボイス制度の開始で、フリーランスが値下げ交渉を受けたらどうする?〈FREENANCE MAG(2023年3月29日)〉
弁護士による解説。私も本欄で何度か指摘してきましたが、不当な値下げ交渉は独占禁止法の優越的地位の濫用に当たる可能性があります。下請法でも問題になる可能性があります。個人事業主・フリーランスはどういう場合に当てはまるのか、しっかり理論武装して備える必要があるでしょう。もちろん発注側も、不当な値下げ交渉にならないよう、注意する必要があります。
講談社、「ゲームの歴史」を販売中止に 「事実と異なる記述あった」と認める 修正販売は予定なし〈ITmedia NEWS(2023年4月7日)〉
続報。書店へ販売中止の連絡が流れているそうです。週明けには正式な発表があるとのこと。著者の立場で考えたとき気になるのは、印税はどういう扱いになるのか。日本書籍出版協会の出版権設定契約ヒナ型では、第15条に「本著作物により権利侵害などの問題を生じ、その結果乙(出版権者)または第三者に対して損害を与えた場合は、甲(著作権者)は、その責任と費用負担においてこれを処理する」とありますが、今回の場合は少なくとも「権利侵害」ではありません。「など」に含まれる?
また、講談社が書協のヒナ型を今回の契約でそのまま使っているとも限りません。アメリカの場合、大原ケイ氏が以前解説してくれたように「“every fact is true, and that its accuracy is the writer’s sole responsibility”(ここに述べられている事実は全て真実であり、それが正確であるかは著者の全責任となる)」と契約書に記されています。講談社の契約にもそういう条項があるのかどうか。
物価高、新刊本も値上がり加速 11年連続上昇、計159円高く〈共同通信(2023年4月8日)〉
資源やエネルギーの価格高騰により、紙、印刷、輸送コストが膨らんでいる――という前半に対し、後半では「出版社が少ない部数でも利益を確保するため、値上げを続けてきたという事情」についても触れられています。まあ、直近ではロシアによるウクライナ侵攻や急激な円安などの影響が大きいのも確かですが、値上げはそれ以前から行われてきてますからね。
以前、「デジタル出版論」の連載でも指摘しましたが、日本書籍出版協会「再販制度」のページはそろそろ見直すべきでしょう。なにしろ、2001年からアップデートされてませんから。書協が主張している「出版物は消費者物価指数で見ると他の商品と比べて値上がりが少なく」は、21世紀に入ってからはもう当てはまらないのですよね。世の中のデフレ傾向とは逆に書籍・雑誌は値上がり続けたため、いまでは他の商品と比べ値上がりが大きい状態です。アップデートしないと「嘘だッ!」って言われちゃいますよ。ツッコミどころは潰しておくべき。
朝日新聞が値上げ「報道の質を維持し、安定発行するため」 読売「少なくとも1年見送り」と判断分かれる〈J-CAST ニュース(2023年4月5日)〉
関連して。新聞各社から「値上げします」というお知らせが出ていますが、読売新聞はまだ余裕があるのか「少なくとも向こう1年間」は値上げしないと宣言しています。しかし、そのしわ寄せって、新聞販売店に行くんじゃないかな……?
「Twilog」「feather」、機能停止に Twitter API有料化の波紋広がる〈ITmedia NEWS(2023年4月5日)〉
本件、先週ピックアップした時点では移行に30日間の猶予があると告知されていたはずなのですが(3月30日)、4月4日にはもうTwitter APIを使っていたサービスがいきなり遮断され止まるという事態が発生しています。また同時に、影響はないとされていたはずの、Twitterアカウントを利用した外部サービスのログイン(SSO)も止まっているようです。もうインフラとしての役割は完全に放棄したとみてよさそう。
私も、利用していたサービスが複数止まってしまい、先週は代替措置など対応に追われました。まず、Twitterの投稿をスプレッドシートへ自動保存する「Twitter Archiver」が止まってしまいました。このサービスは、Twitterなどへキュレーションした記事を1日1回まとめる「日刊出版ニュースまとめ」のために使っていました。ただ、念のため事前にMastodonへの投稿を取得する代替措置を用意しておいたため、ちょっと加工にひと手間増える程度の影響で済みました。危なかった……。
あとは、RSSリーダー「Feedly」のPRO+プランで利用できた、任意のTwitterアカウントをフォローする機能が止まりました。これは、ウェブサイトで記事を更新したときにRSSを配信しないところが増えているため、それをカバーする目的で利用していました。RSSは配信しないのに、Twitterには公式アカウントを持っていて更新情報だけ流すという運用をしているサイトを、この機能を使ってウォッチしていたのです。最近そういうサイト、増えてるんですよね。困る。
で、実はこれは、同じく「Feedly」のPRO+プランで利用できる「RSS Builder」を使うと、RSS未配信のサイトでも更新情報をウォッチしてRSSを自動配信してくれます。本来、それで十分なのですが、これには25件という上限があります。節約しなきゃいけないので、Twitterアカウントをフォローする機能で代替していたのです。
それが止まってしまって、困ったなあと思っていたら、Feedlyがすぐさま「上限を50件にします」と対応してくれたので、助かりました。移行に多少手間はかかりましたが、運用への影響は少なく済みそうです。まあ、RSS未配信のサイトをウォッチする手段は「Distill Web Monitor」など他にもいろいろあるので、わざわざTwitterを使わなくてもいい、とも言えます。
