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2025年8月24日~30日は「読売に続き日経・朝日もPerplexityを提訴」「Anthropicが作家らとの訴訟で和解へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- お知らせ
- 政治
- 社会
- 経済
- 2025年7月期 紙書籍雑誌推定販売金額は前年同月比5.9%減 ~ 出版指標マンスリーレポートより〈HON.jp News Blog(2025年8月25日)〉
- 書店が減って本も売れていないのは日本だけ?!〈日経ビジネス電子版(2025年8月26日)〉
- Google AI機能がパブリッシャー収益を圧迫、検索トラフィック10%減の深刻な実態〈Media Innovation(2025年8月27日)〉
- LINE、アプリ内課金を外部に開放 来月から〈日本経済新聞(2025年8月29日)〉
- 世界の約450万タイトルの書籍を1冊から国内で製造するサービスを Amazon内店舗「外濠書店」で提供開始 | ニュース〈DNP 大日本印刷(2025年8月29日)〉
- 技術
- お知らせ
- 雑記
お知らせ
ご支援のお願い
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新コーナー「ぽっとら」(Podcast Transcription)を更新しました
オンラインカジノ問題を契機に政府がまたサイトブロッキング法制化の検討を開始、今回はどうなる?〈HON.jp News Blog(2025年8月29日)〉
読売新聞が社説「違法な賭博を野放しにするな」でブロッキング導入を主張していましたが、検討会では山口寿一委員(読売社長)が存外にまともなことをおっしゃっていて、「荒れるかも」という予想は外れたのでありました。
政治
いったい何が? Bluesky、米ミシシッピ州からのアクセスを年齢を問わず完全ブロック【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2025年8月25日)〉
タイトルはBlueskyの話ですが、ミシシッピ州の新しい法律が全米はおろかアクセス可能な全世界のサービスに影響する怖い話。以前、Yahoo! Japanが(恐らくGDPR対応で)欧州からのアクセスをブロックしていますが、Blueskyも同じような対応をしていることになりますね。
ミシシッピ州の法律は「全コンテンツに関してユーザーの年齢確認が必須で、確認できるまでは全員をブロックする必要がある」とのこと。これはつまり、英語版電子書店など日本から北米向けに越境でコンテンツ配信を行っている企業にも直撃します。州単位でブロックって可能なんですね。
日経・朝日、米AI検索パープレキシティを提訴 著作権侵害で〈日本経済新聞(2025年8月26日)〉
読売に続き、日経・朝日も提訴しました。安易に和解せず、ぜひ判例を作って欲しい。
米パープレキシティ「誤解解消まで待ってほしい」 日経・朝日提訴で〈日本経済新聞(2025年8月27日)〉
読売の提訴にも「誤解」って言ってましたね。なにがどう誤解だというのかしら?
日経・朝日がAI検索のパープレキシティ提訴、専門家の見方は〈日本経済新聞(2025年8月26日)〉
コメントしている専門家は、玉井克哉氏と上野達弘氏です。玉井氏は権利を強化する法改正の必要性を主張されてますね。上野氏は軽微利用(著作権法第47条の5)の判断に注目しています。
新聞社対Perplexityの生成AI著作権侵害訴訟では何が争点となり得るか?(栗原潔) – エキスパート〈Yahoo!ニュース(2025年8月28日)〉
こちらは栗原潔氏の解説。アレ? こちらには軽微利用(著作権法第47条の5)がない。他の論点は「確かに」という感じなのですが。
Perplexity、AI検索の収益を分配へ–新サブスク「Comet Plus」で発行元に還元〈CNET Japan(2025年8月26日)〉
そしてこのタイミングで、パブリッシャーへの対価還元策が出てきました。仮にこの内容に納得ができても、過去の無断利用が消えてなくなるわけではないので、日本での訴訟の行方に直接影響はしないとは思いますが。
Claude開発元、AI学習用データ盗用めぐる作家との集団訴訟で和解へ〈CNET Japan(2025年8月27日)〉
アングル:AI学習巡る著作権訴訟、アンソロピックの和解が波紋〈ロイター(2025年8月28日)〉
