新型コロナウイルス対策で厳しい選択を迫られるアメリカの書店

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 Social Distancing(外出など人と交わることを避ける行為)が新しいバズワードとなっているアメリカでの都市部では、サンフランシスコやニューヨークのように戒厳令のごとく外出が禁じられている都市もある。そんなときこそ内にこもって読書をという声もあるが、他のリテール同様、書店の経営が危機にさらされていることに変わりはないと、ニューヨーク・タイムズなどが解雇を始めたアメリカのインディペンデント書店の様子を報じている。

 ニューヨーク最大の古書店、ストランドでは全店閉店、労組に所属する400人の書店員のうち85%にあたる400人を一時解雇(レイオフ)とした。オレゴン州ポートランドのパウエルズも、5店を少なくとも今月末まで閉店すると発表した。ニューヨークでも、次々と支店をオープンしていたマクナリー・ジャクソンが、オンラインなどの営業は続けるものの、33人のレイオフがあった。

 経営を続ける店も、サイン会などのイベントは軒並みキャンセルにする一方で、自宅配達や送料無料のサービスを掲げている。

 フロリダのブックス&ブックスのオーナーであるミッチェル・カプランは「インディペンデント書店のいちばんの強みである『コミュニティーを作る』力がそのまま盲点となったのは皮肉だ」と語る。

 出版関連のイベントもキャンセルが相次ぐ中、北米最大規模のブックス・エキスポは今のところ5月末に開催予定だが、疫病予防管理センター(CDC)の指示に従うという。一方、同じ海外からも広く著者が集まる5月のPENアメリカのイベントは中止となっている。

参考リンク

ニューヨーク・タイムズの記事
https://www.nytimes.com/2020/03/16/books/coronavirus-impact-publishing-industry-booksellers-authors.html
OregonLiveの記事

Powell’s news is suggestive of the overwhelming effect the coronavirus outbreak will have on the regional economy. Many businesses, large and small, may face similar cutbacks in the coming days and weeks.

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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