《この記事は約 21 分で読めます(1分で600字計算)》
2024年8月4日~17日は「経産省、読書バリアフリー環境に向けた電子書籍市場の拡大等に関する調査報告書を公表」「Google検索、AI Overviewを日本でも正式に開始へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。
8月12日はお休みしたので、今回は2週間分のニュースが対象です。私が興味を持つようなニュースがお盆前後であまり減らなかったため、大幅増量版になっています。
【目次】
政治
労力やコストの回収のための著作権法改正?〈SOFTIC on the Web(2024年8月5日)〉
契約を成立させるわけでもなく、誰でもがアクセスができるような状態に自ら情報を置いておいて、その情報を使用する人に対して、対価を払えという主張はよく理解できない。
一般財団法人ソフトウェア情報センターの「専務理事の雑感」です。「某団体」と伏せていますが、日本新聞協会が7月17日に発表した「生成AIにおける報道コンテンツの無断利用等に関する声明」についてでしょう。辛辣ですが、的を射た指摘でもあると感じました。
サーチコミュニケーションの未来:AI時代における進化とマネタイズ戦略〈松浦シゲキのメディア・コミュニケーション・インサイト(2024年8月5日)〉
AIによる検索結果生成が普及する一方で、日本新聞協会をはじめとする従来のメディアが著作権侵害を主張する声が高まっているのです。しかし、この主張は時代の流れを読み誤った、極めて近視眼的な対応と言わざるを得ません。
こちらも日本新聞協会の声明に対する批判です。手厳しい。まあ、でも、私も同感です。
出版社にDDos攻撃容疑で逮捕 海外サービス利用、国際捜査で発覚〈朝日新聞デジタル(2024年8月6日)〉
欧州警察機構(ユーロポール)がDDoS攻撃代行サービスを摘発、日本に関する情報が提供されて逮捕に繋がったそうです。「2022年3月17日」に発生した「東京都の出版社のサーバー」に対するDDoS攻撃とのことですが、私の調べた限りではどの社の事例かわかりませんでした。攻撃で閲覧できなかったのは1時間半程度だったそうなので、当時はニュースにならなかったのかも? しかし、そういう経緯で提供された情報なら、これから捜査が進むと他にも逮捕される事例が出てきそうです。再発防止のため、徹底的に取り締まっていただきたいところ。
AI規制で「作風」も著作権保護を Adobeのワドワーニ氏 GDS2024世界デジタルサミット〈日本経済新聞(2024年8月7日)〉
しかしAIを使えば作風の模倣も容易だ。『ものまね作品』が販売された場合も権利者は補償されるべきだ。各国の立法機関と協力し、保護対象範囲を広げるよう働きかけている」
いや、さすがにちょっとそれは危うい主張では。そんな規制をしたら、人間による作風の模倣にまで影響が出かねません。だから恐らく「AI生成コンテンツだけを規制対象とすればよい」みたいなロジックなんでしょうけど、現状すでに人間の生み出したコンテンツなのかAI生成物なのか区別が難しい状態になってきていますし、人間の創作物にAIが補正を加えるみたいなケースをどうするか? などなど、考えれば考えるほど難しい。まあ、だからAdobeが推進している「コンテンツ認証イニシアチブ」という話に繋がるんでしょうけど。
サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議〈内閣官房ホームページ(2024年8月7日)〉
このページの末尾に、これまでの議論の整理が追加されています。これは「通信の秘密」に穴を開けようとする話なので警戒していましたが、「海外からの攻撃による被害を防ぐことが前提」なので「外国が関係する通信について分析する必要」と整理されたそうです。しかし、重要インフラ15分野は企業にも対応責任があるとのこと。15分野には「クレジット」が入っているので、決済機能を持っているサービス(EC)を運営している企業は直接関係してくるかもしれません。って、それウチもじゃん!
