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「ぽっとら」は、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌がお届けするポッドキャスト「HON.jp Podcasting」の文字起こし(Podcast Transcription)です。2025年4月22日に配信した第28回では、政府がまたサイトブロッキング法制化の検討を始めたという話題について語っています。
【目次】
#28 またサイトブロッキングが検討
こんにちは、鷹野です。今回は「サイトブロッキングがまた検討」というテーマでお話します。サイトブロッキングといえば、2017年くらいですか。「漫画村」なんかの海賊版サイトが猛威を振るって大きな問題になりました。そのとき、ブロッキングをしようかという(政府による)検討がなされたことが、けっこう記憶に新しいです1揺れる「通信の秘密」、ブロッキング問題の根幹〈日経クロステック(2018年8月10日)〉
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/00857/。
結局、当時は大激論の末、断念することになったんですけど、今回ターゲットになっているのはオンラインカジノなんですね2日本からのオンラインカジノ利用、強制遮断は可能か 総務省が検討会–「通信の秘密」どうなる〈CNET Japan(2025年4月17日)〉
https://japan.cnet.com/article/35231902/
。直接、本とか出版に関わる話ではないです。ないんですけど、もしオンラインカジノのブロッキングがOKって話になったら、次は間違いなく海賊版サイトという話になるはずなんです。
政府の海賊版サイト対策メニュー(の最新版)に、いちおうまだブロッキングは残ってるんですよ3インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表〈首相官邸(2025年5月30日)〉
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/pdf/kaizokuban_taisaku.pdf。残ってるんで、間接的ではありますけど、私たちにも直結する話題だと思うので、取り上げさせていただくことにしました。
ちょっと余談ですけど、今回のタイトルはですね、最初「サイトブロッキングの検討再び」ってタイトルにしようと思ったんですね。でもよくよく考えたら、海賊版の前に、児童ポルノサイトブロッキングのときにも検討されてるんですよ。
じゃあ「
日本では賭博が違法だけど、合法な国からの越境取引がある
いま、このポッドキャストを収録しているのは2025年4月22日ですが、ちょうど明日から、4月23日から総務省で「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」というのが開催されることになっています4報道資料|「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」の開催〈総務省(2025年4月16日)〉
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban18_02000387.html。オンラインカジノ、違法賭博ですね。最近、芸能人とかプロスポーツ選手が利用していたってことで、活動自粛とか、警察による摘発などが相次いでいます。
これなにが問題かというと、越境取引なんですよね。オンラインカジノを運営しているのは、海外の事業者なんです。もし日本国内の事業者がオンラインカジノを運営していたら、速攻で摘発されるでしょう。日本で賭博は基本的に違法ですから。
基本的にと言ったのは、合法な賭博もありますからね。公的機関が開催している「公営競技」というやつは合法です。競馬、競輪、競艇、オートレースの4つ。この勝敗で賭博をするというのは合法です。公営賭博ってやつです。
あと、わりと身近なところでパチンコとかパチスロ。三店方式といって、遊興で景品を渡す遊技場と、景品を買い取る交換所と、買い取った景品をまた遊技場へ卸す問屋の三者が、直接関係してないっていう建て付けで、合法ということになってます。
三店方式。なんか昔はその景品買取に暴力団が関わっていて、締め出すって目的で積極的にこの三店方式が導入されていったというような経緯があるらしいのですが、脇道に逸れますんで、ここではあまり踏み込みません。
さきほど「日本で賭博は基本的に違法」と言いました。でも、カジノが合法な国もたくさんあるわけなんですよね。というか、めちゃくちゃいっぱいあります。首相官邸のウェブサイトに(あった)資料で2013年の調査とちょっと古いデータなんですけど、世界201カ国・地域のうち127カ国・地域が合法だと5諸外国におけるIRについて【参考資料】(PDF)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/ir_kaigi/dai1/sankou1.pdf
。そんな資料がありました。有名なところだとアメリカのラスベガスとか、シンガポールとかマカオとか、そういったところがありますね。