先日、一部フェアユースが認定された裁判で、違法とされた海賊版データの利用に関する集団訴訟(クラスアクション)への参加が呼びかけられていたのですが、その期日寸前に和解への動きが出てきました。和解条件は現時点では不明で、裁判所の承認もこれからです。9月5日までに詳細を提出するよう命じられているので、今週には追加情報が出てくるでしょう。
社会
出版業界では令和のいまも珍しくない「手書きの原稿」「赤ペンで修正」 データだけでのやり取りがかえって“非効率”な理由〈デイリー新潮(2025年8月26日)〉
校正は紙に手書きのほうが早いし正確という御意見。まあ、おっしゃることもわかるんですけど、それは慣れも大きいと思うんですよね。私は以前、校正の工程で誤読・誤入力され、二度手間・三度手間というのがちょくちょくありました。「インド人を右に」みたいなやつ。色青校で見つけたのでセーフだったのですが「お前の字が汚いからアカンのだ! オペレーターのせいにするな!」と当時の上司に叱られ釈然としなかったのを思い出します。
だから私はいまは、校正の工程ではなるべくPDFでもらって、線はペン入力だけど修正文はコピペできるようにテキストデータで指示しています。これなら誤読されることはありません。「下手な字」による手戻りが発生しないぶん、効率的だと考えています。まあ、それでも、相手がコピペをミスって冒頭一文字が欠けてた、みたいな事故が起きる(起きた)から油断はできないのですが。
校正記号をアイコンで選択、修正テキストはキーボード入力で、非同期(校正の工程では同時に編集できないほうがいい)、提案は承認・否認ボタンを押すだけで反映、修正内容が一覧で確認でき、履歴も残っている、みたいな仕組みがあればいいんですけど。Googleドキュメントだと勝手に通知が飛んでしまうなど、微妙に使い勝手が悪いんですよね。
新潮社との出版契約解消へ コラムに抗議の作家・深沢潮さん〈NEWSjp(2025年8月27日)〉
まあ、あの対応ならそうなりますよね。1997年に、新潮社の媒体が「少年A」の顔写真を掲載したことに抗議し、灰谷健次郎氏が版権を引き上げた事件のことを思い出した方が私の視界の範囲でも散見されました。「新潮45」休刊当時に灰谷氏のときとの違いに触れた岩本太郎氏のコラムを見つけたので紹介しておきます。昔はもっと塩対応だったんですね。
『週刊新潮』差別コラムをめぐる応酬で、作家・深沢潮さんが新潮社の対応に失望し、同社と決裂(篠田博之) – エキスパート〈Yahoo!ニュース(2025年8月28日)〉
新潮社の回答全文が載っています。あのコラムは「朝日新聞批判」だという主張だったのですか。「創氏改名2.0」というタイトルはもちろん、中国のことをわざわざ「支那」と表記しているなど、朝日新聞以外に対する差別意識も丸出しに見えます。言い訳が陳腐すぎる。
経済
2025年7月期 紙書籍雑誌推定販売金額は前年同月比5.9%減 ~ 出版指標マンスリーレポートより〈HON.jp News Blog(2025年8月25日)〉
記事内でも触れましたが、雑誌の再検証について今月号は言及がなかったので、アレ? となりました。まあ「8月以降」なので、9月でも10月でもいいんですけど。
書店が減って本も売れていないのは日本だけ?!〈日経ビジネス電子版(2025年8月26日)〉
ブックセラーズ&カンパニー代表取締役社長・宮城剛高氏へのインタビュー。2025年7月時点での取引出版社が23社、書店が576店舗という数字が明かされています。じわじわ増えてますね。
書店の利益率を10%改善する「小売業なら当たり前」の仕組み〈日経ビジネス電子版(2025年8月27日)〉
――現在の書店・出版業界には、まちの書店は減っているのに、出版点数は増えているという、ねじれ現象があります。
えーっと、この「出版点数は増えている」というのは宮城氏ではなくインタビュアー(してる人)の発言ですが、認識が少し古いです。出版科学研究所によると、出版点数のピークは2009年の7万8555点で、2010年以降は減少に転じ、2024年は6万5322点です。一時期に比べたら、だいぶ抑制されてますよね。
Google AI機能がパブリッシャー収益を圧迫、検索トラフィック10%減の深刻な実態〈Media Innovation(2025年8月27日)〉
うーん……この「検索トラフィック10%減」という発表を行っているのはパブリッシャー団体Digital Content Next(DCN)なのですが、その言い分をそのまま記事にしているメディアが多いんですよね。先週に続き何度でも指摘しますが、アメリカでの「AI Overviews」の展開は、「寄生サイト」ペナルティの直後に行われているんですよ。それなのに、このDCNの発表を鵜呑みにしていいんですかね?