サイバー犯罪捜査へ国際協力 国連総会特別委が条約草案を採択、西側「主導権取り戻した」〈産経ニュース(2024年8月9日)〉
またしても情報を掴むのが少し遅れてしまったのですが、コミケでの山田太郎議員の報告によると、どうやら外務省が頑張ってくれて、留保規定が盛り込まれる形に着地したようです。もちろんあとは、国内法を整備する段階でちゃんとその留保規定を採用する必要がありますが、ひとまずホッとしました。
サイバー犯罪〈外務省(2024年8月15日)〉
外務省のサイトにも情報が出ていました。4番に「国連サイバー犯罪条約(仮称)」とあります。といっても、まだ主な内容しか載っていません。今後は「国連総会第78会期中(2024年9月9日まで)に総会に提出され、その後、総会において採択される見通し」とのことです。
「令和5年度電子書籍市場の拡大等に関する調査」に関する報告書を公表しました〈経済産業省(2024年8月13日)〉
毎年恒例の調査なのですが、昨年からお知らせの表題が「電子書籍市場の拡大等に関する調査」に変わっていてわかりづらい。報告書(PDF)そのものの表題は「読書バリアフリー環境に向けた電子書籍市場の拡大等に関する調査報告書」で、令和3年まではお知らせにもそう表記されていたんですが、なぜ変えたんだろう? お知らせも報告書の名称と同じほうが良いと思うのですが。
さて、今回はJPO登録出版社2714社に対し、アンケート調査を実施しています。事務局の三菱UFJリサーチ&コンサルティングからの依頼メールが、回答期間延長、回答期間再延長と届いていて、集まりが悪いんだな……とは思っていましたが、有効回答数318件、有効回答率12.3%というありさまでした。残念ながら出版社の読書バリアフリーに対する関心度はまだ低いと言わざるを得ない状況です。
実際のところ、こういうアンケート調査に非協力的な態度だと、政府から補助金を――みたいな話もしづらくなってしまうと思うのですが。私はもちろん回答しましたよ! 自由回答は匿名化されていますが、私の回答はちょっと他と比べると異質なのでどれを書いたかバレるかな?
社会
「10年で廃棄」で棚スカスカ 学校図書館で「除籍」作業 捨てても買えず継続利用〈丹波新聞(2024年8月5日)〉
全国SLAの定めた図書廃棄基準に従うと棚がスカスカになってしまうため、大半は廃棄しませんでしたという話。反響を見ていると「10年」の基準を責める声が多いのですが、そもそも蔵書購入予算が年間約16万円と少ない点こそが問題でしょう。思い返すと、私が小学生のころの学校図書館もこんな感じだった記憶があります。紫外線で焼けちゃったりボロボロになってたりする蔵書だらけでした。
ところで、20世紀の本なら国立国会図書館の個人送信サービスで代替可能……と言いたいところなんですが、登録には「満18歳以上」という条件があります。つまり、小中高では利用できないのです。図書館送信サービスなら18歳未満でも使えますが、学校図書館は送信対象外。近隣の公共図書館まで行く必要があります。このあたり、なんとかならないかなあ?
【ソウル通信】41 市民が読みたい本を 地域書店で貸し出す 公共図書館の事業〈The Bunka News デジタル(2024年8月5日)〉
これは面白い。図書館にまだ蔵書されていない書店在庫を、市民がその場で図書館の蔵書として登録、そのまま借りていくことができる、という制度が導入されているそうです。もう10年も前からやってるんですね。
サンリオがクリエイター支援の新事業 公式とつながる二次創作〈Impress Watch(2024年8月7日)〉
サンリオ版の「ピアプロ」みたいな感じでしょうか。文字もの限定では「カクヨム」にも公認二次創作のコーナーがあります。こういう公式が認めている場が増えるのはとても良いことだと思います。
紙のノートとタブレット、暗記学習に向いているのはどっち? 実験で明らかに〈Business Insider Japan(2024年8月7日)〉
文具でお馴染みのコクヨが、立命館大学産業社会学部・岡本尚子准教授と共同で実施した「紙のノートとデジタル端末であるタブレットの筆記における記憶効果の比較実験」によると、
タブレットにペンで筆記だと紙の劣化レプリカにしかならないから、そりゃ紙が優勢になるでしょう。お絵描きなら「UndoとRedoが使える」とか「色が一発で塗れる」みたいなわかりやすい長所があるんですが。まあ、まだ筆記テストがある以上「暗記学習」が不要とまでは言いません。でも、紙のノートだろうとタブレットだろうと、試験が終わったあとにも繰り返しその記憶を呼び覚ます機会がなければ、どのみちすぐ忘れちゃいますよ。
注目される縦スクロール漫画(ウェブトゥーン)の特徴を、韓国の人気ベテラン作家が解説〈CreatorZine(2024年8月8日)〉
「見開き漫画の視線の流れ」の図が4段のコマ割りで、縦スクとの視線の流れが大きく違うさまを強調しています。これを見て、そういえば最近は4段のコマ割りって減ってきたよな……と思いました。感覚的な話ですが。スマホの画面で読むのが主流になってきたからだと思いますが、ページあたりの情報密度があまり高くならないように工夫されていると感じています。ページ数上限の都合&ストーリー展開的に情報を詰め込まなきゃいけないページがたまに4段になってたりする程度かなと。あ、4コママンガは別ですよ、もちろん。
NovelJam 2024 開催のお知らせ〈NovelJam – NPO法人HON.jp(2024年8月10日)〉
ひさびさに、やりますよ! 11月2日から4日、今回は東京・新潟・沖縄の3箇所同時開催にチャレンジです!