これまた余談なんですけど、時事ネタなんで触れておくとですね、日本でもカジノを合法化しましょうって動きがあります。首相官邸に資料があったと言いましたけど、それってその検討をしてたころのものなんです。
実は2018年に、IR整備法という法律が制定されました。IRってなんのこっちゃという感じなんですけど、Integrated Resort、統合型リゾートのことをIRと言ってるんですね。なんか煙に巻かれた印象もありますけど、カジノを公営競技と同じく国の監視下に置いて合法にしましょう、と。今後は合法にしていきましょうという、そんな法律が2018年にできたんですね。
カジノだけでなく、ホテルとかショッピングモールなんかと一体的に提供する統合型リゾートということで、賭博というイメージをなんか薄めてですね、なんか漂白されたような、IRという呼び方が生み出された――そんな感じ(の匂い)がぷんぷんしてきますね。
ちなみに大阪の
https://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu220/osakair/。
大阪は万博とIRで稼ぐぞ! って。まあ、そういうことらしいんですけど、さすがに「本」の話とはだいぶ離れちゃうんで、ここでそのへんの是非については深入りしません。
2024年にはオンラインカジノ利用で279人が摘発
話を戻します。戻します。オンラインカジノ、越境取引ですね。カジノが合法な国で提供されているサービスが、カジノが違法である日本でも利用できちゃう状態になっている、と。それも完全に日本人をターゲットにしてるんですね。
日本語化されたメニューのサービスで、お金を賭けない無料お試しを入り口にして、賭け事に誘導すると。なんか最初は稼げるような形にしておいて、引き込んでおいて、お金をむしり取ると。そんなカモにする道というのがキレイに整えられちゃってるみたいなんですよね。
警察庁によると、2024年にはオンラインカジノ利用で279人が摘発されたそうです7オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!〈警察庁Webサイト〉
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/onlinecasino.html。プロ野球選手が賭博罪に問われて、所属チームとの契約を解除されたりとか、活動自粛を命じられたりとか。
あるいは、芸能界でもあの人が利用した、この人が利用したってって報道がいっぱい出てきたりとかですね。高校生がオンラインカジノ利用で書類送検されたとか、急に問題が大きくなってる印象があります。そういう報道が最近になっていっぱい出てくるようになったという感じですね。
でも、そうやって(国内の)利用者側を摘発しても、オンラインカジノを提供してる海外の事業者って摘発できないわけですよね。だったら、日本からのアクセスを強制的に遮断してしちゃえばいいんじゃないか? っていう、そういう話になるわけです。それがサイトブロッキングですね。
正確に言うと、総務省の検討会では「ブロッキングを含むアクセス抑止の在り方に関する法的、技術的課題について」検討するということになっています。なので、ブロッキング以外のアクセス抑止、たとえば、フィルタリングとかアクセス警告方式などについても話し合われることになっているようです。
でも、ブロッキング以外ってそれほどもめることもないと思うんで、ブロッキングの是非というのが話の中心になっちゃうんでしょうね。そんな気がします。海賊版サイト対策のときもね、めちゃくちゃもめましたからね。これ。
総務省の今回の検討会開催について、報道資料に構成員が公開されてるんですよ。それ見て「うお!」って声が思わず出ました。まず、2018年の海賊版サイト対策のとき、猛反対していた弁護士の森亮二さんの名前があります。座長は、どちらかというと反対派だった憲法学者の曽我部真裕さんになるでしょう。あと、読売新聞グループ本社代表取締役社長の山口寿一さんも入ってるんですね。
海賊版サイトブロッキング検討の経緯
これはメルマガにも書いたんですけど、読売新聞は2018年当時「海賊版サイト 接続遮断はやむを得ぬ措置だ」という社説を出してます。4月25日付です。これに対し、日本インターネットプロバイダー協会、JAIPAは厳重抗議をしています84月25日付け「読売新聞」及び「YOMIURI ONLINE」に掲載された社説について〈JAIPA – 一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(2018年6月20日(水))〉
https://www.jaipa.or.jp/topics/2018/06/425yomiuri-online.php。
この(読売新聞の)社説、もうウェブ上からは消えちゃってるんですね。で、ちょうど先週、千代田図書館に行く用事があったんで、そのついでに縮刷版を確認してきました。JAIPAが激
