「読書専用端末の時代は終わった?」「出版物の正規版配信認定マークにほとんどの電子書店が参加へ」など出版業界関連の気になるニュースまとめ(2018年9月3日~9日)

まとめ

 先週は「読書専用端末の時代は終わった?」「出版物の正規版配信認定マークにほとんどの電子書店が参加へ」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年9月3日~9日分です。

読書専用端末の時代は終わったのか〈マガジン航(2018年9月3日)〉 はてな

 毎月楽しみな、仲俣暁生氏のEditor’s Note。私もお伺いしていた「放談会」での一幕について。大枠では論旨に賛成なのですが、たとえばカメラみたいに、いまもなお残存しているさまざまなジャンルの「専用端末」のことを思うと、電書専用端末も「終わった」のではなく、一部の嗜好家のニッチなニーズにより少しは生き残るように思います。
 お盆に帰省したとき、以前プレゼントした BookLive!Reader Lideo を懐に入れ、外出時のちょっとしたスキマ時間に読んでいる父親の姿を見ました。実際に使ってみると利便性が実感できるのだなと嬉しい反面、老眼で小さい字が読みづらい高齢者には確実にニーズがあるはずなのにと現状を残念にも思います。
 あと、ソニーが早い時期にGoogle Play対応Readerを出せば、勢力図が変わっていたようにも思います。Androidに対応している電子書店ならどこでも使える「神端末」として、きっと崇められたことでしょう。

海賊版サイト対策「場外戦」、JILISシンポで17人が熱弁〈日経 xTECH(2018年9月3日)〉 はてな

 情報法制研究所(JILIS)主催で9月2日に行われた緊急シンポジウムの詳細なレポート。個人的な収穫は、弁護士の村瀬拓男氏が、2018年秋から始める正規版配信認定マークに、Apple、Amazon、Googleも含めたほとんどの電子書店が参加すると明言したこと。ずっと出版版「エルマーク」を用意すべきだと言い続けてきた甲斐がありました。
 あとは、どのように運用されるかを注視したいところ。認定マークはサイトに表示するだけでなく、コンテンツそのものにも表示すべきでしょう(既存コンテンツをすべてアップデートするのではなく、ビューアの機能で重ねて表示させるような形が望ましい)。また、CODAのCJマークのように、認定マークを管理する団体が商標権を行使することにより、海賊版業者との紛争当事者になれるような運用ができるかどうか。

絶版マンガや単行本未収録作品などをすべてのストア・アプリへ届けたい ―― ナンバーナイン社の電子書籍配信代行事業〈hon.jp DayWatch(2018年9月3日)〉 はてな

 取材しました。反響で「マンガ図書館Z」とのバッティングを心配する声を目にしました。確かに「絶版作品や雑誌連載のみで単行本化されていない作品」という作品のターゲットは同じですが、単巻販売と無料閲覧&広告とでは収益モデルや読者のターゲットが異なるため、ギリギリ住み分けは可能ではないかと思っています。無料でしか読まないユーザー層って、いますからね。ナンバーナイン方式であまり売れなくなったら、マンガ図書館Zへ移行する、という段階を踏む形になるのかなと。

2018年は英米でオーディオブック“元年”となるのか?〈hon.jp DayWatch(2018年9月4日)〉 はてな

 オーディオブックが英米出版社の売上・利益の柱になりつつある、というニュース。日本はまだそこまでの状況とは言えませんが、これからそうなっていくであろうことが予想されます。

コミックスの「累計部数」は時代遅れの指標だ〈東洋経済オンライン(2019年9月4日)〉 はてな

 紙のマンガ誌が隆盛を極めていたころ、立ち読みや回し読みされた数は、当然存在していたはずですが無視されていました。というか、把握するのは無理だし、恐らく販売数に比例するだろうから無視してもよかったわけです。
 デジタルの場合は、それこそページ単位の閲覧数や閲覧時間、離脱ページなど、いろんなことが把握できます。たとえば、総閲覧数と有料閲覧数から有料閲覧比率を算出して、有料閲覧比率が低くなったら、単巻販売より話売りにしたほうがいいとか、サブスクリプションへ以降すべし、みたいなビジネスモデルの切り替え判断に使うといったことは、恐らく内部ではすでに行われているはず。朝日新聞の林智彦氏が「メディア360°」を紹介したのは2年前ですが、デジタルマンガの場合「単巻販売の累計ダウンロード数」以外の数値をどのように指標化し発表するか、悩ましいところでしょう。
 ただ、同じデジタルマンガでも、広告市場についてはベクトルが異なるため同じ土俵で語らないほうがいいでしょう。単に「売れてます」アピールではなく、広告主や代理店に向けて数字を出す必要があります。そろそろ日本ABC協会は、無料アプリの数値の把握と公知に勤めなければいけないような気が。

MMD研究所が「2018年8月 電子書籍の利用に関する調査」結果を公表〈hon.jp DayWatch(2018年9月5日)〉 はてな

 MMD研究所は2016年にも同様のアンケート調査を行っているため、比較してみようと思ったのですが、質問の仕方が微妙に変わっているため比べるのはやめました。あと、なにをもって「電子書籍」とするのか? が、回答者の認識に委ねられている点がどうにも悩ましい。ここ数年、私も授業で学生にアンケートをとっているのですが、マンガアプリやウェブマガジンのことを「電子書籍」と思っていない人が結構います。

Facebookによる「不適切なコンテンツ」の監視は、問題だらけだった〈WIRED.jp(2019年9月9日)〉 はてな

 ユーザーを長時間滞留させるような過激なコンテンツは、本来なら削除すべき対象でも見て見ぬふりをされるとのこと。「大事なのは、一日の終わりにどれだけ金を稼いだかです」というトレーナーの発言が、企業の姿勢を物語っています。まあ、たまたまこの記事ではFacebookがやり玉に上げられていますが、巨大プラットフォームはあっちもこっちも、BANする基準が大きくブレるし、理不尽なBANを食らうこともあるしで、ユーザーは振り回されるばかりですが。


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投稿者: 鷹野凌

フリーライター/ブロガー。NPO法人日本独立作家同盟 理事長。明星大学/実践女子短期大学 非常勤講師(デジタル出版論/デジタル出版演習/デジタル編集論を担当)。出版学会員/デジタルアーカイブ学会員。主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(インプレス・2015年)