「電子書店eBookJapanがヤフーと共同運営のebookjapanに」「インプレスR&Dの著者向けPOD出版サービス累計販売3万冊突破」など、出版業界気になるニュースまとめ #342(2018年10月1日~7日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2018年10月1日~7日は「電子書店eBookJapanがヤフーと共同運営のebookjapanに」「インプレスR&Dの著者向けPOD出版サービス累計販売3万冊突破」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

出版状況クロニクル125(2018年9月1日~9月30日)〈出版・読書メモランダム(2018年10月1日)〉

 毎月楽しみな、小田光雄氏の出版状況クロニクル。集英社、光文社の決算情報で、部門別売上が明らかにされているのが助かりました。新文化の決算情報(↓)、2018年はなぜか部門別が載っていない場合が多く。

電子図書館サービス「LibrariE」の導入館が70館突破、取り扱いコンテンツは4万2000点に〈HON.jp News Blog(2018年10月1日)〉

 日本電子図書館サービスの電子図書館サービス「LibrariE(ライブラリエ)」最新動向。同社の過去リリースを見ると、2017年3月に30館・2万点、2017年12月に50館、2018年5月に60館・3万点という増加ペース。取り扱いコンテンツが4万2000点というのは、電子書店で言えば楽天KoboやKindleストアが始まったばかりだった2012年秋ごろの水準です。とはいえ、電子書店はマンガの比率が高いので、図書館向けと単純に比較はできませんが。

サイコガン装着した『ポプテピピック』商品に『コブラ』作者が「許可をとりなさい」と苦言 大川ぶくぶさんが謝罪〈ねとらぼ(2018年10月3日)〉

 ねとらぼは事実の列記に留めていますが、他のメディアでは「著作権侵害」という論調で報じているところも。これは寺沢武一さん自身が言うように「礼儀」の問題である可能性が高いです。著作権で争ったら、恐らく「アイデアの範疇」とされるように思われます。

楽天Kobo、8型で見開き表示が可能となる電子ペーパー端末「Kobo Forma」の予約受付を開始 ~ 販売開始は10月24日から〈HON.jp News Blog(2018年10月3日)〉

 これまで最上位だった「Kobo Aura ONE」の、さらに上位となる端末。ページめくりの物理ボタンがあって、グリップ部分が厚い形状というのは、Kindleシリーズの最上位モデル「Kindle Oasis」を彷彿とさせます。防水機能はKoboシリーズが先行し、見開き表示はKindleシリーズが先行。競合がいることによって健全なサービス向上が図られている好例だと思います。

「国立国会図書館デジタルコレクション」のコンテンツ閲覧画面がレスポンシブウェブデザインに対応〈HON.jp News Blog(2018年10月4日)〉

 ようやくモバイル対応。まだトップページや検索結果一覧画面が対応していないのは残念ですが、いずれ対応することでしょう。平成30年版「情報通信白書」の世帯保有率調査では、ついにスマートフォンがパソコンを上回りました。モバイル対応はもはや「当たり前」のことです。非対応であることは、半分以上のユーザーを捨てているのと同義であるという認識が必要でしょう。

インプレスR&D「著者向けPOD出版サービス」の累計販売数が3万冊を突破〈HON.jp News Blog(2018年10月5日)〉

 具体的な数字が公開されました。679点で3万冊ということは、平均すると1点あたり44冊。シビアであることは間違いありませんが、在庫リスクがない=絶版になりづらいのがPODや電子書籍の利点です。時代性に大きく左右されず、長く売り続けられるようなタイトルに適している手段なのかもしれません。

電子書店「eBookJapan」が全面リニューアル、ヤフーと共同運営の「ebookjapan」へ名称変更、URLも変更〈HON.jp News Blog(2018年10月5日)〉

 ぜんぶ小文字の「ebookjapan」アプリが7月に新登場したとき、既存の「eBookJapan」(BとJが大文字)はどうするのだろう? と少し疑問に感じていたのですが、「全面リニューアル」で移行することに。「当面は既存サイトも並行運用」とのことですが、いずれ統合されるのでしょう。となると、こんどは「Yahoo!ブックストア」をどうするのか? という疑問が。

海外

米アマゾンが国内の従業員全員の最低時給を15ドルに〈HON.jp News Blog(2018年10月3日)〉

 バーニー・サンダース上院議員が、アマゾンなどの高収益企業が税優遇や補助金を受けているいっぽうで、従業員は低賃金で生活保護を受けているなどと批判していたのを受けての措置です。

 ところが最低時給を上げるのと同時に、月次ボーナスと株式報酬を廃止するため、新規採用者は厚遇されるものの、ベテラン従業員には不満が残る形になったようです。

 バーニー・サンダース氏はアマゾンの動きに対し「賞賛に値する」とコメントしており、政治的な批判をかわすことに成功しています。また、離職率が下がるので求人募集のコストを下げられるとか、ホリデーシーズンの臨時スタッフが集めやすくなるといった分析もあるようです。

 非常に「アマゾンらしい」動きであると、感心してしまいました。

EUがVAT改革案を承認、電子書籍のVATを廃止する国も〈HON.jp News Blog(2018年10月4日)〉

 これまでEUでは、紙の本は「文化財」として軽減税率を適用し、電子の本は「サービス」として税率に格差を付けてきました。欧州委員会が紙と同様の軽減税率を電子にも認めようと動いたら、司法裁判所が待ったをかけるなど、状況は二転三転してきました。これでようやく一件落着です。なお、日本では2019年10月1日から軽減税率制度が実施されますが、新聞は対象品目なのに対し、本や雑誌はいまのところ対象外です。良い悪いは別として、欧州の「文化」に対する考え方との大きな差を感じます。

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著者について

About 鷹野凌 793 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 エディティング・リテラシー演習 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など
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