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2025年4月27日~5月3日は「情プラ法施行でGoogle、LINEヤフーなどが指定」「NotebookLMの音声概要が日本語対応」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
今回は大型連休のため縮小版の予定でしたが、ニュースの量があまり減らずほぼ平常通りになっています。なお、恐らく今週はニュースの量が激減するのと、文学フリマ東京40への出店で書いている時間と体力が残らないことが予想されるため、5月12日は更新をお休みいたします。あらかじめご了承ください。
お知らせ
HON.jp Podcasting「#29 生成AIは新刊の要約を出力できるか?(2025年4月29日版)」を配信しました
前回の「週刊まとめ」でもけっこうしっかり取り上げましたが、ポッドキャストではさらに掘り下げました。端的に言えば、新刊の内容を無断で吸収させ続けているなんてあり得ないでしょ、という話です。たまたまその本に関する公開情報が豊富だと、あたかも要約したかのようなフリを(悪意なく)してしまうということだと思います。
この番組ではみなさまからのお便りをお待ちしています。「こんなトピックスを取り上げて欲しい」とか「最近こんなことが気になっているが、どう思うか?」「こんな本が面白かった」など、本に関わることならなんでも構いません。こちらのページでフォームから送付できます。
政治
メタやXに中傷投稿への対応義務付け 情プラ法施行で総務省が指定〈日本経済新聞(2025年4月30日)〉
情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法)の施行に伴い、大規模特定電気通信役務提供者が指定されました。Google、LINEヤフー、Meta、TikTok、X(旧Twitter)の5社です。「(参考)サービス名」には、YouTube、Yahoo!知恵袋、Yahoo!ファイナンス、LINEオープンチャット、LINE VOOM、Facebook、Instagram、Threads、TikTok、TikTok Lite、X(旧Twitter)が挙げられていました。事前の報道では「ヤフーニュース(ヤフコメ)」などを含める可能性が示唆されていたのですが、載っていません。アレ?
そこで、総務省のガイドライン(PDF)を改めて確認してみました。「権利の侵害が発生するおそれの少ない特定電気通信役務として総務省令で定めるもの」は対象外なのですね。たとえば、ECサイト・検索サイト・アプリストアなどの「①不特定の利用者間の交流を主たる目的としたものでないもの」や、ECサイトのコメント欄・ゲーム内のチャット機能などの「②不特定の利用者間の交流を主たる目的としたものであって前号の特定電気通信役務に専ら付随的に提供されるもの」は、除外されるそうです。なるほど!
つまり、指定により「削除対応の迅速化及び運用状況の透明化に係る措置」が義務付けられるのは「大規模特定電気通信役務提供者」と企業単位ですが、規制対象は「その提供する大規模特定電気通信役務を利用して行われる特定電気通信による情報の流通(法第22条1項)」なので、サービスによっては対象外となる場合もあるようです。YouTubeは「大規模特定電気通信役務」に該当するからGoogle LLCが指定されたけど、GoogleマップやGoogle Playの口コミは対象外。同様に、Yahoo!知恵袋などが「大規模特定電気通信役務」に該当するからLINEヤフーが指定されたけど、ヤフコメは対象外です。
……って、アレ? そもそもこの情プラ法に改正されたのって、ヤフコメなどへの誹謗中傷書き込みで自殺者が出たりして社会問題化したことがきっかけだったような……いいのか? これで。
社会
「PRを入れないとダメですか?」うっかり〝ステマ〟の危険性も 忘れがちなルールを解説〈弁護士ドットコム(2025年4月28日)〉
こういう注意喚起を改めて行うのは、非常に良いことだと思います。ただ、いまどき数万人フォロワーがいて過去にも広告案件受けてるインフルエンサーが、ステマ規制をまったく知らないってあり得るんだろうか? とも思ってしまいました。知らなかったことにして、すっとぼけているだけなのかも。
