アメリカ地裁でAI学習のフェアユースを認めない判決など 日刊出版ニュースまとめ 2025.02.14

Photo by Ryou Takano(+Adobe Firefly生成塗りつぶし“座っている白黒猫”)
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 伝統的な取次&書店流通の商業出版から、インターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版関連ニュースをデイリーでまとめて配信。ボットではありません。編集部の中の人がすべて自分の目で読んで、手作業でまとめています。

【目次】

お知らせ

5年ぶりにポッドキャストを再開しました。

政治

EUのAI規則、禁止されるAI利用のルールが適用開始に(EU) | ビジネス短信〈ジェトロ(2025年2月13日)〉

E2768 – Internet Archiveのデジタル貸出を巡る著作権訴訟の経緯〈カレントアウェアネス・ポータル(2025年2月13日)〉

ひとことコメント

あー、ちょっとだけ誤解してました。CDLのフェアユースが全面否定されたわけではなく、「電子テキスト形式でのライセンスが提供されている書籍をデジタル貸出の対象とした場合」についてのみ否定されたのですね。もしそのあたりをInternet Archiveがちゃんと厳格に運用していたら、判断が変わったかもしれない。まだそこは、アメリカはグレーゾーンのまま。ちなみにこれ、日本の国立国会図書館が入手困難資料のスキャン電子版を個人送信・図書館送信していますが、電子版やPOD版が売っていて入手可能なら対象外になるんですよね。出版者には年1回、これから対象になるリストが送られてきて、そこで「これは電子版を売ってます!」とあらかじめ除外申請するターンがあります。つまり、日本はこの点、白黒はっきりしている運用になっています。(鷹野)

対AI企業の著作権訴訟でトムソン・ロイター側が勝利。AI訓練目的での「フェアユース」認められず〈WIRED.jp(2025年2月13日)〉

ひとことコメント

おー、これはいろいろと激震が走りそうな判決が。フェアユースの4つの要件のうち2つでトムソン・ロイターの主張が認められ、とくに「市場価値に及ぼす影響」が大きいとの判断だったようです。ただ、これで「アメリカではAI学習にフェアユースは100%認められない」と判断するのは早計でしょう。前出のInternet Archiveの事例にあるように、ちょっとしたことで裁判所の判断は変わる可能性があります。まだ地裁判決ですし。負けたのはスタートアップ企業で、長期間の法廷闘争を戦い抜く体力もなかったようですし。これで今後、OpenAIやMicrosoftなど大手の裁判がどうなるか。もし負けるようなことがあると、みんな著作権法第30条の4がある日本へ来るかも?(鷹野)

社会

東村アキコさんが挑む「縦スクロールマンガ」 映像化との関連性は〈朝日新聞(2025年2月13日)〉

版元ドットコム会員社の電子書籍に関して調べてみました〈版元ドットコム(2025年2月13日)〉

ひとことコメント

これは素晴らしい調査。版元ドットコム加盟社の登録済み出版物で「結果として全体では約14%の本が電子書籍化されていることになります」とのこと。5年前に私と堀正岳氏が調査したときは、国立国会図書館への納本ベースで11.9%でした。これは電子化率の高い大手も含む全出版社(ISBN有のみ)の数字なので、恐らく中小出版者に絞るともっと低かったことが予想できます。それを思うと、14%は「多少は伸びてる」と言っていいのかも? まあ、いまだにこういう状況だから「なぜ中小出版社はまだ電子出版に消極的なのか?」というセッションを企画・開催したわけですが。(鷹野)

第16回 2010年~ウェブトゥーン海外雄飛|深掘り!韓国漫画の世界〈新文化オンライン(2025年2月13日)〉

『大学刊行の定期刊行物に関する著作権法第31条第1項第1号の「発行後相当期間」の扱いについて』等の改訂について|2025年|お知らせ〈私立大学図書館協会 Japan Association of Private University Libraries(2025年2月13日)〉

批判された兵庫県知事選報道 2人のジャーナリストが抱いた違和感と新聞に課した役割|社会〈神戸新聞NEXT(2025年2月13日)〉

マット・アルト「日本は文化戦争への備えができていない」(2025年1月23日)〈経済学101(2025年2月12日)〉

ひとことコメント

日本の状況にいくつか誤解もあるように見受けられますが、日本のコンテンツがビッグテックのプラットフォームではキリスト教的価値観で判断されてしまい排除されるのは従来もあった話ですし、その傾向がトランプ大統領就任でさらに強くなるかもしれないという指摘は、確かにそうかも。トランプ氏は「反キリスト教的偏見を撲滅する」と言ってるわけで、恐らく日本の創作表現で引っかかるものは多いでしょう。「リベラルがー」とか「行き過ぎたポリコレがー」とか言ってる場合じゃない。これからコンテンツ輸出を伸ばしていこうというときに、冷や水をかけられてしまうかも。あるいは、日本国内向けでもいま以上に表現規制が厳しくなるかもしれません。ぐえぇ。(鷹野)

NHK、AI翻訳の多言語字幕を終了 尖閣を中国名で表示〈日本経済新聞(2025年2月12日)〉

キッズたちのコミック新世紀:『BONE』と「Scholastic」が変えたアメコミの未来〈WORKSIGHT(2025年2月11日)〉

ひとことコメント

マーベルやDCのようないわゆる「アメコミ」が、キッズ向けだと見られると売れなくなるから避けていたため、むしろブルーオーシャンになっていた、というのが面白い。子供向けを提供していないと、未来の顧客になってくれないという話でもあるでしょう。(鷹野)

