「マンガ図書館Zがメディアドゥ傘下に」「ネット書店課税を求める動きへの反発」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #331(2018年7月9日~15日)

まとめ
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 先週は「マンガ図書館Zがメディアドゥ傘下に」「ネット書店課税を求める動きへの反発」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年7月9日~15日分です。

雑誌休刊は悲しむべきじゃない?――本格化する電子版への移行〈ダ・ヴィンチニュース(2018年7月9日)〉

 「出版月報」の「Magazine & Multimedia Information」というコーナーに、創刊誌・休刊誌・改題・刊行変更の情報が載っています。ウェブマガジンへの移行は「刊行変更」ではなく「休刊」として扱われていて、いつも「まだ続いているのに……」という気分にさせられます。この記事でまつもとあつし氏が言うように、前向きな言葉で伝えて欲しいものです。

出版業界が軽減税率の適用目指して「有害図書排除」へ 「何を以て『有害』指定するのか。何がエロになるのか不明」と懸念する声も〈キャリコネニュース(2018年7月10日)〉

 第三者委員会の「出版倫理審議委員会」を設立し、自主的に「出版倫理コード」を付与して軽減税率適用を目指すとのこと。業界自らの手で「有害図書」か否かを決めるという、まことに愚かな方向へ突き進んでいます。記事内にもありますが、山田太郎元参議院議員が2016年の予算委員会で麻生太郎財務大臣(当時)から、憲法84条の租税法律主義によって民間団体が軽減税率の対象を決めるのは難しいという答弁を引き出しています。それを無視するつもりなのか。どうやら、有害図書かどうかではなく「ただのコードだから」で線引きしようと目論んでいるらしいのですが。バカですか。筒井哲也氏の『有害都市』で憂慮されていた未来が、現実のものになってしまいそうです。

「マンガ図書館Z」のJコミックテラスをメディアドゥホールディングスが子会社化〈hon.jp DayWatch(2018年7月10日)〉

 「Jコミ」時代から追いかけてきた身としては、落ち着くところに落ち着いた感。いちばん古い記事は2012年4月でした。「絶版マンガ図書館」に変わった2014年7月の記者会見や、GYAOと組んだ2015年8月の記者会見にも行ってます。GYAOはヤフーグループなので、2016年9月にイーブックイニシアティブジャパンがヤフーの子会社になったのが、「マンガ図書館Z」を同グループ内でのポジションを微妙なものにしていたのだろう、という想像ができます。講談社も資本を入れたそうですが、メディアドゥホールディングスに資本を入れている他の大手出版社も、もしかしたら続く?

「坂道・閉店」情報が鉄板企画 「枚方つーしん」異色社長の成功論〈withnews(2018年7月11日)〉

 ローカルメディアの成功事例。枚方市を拠点として、月間300万PVをたたき出しているそうです。「『枚方愛』を押し出していない」というのは興味深い。

「ブックパス」がWow!IDに対応してau回線契約なしでも利用可能に〈hon.jp DayWatch(2018年7月11日)〉

 hon.jp DayWatch のニュース記事では、なるべく個人の意見は出さないようにしているのですが、それでも思わず「ようやく」と書かずにはいられなかったニュース。ともあれ、オープン化の方向性は歓迎します。

ツイッターが偽フォロワー削除へ 数千万件の見通し〈共同通信(2018年7月12日)〉

 ずいぶん前から “buy followers” などのキーワードで検索すれば売ってるところがゴロゴロ見つかっていたわけですが、Twitter社がようやく対処。オバマ元大統領が240万人減ったというニュースもありますが、「率」からすればフォロワー数の多い人が「数」を多く減らすのは当たり前の話。ふつうの人は多くても数%程度の減少に留まっているようです。ちなみに私は、10人くらい減りました。いままでの推移は「Twilog Stats」ですべて確認できます。

「ネット書店課税」創設を要望 実店舗経営者、自民党の会合で〈共同通信(2018年7月12日)〉

 リアル書店の苦境はわかりますが……。反響を見ると「われわれは固定資産税を払っている」という言い分が猛反発されています。ネット通販企業だって、倉庫の固定資産税は払っているはず(アマゾンに対し「法人税を日本で払っていない」と言うならまだ理解できますが)。「ライバルの足を引っ張ってください」という要望は、なかなか世の中から支持されづらいのではないでしょうか。

京極夏彦氏はここまで「読みやすさ」を追求していた 版面の細かい制御のため、InDesignで小説を執筆〈JBpress(2018年7月12日)〉

京極夏彦氏が一挙公開、ルビと禁則処理の法則 文字詰め、改行、記号などを整理して今のスタイルに行き着いた〈JBpress(2018年7月13日)〉

 京極夏彦氏が自ら InDesign で組んで入稿しているというのは知っていたのですが、ここまでこだわっているとは。「ぶら下がり」「追い込み」「追い出し」が発生しないように、表現を変えて文字数調整しているというのは、良い意味で「ヘンタイ」的であります。1行だけ次のページにはみ出さないように、言い替えたりといった配慮は私もやる場合がありますが、その徹底具合がすごい。おいそれと真似できるものではないです。

故人のSNSは「遺産」 相続認める ドイツ裁判所〈NHKニュース(2018年7月13日)〉

 死亡した人のアカウントを遺産とみなした司法判断は珍しいとのことですが、むしろ当然の方向性なのではないかと思います。日記と同じです。ライフログ=人生の記録なのですから。

少女・女性向け漫画、立ち読み可能にしたら売り上げ増〈朝日新聞デジタル(2018年7月13日)〉

 良い実験。どこもかしこもマンガは立ち読み防止のシュリンクパックがかかっていますから、良い集客手段、良い差別化になっているのでしょう。「少年・青年向け漫画では売り上げに顕著な変化はなかった」というのが気になるところではありますが。

【超衝撃告知!!】ガチ勢よ刮目せよ! 新サイト「コロコロオンライン」爆誕予告!!〈コロコロオンライン(2018年7月13日)〉

 「スプラトゥーン」「ビックリマン」「ポケットモンスター」などの連載記事(マンガではない)が曜日に合わせ毎週更新されるのと、「つるピカハゲ丸」「ゲームセンターあらし」「ポケットモンスター」などのマンガがリバイバル連載される新メディア。7月13日に予告で、14日にオープンというのはちょっと。子供向けなのにやたら漢字多いし、ウェブでもルビ振れるんだから、もうひと手間かけて欲しいところ。

小学館、『月刊コロコロコミック』7月号の漫画をネットで無料公開 平成30年7月豪雨を受けて〈ねとらぼ(2018年7月15日)〉

 直前に「コロコロオンライン」オープンのお知らせを見ていたので、「ああ、宣伝にもなるし、いいことだな」と思ったのですが、公開されている場所は「コロコロ公式サイト(http://www.corocoro.tv/)」。「コロコロオンライン(https://corocoro.jp/)」とはまったく連携していません。うーん、もったいない。

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著者について

About 鷹野凌 823 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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