「2025年回顧」「AI検索は優越的地位の濫用?」「Sora 2よりヤバイ? X(旧Twitter)の『画像を編集』機能」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #696(2025年12月21日~2026年1月3日)

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 2025年12月21日~2026年1月3日は「2025年回顧」「AI検索は優越的地位の濫用?」「Sora 2よりヤバイ? X(旧Twitter)の『画像を編集』機能」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

 新年あけましておめでとうございます。
 2026年も HON.jp News Blog をどうぞよろしくお願いいたします。
 今回は年末年始2週間分の大増量版です。

【目次】

総合

【特番】2025年下半期の出版ニュースを振り返る ―― HON.jp News Casting / 大西隆幸×菊池健×libro×古幡瑞穂×西田宗千佳×鷹野凌〈YouTube(2025年12月26日)〉

 毎年恒例の出版ニュース振り返り、今年は日比谷コンベンションホールで観客を入れてライブ配信しました。年に1回くらいはこうやって集まってワイガヤしたいですね。前半のアーカイブはYouTubeでどなたでも視聴できます。途中、機材トラブルで30秒ほど音が途切れている箇所があります。ご了承ください。後半の部までの見逃しアーカイブチケットは1月31日まで販売いたします。後半の部でも機材トラブルが起きて、数分映像と音声が途切れている箇所があります。申し訳ありません。

【マンガ業界Newsまとめ】各電子コミックプラットフォームの年間ランキング1位発表作品、コミックルーム・シーモア資本業務提携 など|12/28-229〈菊池健(2025年12月28日)〉

 ご登壇いただいた菊池健氏のコメントが最後のほうに。ありがとうございます。ちょうど菊池氏が大事なことをしゃべっているタイミングで、機器トラブルが発生してしまったのですよね……大変申し訳ありません。別系統でも録音録画するなど、多重バックアップが必要でした。トホホ。NovelJamもそうでしたが、2025年は配信で音声系統にトラブルが多すぎ。

2025年出版関連の動向回顧と年初予想の検証〈HON.jp News Blog(2025年12月31日)〉

 こちらも毎年恒例の1年振り返りです。今回も、あと数時間で2025年が終わりというギリギリのタイミングでの更新になってしまいました。約3万字あります。ゆっくりご覧ください。冒頭にあとから「要するに?」セクションとして、NotebookLMに作ってもらったインフォグラフィック、音声解説、動画解説を追加しました。

政治

「スマホ新法」を巡るAppleとGoogleの動き App Storeの競争力が上がる一方で“iOSのGoogle化”が進む?:石野純也のMobile Eye〈ITmedia Mobile(2025年12月20日)〉

安全や安心に関わる、ベースとなる審査だけをAppleが担うという仕組みだ。これを行うため、開発者はAppleにアプリを提出する。

 なるほど、そういう理由なら外部決済でも手数料がかかるという理屈も理解できます。そのベースとなる審査だけの手数料は5%なのですね。それ単独で用いられることはないとはいえ、料率が明らかになったのは大きい気がします。公取委、グッジョブ。

「知的財産推進計画2026」の策定に向けた意見|通信・放送|声明・見解〈日本新聞協会(2025年12月23日)〉

 日本新聞協会が発表した意見書はこちら

報道コンテンツを無許諾で利用する生成AIサービスは後を絶たず、ユーザーが情報発信源のウェブサイトを訪問しない「ゼロクリックサーチ」などの問題は深刻化している。

 その「ゼロクリック」で実際にどれだけ影響が出ているのか、数字で語って欲しいものです。JEPAの年末放談会でも言ったんですが、影響が皆無とは思わないんですよ。ジャンルに依るはず。辞書的なコンテンツなど短い記事は、ソースをクリックして訪問する動機が薄れますから。

 でも、滞在時間が短くて直帰率が高い場合と、滞在時間が長くて複数ページを回遊しているような場合とでは、ぜんぜん価値が違うわけですよね。でもそれを同じ1PVとしてしかカウントせず同じ価値とみなしているなら、その計測ポリシーが間違っていると思うんですよ。

