出版業界関連の気になるニュースまとめ #316(2018年3月26日~4月1日)

まとめ
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 先週は「楽天、大阪屋栗田を子会社化へ」「インフォコム、パピレスの株式を取得」「教育市場向け新iPad発表」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年3月26日~4月1日分です。

ヤフー、マンガアプリに参入 「国内ナンバーワン」目指す〈ITmedia ビジネスオンライン(2018年3月23日)〉

 1週前の記事ですが見落としていたのでピックアップ。ヤフーとイーブックイニシアティブジャパンが業務提携して、マンガ専門アプリをリリース予定とのこと。「電子コミックの国内シェアナンバーワンを目指す」そうです。ちなみにイーブックイニシアティブジャパンはヤフーの連結子会社(44.19%)。私の予想は「Yahoo!ブックストア」と「eBookJapan」の統合という方向性だったのですが、ここで改めてマンガ専門アプリを出すとは予想外。2016年に楽天が、「楽天Kobo」とは別に「楽天マンガ」をリリースしたのを思い出しました。

Google、教育向け「Chrome OS」タブレット発表 まずはAcerから349ドルで〈ITmedia エンタープライズ(2018年3月27日)〉

 Appleが廉価版「iPad」を教育市場向けに投入するのに合わせて、「Chromebook」のタブレットモデルを投入。アメリカの教育市場でシェア争いが激しくなりそうです。

アップルは教育市場を見誤ってはいないか? —— 新iPad、辛口レビュー〈BUSINESS INSIDER JAPAN(2018年3月28日)〉

 教育市場向けに投入された、新しい「iPad」に対する厳しい意見。子供向けなのに壊れやすいデバイスであるとか、「Apple Pencil」を格納するスロットがないので無くしやすいとか、ライトニングポートに挿して充電すると突き出してしまう、などなど。私が「Apple Pencil」を買ったとき、ひとめ見て「絶対このキャップ無くす」と思ったので、即座に充電ケーブルと連接カバーのセットを追加購入したことを思い出しました。なんでこういう設計になっちゃうんだろう? 不思議。

大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す〈大学ジャーナルオンライン(2018年3月28日)〉

 全国の国公私立大学図書館における資料費は、2016年度に紙媒体と電子媒体が逆転していたそうです。電子媒体のほとんどが電子ジャーナルで、とくに海外製の価格が高騰しているため、図書館の資料費を大きく圧迫しているという問題が以前から指摘されていました。

中核なき海外 進路見えず〈日本経済新聞(2018年3月28日)〉

 「海外事業の多くは買収当初の意味合いが薄れたままになっている」となかなか厳しいことが書いてあるので、楽天のIR情報を確認してみました。2017年度通期及び第4四半期のスライド資料に、「Kobo」と「OverDrive」 はそれぞれ1ページだけ。縦軸に数字が書かれていない推移グラフで、前年同期比の成長率が示されているのみ。なんか、もうちょっと情報公開しなさいよという感じが。ちなみに「Kobo」の取扱高グラフ(下図)は2017年第2四半期に急増していますが、2017年に買収したドイツ「Tolino」を含んだ数字でした。

楽天IR資料より引用

 なお、私が最初に見たときの記事タイトルは「楽天、海外事業の進路見えず」でした。あとでタイトルから「楽天」を抜く意味は……?

知らないうちに御社がスパム広告を出しているかも? 日本で急増する「強制リダイレクト広告」の話 | インタビュー〈Web担当者Forum(2018年3月29日)〉

 最近「はてなブックマーク」のiOSアプリを使っていると、記事を開いた瞬間に強制リダイレクトで「App Store」に飛ばされることが増えている実感がありました。インタビューを受けているマイクロアドでは、昨年末から対策を開始しているそうです。利用しているアドネットワーク次第では、こういう粗悪な広告を知らないうちに表示されてしまっている可能性があるので、注意が必要です。

アニメ・漫画の海賊版サイト対策、どうなってるの?経産省に聞いた。解決のヒントは「ユーリ!!! on ICE」〈ハフポスト(2018年3月29日)〉

 「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」や「マンガ・アニメ海賊版対策協議会」の取り組みについて。海外の違法動画サイト対策が中心です。“海賊版対策の王道は「正規版を流通させること」”というのは海外の話であれば確かにそうなのですが、最近問題になっている国内での海賊版利用についてはどうなのか。もう少し掘り下げて話を聞いて欲しかったところです。

関西大学が、大手書店の紀伊國屋書店・丸善雄松堂とコラボ!電子ブックTrial Reading「enjoy ebook everyday」を開始~4月から期間限定配信~◆読書の”春”!? 紙でもスマホでも。学生たちよ、もっと本の世界へ〈関西大学(2018年3月29日)〉

