【更新】図書館閉鎖が校正・校閲の大きな障害に ~ 新型コロナ感染症対策の思わぬ影響

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渋谷区立本町図書館
渋谷区立本町図書館(3月24日撮影)
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 新型コロナウイルス感染拡大を受け、多くの図書館が休館になっている。出版の仕事はリモートでできることも多いが、情報の品質を担保する校正・校閲に大きな支障があることに気がついた。

 筆者は3月下旬、依頼原稿を書くため参考資料を図書館で複写しようと思った。ところが、すでに自宅の周囲は軒並み休館だった。困っていたら、渋谷区の図書館は開館していることを友人から教えてもらった。「カーリル」で検索し目的の資料があることを確認、急いで本町図書館まで行った。冒頭の写真は、その際撮ったものだ。

 しかし粘っていた渋谷区の図書館も、政府が緊急事態宣言を発令したことで、4月8日以降は休館となった。カーリルは検索対象となっている全国の図書館についてウェブサイトで状況を目視で調査、1409館のうち650館が休館していることを発表している。緊急事態宣言対象都府県では、ほとんどが休館しているそうだ。

 4月10日には国立国会図書館が、来館サービスを4月11日から休止することを発表。そして、遠隔複写サービスの受付も、4月15日から休止することを発表した。遠隔複写は「作業体制が維持できなくなった」のだという。

[追記:4月10日に発表されたのは、正しくは、4月11日から関西館が来館サービスを休止すること、東京本館と国際子ども図書館については3月5日から4月15日までの予定としていた臨時休館措置を5月20日まで延長、でした。お詫びして訂正します。]

 こうした状況を受けてか、ツイッターのタイムラインで「図書館の閉館で校正作業に問題が出ている」という趣旨の投稿を複数見かけた。そこで筆者も、以下のようなツイートを投稿した。やたらと拡散&いいね! されており、同じように困っている人が多いようだ。

 過去の膨大な出版物(もちろんそこには新聞や雑誌も含まれる)は、その品質を担保するため、膨大な労力が費やされている。もちろん瑕疵がゼロとは言わないが、商業流通されている出版物はおおむね、ある程度の品質が保たれている。そういった過去の英知を参照しながら、新たな著作は生み出されるのだ。

 図書館の重要な役割の1つは、そういった資料を収集・保存・提供すること。つまり、図書館が閉まってしまうと、過去の英知が参照できないことになる。ウェブに公開されている情報も膨大だが、過去積み重ねられてきた印刷物はもっと膨大だ。当メディアでも報じてきたように、デジタルデータの無償提供や利用条件緩和などありがたい施策も講じられているが、残念ながらまだデジタル化されていない資料も多い。

 しかし図書館閉鎖は、日本に限った話ではない。アメリカでは3月中旬時点ですでに、図書館協会が閉鎖勧告を出している。国立国会図書館運営の図書館情報ポータル「カレントアウェアネス・ポータル」の過去記事を辿ると、新型コロナウイルス感染症が拡大している地域の多くで、図書館サービスの内容縮小や休館を余儀なくされている様子が伺える。

 逆に、感染症が沈静化してきた中国遼寧省では、公共文化機関が通常業務を再開しつつあり、入館時には体温測定をしているという報道もあった。また日本でも、感染拡大時期が早かった北海道では、札幌市の図書館が一部サービスを再開している。

 また、休館している地域も、ただ立ち止まっているわけではない。有志が運営している、博物館・美術館(M)、図書館(L)、文書館(A)、公民館(K)の被災・救援情報サイト「saveMLAK」では、COVID-19の特設ページを公開。各文化施設の対応状況や、実際に行われている取り組み事例集、課題集などを発信している。

 春はきっと訪れる。いましばらく耐えよう。いまは自分にできることを考え、実行していきたい。

参考リンク

図書館休館状況調査結果(カーリル/4月9日)
https://blog.calil.jp/2020/04/stay-at-home.html
遠隔複写サービス受付休止のお知らせ(国立国会図書館/4月10日)
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2020/200410_02.html
アメリカ図書館協会が閉鎖勧告したニュース(カレントアウェアネス・ポータル/3月18日)
https://current.ndl.go.jp/node/40526
博物館、図書館などの公共文化機関が再開 遼寧省(新華社通信/3月25日)
https://this.kiji.is/615498861106676833?c=491375730748638305
札幌市 図書館一部サービスを再開(テレビ北海道/4月9日)
https://this.kiji.is/620913260045485153?c=491375730748638305

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著者について

鷹野凌
About 鷹野凌 505 Articles
HON.jp News Blog 編集長。NPO法人HON.jp 理事長。明星大学/二松學舍大学/実践女子短期大学の非常勤講師で、デジタル編集論/表象メディア演習/デジタル出版論/デジタル出版演習を担当。出版学会員/デジタルアーカイブ学会員。主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)。アイコンは©鈴木みそ氏
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