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一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)の著作権委員会は6月20日、「著作権に関するアンケート調査の結果報告」を発表した。出版社を中心とした業界関係者の、著作権業務を把握するのが目的。電子化できない理由、著者の反対意見、電子化へ向けた体制、著作権教育の状況などについて質問している。
このアンケートは、4月9日から5月8日に実施された。対象は、JEPA会員社および非会員社の著作権業務関係者。約6000人に送付し、136人から回答を得ている。出版社からの回答は95人。無作為抽出ではないため、偏りがある可能性に留意する必要がある。回答者の傾向として、参考にするのがいいだろう。
電子化できない理由として「権利処理の手間」を挙げる出版社が最も多く、「紙版の契約と同時に電子化の契約がなされず、電子化に際してあらためて手間をかけなければならないことが多い。どちらかというと編集者の電子化についての意識があまり高くない」「権利関係処理の統一マニュアルがないことや研修によりデジタル化への関心が薄い」「著作権者に比し、何故か当方は立場が非常に弱い」などが具体的な問題点として挙げられている。
電子化できない理由の2番目は「売上やコストの問題」で、「図版等が多い本の場合、電子も含めた権利処理をコストに反映すると、原価がupしてしまう」「フィルムしか残っていない場合の費用の他、写真や肖像権など、著者以外の権利処理の事務コストおよび権利処理費用が大きな課題」「特に既刊本に関しては権利処理が必要な上、OCRスキャンによる製作コストがあり、売上が見込めるものでないと電子化は難しい」などが具体的な問題点として挙げられている。
著者の、電子化に対する反対意見としては、「電子書籍の中身がキャプチャなどでwebで拡散されてしまうことが不安」「紙の書籍が売れなくなる」「著者がセリフパブリッシングで儲けたいと目論む者がかなりいる(原文ママ:セルフパブリッシングの誤りと思われる)」などが挙げられている。
なお、従業員に対する著作権教育を「特に行っていない」とする回答者は、全体で46%、年間100冊未満の出版社では73%にも及ぶ。また、権利者不明の著作物が含まれていた場合の対応は、「あきらめる」「該当部分の削除」といった回答が多い。また、インターネット上の海賊版に対しする対策は、「特に何もしていない」が最多。
参考リンク
著作権に関するアンケート調査の結果報告(日本電子出版協会)