「電子書店eBookJapanがヤフーと共同運営のebookjapanに」「インプレスR&Dの著者向けPOD出版サービス累計販売3万冊突破」など、出版業界気になるニュースまとめ #342(2018年10月1日~7日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2018年10月1日~7日は「電子書店eBookJapanがヤフーと共同運営のebookjapanに」「インプレスR&Dの著者向けPOD出版サービス累計販売3万冊突破」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

出版状況クロニクル125(2018年9月1日~9月30日)〈出版・読書メモランダム(2018年10月1日)〉

18年8月の書籍雑誌推定販売金額は926億円で、前年比5.2%減。 書籍は480億円で、同3.3%増。雑誌は446億円で、同12.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌が364億円で、同13.1%減、週刊誌は82億円で、同11.7%減。 返品率は書籍が40.2%、雑誌が45.1%で、月刊誌は45.7%、週刊誌は42.4%。 書籍の推定販売金額のプラスは7月の西日本豪雨により、広島、岡山、九州などの書店の返品入帖処理が8月になっても終わっていないことに起因している。 出版...

 毎月楽しみな、小田光雄氏の出版状況クロニクル。集英社、光文社の決算情報で、部門別売上が明らかにされているのが助かりました。新文化の決算情報(↓)、2018年はなぜか部門別が載っていない場合が多く。

電子図書館サービス「LibrariE」の導入館が70館突破、取り扱いコンテンツは4万2000点に〈HON.jp News Blog(2018年10月1日)〉

 株式会社日本電子図書館サービスは10月1日、同社が提供する電子図書館サービス「LibrariE(ライブラリエ)」の導入館が、9月末時点で72館になったことを発表した。取扱いコンテンツ数は4万2000点、取引出版社は90社とのこと。 日本電子図書館サービスは2013年10月に、株式会社紀伊國屋書店、株式会社講談社、株式会社KADOKAWAの3社によって設立された。2016年11月に、大日本印刷株式会社、株式会社図書館流通センターの2社と...

 日本電子図書館サービスの電子図書館サービス「LibrariE(ライブラリエ)」最新動向。同社の過去リリースを見ると、2017年3月に30館・2万点、2017年12月に50館、2018年5月に60館・3万点という増加ペース。取り扱いコンテンツが4万2000点というのは、電子書店で言えば楽天KoboやKindleストアが始まったばかりだった2012年秋ごろの水準です。とはいえ、電子書店はマンガの比率が高いので、図書館向けと単純に比較はできませんが。

サイコガン装着した『ポプテピピック』商品に『コブラ』作者が「許可をとりなさい」と苦言 大川ぶくぶさんが謝罪〈ねとらぼ(2018年10月3日)〉

ブランド「Candy Stripper」とのコラボ商品「左手にサイコガンを持つポプ子」の件について、大川ぶくぶさんが寺沢武一さんと『コブラ』ファンに向けて謝罪ツイートを投稿しました。

 ねとらぼは事実の列記に留めていますが、他のメディアでは「著作権侵害」という論調で報じているところも。これは寺沢武一さん自身が言うように「礼儀」の問題である可能性が高いです。著作権で争ったら、恐らく「アイデアの範疇」とされるように思われます。

楽天Kobo、8型で見開き表示が可能となる電子ペーパー端末「Kobo Forma」の予約受付を開始 ~ 販売開始は10月24日から〈HON.jp News Blog(2018年10月3日)〉

 楽天グループのRakuten Kobo Inc.は10月3日、新型電子ペーパー端末「Kobo Forma(コボ フォルマ)」の予約受付を開始した。国内販売開始は10月24日を予定している。Koboシリーズ最大の8インチ画面で見開き表示が可能であるほか、ページめくり物理ボタンを搭載しているのも特徴。 「Forma」はラテン語で「形」という意味で、手で持つグリップ部分が厚みを持ちカーブしている形状になっている。重さは約197g。IPX8規格準拠の防...

 これまで最上位だった「Kobo Aura ONE」の、さらに上位となる端末。ページめくりの物理ボタンがあって、グリップ部分が厚い形状というのは、Kindleシリーズの最上位モデル「Kindle Oasis」を彷彿とさせます。防水機能はKoboシリーズが先行し、見開き表示はKindleシリーズが先行。競合がいることによって健全なサービス向上が図られている好例だと思います。

「国立国会図書館デジタルコレクション」のコンテンツ閲覧画面がレスポンシブウェブデザインに対応〈HON.jp News Blog(2018年10月4日)〉

 国立国会図書館は10月1日、ウェブサイト「国立国会図書館デジタルコレクション」への機能追加を発表した。コンテンツ閲覧画面がレスポンシブウェブデザインに対応し、スマートフォンなど小さな画面で閲覧しやすくなった。 「国立国会図書館デジタルコレクション」は、国立国会図書館で収集・保存しているデジタル資料を検索・閲覧できるサービス。著作権保護期間切れなど公衆送信権についての権利処理が完了した...

 ようやくモバイル対応。まだトップページや検索結果一覧画面が対応していないのは残念ですが、いずれ対応することでしょう。平成30年版「情報通信白書」の世帯保有率調査では、ついにスマートフォンがパソコンを上回りました。モバイル対応はもはや「当たり前」のことです。非対応であることは、半分以上のユーザーを捨てているのと同義であるという認識が必要でしょう。

インプレスR&D「著者向けPOD出版サービス」の累計販売数が3万冊を突破〈HON.jp News Blog(2018年10月5日)〉

 株式会社インプレスR&Dは10月1日、Amazon PODを活用した個人向け出版販売支援サービス「著者向けPOD出版サービス」の、累計販売数が3万冊を突破したことを発表した。9月末時点で登録ユーザー数は1000名超、出版点数は679点、100冊以上の販売実績がある本は48点、1000冊以上が7点あるとのこと。 インプレスR&Dの「著者向けPOD出版サービス」は、Amazon.co.jpのPODサービスを活用した個人・団体向けの出版販売支援サー...

