「Twitter対抗のThreads、数日で登録者数7000万人超に」「未来屋書店mibonサービス終了へ」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #578(2023年7月2日~8日)

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 2023年7月2日~8日は「Twitter対抗のThreads、数日で登録者数7000万人超に」「未来屋書店mibonサービス終了へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。

【目次】

社会

「性的表現が複数」小学生向け雑誌ニコ☆プチの付録漫画が物議 一部の親が激怒「おしゃれなお姉さんに憧れて買っているのに…」〈まいどなニュース(2023年7月3日)〉

 小学生向けなのにちょっと過激では? という批判を受け、版元の新潮社が謝罪文を公表する事態に。昔から少年マンガより少女マンガのほうが性表現は過激で、しばしば問題視されてきました。正直、「なにをいまさら」感もありますが、社会の許容度が大きく変わりつつあることを示しているのかもしれません。

 本件の反響を見ていると、とくに「やめてっ」と言ってるのに無理矢理キスをする行為にダメ出しされているように感じます。いまは「性的同意」についてシビアになっていますからね。「性交同意年齢」も13歳から16歳に引き上げられたばかりです。雑誌の対象年齢と合わせ、昔より問題視されやすくなっているのでしょう。

自分の考えに近い意見・情報表示されやすい、ネット特性「知っている」日本38%…米・中を大幅に下回る〈読売新聞(2023年7月4日)〉

 総務省から「令和5年版 情報通信白書」が公表されたのをうけての記事。読売新聞が取り上げているのは、いわゆる「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」や「ファクトチェック」に関する部分だけですが、もちろん白書の内容はいつものようにめちゃくちゃ多岐にわたります。

 個人的にいつも気になっているのが「情報通信機器の世帯保有率の推移」について。2022年はスマートフォンが9割に達したこと、パソコンが7割弱まで下がったこと、タブレットが4割台に戻したことあたりがトピックスでしょう。

経済

バズっても売れない?本は誰に向けて書くべきか〈集英社新書プラス(2023年7月1日)〉

コンテンツが多すぎる時代、映画批評にできることとは?〈集英社新書プラス(2023年7月2日)〉

 『ハリウッド映画の終焉』の著者・宇野維正氏と、『映画を早送りで観る人たち』の著者・稲田豊史氏の対談。映画評論の話が中心ですが、物書き全般にも言える話だな……と思いました。「Twitterで可視化されてない人たちに向けて本を書く必要がある」「今、人類にとってコンテンツが多すぎると思うんです」とか、専門誌や専門サイトの存在意義についてなど、いろいろ考えさせられます。

Twitter、改良版の「TweetDeck」をリリース ~有償の「Twitter Blue」専用に?〈窓の杜(2023年7月4日)〉

 ついに有償化。これまで愛用していた方々からは怨嗟の声が散見されましたが、正直、これがなぜいままで無料で利用できていたのか、むしろ不思議だったんですよね。広告が入らないから快適だし、チームでアカウントを運用しようと思ったら(パスワード共有は論外として)他に選択肢はない状態でしたから。真っ先に有償化されてもおかしくないと思っていました。むしろ、もっと早い時期に有償化していれば、案外すんなり受け入れられていたかも。いまの状況だと……。

動画配信のU-NEXT、「ブック」サービスとして強化 「毎日無料」開始〈Impress Watch(2023年7月5日)〉

 複数の電子書店から新たな動きが続出した1週間でした。U-NEXTのリニューアルは、月額プラン未加入でも「ブック」のコーナーでマンガの「毎日無料」が利用できるというもの。毎日1話ずつ無料で読める「毎日無料」と、対象作品合計で1日12話が無料で読める「毎日無料+」があるそうです。いわゆる「待てば無料」方式によるテコ入れと言っていいでしょう。これにより「ブック」単独での利用者増が図れるかどうか。

dアニメストア、原作コミックやノベルの電子書籍を販売開始 会員は毎月1冊70%ポイント還元〈ITmedia Mobile(2023年7月5日)〉

 こちらはドコモの新たな動き。「dアニメ」と「dブック」は同じdocomo IDで利用できるとはいえ、これまでは連携した動きがあまり感じられませんでした。それが、ここへきてようやく「アニメをフックにマンガや小説を売る」というテコ入れが行われるようになりました。同タイミングでU-NEXTと逆の動きをしている感じ。まあ、善哉。

 ちなみにビューアは「dブック」と同じ、ACCESS「PUBLUS Reader」(for Browser)であることが確認できました。ただ、規約や説明書きを読む限りあくまで「dアニメストア(ブック)」であって、「dブック」との連携といった記述を見つけることはできませんでした。少しは誘導を図ってもいいのでは? と思うんですけど。

未来屋書店「mibon電子書籍」8月終了 「honto」に引き継ぎ〈文化通信デジタル(2023年7月5日)〉

 こちらは残念な動き。シャープの電子書籍配信ソリューション「book-in-the-box」を使っているサービスが、また一つ消えてしまうことに。本稿執筆時点で、他にはフランス書院「プラチナ文庫」「カンナ」が残っているのは確認できましたが、他は……?