マスコミツイートに付いたコミュニティノート分析〈データをいろいろ見てみる(2024年8月10日)〉
面白い検証。確かに、ファクトチェック機関がマスコミを対象外としていることには、私も疑問を感じているんですよね。誤報やミスリードしたときの影響力はマスコミのほうが断然大きいわけで。ちなみに引用されている風刺画のオリジナルは Suter, David. (1985, February). The Dangers of Docudrama. Illustration. TIME, 125(8), 95. です。オリジナルに無粋な丸や“It’s Media”なんて言葉はありません
夕刊フジ、インタビューで無関係な女性の写真を掲載→Xで告発、炎上 謝罪するもネタ元は音信不通に〈J-CAST ニュース(2024年8月15日)〉
写真が夕刊フジに無断で利用されたと騒ぎになっていた件、夕刊フジ側から謝罪が出て一件落着したそうです。要するに、売り込んできた女性から送られてきた写真をそのままノーチェックで使ってしまった結果の事故。いやあ、怖い怖い。よく知ってる人ならともかく、あまり知らない人から送られてきた写真は、いちどGoogle画像検索でチェックするのを習慣にしておいたほうがいいですね。
私が担当しているデジタル出版演習の授業では、提出された画像は必ずGoogle画像検索でチェックします。「そういうの絶対に駄目だからね」って解説しているにも関わらず、直後の提出課題でどこかのサイトに掲載されている良さげな写真を無許諾で使おうとする学生が毎年少なからず発生します。「出版」だから一般公開しますので、著作権法第35条の「授業の過程」に収まらないんですよね。チェックは怠れません。
経済
Amazon、アソシエイト・プログラムの紹介料上限を廃止〈PC Watch(2024年8月7日)〉
従来の紹介料には、1商品1個の売上につき1000円の上限がありました。たとえば家電の紹介料率は2%ですが、これまでは5万円以上の商品が売れても紹介料は上限の1000円でした。この上限が廃止されるとなると、アフィリエイターが高額商品ばかりを扱うようになり、逆に、本みたいな単価の安い商品はあまり熱心に扱わなくなる可能性があります。
SNSで勝手に「広告」 戸惑う企業、ステマ規制の想定外 ネット広告 届かぬルール〈日本経済新聞(2024年8月10日)〉
広告ではない投稿なのに、予防的に【PR】と付けてしまう事例が増えているとのこと。誤った内容でも企業側がチェックできないから「知らない間にブランドやレピュテーション(評判)を傷つけるリスクがある」と懸念されているそうです。利益供与されていない場合はステマの逆だから「ダイマ」(ダイレクト・マーケティングの略)とか「勝手広告」みたいな表示が流行るといいのかもしれません。
ところが、この記事への反響を見ていたら「アフィリエイト広告」の可能性が指摘されていて、なるほどと思いました。たとえば私も、バリューコマースから何度も「ステルスマーケティング規制における広告表記に関するお知らせ」を受け取っています。ここには明確に「バリューコマースが提供するアフィリエイトプログラムによる広告を掲載する場合、以下を参考に広告であることが分かるように表記をお願いいたします」と指示されています。
また、X(旧Twitter)のヘルプにも「利用者が利益、インセンティブ、または報酬などを受け取れる可能性のあるアフィリエイトリンクや割引コードを含むツイート」が有料パートナーシップの例に挙げられています。私の視界の範囲内でアフィリエイト広告をやっている方々は、こういったプラットフォームの指示にわりと素直に従っているように見えます。日経記事の最後に「アフィリエイト広告の摘発はまだない」とありますが、ステマにならないようちゃんと対策した結果なのかも?
