英ウォーターストーンズの救世主は米バーンズ&ノーブルをも救えるか?

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 8月7日付で投資グループ、エリオット・アドバイザーズによる米最大手書店チェーン、バーンズ&ノーブルの買収が最終決定したことを受けて、ニューヨーク・タイムズがCEOに就任したジェームズ・ドーント氏を取材している。

 主にイギリスで289店舗を展開するチェーン店、ウォーターストーンズを2011年から率い、2015年に黒字転向させたドーント氏だが、書棚の傾き1度の違いにもこだわりを見せる彼をして英ペンギン・ランダムハウスのトム・ウェルドンは「チェーン店の仕入れ力を持ったインディペンデント書店をたくさん作ったようなものだ」と評する。

 中央集権型のチェーン店から、各店に店作りを任せるようにし、コンセントを解放してパソコンを持った大学生が長居する店にも「長い目で見て、彼らが将来金持ちになって本を買ってくれたら電気代が何倍にもなって返ってくる」と余裕綽々だ。

 ドーント氏がウォーターストーンズで行った改革は2つある。ひとつは年間3800万ドルの収入源となっていた「コアップ」と呼ばれる宣伝費を廃止したことだ。ドーント氏はこれを「書店にとってドラッグのようなもの」と非難し、出版社を説得して廃止した。コアップを止める前は仕入れの20%を出版社に返品していた(返品の際の送料は書店持ち)が、今では4%となっている。対してコアップ頼みのバーンズ&ノーブルでは返品率は20〜25%となっている。

 もう一つは、Eブックでアマゾンと対抗するのを止めた点だ。バーンズ&ノーブルは10億ドル以上突っ込んでオンライン書店とキンドルのライバルとしてNookを後押ししてきたが、ウォーターストーンズはウェブサイトにも「スズメの涙」ほどしか予算をかけず、オンライン書店の売り上げも全体の5%に過ぎない。

 「同じ本でも、本屋に出向いて自分の目と手と耳で選んだものの方が、アマゾンで同じ本を買うのより楽しめる」とドーント氏は語る。ウォーターストーンズの経営を任されるまではロンドン市内に6店舗を展開するドーント・ブックスで従業員は50人。対するウォーターストーンズは3000人だ。

 イギリスではアマゾンが40%のシェア、ウォーターストーンズが25%となっているが、アメリカではバーンズ&ノーブルのシェアは8%にまで落ち込み、アマゾンが50%となっている。バーンズ&ノーブルは1997年のピークに1000店以上の店舗があったが今では627店になり、一時期は総資産価値10億ドルだったのが、今回の買収では7億ドル足らずの取引額だった。

 ニューヨーク・タイムズの記事のコメント欄を読んでも、ドーント氏がバーンズ&ノーブルを蘇らせることができるのか注目されていることがわかる。ニューヨークタイムズの記事には、詳細なドーント氏の経歴や、今年ウォーターストーンズで繰り広げられた書店員によるリビングウェージを求めての署名運動のことなども触れられている。

参考リンク

ニューヨーク・タイムズの記事
https://www.nytimes.com/2019/08/08/books/watersones-barnes-and-noble-james-daunt.html
本当は怖いアマゾンの話—Amazon Tales of Horror | Books Beyond the Briny Deep(※コアップについての解説が含まれる)
https://oharakay.com/?p=2490

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About 大原ケイ 200 Articles
NPO法人HON.jp 理事。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。

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