この解説ではなぜか明確化されてませんが、これは依頼されたインフルエンサー側ではなく、依頼した側=広告主(事業者)側が罰せられる規制です。だから、インフルエンサーに対し注意喚起するなら「広告表記を怠ると依頼主に迷惑がかかってしまうから、ちゃんと表記しないと案件が来なくなりますよ」という理路で説明する必要があるように思いました。
電子書籍リーダーの利用率は8.7%、タブレット型端末は41.7%(不破雷蔵) – エキスパート〈Yahoo!ニュース(2025年4月28日)〉
データ出典の総務省 情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」は、電子書籍専用端末の利用率が分かる数少ない信頼性の高い調査として重宝しています。ただ、いつも思うのが、これはあくまで利用時間や利用率の調査なのですよね。端末の利用状況がわかるのはいいとして、その端末を利用してどういう種類のどういうコンテンツにいくら使っているか? がわからないのですよね。じつにもどかしい。
というのは、わざわざ電子書籍専用端末を買うような人は、本もたくさん買っているはずだから。電子書籍専用端末の利用率は低くても、コンテンツの購入頻度や購入単価は高いはず。普及率が低くても、決して無視できる存在ではないはずだと思うのですよ。Amazonや楽天Koboが新しい電子書籍専用端末をいまだに出し続けているのは、そこに理由があるはず。「はず」だらけになってしまった。もどかしい。
AIに課題を書かせると資料にない内容を出力――慶應大のAI対策が話題に 狙いを聞いた〈ITmedia AI+(2025年5月1日)〉
授業で配付資料にこういう仕込みをした教員が、不正指令電磁的記録に関する罪(刑法第168条の2)に問われる可能性を指摘している方がいるそうです。それはちょっと私にはない視点だったなあ……条文は「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」ですか。
生成AIは自然言語で指令できるから、隠しテキストが「不正な指令」と警察に解釈される余地がある、という理屈です。さすがにそれは……とも思うのですが、過去に神奈川県警がおかしな解釈で約20人を検挙したコインハブ事件(最高裁で無罪に)という事例もあることですし、安易に否定はできません。
ただ、刑法の条文には前提として「正当な理由がないのに」がありますから、授業で配付する資料なら「教育目的」で免責されそうな気もするんですが、どうなんだろう? 専門家の解説が欲しい。
利用しているメディア、若年層と高齢層で差がくっきり 朝日世論調査〈朝日新聞(2025年5月2日)〉
「新聞(ウェブサイトも含む)」「テレビ(同)」「雑誌(同)」は、若年層ほど利用率が低い結果に。とくに「雑誌」は、20代以下が数%レベルと壊滅的に見えます。ただ、若年層にこの「ウェブサイトも含む」が、正確に判断できているか疑問です。月間数億ページビュークラスの「文春オンライン」や「東洋経済オンライン」などでも、20代以下は数%レベルなんでしょうか? まさか。
逆に、「ヤフーニュースやLINEニュースなどのインターネットのニュースサイト」や「X(旧ツイッター)やフェイスブック、インスタグラムなどのSNS」は、若年層の利用率が高いです。でも、これらのプラットフォームで読まれているのは結局のところ、新聞・テレビ・雑誌発の情報も多かったりするわけですよね。
大学の講義でニュースアグリゲーターなどについて触れる授業回があるのですが、終わったあとに学生から「Yahoo!ニュースはすべてヤフーの人が書いていると思ってました!」などといった感想が返ってくるんですよ。そういうちょっと複雑な情報流通経路が、若年層に限らず世間一般的に、正確に認識されていない場合も少なくないように思います。
経済
相次ぐ漫画専門店の閉店は、フランスでの「漫画人気」終焉の始まりなのか?〈クーリエ・ジャポン(2025年4月26日)〉
低迷の原因は「海賊版の増加や、カルチャー・パス効果の落ち込みなどが考えられるが、業界もその説明に苦労している」と報じられているそうです。カルチャー・パスについては、3月1日付で減額されたのが影響してるのかな? と思ったのですが、それ以前から「効果の落ち込み」が観測されていたのかしら。