「著作権侵害天国・日本」に世界の生成AI企業が引き寄せられている〈クーリエ・ジャポン(2024年8月11日)〉
なんだこの酷いタイトルは。「日本は機械学習パラダイス」(by 上野達弘氏)というのは、機械学習のための利用は権利が制限される規定があるからです(著作権法第30条の4)。つまり、著作権侵害にならないから天国なのですよ。「著作権侵害天国」だと、著作権侵害し放題って意味になってしまいます。
元記事はフィナンシャル・タイムズなので調べてみたら、タイトルは“Japan’s copyright rules draw AI groups — and alarm from creators(日本の著作権規定がAIグループを惹きつけ、クリエイターからは警戒感)”でした。つまりこれは、クーリエ・ジャポンによる誤訳か釣りでしょう。勘弁してください。あえて言葉を補うなら「(機械学習の権利制限規定がない国から見ると)著作権侵害天国(のように見える)・日本」でしょうか。
帝人が「めちゃコミック」売却 米投資ファンドに1300億円で〈共同通信(2024年8月12日)〉
本件、5月初旬には「ソニー勢など買収検討」という第一報があって大騒ぎになり、5月末には「ブラックストーンが買収へ」とほぼ確定の報道があったので、共同通信はなにをいまごろ……と思って最初はスルーしていました。最近、共同通信の報道が遅れぎみになっている印象があります。これなんか数ヶ月遅れなわけで。
ところが、はてなのホットエントリーに上がってきて、ちょっと驚きました。反響を見るに、今回の共同通信で初めて知った人もけっこう多かったようです。こういう遅れて配信された重複ネタをキュレーションでどう扱うかは悩ましい。なにか追加情報や変更情報があれば取り上げやすいのですが。
電子コミック20年の歴史、厳しい黎明期に端緒を開いたのは本宮ひろ志『サラリーマン金太郎』だった〈ORICON NEWS(2024年8月13日)〉
インタビュー発言の冒頭に「世界で初めてマンガのダウンロード販売が行われたのは1995年1月」とありますが、JEPA公式サイトにある堀鉄彦氏のレポートによると1998年1月のパピレスが初のようです。また「当時すでに携帯電話(ケータイ)は普及していましたが」ともありますが、移動電話の契約数は1995年だとまだ443万加入程度です。ところが1998年には3825万加入まで急増しています。これらのことから、恐らく「1995年」は「1998年」の間違いだと思われます。細かなことですが、ここでの数年は大きな違いなので。
[追記:パピレス公式サイトにも「1998年1月 パピレスが世界で初めてデジタル漫画のダウンロード販売開始(『宇宙戦艦ヤマト』)」と記述されているのを発見しました]
出版統計・データの現状と問題点①〈mizuho furuhata(2024年8月10日)〉
出版統計・データの現状と問題点②〈mizuho furuhata(2024年8月14日)〉
出版統計・データの現状と問題点③〈mizuho furuhata(2024年8月18日)〉
今年の日本出版学会・春季研究発表会で古幡瑞穂氏に登壇いただいたときの内容を、自ら記事化してくれました。私の発表内容はどうしようかな?
