「相次ぐ無料公開の先を考える」「アメリカの書店が新型コロナウイルス対策で厳しい局面に」など、出版業界気になるニュースまとめ #416(2020年3月16日~22日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2020年3月16日~22日は「相次ぐ無料公開の先を考える」「アメリカの書店が新型コロナウイルス対策で厳しい局面に」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

ポッドキャスト

国内

“いまだけ無料”の先にあるもの ~ 社会貢献とマーケティングの狭間〈HON.jp News Blog(2020年3月16日)〉

 いわゆる「コロナ休校」対応で、書籍・雑誌を“いまだけ無料”にする事例が続出しています。ユーザーからは感謝の声も多いですが、提供側はそろそろ少し先のことも考えておきたいところ。フリージャーナリストの西田宗千佳さんに、そんなコラムを寄稿いただきました。コンテンツの無料公開、本当にこのままでいいのか 新型コロナウイルスによる一斉休校やイベント自粛などの影響から、エンターテインメント/出版業界には、コン...

 フリージャーナリストの西田宗千佳さんがTwitterで、無料公開の先までちゃんと考えているだろうか? という趣旨の投稿をしているのを見つけた編集部員からの提案で、コラムを寄稿いただきました。あまりに無料公開が頻発していたので、早めに釘を刺す意味で良いタイミングだったと思います。

 うちとしては珍しく、NewsPicksでバズっていました。特定コンテンツの無料公開と、SaaSの無料開放を、同一視する人が多いのが意外。サービスは一度きりではなく継続的な利用のほうが多いと思いますが、同じコンテンツを繰り返し利用する人はそれほど多くないと思うのですけどね。

 とはいえ、以前から普通に“無料”をプロモーション手段として活用してきたところは、恐らく大丈夫だと思うのです。今回の施策もその延長上でやっているでしょうから。大手4社の特にマンガ系は、始める前から、後のことも考えて動いてるはず。問題は、無料化の経験が少ないところや、マーケティング専門の部隊がいないところ、ではないでしょうか。

技術書典 応援祭、4月5日までオンラインで開催中 ~ 新型コロナウイルス感染予防で中止された技術系同人誌即売会「技術書典8」出展予定だったサークルと読者を繋ぐ〈HON.jp News Blog(2020年3月16日)〉

 技術書典 運営事務局(テックベース合同会社)は公式サイトで、「技術書典 応援祭」を開催している。新型コロナウイルス感染症の影響で、2月29日と3月1日に開催予定だった技術系同人誌即売会「技術書典8」が中止になったことを受け、頒布予定だった本をオンラインで販売できるようにしたもの。期間は4月5日まで。 オンライン出展しているのは、技術書典8に申し込んで当選していたサークル。物理本と電子本の、どちらもオンラ...

 技術書典の中止、HON.jp News BlogでCOVID-19関連の記事を本腰を入れて書き始める前の出来事だったので、取り上げ損なっていました。すみません。オンラインでの応援祭が展開され、物理本の扱いが始まったタイミングで記事化させていただきました。

【フォーラム記録】読書バリアフリーは知をすべての人に開くか?〈図書館総合展(2020年3月17日)〉

 昨年11月に登壇したフォーラムの、全文書き起こし&全スライド公開です。ベネッセ、京都大学、サピエ図書館の事例紹介と、私は業界全体についてを担当しています。

 関連で、昨年5月の日本出版学会春季研究発表会のレポート&コラム「誰もが読書できるアクセシブルな環境という理想と、データ流出への根強い懸念という現実」も合わせてご覧いただけたら幸いです(↓)。

 5月11日に都内で行われた日本出版学会 2019年 春季研究発表会で、私は「学術書のアクセシビリティ ―― 手話翻訳動画、テキストデータ提供の実践から」を聴講した。先駆的で興味深い取り組みだと思うのと同時に、データ流出への懸念などがさまざまな形で障壁となっている現状に、少し頭が痛くなった。今回のコラムでは、このことについて考えてみたい。前提として、研究発表は素晴らしかった 研究発表は上の写真のように、手話...

配信サイトのPVは10倍に──新型コロナで漫画無料公開、秋田書店が狙う“脱・漫画離れ”〈ITmedia NEWS(2020年3月18日)〉

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が全国の学校に休校を要請したことを受け、出版各社が漫画をネットで無料公開している。読者獲得の追い風となったのか、秋田書店などに反響や今後の取り組みを聞いた。

 秋田書店だけでなく、KADOKAWA、小学館などにも取材しています。ただ、いずれもマンガの事例です。私は前述のとおり、マンガ系はあまり心配していません。まだうまく回っているとは言えない、マンガ以外に注目したい。

弁護士ドットコム、法律書籍や雑誌の定額読み放題サービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」を提供開始〈HON.jp News Blog(2020年3月19日)〉

 弁護士ドットコム株式会社は3月17日、法律書籍や雑誌の定額読み放題サービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」の提供を開始したことを発表した。主要な法律系出版社12社が参画し、400点以上が利用できる。 BUSINESS LAWYERS LIBRARYの閲覧はブラウザビューア。拡大縮小、目次、本文検索にも対応している。縦読み、横読みの切り替えも可能。利用料は月額6300円(税別)。初回登録後10日間は無料で試せる。 開始時点でBUSINESS LA...

