「X(旧Twitter)の“画像を編集”機能が世界中で問題に」「Authors GuildがKindleのAI新機能“Ask This Book”に懸念表明」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #697(2026年1月4日~10日)

【写真】澤口書店 神保町店
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 2026年1月4日~10日は「X(旧Twitter)の“画像を編集”機能が世界中で問題に」「Authors GuildがKindleのAI新機能“Ask This Book”に懸念表明」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

総合

新春講演会 2026年の電子出版はどうなる?――JEPAセミナー資料を公開します〈HON.jp News Blog(2026年1月9日)〉

 毎年恒例で11年目です。2026年予想記事は今年も間に合わず……というかもう「予想」って言葉を使うのもやめようと思った1月3日の事件。予測とか予想とか、おこがましいんじゃないかと思えてきました。

政治

「Metaが日本で広告規制回避策を編み出し、世界展開」とロイター、SNS詐欺広告の現状とは?〈新聞紙学的(2026年1月5日)〉

 日本で詐欺広告が問題になっていた2024年4月ごろ、Metaが規制当局の目を誤魔化すためいろいろ小細工をしていたことがロイターに暴露されています。私も当時、Facebookで見たばかりの詐欺広告を「Meta広告ライブラリ」で検索しても見つからない事象にたびたび出くわしていました。検索システムが貧弱か、もしかしたら都合の悪いことを誤魔化してるのではないかと疑っていたんですよね。

メタはまた、削除に加えて、「広告ライブラリ」の検索結果の表示を、掲載中の広告(アクティブ)のみに絞り込むというデフォルト設定の変更も行ったという。

 削除済みの広告は、途中からデフォルト設定では除外されていたわけですね。なんかどこかのタイミングでそれに気づいたような記憶があるのですが、記録は残していなかったようです。掘り出せない。

 まあ、これはさすがに規制当局=総務省が激怒するような気がします。広告主の身元確認義務付けへのトリガーをまた引いたかも。ちなみに、これだけ不誠実なプラットフォームが、広告主に対してのみ誠実なんてことあるのかな? と疑い始めています。広告の表示回数等を誤魔化していても不思議じゃないですよね。

AI copyright battles enter pivotal year as US courts weigh fair use(AI著作権紛争、米裁判所がフェアユースを重視する中、重要な年を迎える)〈Reuters(2026年1月6日)〉

AIによる著作権侵害巡る法廷闘争、今年は重大な局面へ〈ロイター(2026年1月6日)〉

 こちらの記事、先に英語版を読んでいたので、後から日本語版を見て驚きました。英語版には、Anthropicの判決でフェアユースが認められなかった海賊版利用の話やCentral Libraryの話、Metaの判決で「市場希釈化」という斬新な理論が提示された話などがけっこう詳細に語られているのですが、日本語版からは省かれています。日本語訳というか、日本語で要約、みたいな感じ。ロイター日本語版で気になった記事は、翻訳元記事もチェックしたほうが良さそうです。

X投稿「Grok」使った性的な画像加工、被害相次ぐ 各国当局が調査〈日本経済新聞(2026年1月7日)〉

「メンバーのAI画像・動画を削除して」――AKB48グループ「STU48」が注意喚起 “炎上元”の漫画家は謝罪〈ITmedia AI+(2026年1月5日)〉

X日本公式、違法コンテンツに「厳格対応」改めて表明 Grok「悪用」投稿でも「永久凍結」「当局連携」〈弁護士ドットコム(2026年1月6日)〉

英、同意なき性的画像の規制強化 XやTikTokなど企業に対応義務付け〈日本経済新聞(2026年1月9日)〉

「Grok」画像の編集機能、有料会員限定に 悪用被害が相次ぐ中〈朝日新聞(2026年1月9日)〉

 あっという間に世界中で政治問題化しましたね……自社が提供した機能に「厳格対応」とか、マッチポンプすぎる。インドネシアはすでにアクセス遮断を行ったという報道も発見しました。しかし、日本は「Sora 2」のときに比べると動きが鈍い。直接的な被害が、著作権ではなく、まず肖像権で発生しているからでしょうか。漫画家の炎上事件なんかは迂闊過ぎますね。

 JEPAセミナーで登壇した際、今後は生成AIの性能競争というより「『Sora 2』みたいに世間の注目を集める突飛なサービス実装で目立つことを優先させる動きが増えるかも」という話をしたのですが、その直後に「有料会員限定にします」というお知らせを発見してしまいました。耳目を集めて有料会員獲得に繋げる、と。ますますインパクト重視になっていくんだろうなあ……。

社会

40年前に掲げられた電子出版の課題は今も JEPA会長 松田真美|キーパソン・メッセージ〈日本電子出版協会(2026年1月5日)〉

 おお、この設立の趣旨って、私はちゃんと読んだことなかったかもしれません。「新しい情報社会に対応する新しい需要を喚起し、それに相応しい流通を整備して、情報の付加価値創造の方途を探ることを目指すものである」ですか。いまJEPAは新しい需要を喚起できているでしょうか? 理事のひとりとして責任も感じます。