経済

LINEマンガ 成長続ける日本市場に期待「漫画の未来つくる」〈聯合ニュース(2025年2月13日)〉

【決算】アルファポリス 今期売上高を15億円上方修正〈The Bunka News デジタル(2025年2月13日)〉

【決算】スターツ出版 26年12月期売上高100億円へ 中期経営計画で新規8レーベル投入 15作品映像化も決定〈The Bunka News デジタル(2025年2月13日)〉

文化通信社セミナー2025 TRC・谷一文子氏「出版業界のために図書館が果たす役割とは」〈The Bunka News デジタル(2025年2月13日)〉

トップカルチャー CCCは「関連会社に該当しない」 開示対象除外に〈The Bunka News デジタル(2025年2月13日)〉

[サーチライト]韓国文学熱 日本で高まる K-BOOKフェス盛況 ノーベル賞快挙が後押し〈沖縄タイムス+プラス(2025年2月13日)〉

第3回:本はどうやって仕入れる?(岩下結)〈マガジン9(2025年2月12日)〉

技術

Google、既存の画像を組み合わせる画像生成AI「Whisk」〈PC Watch(2025年2月13日)〉

障害者と生成AI+メタバースの最前線には「価値しかなかった」~ワークショップ体験記 – 生成AIストリーム〈窓の杜(2025年2月13日)〉

ヤフコメにAI添削導入で「不快コメント24%減」–LINEヤフー〈CNET Japan(2025年2月13日)〉

ひとことコメント

それでいてコメント数は減っていないというのがすごい。(鷹野)

「インターネット白書2025 岐路に立つデジタル空間とAIガバナンス」発行、33人の専門家が寄稿〈INTERNET Watch(2025年2月13日)〉

ひとことコメント

お、今年もそろそろインターネット白書ARCHIVESの更新時期ですね。(鷹野)

不正アクセス新手口「最近接攻撃」 遠隔からWi-Fi狙う〈日本経済新聞(2025年2月13日)〉

イベント

日本出版学会 出版教育研究部会・出版産業研究部会・関西部会共催セミナー「知られざる出版業界の巨人・図書館流通センター」報告:谷一文子(図書館流通センター)〈オンライン/2月15日〉

総務省「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル広告ワーキンググループ(第6回)」〈オンライン/2月17日〉

日本電子出版協会「本当はビジネス扱いしたくなかったけど必要に迫られ書いた本『漫画ビジネス』と、 データを探す長い旅路になりそうな『IPビジネス』調査の件」講師:菊池健氏〈オンライン/2月18日〉

総務省・国立研究開発法人情報通信研究機構・グローバルコミュニケーション開発推進協議会 第8回 自動翻訳シンポジウム「生成AIとAI翻訳 ~自治体での活用~」〈東京都港区(品川インターシティホール)/2月19日〉

電子出版制作・流通協議会(電流協)オンデマンド出版流通セミナー第2回「デジタル印刷が拓くサステナブルな出版ビジネス -KADOKAWAの取り組み-」など〈東京都千代田区(オンライン併用)/2月20日〉

国立国会図書館 第20回レファレンス協同データベース事業フォーラム「生成AIはレファレンスサービスに何をもたらすか」〈オンライン/2月20日〉

講演会「人新世で残らないもの」講師:作家・円城塔氏〈国立国会図書館 関西館/2月22日〉

文化庁・日本書籍出版協会・映像産業振興機構(VIPO)「出版社向け・日本書籍の海外展開促進セミナー」(全3回/残1回)〈東京都千代田区(日本教育会館)/2月25日〉

日本出版学会 アクセシビリティ研究部会(主催:画像電子学会 VMA研究会、視覚・聴覚支援技術研究会)「アクセシビリティに関する最新動向」〈東京都千代田区(専修大学)/2月25日〉

日本電子出版協会「書店在庫情報プロジェクトの未来予想図〜書店・図書館〜」講師:鈴木毅氏(版元ドットコム)・吉本龍司氏(カーリル)〈オンライン/2月25日〉

特定非営利活動法人本の学校 第25回 本の学校連続講座「これからの出版業界」登壇者:古幡瑞穂氏・草彅主税氏〈東京都千代田区(東京学院ビル)/2月26日〉

文化通信社 セミナー「出版社の事業承継-誰も教えてくれない!失敗事例に学ぶ落とし穴」講師:平野雄太氏(青山財産ネットワークス)〈東京都千代田区(出版クラブホール)/2月26日〉

日本電子出版協会「日本語組版の常識を見直す」講師:小林敏氏〈オンライン/3月4日〉

文化庁主催「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック」(インドネシア・韓国・中南米)セミナー〈オンライン/3月4日〉

出版文化産業振興財団 マンガ感想文コンクールpresents「サンデー×ジャンプ×チャンピオン×マガジン4大少年マンガ誌編集長トークセッション」〈東京都千代田区(一ツ橋ホール)/3月15日〉

日本ペンクラブ「平和の日2025 戦後80年 日本ペンクラブ歴代会長が語る『戦争と文学』 いま文学にできることは何か?〈東京都千代田区/3月16日〉

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