出版業界関連の気になるニュースまとめ #319(2018年4月16日~22日)

まとめ
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 先週は「北海道で研究書が有害図書指定」「海賊版サイトと広告業界の関係が次々とあぶり出される」「緊急ブロッキングへの反発」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年4月16日~22日分です。

アメリカのケータイ小説は日本のマンガアプリ並みの売上〈SAKURAS(2018年4月16日)〉

 チャット形式の小説サービスは「トークメーカー」や「DMM TELLER」など日本にもいろいろありますが、アメリカではそういうのを「チャットフィクション(Chat Fiction)」と呼んでいるそうです。iPhoneでの売上が日本のマンガアプリ並みというのはすごい。ただし、Apple ID決済を使わないサービスは、この記事で提示されているランキングに入ってこないので注意が必要です。

正規版購入への理解と啓蒙活動を行う電子書店の団体「日本電子書店連合(Japan E-Bookstore Association)」が発足〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月16日)〉

 この件を取り上げている記事をチェックしているのですが、どこもリリース以上のことは書いていないってのが辛い。私は、これは面白い動きだと思いメールで問い合わせ「正規に許諾を得ているサービスであることが、読者から見て分かるマークの運用などを検討している」という回答を得ているのですが。

海賊版サイト遮断OK? 政府要請に議論沸騰〈日本経済新聞(2018年4月16日)〉

 この時点での、賛成論・反対論まとめ。「一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構によると、2017年9月から18年2月の著作権者側の被害額は計4000億円以上だという」という数字が出ています。

関東圏の丸善ジュンク堂26店舗で「Pontaポイント」または「dポイント」が「hontoポイント」とともに利用可能に〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月17日)〉

 「Pontaポイント」と「dポイント」との提携。私の場合「dポイント」は月々の料金でごんごん貯まっているので、これが本を買うのに使えるのは嬉しいです。

トーハン運営の電子書店「Digital e-hon」がサービス終了、利用者は累計購入額相当のポイント還元で救済〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月17日)〉

 全額ポイント還元、しかもKADOKAWAの本は本棚連携で「BOOK☆WALKER」に入れられるので、差額は得してしまうという超・救済策。もっとも、反響で「全額救済できるということは、累計でもたいして売れていないってことでは?」という推測を見つけ、鋭いと思いました。しかし、ここまでやっても「これだから電子書籍は信用できないんだ」的な意見もチラホラ。どうしろと。

タイトルに「エロ」の書籍、相次ぎ有害指定 研究書も〈朝日新聞デジタル(2018年4月17日)〉

 北海道が有害図書指定した本に、ちゃんと審査したとは思えないような本が混ざっており、もしかして安直にしているのでは? という事件。海賊版サイト緊急ブロッキング問題で埋もれてしまっていますが、こちらも「表現の自由」という観点で見過ごしてはならないニュースです。

電子書店「まんが王国」がAIを活用したレコメンドサービスを導入〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月17日)〉

 「AI活用」ってバズワード化している感もありますが、顧客体験のカスタマイズと組み合わせたレコメンドというのは先駆的だと思います。

「漫画村出稿メール」を独自入手 「偽名営業」「取引先は海賊版サイト」元代理店従業員が語る異常な実態〈ねとらぼ(2018年4月17日)〉

 ぐいぐい突っ込む、ねとらぼ Kikka 氏。こちらは元広告代理店従業員の証言。厳しいノルマでモラルハザードを起こすのはネットに限った話ではなく、営業あるあるだったりします。ブラックリストがあっても担当者レベルでしか管理されてなかったり、人の出入りが激しい業界だから引き継がれなかったり、メンテナンスされてなかったり。最近は「反社会的勢力」の排除が当たり前になっていますが、昔はそうと知らずに契約とってきてしまって断れない、みたいなことがちょくちょくあったのを記憶しています。ふえぇ。

ハイブリッド型総合書店「honto」の支払方法に「LINE Pay」が追加〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月17日)〉

 「honto」が続けざまに手を打っていてすごいと思いました(小並感)。「LINE Pay」って私は使っていないのですが、銀行口座からのチャージも行えるのですね。最近は「おこづかい」のあげかたも多様化しているんだろうなあ。

ピースオブケイクが「note」を活用したマンガ作品拡販コンサルティングの受付を開始〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月17日)〉

 「note」活用コンサルティングを開始。さっそく申し込んだというマンガ家の方を見かけました。出版社が活用するパターンもあれば、出版社に頼らず作家が活用するパターンもあるということなのでしょう。

JTBパブリッシングが旅とおでかけ情報の新ウェブメディア「るるぶ&more.」をオープン〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月18日)〉

 この記事では触れていませんが、お気に入りの記事を保存する「クリップ機能」で自分だけのガイドブック「Myるるぶ」を作ることができるとか、そのまま地図でスポットを結んでルートを作ることができるといった機能もあるそうです。

News Up 海賊版サイト「漫画村」に “裏広告” 大手企業も〈NHKニュース(2018年4月18日)〉

 「クローズアップ現代+」で放送された内容の一部が記事化。ネット広告というとクリック報酬型広告(PPC:Pay per Click)が思い浮かびますが、閲覧回数で広告料が発生するタイプのインプレッション保証型広告もないわけでなく、それが悪用されているようです。しかも表示すらされていないという。億単位のアクセスがあれば、それでも小銭は拾えるのですねぇ。