「AI検索」で記事を無断使用した回答、独禁法の優越的地位を乱用した可能性…公取委が実態調査へ〈読売新聞(2025年12月23日)〉

 おおう、優越的地位の濫用ですか……その発想はなかった。たとえば、AI検索に使わせたくないけど、検索用のGooglebotはブロックできない点、などですかね。少なくともYahoo!ニュースのトピックス(ヤフトピ)の要約は「コンテンツの利用許諾を得たAIコンテンツパートナーが提供する記事にのみ表示」されるはずですが、考えてみたら、そこに権力勾配による契約の強要が発生していないか? という観点はあり得ます。さて、どういう調査結果が出てくるか。

Authors File New Lawsuit Against AI Companies Seeking More Money(著者らがAI企業に対し新たな訴訟を起こし、さらなる資金を求める)〈Publishers Weekly(2025年12月23日)〉

 Anthropicとの総額15億ドルの和解を拒んだ著者たちが、独自に「海賊版データをAIの学習用に用いた」という理由で提訴しました。対象はAnthropicだけでなく、OpenAI、Google、Meta、xAI、Perplexity AIの6社です。Anthropicの裁判では、紙本のスキャンデータのAI学習利用はフェアユースだけど、海賊版データのAI学習利用はフェアユースに該当しないと判断されています。それゆえ「金で解決」する和解を試みたんですが、やはり「安い」と和解に応じない著者も出てきた、と。

 Anthropicとの和解案はまだ予備承認の段階で、異議申し立ての期限は年明け1月15日、公聴会は4月の予定です。つまりまだ確定していないんですよね。海賊版データのAI学習利用はフェアユースに該当しないという裁判所の判断を見たら、他のコンテンツホルダーも続々と訴えてくる可能性が高いと思ってました。とくにMetaは、海賊版データを使っていたことはバレてますから、同じような賠償を迫られることになりますと、当時書いたとおりに。

図書館に本を売ると「赤字」になる…本屋が行政に結ばされている「不平等条約」の惨状(飯田 一史)〈現代ビジネス | 講談社(2025年12月24日)〉

「政治ベタ」な出版業界人に喝…!議員経験者の書店主が教える地方議会・行政の攻略法(飯田 一史)〈現代ビジネス | 講談社(2025年12月24日)〉

 おお! これは素晴らしい。請願に成功した事例を、飯田一史氏が当事者に取材してがっつりノウハウを聞きだしています。日書連の用意したテンプレートだと、伝わりづらいのですね。

文部科学省、「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議」の報告書案に対する意見募集を実施中〈カレントアウェアネス・ポータル(2025年12月24日)〉

 年末年始に意見募集です。期間は2025年12月23日から2026年1月12日までと大変短くなっております。手続き的にもなんか「?」という感じが。まず「e-Govパブリック・コメント」の案件一覧には載っていません。正規のパブコメではない、ということなのでしょう。また、文科省の公式サイト新着お知らせにも載っていません。既存の有識者会議ページの下部に意見募集の欄が追記される形になっていました。これは気づきづらい。しかも Microsoft Forms ……謎だ。なんだこれ。

 2025年回顧にも書いたのですが、自治体の電子図書館(電子書籍サービス)導入費用について「都道府県などの広域連携による費用分担が有効な方策」としている点が非常に気になっています。図書館資料の購入費用軽減は、本の著者や出版社の収入を減らすこと。システム利用料の軽減は、電子書籍サービス事業者の収入を減らすこと。官がそのやり方を奨励するのは、民業圧迫促進なのでは。文科省や有識者会議のメンバーに、そういう認識はあるのか疑問です。私は、そういう意見を送る予定。

著作物等の利用に関する裁定制度に係る「裁定の手引き 概要版」を作成しました〈文化庁(2025年12月24日)〉

 以前、ポッドキャストで解説した「未管理著作物裁定制度」についての手引書が公開されました。従来の制度と新制度がしっかり比較されてます。従来の制度の手数料は1件6900円ですが、新制度の手数料は1件1万3800円とのこと。別途、補償金も必要です。私が「有償でもちゃんと手続きをして合法的に利用したいというニーズに応える制度」であり「そもそも無断で勝手に利用しようとするような輩なんて、わざわざ裁定制度なんか使わない」と言った意味が理解できるのではないかと。

