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先週は「NTTグループがブロッキング実施へ」「NTTグループを刑事告発」「海賊版問題がアマゾンKindleストアにも飛び火」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年4月23日~29日分です。
【目次】
NTTグループ3社、「漫画村」など海賊版サイトをブロッキングへ 〈ITmedia NEWS(2018年4月23日)〉
NTTグループがブロッキング実施へ。反対表明をしているJAIPAに加盟しているプロバイダなのですが、独自の判断で忖度するようです。さてここで、知的財産戦略本部 中村伊知哉氏のツイートをご覧ください。
ぼくはこの動きを知らず驚いています。海賊版サイトの方針を政府決定しましたが、具体策はこれも政府決定にある「協議体」に委ねられると考えていました。先にNTTが動きました。通信・ISPが動いたことでまた場面が変わり… #NewsPicks https://t.co/ZDFJs1rzmz
— 中村伊知哉 (@ichiyanakamura) April 23, 2018
・政府は通信・ISPの動きは把握しておらず、要請もしておらず、各社の動きもバラけている。
・名指し3サイトは事実上死んでおり、現時点でのブロッキングは緊急避難の要件を満たしそうにない。
・ブロッキング対策より法整備論を急ぐ状況にあり、タスクフォースもメンバー含めなお調整が必要。— 中村伊知哉 (@ichiyanakamura) April 24, 2018
梯子などなかった!?
「漫画村」のロゴ入り漫画、Amazon Kindleストアで無断販売される 集英社「至急対応する」〈ねとらぼ(2018年4月23日)〉
愉快犯なのかなんなのか。アマゾンの審査の甘さを改めて思い知らされます。
年齢・キャリア不問、受賞者は担当編集を指名可能な「新潮社バンチ漫画大賞」設立〈コミックナタリー(2018年4月23日)〉
受賞者は担当編集を指名することが可能な新人賞。サイトには、編集者の担当作品と簡単なプロフィールが記されています。「NovelJam 2018」のチームビルディングでも採用した方式であり、試みとしては面白いと思います。講談社「DAYS NEO」みたいに、編集者によるコメントや、コメントに対する読者の評価まで可視化している仕組みと比べたらまだまだですが。いまはそういう潮流なのかな。
「漫画村」などの海賊版サイトを潰すために出版業界が行ってきたことは? – 鷹野凌のデジタル出版最前線〈窓の杜(2018年4月23日)〉
自分の書いた記事ですがピックアップ。「著作権侵害サイトのブロッキング要請に関する緊急提言シンポジウム」に出席された用賀法律事務所 弁護士の村瀬拓男氏の発言を中心にレポートしています。「エルマーク」のような、正規にライセンスされているかどうかが即座に判別可能なマークの付与を配信事業者などともに検討中という情報が得られたのが、個人的には最大の収穫でした。
ブロッキングについて〈川上量生 公式ブログ – ブロマガ(2018年4月24日)〉
なんと、川上量生氏が公式な立場で意見表明。内容的にはこれまでTwitter(@nkawa2525)などで述べてきたことの繰り返しではありますが、ちゃんと表に出てきて自身の意見を表明したことは評価したい。ただ、「実はブロッキングに対してインターネット業界から出ている批判は一点で、ブロッキングには回避手段があるから実効性に欠けるということだけです」というのは、事実を誤認しているというか歪曲しているというか。案の定、突っ込まれまくっています。
note、書き手を出版社に紹介する「クリエイター紹介プログラム」開始〈ITmedia NEWS(2018年4月24日)〉
ダイヤモンド社、扶桑社、マガジンハウスとパートナーシップ。「note運営がプロモーションを手伝うことを許諾する」設定をオンにしておくと、ピースオブケイクがエージェント的に動いてくれるようです。
『東方Project』の二次創作作品が電子書籍として“ニコニコ書籍”と“BOOK☆WALKER”より流通、ことの経緯をZUN氏に聞く〈ファミ通.com(2018年4月25日)〉
いままでも東方二次創作の電子版が同人プラットフォームで勝手に売られているケースは散見されたのですが、「BOOK☆WALKER」と「ニコニコ書籍」がZUNさん公認プラットフォームとして販売可能になったという話。やるな!