漫画やアニメを保管・発信 施設整備の法案提出へ〈NHKニュース(2018年4月18日)〉

 MANGA議連の動き。「メディア芸術ナショナルセンター」を整備する法案を今国会へ提出するそうです。

「TWIN SIGNAL」続編プロジェクト、クラウドファンディングが本日より始動〈コミックナタリー(2018年4月19日)〉

 メディバンがCAMPFIREと業務提携し、マンガ専門の「MediBang! クラウドファンディング」を開始。その第1弾がこちらのプロジェクト。

「BCCKS」のストア配本サービスで一部ジャンルが取り扱い停止に〈見て歩く者 by 鷹野凌(2018年4月19日)〉

 内部事情を聞いていますが、いきなりまるごと対象外にするよと通告されたり、いきなりアカウントが停止されるみたいな事態が起きていて、いかんともしがたいようです。プラットフォームの意向に逆らえないというのは、まあ、どこでもそうなんですけど、なかなか世知辛いものがあります。

海賊版サイトのブロッキングはなぜ無理筋なのか? 反対派の市民団体やISP業界団体が緊急シンポジウム開催【これからのネットづくりと海賊サイトへのブロッキング要請を考える】〈INTERNET Watch(2018年4月19日)〉

 最速のシンポジウム。そして最速のレポート。この分量を翌朝一番で出してくるというのは、半端ない。脱帽。内容的にはJAIPAの野口氏が言うように「通信の秘密」は「利用者の権利」なのですよね。そこが一般に認知されていないのかもしれない。

九大図書館の78冊ごみに 一部裁断、電子書籍化か〈日本経済新聞(2018年4月20日)〉

 背表紙を断裁しており、どう見ても自炊した跡。ちょっと不思議なのが、なぜ学校のごみ捨て場へ捨てるのか。すぐバレてしまうという考えが及ばなかったのか。それとも外部犯行で、内部犯行だと見せかけるためなのか。

「海賊版サイトの出版社の対応、誤情報が流布している」集英社が声明 「10年にわたり対策してきた」〈ITmedia NEWS(2018年4月20日)〉

 「出版社は海賊版サイトに対しなにもしていないのでは?」といった憶測が飛び交い始めた中、初めて具体的な対策内容が取材によって明らかになりました。岡田有花さんぐっじょぶ。当然これくらいのことは、やっているはずだとは思っていました。でも、なんでそういう情報が後出しなのか。

「望んで広告を出しているものではない」 海賊サイト広告問題、出稿していた大手企業の言い分は〈ねとらぼ(2018年4月21日)〉

 ぐいぐい突っ込む、ねとらぼ Kikka 氏。アドネットワークやアフィリエイトの性質上、広告主が知らないうちに変なサイトへ表示されてしまうのは普通に起こり得ること。ただ、その「普通に起こり得ること」という認識が広告主側になかったという点は、責められるべきなのかもしれません。流入元を丹念にチェックしていれば、変なところから来ているというのはわかるはずですし。

冨田健太郎 斜めから見た海外出版トピックス 第10回 ベストセラー戦略の大失敗〈DOTPLACE(2018年4月20日)〉

 マイク・ペンス副大統領が飼っているウサギ絵本のパロディ本がベストセラーになっているのは知っていたのですが、当初、アマゾンだけで売り出されていて一般書店に供給されていなかったことが問題になっているのは知りませんでした。独立系書店とアマゾンの勢力争いなのかな。

海賊版サイト対策へ本当に手を尽くしていたのか、権利者団体に聞く〈日経 xTECH(2018年4月21日)〉

 コンテンツ海外流通促進機構(CODA) 代表理事 後藤健郎氏へのインタビュー。CODAは映像と音楽が中心なので「漫画村の削除要請はCODAからは実施していない」という言質が取れた点、漫画村の約3000億円という想定被害額は、SimilarWebの集計値を用いて「2017年9月から2018年2月までの延べ訪問者数である約6億2000万人に、雑誌や単行本の単価の平均額である515円をかけたもの」だという回答が得られた点が収穫。どちらも、予想通り。

「漫画村」月間売上は6000万前後、利用者データを販売? サイトブロッキングシンポで調査結果が発表される〈ねとらぼ(2018年4月22日)〉

 緊急シンポジウムの冒頭にプレゼンされた、山本一郎氏(JILIS 上席研究員)による「著作権侵害サイトの被害実態と対策の現状」だけをレポートした記事。15時40分公開って、早過ぎる。「漫画村」が「月間6000万円前後の売上があったと推測」している点がポイント。はてなブックマークなどの反響を見ていると、この額ではとてもじゃないけど正規のサービスは展開できない、ということに気づいた人が結構いることが収穫でした。

「海賊版サイト」ブロッキングで白熱議論 「抽象論だと結論出ない」「いや、避けて通れない」〈弁護士ドットコム(2018年4月22日)〉

 緊急シンポジウムのパネルディスカッションを、その日のうちに記事化、公開。負けました。脱帽。村瀬拓男弁護士の「抽象論を始めると結論が出ない」という見解は、かなり反発を買っていました。ただ、意見は相容れなかったとしても、完全アウェイの場に出てきてくれたことだけでも敬意を表したいなとは思います。

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著者について

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NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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