「虚偽・捏造情報根絶法」可決 報道現場から懸念の声も=韓国〈聯合ニュース(2025年12月24日)〉

 うーわ、権力者にこんな権限与えてしまったら、好きなように表現規制しまくる未来しか見えないのですが。現政権がやらなかったとしても、いずれ悪用する権力者が現れます。ヤバイですねぇ……。

韓国の情報通信網法改正案を米国務次官が批判「当局に検閲権付与、技術協力の脅威」〈Chosun online 朝鮮日報(2026年1月1日)〉

 その通りなんですが、いまのアメリカにはそれを言われたくないでしょうね。

「AI教科書」廃棄で8000億ウォン損失…韓国・教科書業界、政府を提訴へ〈AFPBB News(2026年1月1日)〉

 本稿執筆時点で1円=9.22ウォンなので、8000億ウォンは約868億円です。日販「出版物販売額の実態」によると、日本の2022年教科書販売額とほぼ同じ規模ということに。そう考えると、この損失額はわりと妥当なラインに思えます。政治の都合で準備させられ、政権が変わったら梯子を外され、気の毒です。

社会

文字・活字文化振興法公布20周年記念 対談「スマホ依存時代の活字文化振興をめざす」〈The Bunka News デジタル(2025年12月19日)〉

【アピール(案)】文字・活字文化振興法公布20周年記念 対談「スマホ依存時代の活字文化振興をめざす」〈The Bunka News デジタル(2025年12月19日)〉

 先に見つけたのが「アピール(案)」のほうだったので、たまたま先に読んだんですが……なんか「スマホ」を目の敵にしている印象しか受けませんね、これは。大事なのは「スマホをどういう用途で使っているか?」ではないでしょうか。Smartphone(賢い電話)には、さまざまな用途があります。スマホで本を読んでる人もいるわけです。念のため申し上げておくと、「電子コミックは本じゃない」などと言わないでくださいね。対談のほうは、「脳トレ」の川島隆太氏が登壇していて驚きました。都合の良い発言をしてくれる識者を見繕ってきた感。

AI新世紀:オープンAIも狙った垂涎の日本語データ 「国産」の強みにできるか〈毎日新聞(2025年12月29日)〉

(OpenAI社)が国会図書館に接触したのは24年2月ごろだった。しかし、図書館側は「お断りした」。代わりに、著作権保護期間が満了した資料の提供を案内したという。

 おお!? 明確に「お断りした」という情報は、私は初めて見たかも。NDL Labに以前は「(著作権保護期間の存続している資料から作成したOCRデータは)当館との協議のうえで著作権法上認められた範囲内での利用(著作権法第30条の4の規定による機械学習目的など)に限り、当館と書面を取り交わした上で提供することが可能」と書いてあったんですよね。改めて調べてみたら、WARPのアーカイブでは2024年4月2日時点までこの記述が残っていたことが確認できます。しかし、記事にはこんなことも書いてあります。

国会図書館では23年2月以降、著作権保護期間内のデータの提供を見合わせることにしていた。

 あれ? そうなんですか? だって私、2023年3月に自民党デジタル社会推進本部がAIホワイトペーパー骨子を公開したとき、NDL Labの上記の記述に気づいて「GPTやBardなどいま話題のAIの学習目的にも、もうすでに使われているかもしれません」なんて推測を書いてるんですよね。

 時系列的には、2023年2月にNDLが著作権保護期間内のデータ提供見合わせを決める、2023年4月にアルトマンが来日して岸田首相(当時)などと面会、2024年2月にアルトマンがNDLへデータ提供を要請して断られる、その直後にNDL Labから記述が消えた、という感じです。うーん……アルトマンから「ここに『提供可能』って書いてありますよね」と指摘され、消すのを忘れていたことに気がついたのでしょうか?