同人作品販売サイト「DL.Getchu.com」停止中だったVISAクレカ決済を再開〈KAI-YOU.net(2024年8月17日)〉
これを山田太郎議員のVISA本社訪問と関連付けて称賛するような声も散見されますが、さすがにこのタイミングでそう判断するのは時期尚早でしょう。停止中の他社でも次々と再開するようであれば、関連しているかもしれませんが。
ちなみにDL.Getchu.comの「コンプライアンスポリシー」は、本稿執筆時点でも2024年4月18日改訂が最新版です。つまり、禁止表現が追加され表現規制が強化された状態のままVISAクレカ決済は再開されています。それを単純に喜んでいいのでしょうか? 表現規制に屈しているのでは? とも思います。
技術
アドビ、小中高校向けAdobe Expressの新機能を発表〈アドビ株式会社のプレスリリース(2024年8月6日)〉
リリースを見て「もしかして縦書き対応か?」と期待したのですが、違いました。私が大学の授業でAdobe ExpressではなくCanvaを推奨する最大の理由がなかなか解消されません。Adobe Expressは横書きだけなので、とくに背表紙の制作に使いづらいのです。Canvaはずいぶん前から縦書きに対応しているんですよね。User VoiceでAdobe Expressの縦書き機能への要望に投票できると伺ったので、Criticalに投票して同趣旨のコメントもしておきました。
iPhoneのブラウザー、魔法みたいに広告が消せるように〈ASCII.jp(2024年8月9日)〉
これ、WWDCの直前くらいに騒ぎになっていた「Web Eraser」ですね。日経クロストレンドで6月に「幻となったSafariの広告ブロック機能」と報道されていたのですが、結局、少し仕様を変えて実装することになるようです(まだパブリックベータ)。調べてみたら名称も「Distraction Control(注意散漫制御)」に変わるみたい。
しかしこれ、記事内のスクリーンショットに表示されている“Hide Distracting Item(気が散るものを隠す)”のポップアップの注意書きには“Hiding distracting items will not permanently remove ads and other content that update frequently.(邪魔なアイテムを非表示にしても、頻繁に更新される広告やその他のコンテンツが永久に削除されるわけではありません。)”とあります。
つまり、隠せるのは一時的で、再訪したらまた表示される? うーん、それって意味あるのか? と思ったんですが、スクロール追従型の広告に閉じる×がないような場合は有益かもしれません。
ブラウザの履歴を操作して「戻る」ボタンで広告を出すやつについて〈コーヒーサーバは香炉である(2024年8月14日)〉
私がウェブブラウザで記事を読むときは、おおむね新しいタブで開き、読み終わったらそのタブを閉じるという動作をしているので、ブラウザの[戻る]ボタンはあまり使いません(SaaSなら話は別です)。そのため、この記事で批判されている[戻る]ボタン操作に広告を強制的に割り込ませるような挙動には遭遇したことがありませんでした。これって要するに、帰ろうとしている客を無理矢理引き留めようとしているわけですよね。そんなことしても、客に嫌な思いをさせるだけだと思うんですけどね。
Google、AI検索機能を日本でも開始 結果を要約〈日本経済新聞(2024年8月16日)〉
Google検索のAI Overview、いままではラボ(実験室)扱いでしたが、いよいよ日本でも一般公開されるようです。私は、試験運用が始まった直後から Search Labs に登録して使っています(2023年8月30日開始だからほぼ1年間)が、正直、以前から表示されてる強調スニペットが少し進化した程度という印象で、有用性が飛躍的に高まったとは感じていません。
だからもし一般公開されても、懸念されている「ゼロクリック検索」の量はこれまでとそれほど変わらないのではないかと予想しています。ただ、強調スニペットと違ってAI Overviewの出典は複数表示されるので、仮にAI Overviewの出典に記事が採用されても分散するぶんクリック数は強調スニペットより下がるかもしれません。
あと、ゼロクリックになってしまう程度の浅い情報を求めている検索の場合、仮にAI Overviewや強調スニペットがなかったとしても、サイトへ訪問して秒で直帰するような行動になるでしょう。秒で事足りるので。だからこそ、PVだけを指標にして判断するとおかしくなってしまうわけですが。
今後は、AI Overviewや強調スニペットの情報では満足できず「もっと詳しく知りたい」というユーザーだけが訪問してくるわけです。PVは減っても、滞在時間は長くなるでしょう。他にも数値に表れない領域――たとえば書き手やサイトへの信頼感なんかが少しずつ積み重なっていくことでしょう。Googleの言う「E-E-A-T」って、そういう話だと思うのですよね。
お知らせ
「HON-CF2024」について
今年もやります! デジタル・パブリッシングの可能性と課題について議論するオープンカンファレンス「HON-CF(ホンカンファ)2024」は9月6日(金)~8日(日)の開催です。詳細・チケット購入はこちらのURLから!
HON.jp「Readers」について
HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。
日刊出版ニュースまとめ
伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary
メルマガについて
本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行数です。
雑記
お盆は実家に帰省しましたが、東京へ戻る予定日の新幹線が台風で始発から終日運休と予告されたため、急遽予定を1日早めることに。そういえば去年のお盆は行きも帰りも台風にやられたのを思い出しました。私は運良く足止めは食らわずに済んだのですが、酷い目にあった人も多かったと記憶しています。今年はかなり早いタイミングで運休予定が出たので、スケジュール変更しやすくて助かりました。「運休を決めるのが早すぎる!」みたいな事後諸葛亮を見かけましたが、私は今年のやり方を支持します(鷹野)
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。