全地婦連、ブロッキング実施のNTTらに対し「刑事告発も辞さない」〈ITmedia NEWS(2018年4月25日)〉
NTTグループがブロッキングの実施を発表したことを受け、真っ先に動いたのが全国地域婦人団体連絡協議会と主婦連合会。「通信の秘密」を侵害するものだという主張で、「刑事告発を行うことも辞さない」とかなり強めの反対意見になっています。しかしこの意見書に対し、漫画村擁護目的だと歪んだ認識をしている人々が結構な数存在していて頭が痛い。
LINEが最終赤字 1~3月、サービス拡大で費用増〈日本経済新聞(2018年4月25日)〉
「LINEマンガ」の業績、どうだったのだろう? と思い、決算説明資料をチェックしてみました。
10ページ「LINEマンガの決算高」の四半期別推移です。まさかここまで赤裸々に公開するとは。驚きました。2017Q1(1~3月)が27.2億円、2017Q2(4~6月)が28.6億円、2017Q3(7~9月)が30.8億円なのに対し、2017Q4(10~12月)が27.9億円、2018Q1(1月~3月)が27.8億円。確かに10月以降売上が減っています(対前年は辛うじてプラス)。
4月16日のまとめで「売上が急落」している電子書店として「LINEマンガ」を疑っていたのですが、予想通りでした。メディアドゥホールディングスが発表した「若年層向け電子書店」の推移とも符合します。ピークの2017Q3を基準にすると1割ほど減っているので、これまでの順調さを考えたら何かとんでもないことが起きていると思わざるを得ないでしょう。とはいえ、カカオジャパンの「ピッコマ」は同じ時期に急成長しており、「LINEマンガ」の失速が海賊版の影響なのかライバルに食われた結果なのかは、判断が難しいところです。両方?
「紙の電子ペーパー」大阪大学が開発に成功〈大学ジャーナルオンライン(2018年4月26日)〉
虚構新聞ではないかと目を疑いました。透明な紙と白い紙を併用し、電導性を持たせることに成功したとのこと。「紙の電子書籍」が実現できるかもしれないとのことで、なんだか頭の中が混乱しそうです。大阪大学 産業科学研究所の記事はこちら。
アソビモ、デジタルコンテンツの保護・二次流通プラットフォーム「ASOBI STORE」を発表! トークン「ASOBI COIN」で取引可能に〈Social Game Info(2018年4月26日)〉
「ブロックチェーンテクノロジーを活用したデジタルコンテンツの保護・二次流通(中古流通)を実現するプラットフォーム(国際特許出願中:PCT/JP2018/16657)」とのことです。「出版界のAmazon」を目指すという触れ込みの「Publica」と似たようなコンセプトですが、ICOはこれから。とはいえ、アソビモはこれまで15年以上オンラインゲームを作ってきた実績のある会社で、現在開発中のタイトルもトークンを利用可能にする予定というあたりがアドバンテージでしょうか。注目しておきたい。
NAVERまとめ、無断転載34万件削除 新聞社など報道7社と合意〈ねとらぼ(2018年4月26日)〉
朝日、産経、日経、毎日、読売、時事、共同の7社と合意。約34万件の無断転載を削除。投稿制限のためドメインブロックも行うそうです。著作権管理システムの導入など、いろいろ改善へ向けて動いているのは歓迎しますが、では7社以外は……?