神保町出版流通セミナー(第2回)学術コンテンツと専門出版社のこれから〈神保町プロジェクト(2025年12月29日)〉

アメリカの出版社から60冊くらいの注文があった。生成AIのLLMを作っている会社からの依頼などがくる。

 この話、一般に公表されたのは初めてでしょうか? 少し前に、Facebookの友だち限定公開で流れてきたから知ってはいたんですが、パブリックな情報ではないから言及しづらかったんですよね。これで本件について語りやすくなる。感謝。さて、この事例がAnthropicかどうかはわかりませんが、Anthropicのように紙の本をスキャンしてAI学習用データ(LLMのエサ)にすることを、わざわざ日本語の本を買って行っているのでしょう。そしてアメリカの裁判所はすでに、それをフェアユースとして認定しています。つまりこの流れはもう、すぐには止められません。ではどうすれば良いのか? うーん、トムソン・ロイターがAIスタートアップのロス・インテリジェンスに勝った事例が参考になるかも? 競合サービスで市場への影響が大きいなら、フェアユースは認められないわけですから。

AIエージェント時代、正直しんどい話|ryo〈Zenn(2025年12月31日)〉

 ここに書かれているのはプログラミングの話ですが、前述のようなAI翻訳のポストエディットでも同じような話を聞いてますし、文章書きでも普通に起きることだよなと、身につまされる感じがしました。「楽しさまで奪われた感じがある」というのが、なんかわかる。AIに指示して文章を出力させるのって、あんまり面白くないんですよね。真面目に読むつもりになれないし、ましてや自分の文章とも思えない。

式年遷宮の空模様――校正の新規受付再開と新館検証の完了|そらもよう〈青空文庫(2026年1月1日)〉

 Happy Public Domain Day! 2019年から始まった「日本で新規のパブリックドメイン作品が生まれない20年間」も、あと12年となりました。2017年に開催された「青空文庫20周年記念シンポジウム」で、達人出版会の高橋征義氏から提案された「青空文庫と式年遷宮アーキテクチャ 青空文庫200周年に向けて」が着々と実行されつつあるようでなによりです。

Welcome to the Public Domain in 2026(2026年のパブリックドメインへようこそ)〈Internet Archive Blogs(2026年1月1日)〉

 アメリカは1998年に保護期間を延長したため、ちょうど日本と入れ替わりで、2019年から新規のパブリックドメイン作品が発生するようになっています。

蒋介石の日記、国史館のサイトで閲覧可能に 死後50年、著作権切れで/台湾〈フォーカス台湾(2026年1月1日)〉

 中国や台湾など、まだ保護期間が死後50年間の国もあります。属地主義なので、日本国内ではまだ保護期間内です。ご注意を。

経済

Google親会社、米発電所開発のインターセクトパワーを7450億円で買収 AI向け供給確保〈日本経済新聞(2025年12月23日)〉

 AIの事業は、AIそのものの性能もさることながら、計算させるための半導体やメモリをどう確保するかと、電力をどう確保するかの競争になります。以前、カリフォルニア州サンタクララ(NVIDIAの本社がある)で進行しているデータセンター建設プロジェクトが、地元電力会社の供給準備が遅れて稼働できずにいるなどのニュースを見て、AI企業の競争は体力勝負になるなと思いました。そこへこのニュース。つまり、Googleすげぇ、って話です。

読者と作家が編集者とともに作品を生み出す共創型小説投稿プラットフォーム「ネオページ」〈記事広告〉〈HON.jp News Blog(2025年12月26日)〉

 新興小説投稿サイトの運営企業からお声がけいただいた記事広告案件です。お話をいただいて、ここはぜひ「小説を書く人の目でレポートいただきたい」と思い、NovelJam 2018でグランプリを獲得したライターのふくだりょうこ氏に取材・執筆いただきました。

関係性開示:ネオページには、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。そして、この記事広告は法人会員特典です。本欄のコメント記述は基本的に筆者の自由意志ですが、さすがにこれを「対価を伴ったものではない」とか「忖度もしていない」とは言えません。正直に明示しておきます。

「電子書籍・単話版」という選択肢——亀山隆彦氏と臨川書店が挑む、学術出版の新たな形〈ちえうみPLUS(2025年12月29日)〉

電子版を作るからこそ、紙がいかに変え難い貴重なものか強く感じました。この10年でわたしたちを取り巻く読書環境が大きく変わったように、電子データはフラジャイルな存在です。

 フラジャイル(fragile)は「壊れやすい」とか「もろい」という意味です(この記述を見て調べました)。「電子データはフラジャイルな存在」というのは、確かに私でさえ否定できません。クラウドストレージサービスが普及してから、私はバックアップデータを消失するような事態には遭遇しなくなりました。