AI-generated manga becomes top-ranked in Japan’s biggest e-book store(AI生成マンガが日本最大の電子書籍ストアでトップに)〈AUTOMATON WEST(2026年1月6日)〉

 本件、日本のメディアではまったく話題になっておらず、海外メディア経由で知ることになりました。他にも、KotakuDexertoThe Express TribuneCBRUnseen Japanなどでも報じられています。だいたいどれも石橋和章氏のX(旧Twitter)での「読者は作画者がAIかどうかなんか気にしていないようです」という発言を引用していますね。些細なことですが“one of the biggest”と表現して欲しい。コミックシーモアが日本で最大かどうか、わかりませんから。

オピニオン・メディア:広がる「ゼロクリックサーチ」 AI活用深める検索サービス 情報要約拡大 引用元訪れない割合増〈毎日新聞(2026年1月6日)〉

 日経新聞と同じヴァリューズ調査をソースに、毎日新聞も後追いです。ちなみに後述しますが、日経新聞自身は「現状では日経電子版のPVへの影響はありません」と言っています。毎日新聞自身の数字はどうなんでしょう?

AI生成作品が小説大賞を獲得→書籍化中止 本人「後出し規約変更」で撤回と説明、運営の意図は〈オタク総研(2026年1月7日)〉

 本件、噂は目にしてましたが、ようやく記事にするところが出てきました。募集要項の禁止事項には「その他、アルファポリスが不正と認めた行為・作品」がありますから、受賞後に「実はAI生成作品でした」と明かしたなら「不正」とみなされてもおかしくないとは思います。「後出し規約変更」云々って主張は、若干微妙かもしれません。

 AI生成作品って、著作権的にいろいろ微妙なんですよね。AIに出力指示しただけの人に著作権は発生するのか? とか、既存の著作物と類似したフレーズが出力された場合に出力させた本人が気づいてなくても依拠性が認められる可能性がある、とか。

経済

日本経済新聞社 白川美紀氏「音声や動画にもチャレンジし、企業活動とも歩調を合わせるような施策を検討」〈DIGIDAY[日本版](2026年1月4日)〉

生成AIの加速的普及による、デジタル広告領域への影響を懸念します。現状では日経電子版のPVへの影響はありませんが、今後は不透明。PVに依存する広告モデルからの脱却が課題です。

 日本経済新聞社の方が「現状では日経電子版のPVへの影響はありません」と明言しています。これは素晴らしい。広告を販売する営業部門としては、影響がないなら「ない」と言っておかないと、というのはあるでしょうね。つまり、日本新聞協会による「ゼロクリックサーチなどの問題は深刻化」という主張は、少なくとも現時点での日本経済新聞には当てはまらない話ということになります。

画像生成は「やらない」 “安全なAI”で日本市場を攻めるAnthropic、日本代表に聞く差別化のポイント〈ITmedia AI+(2026年1月6日)〉

 X(旧Twitter)の新機能「画像を編集」のゴタゴタを見ていると、あえて「やらない」って選択も正解な気がします。ただ、Anthropicの「Claude」が“安全なAI”と言えるかどうかは話が別ですが。だって、海賊版書籍で学習していたのが明らかになっているわけですよね?

技術

Interactive AI Features in E-books, Audiobooks Drive Debate(電子書籍やオーディオブックのインタラクティブAI機能が議論を呼ぶ)〈Publishers Weekly(2026年1月5日)〉

Authors Guild Raises Concerns About Kindle’s New “Ask This Book” AI Feature(著者組合、キンドルの“この本に質問”AI新機能について懸念を表明)〈The Authors Guild(2025年12月23日)〉

 おお……年末年始の大事な動きを見落としていました。Authors GuildがAmazon KindleのAI要約機能について“RAG uses, for which there is a growing market, are typically licensed(検索拡張生成(RAG)の用途は、需要が拡大している市場において、通常はライセンス供与される)”と主張しています。用途が違うんだから、別途ライセンスが必要――つまり、無断でやるな、対価を払え、と。これは今後、係争になるだろうな……。

SEO神がデータで激説。「AIでSEO死亡」説は本当か?【SEOまとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2026年1月9日)〉

 2025年回顧でもあらためて「『AI Overviewsのせいでメディアへの流入が激減』という主張には懐疑的」と書きましたが、その理由がまたひとつ増えました。客観的なデータでも「減ってない」ことが示されています。日本経済新聞社自身の「現状では日経電子版のPVへの影響はありません」発言と合わせ、今後も疑いの目を向けていきたいと思います。

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https://hon.jp/news/daily-news-summary

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雑記

 年末年始に帰省して、元日に初詣するため神社まで歩いたのですが、ひさびさに「伊吹おろし」を体感しました。関ケ原で山が途切れているため、日本海側から吹く寒い風が濃尾平野や岡崎平野へ抜けてくるんですよね。寒かった!(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 923 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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