米著者協会の調査でライターの稼ぎは10年前から42%ダウン

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 アメリカの著者協会(The Author’s Guild)が毎年行っている著者の収入調査によると、中央値が2009年の年間1万500ドルから過去最低の6080ドルに落ちたという。

 この数字は著者協会が、同団体の会員と他14団体からの5067人に対して行った詳細な調査によるもので、従来の出版社から紙で、Eブックでセルフ・パブリッシングで、あるいは両方のハイブリッドまで、これまでに少なくとも1冊の本を出したことのある著者に対して行われた。著者は専業、兼業を問わない。

 本からの収入だけに絞るとさらにこの数字は減り、2009年は6250ドルだったものが、2017年は3100ドルになっている。つまり、原稿料以外の、講演料、書評、教職などの比率が上がっている。フルタイムの専業著者の収入中央値は2万300ドルで、これはアメリカが3人以上の家族の貧困ラインとされているレベルを下回る。

 中でも顕著に原稿料が落ちたとされるのは文芸書(literary fiction)作家で、2013年から43%落ちている。著者協会の会長でノンフィクション作家のジェームズ・グリックは「アメリカの著者が貧困に陥っては、読者も貧しくなる」と警鐘を鳴らす。

 原因として著者協会が挙げているのは、アマゾンの寡占によって出版社のマージンが減り、そのツケがアドバンスや印税の減額として著者側が負わされていること、教科書のEブック化、グーグル・ブックスなどがフェアユースを盾にとって印税なしで著書を公開していることなどだ。

 著者協会の副会長を務める作家のリチャード・ルッソは「アマゾンだけでなく、グーグルやフェースブックなどがコンテンツ業に進出し、より安く流通させるために我々が創り出すものの価値を落とし、そこから得た収入をアンフェアに奪っていく。なんでも早く安くしたいのはわかるが、そのせいで才能ある著者が書くことができなくなったら、その後に誰がそのコンテンツを供給するというのだろう?」と問う。

参考リンク

The Authors Guildのレポート
https://www.authorsguild.org/industry-advocacy/six-takeaways-from-the-authors-guild-2018-authors-income-survey/
ニューヨーク・タイムズの記事
https://www.nytimes.com/2019/01/05/books/authors-pay-writer.html
英ガーディアン紙の記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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