50周年アーカイブ公開で思わぬ英ブッカー文学賞の舞台裏が暴露される

noteで書く

《この記事は約 2 分で読めます(1分で600字計算)》

 ブッカー賞創立50周年を記念して『Behind the Scenes: The Man Booker at 50』という映像が公開されたが、英国図書館がこの時の取材として残されていた何百時間にも上るオーディオ資料からは、最優秀作品がコインを投げて決められた年もあったことなどがわかったと英ガーディアン紙が伝えている。

 ガーディアンによると、1976年はデイビッド・ストーリーの『Sayville』が受賞したが、その舞台裏では、以下のエピソードがあった。前審査委員会員のマーティン・ゴフ氏(故人)によると、3人いた審査員のうち、詩人(で当時の首相夫人でもあった)メアリー・ウィルソンは、候補作に出てくる性描写に「耐えかねて」審査を放棄し、残りの2人(小説家のウォルター・アレンとフランシス・キング)のうち、1人が「2作のうちどちらか」を推し、もう1人がストーリー推しで折り合いがつかなかったため、コインを投げて決めたという。

 他にも1969年〜1970年に審査員を務めたレベッカ・ウェストはジョン・ル=カレを「フォーミュラ通り」、キングズレー・エーミスを「不思議なくらい残念」、と辛辣に評していたり、労働組合の決まりのために、受賞者のスピーチを写していた画面が途中で途切れ、出版社業界に対して辛辣なコメントだけになってしまったフェイ・ウェルドンのエピソードなどが明らかになっている。

参考リンク

英ガーディアン紙の記事
https://www.theguardian.com/books/2018/sep/06/over-my-dead-body-booker-prize-archives-reveal-unknown-judging-battles
マン・ブッカー賞サイトの50周年記念ページ

noteで書く

広告

著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
タグ: /