 具体的な数字が公開されました。679点で3万冊ということは、平均すると1点あたり44冊。シビアであることは間違いありませんが、在庫リスクがない=絶版になりづらいのがPODや電子書籍の利点です。時代性に大きく左右されず、長く売り続けられるようなタイトルに適している手段なのかもしれません。

電子書店「eBookJapan」が全面リニューアル、ヤフーと共同運営の「ebookjapan」へ名称変更、URLも変更〈HON.jp News Blog(2018年10月5日)〉

 株式会社イーブックイニシアティブジャパンは10月1日、電子書店「eBookJapan」を全面リニューアルした。URLを従来の https://www.ebookjapan.jp/ からヤフー株式会社のサブドメイン https://ebookjapan.yahoo.co.jp/ へと変更、サイトの名称もすべて小文字の「ebookjapan」へ変更され、ヤフーとの共同運営となる。 イーブックイニシアティブジャパンは、2000年5月に設立された電子出版業界では老舗のベンチャー企業。2011年1...

 ぜんぶ小文字の「ebookjapan」アプリが7月に新登場したとき、既存の「eBookJapan」(BとJが大文字)はどうするのだろう? と少し疑問に感じていたのですが、「全面リニューアル」で移行することに。「当面は既存サイトも並行運用」とのことですが、いずれ統合されるのでしょう。となると、こんどは「Yahoo!ブックストア」をどうするのか? という疑問が。

海外

米アマゾンが国内の従業員全員の最低時給を15ドルに〈HON.jp News Blog(2018年10月3日)〉

 シアトルの本社でも女性社員が妊娠すると居づらくなったり、夏は倉庫での労働がきついなど、労働環境問題の内部告発がなんどもあったアマゾンだが、来月11月から正社員・契約社員を問わず、時給の最低額を15ドルにすると発表した。 この時給は昨年8月に買収したスーパーマーケット「ホールフーズ」の従業員を含むアマゾンの従業員約25万人と、年末のクリスマス商戦に向けてこれから雇われる約10万人の臨時パートタイム従業員...

 バーニー・サンダース上院議員が、アマゾンなどの高収益企業が税優遇や補助金を受けているいっぽうで、従業員は低賃金で生活保護を受けているなどと批判していたのを受けての措置です。

アマゾンに代表される高収益企業の一部従業員が、低賃金ゆえに生活保護を受けていることが米国で問題視されている。だが忘れてはならないのは、こうした企業が米国内で拠点を開設する際に、政府や自治体などから多くの税優遇や補助金を引き出しているという事実だ。

 ところが最低時給を上げるのと同時に、月次ボーナスと株式報酬を廃止するため、新規採用者は厚遇されるものの、ベテラン従業員には不満が残る形になったようです。

時給を15ドル(約1700円)以上に引き上げると今週発表した米アマゾン・ドット・コムは、倉庫労働者や他の時間給労働者に対する月次のボーナスと株式報酬を廃止する。

 バーニー・サンダース氏はアマゾンの動きに対し「賞賛に値する」とコメントしており、政治的な批判をかわすことに成功しています。また、離職率が下がるので求人募集のコストを下げられるとか、ホリデーシーズンの臨時スタッフが集めやすくなるといった分析もあるようです。

従業員が低賃金で過酷な労働環境にあると批判されてきたアマゾンが、米国内で雇用する全スタッフの最低時給を15ドル(約1,720円)に引き上げることを決めた。だが、これは決して同社が「気前がいい」からではない。絶妙なタイミングでの賃上げには、これだけの「本当の理由」がある。

 非常に「アマゾンらしい」動きであると、感心してしまいました。

EUがVAT改革案を承認、電子書籍のVATを廃止する国も〈HON.jp News Blog(2018年10月4日)〉

 これまで多くのEU参加国で、電子書籍・電子刊行物だけに課せられてきたVAT税率の撤廃に向けて、ECOFIN(EU加盟国の経済・財務相が経済政策の調整をする閣僚理事会)が各国で電子書籍と紙の本と同じくVAT非課税としてもよい、という提案を採択した。 この合意で、無税とするのも含め、EU参加各国が自由にVAT税率を決められるようになる。「ブレグジット」によりEU脱退が決定しているイギリスでも、英出版社協会が同様の措置を...

 これまでEUでは、紙の本は「文化財」として軽減税率を適用し、電子の本は「サービス」として税率に格差を付けてきました。欧州委員会が紙と同様の軽減税率を電子にも認めようと動いたら、司法裁判所が待ったをかけるなど、状況は二転三転してきました。これでようやく一件落着です。なお、日本では2019年10月1日から軽減税率制度が実施されますが、新聞は対象品目なのに対し、本や雑誌はいまのところ対象外です。良い悪いは別として、欧州の「文化」に対する考え方との大きな差を感じます。

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著者について

About 鷹野凌 736 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学デジタル編集論非常勤講師 / 二松學舍大学エディティング・リテラシー演習非常勤講師 / 日本出版学会理事 / デジタルアーカイブ学会会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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