 プレスリリースからピックアップ。関西大学が学術電子図書館の紀伊國屋書店「Kinokuniya Digital Library(通称KinoDen)」と丸善雄松堂「Maruzen eBook Library」を導入するとのこと。ただし半年限定なので、試験導入のようです。

EPUB 3のReadiumに初のデスクトップ実装〈EBook2.0 Magazine(2018年3月29日)〉

 Windows版、Linux版、macOS版がリリース。とはいえまだアルファ版で、ブックマークや検索機能もない状態。メニューもフランス語表示です。試しに日本語縦書きEPUBを表示してみましたが、表示はとくに問題なさそう。

滅びゆくのはマンガ文化か、出版社か、それとも表現の自由か〈P2Pとかその辺のお話R(2018年3月29日)〉

 heatwave_p2p氏による、超長文だけど熱の入った記事。「政府にとっては、表現の自由を守護し、検閲に対抗してきた出版業界からブロッキングの懇願が行われているのだから、実にありがたい口実といえよう」という指摘は、私も危惧するところであります。

合宿型小説創作イベント“NovelJam2018”のグランプリ受賞作『REcycleKiDs』がオーディオブック化〈窓の杜(2018年3月29日)〉

 私が理事長をやっているNPO法人日本独立作家同盟主催イベント「NovelJam 2018」のグランプリ受賞作が、オトバンクの協賛によりオーディオブック化されます。楽しみ!

文藝春秋・松井清人社長、図書館に「文庫貸出猶予期間」を再提案〈新文化(2018年3月30日)〉

 「文庫貸出をやめてほしい」から「2、3カ月猶予してほしい」にトーンダウン。文春文庫だけ猶予して欲しいという話であれば、私はとくに反対しませんが、「文庫の貸出」と主語を大きくするから話がややこしくなっているような気がします。この記事では触れられていませんが、公共貸与権はどうか? という話もあったようです。

EU圏内で「コンテンツの移動」が自由化、デジタル市場統合で〈Forbes JAPAN(2018年3月31日)〉

 従来は国ごとに複雑な権利処理が必要だったのが、この4月1日からEU圏内は「デジタル・シングル・マーケット(DSM)」で著作権管理が一括化されるとのこと。この記事では動画配信サービスのことが中心になっていますが、電子書籍販売についても例外ではないはず。いろいろ影響がありそうですが、果たして……? なお、イギリスはEUを離脱するため、1年間しかDSMの恩恵を享受できません。とほほ。

綾瀬市立図書館:電子書籍を導入 あすから貸し出し/神奈川〈毎日新聞(2018年3月31日)〉

 珍しく記事中にシステム名が。「OverDrive」の導入です。1万2000タイトルからスタートと、かなり本腰入れている感があります。

楽天、出版取次3位の大阪屋栗田を買収〈日本経済新聞(2018年3月31日)〉

 楽天が出資比率を高めて子会社化。他の主要株主である講談社、小学館、集英社、KADOKAWAも追加出資に応じるそうです。あれ? 大日本印刷は?

インフォコム、電子書籍事業国内大手のパピレス株式96万9500株を取得 今後の協業の可能性は協議中〈Social Game Info(2018年4月1日)〉

 ちょっと気になる動き。「めちゃコミック」のアムタスを子会社に持つインフォコムが、「Renta!」のパピレスに資本を入れるとのこと。ただ、9.83%なので主要株主(10%以上)ではありません。「今後の協業の可能性に向けても協議を行っている」と、まだ具体的な情報はありません。

出版状況クロニクル119(2018年3月1日~3月31日)〈出版・読書メモランダム(2018年4月1日)〉

 毎月楽しみな、小田光雄氏の出版状況クロニクル。3月12日のまとめでピックアップした大阪屋栗田の「当社に関する虚偽情報の発信に関して」というリリースについて、「個人の言論を圧殺」といった長文の反論を冒頭に掲載しています。「虚偽情報」ではないなら根拠を示せばいいわけですが、内密に交渉される「手形ジャンプ」の根拠が示せるか? というとさすがに難しかったのかな、と。

 なお、大阪屋栗田は2014年10月の時点で、楽天が14億円(出資比率35.19%)、講談社・KADOKAWA・集英社・小学館・大日本印刷の5社が各4億6000万円(同11.56%)を出資、6社で9割超の株を持つ状態になっていた会社なので、さすがに「手形ジャンプ」しなければいけないような状況に陥る前に、資金の手当をするのでは、と思うのですが。

 ところで「出版業界内の個人の無償の行為として発信」というのは、アマゾンのアフィリエイトは考慮していない……?

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著者について

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NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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