困るのは代替手段がない場合。私にとって影響が大きいのは「Twilog」の停止です。自分の投稿を保存しておき、あとから検索して掘り出すのにとても便利だったのです。Twitterへの自分の投稿を再利用しようと思ったとき、公式が提供している検索の仕組みが貧弱なので、サードパーティー製に頼らざるを得ない状況がありました。
公式だと「高度な検索」を開くのも手間だし、いちいち (from:ryou_takano) を入力するのも面倒くさい。掘り出せても前後の文脈はすぐに確認できない(キーワードを外して日付の範囲指定をすれば可能ではあるが面倒くさい)。検索で掘り出したらその日の投稿一覧をワンクリックで参照できたTwilogは、そういう意味で私のニーズにぴったり合っていました。
残念ながらこれは、代替手段がなさそうです。Twitter APIの料金設定からすると、代替サービスが出てくることもないでしょう。過去ログはともかく、今後は「Twitterへこれ以上自分の投稿を残さない」ことが最適解となりそう。少なくとも、私にとっては。というわけで、私個人のTwitterアカウントは、今後は「見る専用」になる予定です。ま、仕方ないよね。
技術
Twitter「おすすめ」に載る方法 アルゴリズムから暴かれた“優遇されるツイート”〈KAI-YOU.net(2023年4月4日)〉
予告通り、Twitterのレコメンドに使用されているコードがオープンソース化されました。ただ、正直、こういう動きも冷ややかな目で見るようになってしまいました。記事の最後に「また、今後さらに細かな変更などが起こっていくとも考えられます」とありますが、公開後にアルゴリズムを変え、その変更内容は明かさないという可能性は、ふつうにあり得るでしょう。「オープンソース化するとは言ったが、その後、変更しないとは言ってない」みたいな。
だから、恐らくこれは「いまだけ通用するテクニック」ではないかな、と。しばらくしたら「もうこの手法は通用しなくなった」なんて具合に、また振り回されることになるでしょう(予想)。こういう「優遇されるツイート」みたいなテクニックって、一部界隈ではSMO(Social Media Optimization)なんて呼ばれていたりします。要するにSEO(Search Engine Optimization)の亜種なのですよね。
ライバルとの差別化が目的ですから、そのうち悪用するような動きもきっと出てきます。悪用が運営に察知されたら、ふつうはアルゴリズムの変更で対処します(たとえばGoogleのパンダアップデートやペンギンアップデート)。変えたアルゴリズムの詳細を明かしたらまたすぐハックされますから、ふつうは変更の詳細は明かさないでしょう。
あるいは、アルゴリズムの変更も公開し続けるけど、変更の頻度がめちゃくちゃ高い、とか。そうやって、利用者を手のひらのうえで転がすような性格の悪い真似をする、かもしれません。そうやって翻弄される未来が想像できてしまうので、正直、もういいかな? という気持ちになっています。
ChatGPTのプロンプトエンジニアリングはとても「変なもの」。PKSHAと東大・松尾教授が語る〈PC Watch(2023年4月5日)〉
メディア向け勉強会「歴史転換期におけるChatGPT/LLMのビジネス活用の展望」のレポート。このタイトルに使われている松尾教授の「プロンプトエンジニアリングはとても変なもの」という発言は、私も感じているもやもや感だったりします。TwitterやGoogleのアルゴリズムをいかに出し抜いてやるか、みたいなのと根が同じというか。別の記事への反響ですが、「ファミコンの裏技見つけて自慢し合うあたりの楽しさがある」というコメントが、言い得て妙だなと思いました。
ここ最近はそれがちょっと過熱しすぎている感があって、はてなブックマークのホットエントリーにプロンプトエンジニアリングのテクニックを公開する記事が毎日のように上がってきたり、noteに投稿された「AI」記事が6.7倍になんて情報も出ていたりします。
アメリカはもっと過熱していて、AIチャットボットに最適な質問をする職能に対し、年俸4000万円の求人が出ているなんてニュースもありました。当然その裏側には、AIチャットボットを活用することで要らなくなった人の給料を削減(というかクビに)する動きが隠れているのでしょうけど。
「AIに毒を盛る」──学習用データを改ざんし、AIモデルをサイバー攻撃 Googleなどが脆弱性を発表:Innovative Tech〈ITmedia NEWS(2023年4月5日)〉
以前ピックアップした「Glaze」は著作物をAIの学習から防御するツールでしたが、こちらはAIを悪用するための手法です。まだ「そういう脆弱性がある」という論文の段階ですが、恐らく今後、ブラックハットSEOと同じような動きが広がっていくことでしょう。基本、AIの学習用データの中心はインターネットに公開されている情報ですから、今後はAIをだますための情報もウェブ上に氾濫することになりそう。それもAIによる大量生産だったりして。想像するだけでげんなりします。
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雑記
新しい年度が始まりましたが、大学の講義は週明けから。今年度から新たに1年生向けの「ITリテラシー」も担当することになり、追加準備が必要となりました。内容はある程度お任せなのですが、Microsoft Office「P検3級相当」などが到達目標に設定されているため、P検テキストを入手して「なにやろうかな?」なんてことを考えています。ぼくより詳しい学生もいるんじゃないかなあ(鷹野)
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