出版業界関連の気になるニュースまとめ #315(2018年3月19日~25日)

まとめ
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先週は「オトバンク audiobook.jp」「POD個人出版アワード」「Facebook個人情報流出」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年3月19日~25日分です。

茨城)漫画図書館お役ご免、健康施設に衣替え 龍ケ崎〈朝日新聞デジタル(2018年3月18日)〉

1週前の記事ですが見落としていたのでピックアップ。利用者の減少に伴う閉館とのこと。図書館には資料を後世に残す「アーカイブ」という機能もあるのですが、そういう観点では運営されていなかったということでしょうか。

漫画海賊版は格好悪い サイト問題「最大の被害者は読者」弁護士に法的問題を聞く〈産経ニュース(2018年3月18日)〉

1週前の記事ですが見落としていたのでピックアップ。弁護士・福井健策先生による解説です。「海賊版を使うのはイケていない」という文化の醸成というのは、遠回りのようで効果的な対策かもしれません。そのためには、前から言い続けているように、正規配信サイトである証「出版版エルマーク」のような取り組みが必要だと思います。

マンガ・アニメの海賊版サイト、ブロッキング含め検討=官房長官 ロイターニュース〈朝日新聞デジタル(2018年3月19日)〉

政府もサイトブロッキングの可能性について言及。出版業界のロビー活動ってあまり効果が上がっていない(例:消費税軽減税率が新聞には適用されたのに出版物は対象外)という印象があるので、音楽・映像業界側と歩調を合わせた結果なのかな、という感じがします。DNSブロッキングは児童虐待記録の排除対策ですでに実施されており、法律とその運用が慎重かつ明確に行われば……とは思うのですが、いまの政府がやらかしてきたアレコレ(自衛隊の日報破棄とか財務省のアレとか)を考えると、ちょっと怖いというのが正直なところ。

月額750円でオーディオブック聴き放題——リリースから10年のオトバンクが“サブスクリプション”に舵を切った〈TechCrunch Japan(2018年3月19日)〉

オトバンク「FeBe」が全面リニューアルして「audiobook.jp」に。同時に、定額制のサブスクリプションモデルが追加されます。月額750円で対象1万点から聴き放題。アマゾン「Audible」は月額1500円で日本語書籍の点数は同程度みたいなので、かなりお値打ち。もっとも、オトバンクは「Audible」にもコンテンツ提供しているはずなので、ただの競合というより流通チャネル戦略の一環ということになるのでしょうけど。

講談社×pixivの漫画アプリ「Palcy」 作家へ収益還元の仕組みも〈KAI-YOU.net(2018年3月19日)〉

コミックDAYS(はてな)」「DAYS NEO(未来創造)」に続いて、pixivとの提携。3つほとんど同時並行で動いていた(る)ってことですよね。講談社の底力を感じます。こちらの「Palcy」は昨年9月に「pixiv MEETUP」で「紙を前提としないビジネスモデル」を模索するとして発表されたもの。そろそろマンガ以外にも……。

6.8型見開き表示が可能な2画面スマホ「M Z-01K」は電子書籍に向くのか〈PC Watch(2018年3月19日)〉

おなじみ山口真弘氏による端末レビュー。5.2型×2画面という変態端末。「シグマブック」との比較写真に吹きました。アプリの対応状況次第ではあるものの、結構「読書デバイス」としても使いやすいようです。

Amazonで個人出版されたPOD作品を表彰、「POD個人出版アワード」受賞9作品が決定〈INTERNET Watch(2018年3月20日)〉

最優秀賞『アスリートのための最新栄養学』は上下巻合わせて4000冊売れているとのこと。PODでこの数はすごい。優秀賞『(太平洋戦争)戦前・戦中・戦後 体験記』の著者が94歳だけど、すべて自分でPODのファイルを用意したとか、もう1つの優秀賞『趣味で量子力学2』や窓の杜賞『巨大数論 第2版』は非常にマニアックな本でPOD向きとか、なかなか興味深い。

取材で最優秀賞の方に「どういうプロモーションを行ったんですか?」と聞いてみたのですが、TwitterとFacebookを使った告知をしているくらいで、特別なことはやっていないとのこと。もともと電子書籍をKDPで出していて「紙も欲しい」という要望に応えたことと、栄養学のFacebookコミュニティで紹介された、というのを挙げていました。私も、突然アルファブロガーに紹介されて突然売れた経験があるので、特別なことはやっていないというのは、実際そうなんだろうなと思います。

フェイスブック情報流出 データ主導時代の副作用〈日本経済新聞(2018年3月20日)〉

イギリスのデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカが、横流しされたユーザーデータを使い、大統領選でトランプ氏を有利にするよう活用していた、という問題が発覚して大騒ぎになっています。学術調査目的で取得されたデータが、契約違反で悪用されてしまった、ということのようです。ロシアが関与している可能性も示唆されているようで、今後、強力な規制がかかるかもしれません。要経過観察。

アマゾンを追い詰めた学術論文 編集委員 西條都夫〈日本経済新聞(2018年3月21日)〉

非常に興味深い話。「ライバルを締め出すことを目的とした不当廉売やサプライチェーンに連なる川下や川上のプレーヤーを傘下に収める垂直統合について、米競争当局はもっと厳しい姿勢を取るべきだと主張」しているとのこと。たった1本の論文をきっかけに、アマゾンだけでなく、フェイスブックやグーグルに対する風当たりまで強くなっているそうです。「消費者利益を優先」と言えば聞こえはいいのですが、実際にはそれを言い訳にして不当廉売や優越的地位の濫用を行い、ライバルを排除して市場独占を図っている、といったところでしょうか。

出版流通の危機を読み解く ①取次という仕組み―日本は出版天国でした〈ダ・ヴィンチニュース(2018年3月21日)〉

文化通信社常務取締役編集長・星野渉氏の連載。明治時代に雑誌配送のためにスタートし、それをベースに書籍も扱うようになった「取次」の歴史について解説しています。戦時下の「日本出版配給」体制については次回かな?

グーグル、独自のブロックチェーン関連技術を開発中か〈ZDNet Japan(2018年3月23日)〉

Bloomberg 報道。Google 広報は「仮定でものごとを語るにはまだ早すぎる段階」と回答しているそうですが、そりゃこれだけ騒がれてたら、Google 含め大手IT企業で研究開発していないはずないよね、というのが正直なところ。

お題は「平成」!たった3日で書きあげて売る――小説ハッカソン「NovelJam2018」イベント潜入レポート!〈ブクログ通信(2018年3月23日)〉

私が理事長をやっているNPO法人日本独立作家同盟主催イベントの詳細なレポート。たぶん前にも書きましたが、発案はまつもとあつし氏、ディレクションは江口晋太朗氏。私は、事務処理など雑務を担当したに過ぎません。部会の方々ががんばった!

作家・夢枕獏氏が「自腹」で新聞の全面広告を出した理由〈NEWSポストセブン(2018年3月25日)〉

実際の紙面はこんな感じでした。日曜版読書コーナーの対面で、良いポジション。

朝日新聞3月25日朝刊

新聞広告ナビ」によると、朝日新聞全国版朝刊の全15段(1ページ)の広告掲載料は3985万5000円とのこと。別途制作費用がかかるので、だいたい4000万円ってところですか。ひえええ。

特異な取り組みでこうやってニュースとしても取り上げられているので、費用対効果はそれなりに高いと思いますが、印税は1冊売れて100円程度だから40万部くらい売れないと元がとれないという計算に。うーむ。

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著者について

About 鷹野凌 824 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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