日本インターネットプロバイダー協会などは、ブロッキングに反対している。憲法が保障する表現の自由や、通信内容を第三者に知られない通信の秘密を侵害する恐れがある、との理由からだ。無論、表現の自由は最大限に尊重されねばならないが、不当な手段で掲載しているサイトを同列に論じるべきではあるまい。政府は、たとえブロッキングが違法性を帯びていても、刑法上、許容される「緊急避難」に該当する、と主張している。児童ポルノのサイトに対しても、同様の措置が講じられている。
はい、モリアキさんありがとうございます。日本インターネットプロバイダー協会、JAIPAは当時、海賊版サイト対策でのブロッキングに反対声明を出してるんですね9海賊版サイトへの対策として政府がブロッキング(接続遮断)を要請することについて(PDF)〈一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(2018 年4月12日)〉
https://www.jaipa.or.jp/information/docs/180412-1.pdf。それは、ブロッキングを行うためには、ユーザーがどのサイトにアクセスしようとしているかってのを、すべて監視する必要があるからなんです。で、それって「通信の秘密」を侵すことなんですよね。
これってさらに前提があってですね、じつは2006年までさかのぼります。2006年、P2Pのファイル交換ソフト「Winny」ってのがあったんですけど、その通信をNTTぷららが完全に遮断するって発表したんですよ。「Winny」の遮断。
その発表をしたらですね、総務省が「それは電気通信法に抵触します。通信の秘密の侵害です」って、ダメ出ししたんですよ。ダメ出ししたんですよ。そもそも総務省がストップかけてたんですよ。2006年に10ぷららのWinny規制、総務省がストップ–「通信の秘密」侵害の可能性〈CNET Japan(2006年5月18日)〉
https://japan.cnet.com/article/20115448/。
で、その後、こんどは児童ポルノ、この言い方はちょっと誤解を招くので、児童性的虐待記録物と言い替えますね。児童性的虐待記録物が流通するのを防止するっていう目的でのブロッキング、これは2011年から行われてます。
行われているんですけど、そのための検討って2007年から行われてるんですね11インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会〈総務省〉
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html。政府の検討会。検討会から報告書が出るまで2年がかりです。そこからブロッキングの体制を2年がかりで整えたんで12児童ポルノ対策作業部会〈安心ネットづくり促進協議会〉
https://www.good-net.jp/investigation/working-group/anti-child-porn_category_112/、足かけ4年かけてるんです。
めちゃくちゃ慎重に議論を重ねた上で、刑法の「緊急避難」であれば合法になる。ただしものすごく厳格な要件と適正な手続きを行ったうえで「ほかの違法・権利侵害情報には広げない」というのを決めた上で「民間の自主的な取り組み」として、児童性的虐待記録物のブロッキングって実施してるんですよ。
ところが、2017年ぐらいから海賊版サイトが問題になりはじめて、政府がいきなり海賊版サイトのブロッキングを「要請」したんですよ。「要請」ですよ。自主的な取り組みを拡大して、海賊版サイトを対象にしてブロッキングして、でもそれは緊急避難だから違法じゃないよっていう見解を出してきたんですね。
おい、ちょっと待てよってなるじゃないですか。もともと総務省がダメ出ししてたんですから。それなのに、いきなり「要請」が飛んできたわけです。被害が深刻なのはわかります。被害が深刻なのはわかるけど、その目的は手段を正当化するものではないですよね、と。
ブロッキングは「通信の秘密」というユーザーの重大な権利を侵害する手段だから、他に手段があるならまずそっちを検討すべきじゃないですか? と。JAIPAはそういう理由で、反対声明を出してたんです。私も当時、緊急避難でのブロッキングには反対でした。やるならちゃんと立法措置しなさいよと主張してました。
で、それなのに、さっきモリアキさんに読み上げてもらった読売新聞の社説って「表現の自由は最大限に尊重されねばならないが、不当な手段で掲載しているサイトを同列に論じるべきではあるまい」なんて言ってるんですね。これ、JAIPAの反対声明をなんか曲解しているんですよ。
JAIPAは「海賊版サイトの表現の自由が守られるべき」なんてことは、ひとことも言ってないんです。そんな主張はしてねえよって。そういう理由で激
で、この政府の要請が出た直後に、NTTグループが「準備整い次第サイトブロッキング実施します」っていう予告の声明を出したんですよね13インターネット上の海賊版サイトに対するブロッキングの実施について | ニュースリリース〈NTT(2018年4月23日)〉
https://group.ntt/jp/newsrelease/2018/04/23/180423a.html。なんかどうやら根回しをされてたらしいんですけど。結局、NTTもブロッキングは実施しなかったんですよ。実施する前に、海賊版サイトのほうが閉鎖されちゃいました。
