2018年英ブッカー賞はアイルランドのアンナ・バーンズに

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 今年で創設50周年を迎えた栄えあるイギリスのマン・ブッカー賞は、有力候補視されていたイギリスのデイジー・ジョンソンやアメリカのリチャード・パワーズではなく、北アイルランド出身のアンナ・バーンズ著『Milkman』に贈られた。

 前作に続き、北アイルランドでの内紛という歴史を背景に書かれた人間ドラマで、主人公の若い女性が地元の権力者に言い寄られるという設定も、MeTooムーブメントに呼応するテーマでもあり、審査委員長を務めたクワメ=アンソニー・アピアは「引き裂かれた社会の中で、日常に忍び込んだ抑圧をユーモアさえ交えながら描き切った」と絶賛した。バーンズは前作『No Bones』で2002年にオレンジ賞の候補になった。

 イギリスではフェイバー&フェイバーから、アメリカでは急遽刊行日を繰り上げたグレイウルフから12月中に発売される予定で、いずれもインディペンデント出版社にとって吉報となった。

関連リンク

マン・ブッカー賞のウェブサイト
https://themanbookerprize.com/news/anna-burns-wins-50th-man-booker-prize-milkman
英ガーディアン紙の記事
https://www.theguardian.com/books/2018/oct/16/anna-burns-wins-man-booker-prize-for-incredibly-original-milkman

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About 大原ケイ 135 Articles
NPO法人日本独立作家同盟 理事。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。

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