【EPUB有料連載リンク】第2回 電子出版と著作者たちの未来 — ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、先週から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

8月コラムより

電子出版と著作者たちの未来

 Wall Street Journalに月曜日に掲載されたGordon Crovitzによるという有料の記事の中で、「Amazonは1年以内にペーパーバックよりKindle本の販売高が多くなると推計している」と報じられていた。私はその推計が信じられるのか分からないが、Kindle本がペーパーバックの半分に達したとしても驚異的だ。

 私は、既存の書店チェーンは出版社になるだろうと推測している。つまり、編集者を抱え、以前によく売れた本を書いたことがある著作者や、有望な著作者に前金を払って、作品を出版するのだ。さらに、出版社は、電子書籍を売る方法を見つけるだろう。従来の出版業も残るだろうが、一変するだろう。電子書籍の価格がどのぐらいになるかは、興味深い疑問だ。多くの読者は、Amazonが推奨する9.99ドルがすでに高すぎると考えている。著作者(あるいは彼らの代理人)と出版社は、低すぎると考えている。一冊の本の著作者の印税は10%から15%で、これは著作者の格付け、彼の代理人の能力、出版社との関係、そして誰かの気分で決まる。しかし、ハードカバーの場合は10%の印税が一番一般的だが、ペーパーバックの場合、10%なら高い方だ。一般的なペーパーバックの販売方式では、現在価格が6.95ドルぐらいなので、著作者の取り分は70セントになる。代理人が15%取るので、著者者に入るのは1ドルの半分、つまり50セントほどだ。「Lucifer's Hammer」(訳注:パーネル氏の著書)のように何百万冊も売れれば、2〜3年かけて書いた作品の対価としては悪くない。数十万冊売れた本でも、ひどくはない。印刷版が約1万冊ほどしか売れないと、出版社は、その著作者の次の本の販促費をどれぐらい使うか考え込んでしまう。1万冊以下だと、出版社は次の本をだそうとはまったく考えない。このプロセスは、私の友人で同僚のNorman Spinradが「Publishing Death Spiral」でつぶさに語っている。

<中略>

 私はこれがすべて変わる様子を注視している。電子書籍が実際にペーパーバックより多く売れるようになれば、その影響は深刻だろう。「途方もなく厳しい」と言っても過言ではない・・・

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

先進的なパーネル氏

 「新・混沌の館にて」のオリジナルの英語版は、米国マグロウヒル社が刊行していた「BYTE」というコンピューター誌に1979年から連載され、1998年に同誌が休刊した後は、パーネル氏個人が運営する「Chaos Manor Reviews」というサイトで「公営ラジオ方式」で販売されています。記事はすべて公開されていて、誰でも読めますが、年額20ドル、36ドル、110ドルの購読料が設定されていて、コラムをサポートしたい人が、任意の料金を選んで払う方式です。先日同氏に確認したところ、現在購読者数は数千人、月間ユニーク・ビジター数は9万件とのことでした。

 作家であるパーネル氏は非常に早い時期に、タイプライターより、コンピューターを使う方が執筆の生産性が向上することに気づき、1979年に当時マイクロコンピューターと呼ばれていた小型コンピューターを買いました。そのために1万2000ドルの借金をしたというのですから驚きです。そして「BYTE」に自ら売り込んで、自分のマシンを使った感想を「ユーザーズ・コラム」として書き始めたのです。

 今も、変化の激しい米国コンピューター界の動きや、最新の製品について、鋭いレビューやコメントを書き続けています。

 米国でミリオンセラーを出したこともある経験豊富な作家なので、米国出版界を熟知しています。出版界の動向に常に目を配り、何年も前に、ある作家がAmazonの自己出版を使って成功した例に注目して、コラムで紹介していました。

 さらに、安価なデジタル機器の登場で、音楽配信や映画制作が個人でできるようになったように、「次は出版界がそうなる」という見解を繰り返し述べていました。

 日経バイトの連載コラムは、2004年に過去20年分のコラムから、重要と思われる回を選んで書籍化されました。私は書籍に入れるコラムを選択するため、すべての回を読み、抄録を作る仕事をしました。過去232回分全部を読みました。

 さらに翻訳を始めてから5年以上、こういった内容のコラムをじっくりと読み続けていたことが、知らず知らずのうちに私にさまざまな影響を与えていたと思います。

 私が個人でepub電子書籍を制作して、販売しようと決心した一因は、このコラムを読んでいたことだと思います。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト( http://www.sciencereadings.com/

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