 でもアカウントBANですべてのデータを一瞬で失ったみたいな話はときどき目にします。買ったはずの本がDRMに縛られた状態だと、サービス終了とともに本まで失われてしまう「消える電子書籍」問題は、いまだに避けられません。そういうデメリットをわかったうえで、紙の本とは異なるメリットをどう享受するか、だと思うのですよね。そういう意味でも実に良いインタビュー。

トラック業界、過当競争から脱却なるか 許可更新制・最低運賃導入へ〈日本経済新聞(2026年1月3日)〉

 2026年4月1日から施行されるトラック新法、物流系はあまり詳しくないのですが、そうも言ってられないのでいろいろ調べています。特定荷主になる年間9万トンラインが、ちょっとややこしくていまだによくわかりません。

 とりあえず重さのことだけを考えると、雑誌1部あたり600グラムと仮定すると1.5億部で9万トンに達します。ただし返品の復路も考えると1億部くらいと考えたほうがいいでしょう。2024年の雑誌推定発⾏部数は年間約10億部ですが、発行点数は2400くらいあるので、1誌だけで9万トンを超えることはなさそうです。

 書籍のほうは、1部あたり300グラムと仮定すると、返品も加味して2億部くらいで9万トンに達する感じでしょうか。出回り部数は年間で6.8億部あります(2024年)。1社あたりで合計したときどれくらいになるか。まあでも恐らく、普通に考えたら、自社トラック以外の貨物輸送事業者と契約しているのは取次なので、特定荷主に該当する可能性があるのはトーハン・日販だけでしょう。

 ……と思ったのですが、改正後の定義だと所有権ではなく「輸送の方法などを実質的に決定している事業者」が荷主になるとのこと。ならば、委託販売ではなく返品条件付き販売であることは、考えなくても良さそう。貨物輸送事業者と直接契約していなくても「輸送モード(この輸送⽅法で・この⾦額で)・受取日時(いつまでに)・受取場所(どこに)」の3つすべてを決めている場合は、今後は荷主になるそうです。

 定価販売縛りだから運賃は実質的に出版社が決めていることになるでしょうか?(この⾦額で)。発売日は出版社が決めています(いつまでに)。そして、指定配本(どこに)をやっていると、上記条件に3つとも合致しちゃいます。つまり、出版社が荷主になる場合もある、ということです。パターン配本(ランク配本)ならこれらは基本的に取次が決めてることになると思うので、指定配本の量次第でしょうか? うーん、ややこしい。

 ちなみにKADOKAWAの所沢サクラタウン「BECプロジェクト」は物流も自社で手配(商流は取次)していますが、2024年実績で年間生産部数が850万部とのことなので、文庫や新書が多いから1冊200グラムと仮定すると年間1.7万トン。仮に生産したぶんをすべて出荷したとしても、BECだけなら年間9万トンには届かない計算です。

 あれ? この場合、書店からの発注に基づいて発送しているから、荷主は書店になるのか? いや、書店が「この⾦額で」と配送料を決めることはできないよな……などと考えていたら、頭から湯気が出てきました。オーバーヒート。うーん、じつにややこしい。

【デジタルトレンド】80 国際標準策定と裁判で進み始めた AIとメディアの取引秩序形成〈The Bunka News デジタル(2025年12月24日)〉

RSL1.0の仕様には、ライセンス標準化団体であるCreative Commonsとの協業により、非営利の知識共有コミュニティを保護する目的の「コントリビューション」オプションも導入された。

 あ、クリエイティブ・コモンズが絡んでるのって、RSLだったんですか。TechCrunchの記事からは読み取れませんでした。著者の堀鉄彦氏からRSL1.0の公式発表に載っていると教えていただきました。ありがたや。こういうとき「やっぱり一次ソースもチェックしないとダメだな」と思います。

Xに画像の“AI加工機能”出現 他人のポストでも、1クリックで画像編集 「最悪なシステム」と物議に〈ITmedia AI+(2025年12月24日)〉

XのAI機能「画像を編集」が波紋 「画像やイラスト全部消しました」の声も 法的問題点は?〈ITmedia AI+(2025年12月25日)〉

 いやー、これはヤバイ。すでに女性や未成年の写真を勝手に水着姿へ変えるコラージュが大量発生しているようです。まず前提として、X(旧Twitter)のサービス利用規約には、「ユーザーの権利およびコンテンツに対する権利の許諾」セクションで「(アップロードした)コンテンツを、現在知られている、または今後開発されるあらゆるメディアまたは配布方法で、いかなる目的であれ、使用、コピー、複製、処理、翻案、変更、公開、送信、表示、アップロード、ダウンロード、および配布するための、世界的、非独占的、ロイヤリティフリーのライセンス(サブライセンスの権利を含む)を当社に付与するものとします」と定められています。つまり文句を言いたくても「でもあなた、同意した上で利用してますよね?」と言われてしまうわけです。

