ジャーナリズムを論じたNYタイムズ前編集主幹の本が賛否両論

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 ニューヨーク・タイムズ初の女性編集長(編集主幹)だったジル・エイブラムソンが上梓したばかりの本、『Merchants of Truth』(真実の商人たち)において、出典先に関する誤述や脚注が不十分な箇所があり、著者は増版分から校正すると回答したとAP通信が伝えている。

 エイブラムソンは「出典元のページに間違いがあったり、引用と明記すべきところがそうなってなかった」と認めたが、もともと動画ニュースサイト、ヴァイス・ニュースがエイブラムソンの本にタイム・アウト誌やニューヨーカー誌に酷似した記述があることを指摘していた。

 『Merchants of Truth』はニューヨーク・タイムズとワシントン・ポスト、そしてバズフィードとヴァイスを比べ、これからのジャーナリズムのあり方を論じた500ページの大作だが、先月に書評のためにゲラ刷りが出回り、事実関係の間違いなどが指摘されたが、まだ最終稿ではないとしていた。

 この本を一足先に読んだウォルター・アイザックソンやゲイ・タリーズらは大絶賛する一方で、標的の一つとなったヴァイスのスタッフは、自分たちのメディアに対する批判に不服もあったとされている。他の本との類似点を指摘したヴァイスのマイケル・モイニハン記者は、ノンフィクション作家ジョナ・レーラーが、著書でボブ・ディランの発言をでっちあげたことを突き止めた経歴がある。

参考リンク

AP通信の記事
https://www.apnews.com/b6842dc969eb45a48f9194ada28fa1da
CNNの記事

Former New York Times Executive Editor Jill Abramson, facing allegations of plagiarism, conceded on Thursday that some of the passages in her new book "Merchants of Truth" too closely mirrored work that first appeared in other publications.

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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