2024年出版市場(紙+電子)の占有率はコミック44.8%:書籍(コミックを除く)39.9%:雑誌(コミックを除く)16.2%に ~ 出版科学研究所調査より〈HON.jp News Blog(2025年4月29日)〉
毎年恒例の。雑誌扱いコミックスと書籍扱いコミックスの詳細が出てこないと、コミック市場を除いた状況が把握できないのですよね。困ります。占有率の推移を見ると、書籍(コミックを除く)はずっと4割前後であまり変わっていないことがわかります。なお、電子出版市場の推計は2014年以降であることには注意が必要です。
「SmartNews+」がWeb版をスタート、若年層ほど有料ニュースに積極的との調査結果も〈Media Innovation(2025年4月30日)〉
せっかく「SmartNews+」を契約したのに、アプリだとなかなか閲覧する習慣が身につかない……と思っていたところだったので、ウェブ対応は非常にありがたいです。私はパソコンの前にいる時間が長いんですよ。
技術
GoogleのAIノート「NotebookLM」、音声概要が日本語を含む50以上の言語に対応〈窓の杜(2025年4月30日)〉
ついに日本語対応! さっそく直近の「日刊まとめ」と「週刊まとめ」など、自分で書いた文章や資料などで試してみました。2人のトークがめちゃくちゃ自然で驚きます。「えー」とか「あのー」みたいな、フィラーまで自然に入れてきます。あえて言うなら、息を吸い込む音が聞こえないところが不自然でしょうか。話している内容も、この2本についてはわりとしっかりしてる印象です。
ただ、1万字を超えるような記事とか、授業15回分の資料と録音データをすべて食わせたノートで作らせた音声概要には、そこそこウソが混ざっていたんですよね……テキスト出力より、ハルシネーションの発生頻度が高いような気がします。書いた本人だから気づきやすいというのもありますが、このレベルだとわりと困るかも。「2024年の出版市場は1億円!」みたいなトンデモ発言もありました。あと、読みは固有名詞が弱いです。まあ、これは音声に限らずですけど、ノーチェックはダメ絶対、ですね。
TechnoEdgeで松尾公也さんが「ポッドキャスト量産システム」と表現していましたが、なかなか言い得て妙だなと思いました。確かに、ポッドキャストやラジオの生態系に影響が出るかも……と、先行リリースされていた英語圏を調べてみました。ところが、始まったときに影響を心配する声は見つけられたのですが、その後はあまり話題になっていないようです。意外と影響はでていない? 慣れると没個性的だから、埋もれやすいのかも。
なお、ケータイWatchによると、Googleの担当者は「何らかの学習に向けた資料としての活用を想定」しているそうです。なるほど。たくさんの資料を読み込まなきゃいけないとき、まずNotebookLMに食わせてみて概要を把握する、という使い方が健全かなあ。でも、私は音声を聞くよりテキストを読む方が圧倒的に早いから、自分で音声概要を使う場面はあまりないかも。「移動中に聞く」って使い方も考えられますけど、「え?」と思ったときにその場でソースを確認できないから、あまりやりたくないです。
お知らせ
ポッドキャストについて
5年ぶりに再開しました。番組の詳細やおたより投稿はこちらから。
新刊について
新刊『ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた』各ネット書店にて好評販売中です。Kindle Unlimited、BOOK☆WALKER読み放題、ブックパス読み放題、シーモア読み放題にも対応しました!
「NovelJam 2024」について
11月2~4日に東京・新潟・沖縄の3会場で同時開催した出版創作イベント「NovelJam 2024」で新たに誕生した16点の作品を合本にしました!
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日刊出版ニュースまとめ
伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
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雑記
大型連休で大学の授業は1週休みだから今週は多少余裕ができる……はずだったのですが、なんかタスクが積み上がっていて処理が追いついていません。ままならない。(鷹野)