 ただ、サービス終了にあたって「honto」に引き続きが可能であるのは良いこと。「ヤマダイーブック」閉鎖時の炎上など、過去の事例にしっかり学んでいる感があります。って、これもう9年前の出来事なんですねぇ……過去記事を掘り出してみて、ちょっとびっくりしました。

MetaのTwitter対抗アプリ「Threads」、日本でも提供開始〈CNET Japan(2023年7月6日)〉

 先週、Twitterに次々と悪い意味での“ヤバい”ことが起きているタイミングに、Twitter対抗の本命と目されているMetaの「Threads」が「まだリリースされていない」とお伝えしたばかりですが(#577)、予定を前倒ししてリリースされました。

 Instagramのアカウントがあればすぐ利用できるとあって、あっという間に登録者数が7000万人超というすさまじい規模に達しています。これほど規模のサービスを大きなトラブルなく立ち上げられてしまうのは、素直に「すごい」の一言です。

 なお、Meta社のマーク・ザッカーバーグCEOは、ユーザーが10億人規模に達したら収益化を考えると表明しており、しばらくは広告の入らない状態で利用できることになりそうです。広告まみれのうえ閲覧数にまで制限が加えられてしまったTwitterとは好対照。Meta社は他に収益の柱がありますから、これでTwitterはかなり厳しい立場に追いやられたのでは。

 まあ、ハッシュタグがないとか、投稿検索がないとか、フォローしてない人の投稿が大量に流れてくるなど、あれこれ不満の声も聞こえてきます。ただ、ソーシャルネットワーキングサービスは「人の繋がり」が重要ですから、細かな機能の過不足より、人が多いことこそが優位性となるでしょう。個人的には、アプリからしか利用できないのはちょっと辛いのですが。

紀伊國屋書店 ウェブブラウザ向け電子書籍ストア「ウェブKinoppy」開設〈文化通信デジタル(2023年7月7日)〉

 こちらは紀伊國屋書店の新たな動き。なぜいまごろ「紀伊國屋書店ウェブストア」とは別にストアを新設するのか? と訝る声も散見されましたが、これは恐らく、2021年末のGoogleのアプリ内課金ルール厳格化により、Android版Kinoppyのストア機能を終了(2022年3月19日のお知らせアーカイブ)せざるを得なかったことがきっかけでしょう。1年越しで抜本的な対策を行ってきたということだと思われます。

 当時のお知らせでは「以後、Android端末から電子書籍をご購入の場合は、紀伊國屋書店ウェブストアのご利用をお願い申し上げます」と告知していました。以前はアプリ内でそのまま購入できていたのが、導線をぶった切られてしまったんですよね(#515)。

 正直、しばらく使っていなかったので、以降の詳細な経過はわかりません(ごめんなさい)。本稿執筆時点で「Kinoppy for Android」を確認してみたところ、メニューは「ストア」ではなく「カタログ」になっていました。この「ウェブKinoppy」と同じデザインのページが開きますが、購入はできず「ほしいものリスト」へ追加したのち、ウェブストアから購入するというフローになっています。「Kindle」などと同じ対処法です。

Kinoppy for Androidの「カタログ」
Kinoppy for Androidの「カタログ」

 今回新設された「ウェブKinoppy」と「Kinoppy for Android」は、まだスムーズに接続できていないようですが、本来ならわざわざ「ほしいものリスト」を経由させるようなまどろっこしい真似はしたくないはず。恐らく今後、ストアへの導線がもう少しシンプルになるのではないか、と。

技術

キーワード入力だけで長文作成「AIライター」 ユーザーローカルが無償提供〈ITmedia NEWS(2023年7月7日)〉

 OpenAI社「GPT-4」のAPIを活用したサービス。さっそく試してみました。まずキーワードを入力すると、関連キーワードを入力するよう促され、生成された複数のタイトル候補から選択すると、アウトラインを生成(ここで任意に編集できる)、そこから2000字弱くらいの文章が生成される――という流れでした。生成するだけなら1分程度で簡単にできます。

 ただ、最終画面に「※この内容は完全なものではありません。公開前に必ず内容確認・加筆修正してください」とあるように、内容的にはうーん……という感じ。ちょっと試した範囲でもモロにハルシネーションが発生しているのを見つけて、GPT-4でもやっぱり「ファクトに弱い」ことが改めて実感できました。

 これはむしろ、エディターシップ教育のために活用するのがいいかも。年始の動向予想にも書いたように、これからは「AI生成コンテンツの見極めや二次加工という、いままでとは違った領域での必要性が求められる」のは間違いないので、その練習台にはうってつけだと思うのですよね。

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日刊出版ニュースまとめ

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雑記

 関東地方は恐らくまだ梅雨は明けていませんが、ときおりのぞく晴れ間では、すでに日向を歩くのが躊躇われるような熱光線が降り注ぎつつあります。勤務校は最寄り駅から徒歩10分程度なのですが、太陽に体力をがっつり奪われます。灼熱の季節……(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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著者について

About 鷹野凌 822 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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