 ただ、日本の著作権法には同一性保持権があります。アメリカの著作権法に同一性保持権は存在しないのですが、属地主義だから日本で侵害されてるなら日本の法律が適用されます。だから、日本在住者Aの作品が日本在住者Bにこの機能を使われ、日本在住者Aの意に沿わない改変が行われた場合、日本在住者Bの行為は権利侵害にあたる可能性が高いと、私は思います。

 ところが、法律の専門家から、規約に同意している以上「法的に違法だというのはかなりハードルが高いように思われます」という見解が示されているのを発見しました。ぐぬぬ。えー? Twitterのリツイート機能でトリミングされたのを同一性保持権侵害だと知財高裁は認めているわけですが。この規約に関しては当時も同じだったはず。同一性保持権は強行規定です。利用規約は法律をオーバーライドできないはずだけどなあ。

 まあ「そんな機能付けるなよ!」って話ではありますが。まるで、利用者にナイフを渡して「ご自由にどうぞ(ニッコリ)」みたいな状態。X(旧Twitter)自身はただのプラットフォームですから、ユーザーによる権利侵害の責任は負わないんですよね。発信者情報開示請求が来たら粛々と従えば免責されます。あとはユーザー同士の係争。暗に「殺し合え!」と言ってるようなもんでしょ。

 自分でも試してみました。編集後にダウンロードだけして投稿はしなかったのですが、ダウンロードした画像はユーザーローカルの生成AI画像チェッカーに引っかかりませんでした。このチェッカーは、C2PAやSynthIDなど生成AI出力であることを示すメタデータが画像内に含まれているかどうかだけを見ています。つまり、X(旧Twitter)は編集後の画像にそういうメタデータを追加していません。じつにタチが悪いなあ。

 で、この新機能を嫌悪した方々(クリエイターが中心)が、BlueskyやMisskeyなどへ大量移住しているようです。過去にも同様の事象(エクソダス)は何度かありましたが、個人的にこれは本格的にヤバイと思います。ちなみにこれ、著作者が自分の作品を自分で投稿している場合はまだ、自分のコントロール下にあるから嫌なら消せばいいんですよ。実際、全削除して撤退している方も目にします。

 むしろ問題は、著作者から作品をお預かりしている立場のパブリッシャーがどうすべきかです。告知や宣伝のために作品の一部をアップロードしたら、第三者によって容易に無断改変される未来が待っています(この「画像を編集」機能がなくてもやる人はいますが、ハードルがとんでもなく低くなったということです)。それを「ファンアート」だと許容できるか? マンガの無料公開とか、私が担当者だったら怖くてできない。結末を勝手に変えて投稿し直す人とか出てきそう。手軽さが「Sora 2」よりヤバイと思います。

Cloudflare Reports Surge in Streaming Piracy Takedowns, Removes 20k+ Storage Accounts(クラウドフレア、ストリーミング海賊版削除の急増を報告、2万以上のストレージアカウントを削除)〈TorrentFreak(2025年12月29日)〉

 ちょっと「おや?」と思ったんですが、対象はCloudflare R2 Storageのアカウントです。著作権侵害の苦情が2023年上半期では数百件だったのが2025年上半期には十数万件まで急増した、みたいなことも発表しているようです。少しは変わりつつあるのかしら? でもCDNのほうは相変わらず、それぞれのホスティングサービスに削除通知を転送するだけみたいですが。

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雑記

 本稿は帰省先で書いています。作業効率アップのため、薄くて軽いモバイルディスプレイを持ってきました。資料を広げながら執筆できるのでだいぶ快適です。まあ、普段はディスプレイ3枚使ってますから、その環境に比べたらどうしても効率は落ちますが、(鷹野)

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著者について

About 鷹野凌 913 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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