でもそのあとNTTは、通信の秘密を侵害しているってことで、差し止め請求の訴訟を起こされたんです。でも、ブロッキングは結局実施してないし、今後も予定はないですよってことで、差し止め請求は棄却されています14「漫画村」ブロッキング――誰が、どんな経緯で動いたのか〈Yahoo!ニュース(2018年8月6日)〉
https://news.yahoo.co.jp/feature/1039/。棄却されたんですよ。
それなのに、いまでもたまに見かけるんですけど「NTTはブロッキングを実施した」って。思いっきり勘違いですよね。たまに見かけます。事実として、海賊版サイト対策ではブロッキングは行われてません。
その後、緊急避難ではなく、ちゃんと法制化しましょうというタスクフォースが結成されて、検討会が開かれたんですけど、まあ、そこでの議論が大荒れで。中間報告書すらまとめられない。まとまらない報告書みたいなね。そんな異例の事態になっちゃったんですね。で、結局そのまま今日に到ると。
読売新聞はまた「ブロッキングの導入を検討すべきだ」と主張
で、面白いことにですね、今回のネットカジノについても、読売新聞は「違法な賭博を野放しにするな」っていう社説を出してるんですよ。その中で「(ブロッキングの)導入を検討すべきだ」ってまた主張してるんですよ15社説:ネットカジノ 違法な賭博を野放しにするな〈読売新聞(2024年8月29日)〉
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240828-OYT1T50213/。だから、読売新聞はブロッキング推進派なんでしょう。
これ正直、その「通信の秘密」っていう観点でもいろいろ問題がある一方で、当時JAIPAは主張してなかった「表現の自由」っていう方面でも怖いなって私は思ってて。要は、政府の方針に反対してるようなウェブサイトを「あそこは海賊版だ」ってブロッキングできちゃうんですよ。やろうと思えば。
そういう暴走が始まりかねないって。その第一歩だから、慎重に考えなきゃいけないですよっていう。それはね、すごく妥当な意見だと思うんですよね。で、今回のそのネットカジノの検討会の構成員には、ブロッキング推進派と反対派の両方がいることが見えてるんですよ。また荒れるでしょうね、これね。
じゃあ、海賊版サイトとオンラインカジノの違いはどこにあるだろう? これちょっと考えてみたんですけど、オンラインカジノの場合、国内利用は賭博だから、利用する側が違法なんですよね。でも海賊版サイトって、利用する側は当時はまだ違法じゃなかったんですね。違いはそれくらいですかね。
で、それで「通信の秘密」を侵害しないブロッキングが可能か? と言われると、うーん、どうだろう。難しいんじゃないかなという気がします。海賊版サイトのブロッキングは、法制化が無理だとなったあとに、リーチサイトとダウンロードの違法化が行われました。
まあそこでも「スクショが違法になる!」ってひと悶着あったんですけど、最終的にはいろいろ条件が付いて「海賊版だと知っててダウンロードする行為」というのが違法化されました。でも、まだストリーミング配信の海賊版を利用するのは合法なんですよね。まだね。
そのへんの合法違法の線引きってほんと難しいし、いろいろ揉めますよ。今回の検討会はどうなるか。気になります。引き続きウォッチしていきたいと思います。
【記事化時追記】その後の状況について
総務省「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」はその後、私が想像していたような賛否の激論には到らず回数を重ねている。本稿公開時点では、7月8日開催の第6回に事務局から中間論点整理(案)が示されたことが確認できる16オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会(第6回)〈総務省(2025年7月8日)〉
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/online_casino/02kiban18_02000425.html。
概要によると、「①ブロッキングは、他のより権利制限的ではない対策(例:周知啓発、フィルタリング等)を尽くした上でなお深刻な被害が減らないこと、対策として有効性がある場合に実施を検討すべきものであること(必要性・有効性)、②ブロッキングにより得られる利益と失われる利益の均衡に配慮すべきこと(許容性)、③仮に実施する場合、通信事業者の法的安定性の観点から実施根拠を明確化すべきこと(実施根拠)、④仮に制度的措置を講じる場合、どのような法的枠組み)という4つのステップに沿って、丁寧に検証することが適当である」とされている。
また、その検証にあたっては、「主要先進国において、立法措置の中でブロッキングを対策の一つとして位置づけている例も参考にすべきである」とされている。憲法レベルで通信の秘密の保護を保障しているうえでブロッキングを実施している国として、フランスとイギリスの事例が挙げられている。どちらの国も、オンラインギャンプルはライセンスを取得すれば合法、ライセンスを取得しなければ(あるいはライセンスを取得できない競技は)違法という規制になっているようだ。