 10日間の無料お試しがあるので、使ってみました。ビューアの動作は軽快で良いです。検索窓が、目次を開いたところの一番下にあるので、最初は少しわかりづらいかも。なお、お試しにはクレジットカード情報の入力が必要で、期間を過ぎると自動的に課金されますのでご注意。

 なお、同様のサービスに、昨年12月に開始したばかりの「LEGAL LIBRARY」があります(↓)。料金的にはこちらのほうが若干安いですが、さてどっちが選ばれるか。まあ、サービス競争があるのは良いことです。

 株式会社Legal Technologyは12月9日、法律専門書や官公庁の資料を横断して検索・閲覧できる定額制のリサーチサービス「LEGAL LIBRARY」の正式版を提供開始した。 法律業界では、いまだに紙の法律専門書を用いたリサーチが中心なため、非効率で不自由な現状があったという。信頼性の高い法律専門書は、ほとんどが紙で出版されているため検索性に難があった。LEGAL LIBRARYは、そういった状況の解決を目的としている。 今夏に...

エイシス、違法アップロード対策活動について報告 ~ GoogleへのDMCA申請395万9357件、違法アップロードサイトへの削除要請248万6618件〈HON.jp News Blog(2020年3月19日)〉

 ダウンロード販売サイト「DLsite」などを運営する株式会社エイシスは3月19日、これまで実施してきた違法アップロードへの対策活動について報告を行った。2014年の取り組み開始から2019年12月までの通算で、GoogleへのDMCA申請は395万9357件、違法アップロードサイトへの削除要請248万6618件に及ぶとのこと。 エイシスでは、クリエイターからの申告を元にした無料の削除申請代行サービスを行っている。また、独自の「違法アッ...

 こういう数字を挙げたアピールは珍しいので記事化。出版広報センターでは「深刻な海賊版の被害」というページで被害実態についてアピールを行っていますが(↓)、出版社が実際にどれだけ削除申請を行っているか? という数字も積極的に出した方が効果的だと思うのです。

出版広報センターは、出版物に関する権利(著作隣接権)の理解促進を目的とした広報活動を行う団体のサイトです。深刻な海賊版の被害をご紹介

いまだけ無料で読める電子書籍・雑誌のまとめ(3月19日時点)〈HON.jp News Blog(2020年3月19日)〉

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で臨時休校や出社禁止など、自宅で過ごす時間が増えている方々が多くなっています。そんな時間を読書に充てて欲しいと、出版社などが特別対応で“いまだけ無料”にしている事例を、終了日順にまとめてみました。3月13日時点の記事から、追加・更新してあります。【3月27日時点の情報に更新した記事はこちら】※ 3月19日時点の情報です(期間が延期される可能性もあります)※ HON.jp New...

 いわゆる「コロナ休校」対応で期間限定の無料公開に踏み切る事例は、新規のものは減ってきましたが、総量としては増えているため、今回もまとめ記事のみ紹介します。HON.jp News Blogで3月2日から18日までに記事配信した事例の、終了日順まとめです。期間延長や追加コンテンツなど、ひととおり再確認のうえアップデートしてあります。

海外

新型コロナウイルス対策で厳しい選択を迫られるアメリカの書店〈HON.jp News Blog(2020年3月18日)〉

 Social Distancing(外出など人と交わることを避ける行為)が新しいバズワードとなっているアメリカでの都市部では、サンフランシスコやニューヨークのように戒厳令のごとく外出が禁じられている都市もある。そんなときこそ内にこもって読書をという声もあるが、他のリテール同様、書店の経営が危機にさらされていることに変わりはないと、ニューヨーク・タイムズなどが解雇を始めたアメリカのインディペンデント書店の様子を...

 独立系書店の強みであるコミュニティが、ウイルス対策の外出禁止で機能不全に。来店促進が目的だから、オンライン化すれば済むってものでもないのですよね。難しい局面です。

北京市の書店が営業再開 ネットと店舗の融合で読書体験を豊かに〈新華社通信(2020年3月19日)〉

 短編動画やライブ配信で本を紹介し、来店困難なユーザーに通販するという事例。興味深い……と思ういっぽう、日本だと、通販まで対応できる書店は、一部大手に限られてしまいそうです。

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CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。

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著者について

About 鷹野凌 727 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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