英ブッカー賞が新しいスポンサー探し

《この記事を読むのに必要な時間は約 2 分です》

 イギリスで最も栄えある文学賞とされる「マン・ブッカー賞」だが、これまで18年間、賞金などを提供してきたヘッジファンドのマン・グループが今年限りでスポンサーから撤退すると発表し、ブッカー賞側は新しいスポンサー探しに奔走している、とイギリスの複数のメディアが伝えた。

 マン・グループはこれまで賞金などとして毎年160万ポンドを提供してきたが、運営側や著者との関係は必ずしも友好的ではなく、ヘッジファンド側がスポンサーとして十分に評価されていないと感じていたという。2014年からアメリカの著者にも受賞枠を広げたことで、「英国的」位置付けが失われたと見る向きもあったと伝えられている(この5年でアメリカ人作家の受賞は2回)。

 中には同賞の審査員を務めたことのあるセバスチャン・フォークスのように「彼らは文学賞のスポンサーとしてありがたがられる存在ではなく、むしろ批判されるべき存在だ」と発言して“敵”と見る者もいる。

 ブッカー賞を組織する基金団体は既に新しくスポンサーとなるべく団体と交渉を始めており、来年の賞には間に合う自信を見せている。今年のブッカー賞は通常通り、本賞と国際賞が秋に授与される。

参考リンク

BBCの記事
https://www.bbc.com/news/business-47020374
英ガーディアン紙の記事
https://www.theguardian.com/books/2019/jan/27/booker-prize-trustees-search-for-new-sponsor-after-funding-dropped
英デイリーメール紙の記事
https://www.dailymail.co.uk/news/article-6637697/Man-Group-ends-Booker-Prize-sponsorship-judge-called-hedge-fund-enemy.html

HON.jp News Blogは広告費のほか、みなさまからの寄付金会費などによって運営されています。

スポンサードリンク

About 大原ケイ 148 Articles
NPO法人HON.jp 理事。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。

関連記事

国際ブッカー賞の最終ノミネート作品発表、アジア勢はゼロ  4月9日に2019年のマン・ブッカー国際文学賞の最終ノミネート作品6タイトルが発表された。5月21日に最優秀作品が発表されるが、今年はアジア勢の著書は入らなかった。  昨年度『逃亡派』(EXLIBRIS)で同賞を受賞したオルガ・トカルチュクが、もう1人の翻訳者とともにノミネートされている他、...
英書店チェーンの従業員が最低限の生活賃金を求めて署名運動  イギリス最大手の書店チェーン、ウォーターストーンズの従業員約6000人が「真の生活賃金」分の時給を求めて署名運動を起こしたと複数のメディアが報じている。  生活賃金基金(The Living Wage Foundation)によるとロンドン近郊の生活賃金は時給10.55ポンド(約1536円)...
『嵐が丘』のモデルとなった家が売りに出される  イギリスの西ヨークシャーで17世紀に建てられた「ポンデン・ホール」という古い一軒の家が売りに出されている。ここはブロンテ姉妹が19世紀によく訪ねた場所で、今は旅館になっている。4エーカー(約1万6187平方メートル)ほどの土地に建った460平方メートルほどの一軒家からは、ポンデン貯水池やパノラマの...
ブレグジット前のロンドン・ブックフェアで仏出版社がとばっちり  3月29日の期限ギリギリまで揉めそうなイギリスのEU脱退(ブレグジット)を目前に、3月12日から14日にロンドンで開催されるブックフェアには、ヨーロッパ大陸の出版社がこぞって出展する。中でもフランスでは、国際フランス語出版局(Bureau International de l'édition Fr...
英ブッカー賞の新スポンサーはカリフォルニアのIT長者夫婦  18年間、資金支援をしてきたマン・グループに代わり、来年からブッカー賞のスポンサーとなるのは、セコイア・キャピタルで巨万の富を築いたカリフォルニアのIT長者夫婦のチャリティー基金「クランクスタート」との発表があった。  マイケル・モリッツとハリエット・ヘイマン夫婦は2人ともライターでもある。...
芥川賞受賞作『コンビニ人間』がイギリスで再人気に  1年近く前に英語で刊行された村田沙耶香『コンビニ人間』が、今頃になってベストセラー入りしている。ロンドンでいちばん大きい店を構えるフォイルズ(foyles)書店がプッシュしたのが功を奏したようだ。  イギリスでは『コンビニ人間』のハードカバーが出たのが昨年3月、ソフトカバーは今年5月に予定さ...
元編集者ベストセラー作家の虚言癖に英米出版業界が騒然  『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』といえば、昨年刊行され、アメリカやイギリスでベストセラーとなった心理スリラーだが、著者が売れっ子作家として人前に出るようになり、その言動に数々の嘘があることがわかったと、ニューヨーカー誌が伝えている。  A・J・フィンという性別不明のペンネームを使って発表し...
インターネット・アーカイブのEブック貸し出しに英著者団体が抗議  著作をデジタル保存する目的で設立されたインターネット・アーカイブの「オープン・ライブラリー」では、絶版になっている著作品だけでなく、数万タイトルもの作品にアクセスできるようになっている。  インターネット・アーカイブは、1996年にサンフランシスコで設立された。オープン・ライブラリーは、「誰...
イギリスの出版業界の人種・地方出身者のダイバーシティーはまだまだというアンケート結果...  イギリスの出版社は人種雑多なロンドンに集中しているのにもかかわらず、出版社に勤めるBAME(Black, Asian and Minority Ethnicの略)の割合は11%で、ロンドン市の40%には及ばない状態であると英ガーディアン紙が伝えている。  42団体6432人に対するアンケート...
英ベストセラートップ100からわかる7つのこと  2019年を迎えてイギリスではオーディオブック、政治ノンフィクション、ブッククラブやニッチな定額読み放題サービスなどに期待がかかっているが、昨年のトップ100ベストセラーからわかる読書傾向を経済紙フォーブスが分析している。 フィクションのベストセラーはほとんどが「クライム・スリラー」で最...