DCNの公式サイト加盟社を調べてみたところ、CNN(Warner Bros. Discovery)、The Wall Street Journal(Dow Jones / News Corp)、USA Today(Gannett)は、Googleから「サイトの評判の不正使用(Site reputation abuse)」(=通称「寄生サイト」)でペナルティを食らったメディアとしてSearch Engine Journalの記事で名前が挙がっていたところだとわかりました。
つまり少なくともこの3媒体は、まっとうではないSEOで稼いでいた事実を棚上げし、Google検索流入の減少を「AI Overviews」や「AI Mode」だけのせいだと責任転嫁して批判していることになります。欺瞞でしょそれは。
LINE、アプリ内課金を外部に開放 来月から〈日本経済新聞(2025年8月29日)〉
「LINE」ミニアプリ内での決済で、いまのところ既存のApple決済とGoogle決済をそのまま使う形です。でもこれは恐らく、スマホ新法でAppleとGoogleに求められている「外部アプリストア」への布石ですよね? ちょうど先日、JEPAの懇親会の立ち話でスマホ新法の話題になり、外部アプリストアに参入してきそうなのは海外勢ばかり……という話をしたばかりでした。ほんとうにやる気、なのかな?
世界の約450万タイトルの書籍を1冊から国内で製造するサービスを Amazon内店舗「外濠書店」で提供開始 | ニュース〈DNP 大日本印刷(2025年8月29日)〉
おー! これはすごい。しかしこれ、ストア型PODでユーザーから直接注文を受け付けるということは、洋書の輸入販売を行っている紀伊國屋書店や丸善にとって脅威なのでは。書店からの注文を受け付けるようにはしないのかしら? あと、Amazonマーケットプレイスを使うとけっこう中間マージンとられますよね。hontoでの紙本通販やPOD販売を止めてしまった以上、プラットフォームに依存する形をとらざるを得ないわけですが。
技術
AIに「作品ではなく作風が盗まれる」理不尽、どう回避?–実は守る仕組みが生まれ始めた〈CNET Japan(2025年8月25日)〉
ページを開いたら著者名のところに(株式会社アドビ)とあったので、著作権者の利用許諾を得て学習している生成AI「Adobe Firefly」や、コンテンツ認証情報の「Content Credentials」の話かな? と思ったら予想通りでした。
ただ、今回の話のメインは、アドビが支持を表明している法案「PADRA(Preventing Abuse of Digital Replicas Act:デジタル複製物不正利用防止法)」です。このPADRA、英語圏のメディアを調べても、あまり情報が見つかりません。昨年末に議会へ提出され司法委員会に付託されてから、とくに進展がない状態みたいなんですよね。どうなっているんだろう?
Google、最先端の画像モデル「Gemini 2.5 Flash Image」を発表〈窓の杜(2025年8月27日)〉
これはすごいなあ……私の視界の範囲にも試した方々の画像がたくさん流れてきていますが、写真もイラストも違和感がほとんどない。とくに編集加工に強いようです。AI驚き屋さんが「Photoshopはもう要らない!」と豪語していて「いやいやまさか」と思ったのですが、背景を変えたり、表情を変えたり、服装を変えたり、背景をぼかしたり、ポーズを変えたりなどの作例を見ると、言葉を失います。
お知らせ
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雑記
夏場はエアコンが欠かせないため、電気代がふだんの1.5倍くらいになってしまいます。夜は切ってるんですが、昨日は寝苦しかった……起きたら汗だくでした。(鷹野)