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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。
いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、昨年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。
業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部
12月コラムから
Amazonの自己電子書籍出版で苦戦
私の娘のJennifer Pournelle(ジェニファー・パーネル)博士は「神の目の小さな塵」の世界を舞台にした小説を書いて、それをKindleなどで読める電子書籍フォーマットで出版している。
<中略>
Jenniferは学術書の編集と出版の幅広い経験を積んできたので、これを電子書籍として出版することに決めた。従来の出版社で本を出版する主な理由は、出版社が編集、配本、広告、制作を行って、前金を払って著者が本を完成するまで生活できるようにすることだ。Jenniferは実際には編集者は必要なかった。なぜなら、自分でやることができて、編集上のアドバイスを他のプロの作家から得られたからだ。また、本はもう書きあがっていたので前金は必要なかった。これは、電子書籍出版の実験にうってつけだと思った。
問題はその本を適切なフォーマットにすることだった。Amazonがそれを出版用のフォーマットに変換するまでは、彼女が最初に作ったもので問題ないと思えた。しかし、変換されたものがあまり良くなかったので、それを取り下げて、もう一度やり直した。
【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/ 】
EPUBを作る
コラムの販売を続けていくためには、極力出費を抑えなければなりませんでした。EPUBを自分で作ろうと考えたものの、その時点では作り方も全く分かりませんでした。
製作者の説明を聞いて、Sigilを使うことにしたのですが、SigilもWordPressと同じで、文章を入れて、画像を入れるぐらいなら、それほど難しくありません。このコラムは文章が主体で、レイアウトも簡単です。私の技量を知っている製作者が、epubの話になったとき、「林田さんでもできますよ」と言っていたことがありました。ファイルを見ているとWordPressとよく似た感じでした。
ところが、製作者はただ文字を入れるだけでなく、いろいろな設定をしてくれていました。例えば、Sigilでは、目次は各ページで見出しを設定すれば自動的に連れて行かれて、iPadの目次ページに表示されます。このコラムの場合毎月全体を6章に分けて、そこで章を区切っていました。このEPUBには最初のページに各章に飛べる目次リンクが設定してありました。Sigilの場合は、リンクも手でタグを設定しなければなりません。製作者がリンクの設定が煩雑だと言っていた意味が分かりました。EPUBは本来リンクを張ることを想定していないからでしょうが、このコラムはiPadの標準の表示で40ページほどあるので、目次リンクは便利だと思いました。
また、引用の部分に背景色を付けていました。これは最初Webページを作るときに、それまで出版社のサイトに掲載されていたころとなるべく近い体裁にしたいと考えて、Webページに背景色を付けていたからです。背景色はWordPressの場合、ビジュアル表示の画面ではつけられず、HTMLのタグを自分で入れなければなりませんでした。
私はHTMLを使うのは今回が初めてでした。プログラミングは昔ほんの少し初歩を習ったぐらいです。他には、大昔のデータベースを使ったときに、検索用の簡単なコマンドを書いたことがあるぐらいで、高度なことをやる技量はありません。
もうずいぶん前ですが、HTMLのタグ付きファイルの翻訳というのをしたことがありました。翻訳したあと、英文のタグがついている場所に対応する、翻訳文の同じ場所にタグを付ける作業をしました。英語と日本語では語順が入れ替わったりするので、英文と日本文を対照しながらタグを付ける作業も、翻訳者に依頼しているとのことでした。(今はもっと進化しているかもしれません)。この時にHTMLというのはとにかく何かを「はさむ」ものなのだなと思ったのを覚えています。
製作者にあまり欲張って複雑なことをしない方がよいとアドバイスされましたが、ホームページの背景色は、タグを使うのはここぐらいだろうと思い、タグを教えてもらって付けようとしました。意味が分からずやっているので、最初のうちは、タグをつける場所を間違えたり、誤っていろいろなタグを壊してしまって表示がぐちゃぐちゃになってしまったりという失敗を何度もしました。プロがやれば10分でできることを何時間もかけてもたもたやっていました。年賀状も満足に作れない私にはかなりしんどい作業でした。
それでも慣れれば何とか、最初のころより短い時間でWebページを作れるようになってきたので、EPUBも何とかなるのではないかという気がしてきたのです。
全くの素人が、呪文のようなコードを眺めながらあれこれ考えていました。コードは私にとってまさしく暗号でした。n
問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト http://www.sciencereadings.com/