一問一答完全収録 NTTグループのブロッキング、なぜ実施?〈ITmedia Mobile(2018年4月26日)〉
前半のブロッキング問題についての解説がわかりやすい。後半のNTT広報回答は、「政府決定に基づき」を繰り返すばかり。
さくらインターネット社長の田中邦裕氏のこのツイートが、この問題がどういう波及効果をもたらすかを端的に表しているように思います。著作権侵害に緊急避難を適用してブロッキングできてしまうなら、名誉毀損とか国防のためとか、もっといろいろな理由でバンバンブロッキングできてしまいそうです。怖い。
ブロッキングが徐々に容認される雰囲気の中で一番怖いことが起き始めた。「権利者なんですが、このサイトへの通信のブロックをお願いします」というメールが来はじめた事だ。サーバからの削除やアカウント停止は出来ても、通信を遮断してはいけないんですよと言えなくなりつつある。言うけど。
— 田中邦裕@さくらインターネット社長🐈⬛🐕 (@kunihirotanaka) April 24, 2018
「負ける理屈はない」NTTの海賊版サイトブロッキングで初の訴訟〈BUSINESS INSIDER JAPAN(2018年4月26日)〉
名誉毀損やプライバシー侵害などで発信者情報開示や違法コンテンツの削除などを業務として行っている弁護士の中澤佑一氏が、サイトブロッキングは「通信の秘密」の侵害と提訴。「著作権侵害サイトのブロッキング要請に関する緊急提言シンポジウム」で、実際にISPがブロッキングに動いたら「絶対に訴訟してやる」と手ぐすね引いている人がいるという話は聞いていたのですが、素早かったですね。白黒はっきりさせてください。そして、こういう人を政府のタスクフォースに入れるべきではないでしょうか。
若者の「読書ゼロ時代」文藝春秋はこうしてミリオンセラーを輩出した(田中 裕士)〈現代ビジネス(2018年4月26日)〉
星野源、尾崎世界観…10〜20代に本を売るための文藝春秋の攻め方(田中 裕士)〈現代ビジネス(2018年4月27日)〉
文藝春秋プロモーション部長 田中裕士氏の連載2回目・3回目。ここ数年の、文藝春秋の本のプロモーション戦略あの手この手が、データと合わせ惜しげもなく公開されています。「DMM TELLER」アプリにまで展開しているのは知らなかった。「出版関係者が業界の厳しさばかりを口にするのではなく、本の楽しさをあらゆる形で人々の生活環境のなかに発信し続けること」という結論が胸を突きます。
漫画だけではない、Kindle“海賊出版”の実態 Amazonの審査体制に「漫画村プロと変わらない」と批判も〈ねとらぼ(2018年4月27日)〉
きんどうさんがKindleストアの海賊写真集についてTwitterでつぶやいていたら、ねとらぼが拾って記事化。Unlimited対応件数のチェックをしていたころ写真集の件数が異様だなとは思っていましたが、海賊版の疑いがあるのですね。まあ、漫画村のロゴ入りマンガが普通に売り始められてしまうくらいザル審査なので、粗悪品ばかりが出回るいわゆる「レモン市場」になってしまうのは必然とも言えるかもしれません。
【直撃】漫画村問題、キーマン官僚が全疑問に答える「緊急対策からNTTサイトブロッキングまで」〈BUSINESS INSIDER JAPAN(2018年4月27日)〉
内閣府知的財産戦略推進事務局長の住田孝之氏に直撃インタビュー。NTTグループのブロッキング実施発表は、予想していなかったとのこと。その言を信じるなら、政府が根回ししていたわけではないことに。「NTT3社が“命綱”としているのは国のお墨付きではなく(略)訴訟対応に協力する合意のある権利者との連帯関係のようだ」とありますが、NTTはニコニコ超会議に3年連続超特別協賛している関係。うーん。
「漫画村、刑事告訴している」 講談社が明らかに これまで採った対策は〈ITmedia NEWS(2018年4月27日)〉
できていること、できていないことを誠実に回答しています。とはいえ、集英社もそうですが、こういう情報がインタビューされて初めて出てくるというのはおかしな話。「緊急避難」の「補充の原則(他にとるべき方法がなかった)」を満たしているかどうか、情報が開示されていなければ判断できないです。
「出版社頼れない」「子供は漫画無料でいい」 海賊版サイト問題と漫画家たちの苦悩〈ITmedia NEWS(2018年4月27日)〉
理事長をやっているNPO法人日本独立作家同盟の主催イベントレポート。企画そのものは3月頭ごろから動いていたのですが、政府が海賊版サイトのブロッキングについて言及し始めた3月19日以降、急激に事態が動いてしまい、イベントの在り方も当初の思惑とは少し違ったものになってしまった感があります(もっと「作家が生き残る方法」にフォーカスするはずだった)。鈴木みそさんの「子供は無料」発言が想像以上に叩かれていて、なんだか申し訳なかったです。
「comico」と「Renta!」が業務提携を発表 オリジナル縦スクロールコミックの相互販売をスタート〈アニメ!アニメ!ビズ(2018年4月28日)〉
両社とも、スマートフォン向けに最適化された縦スクロールのコミックを配信していますが、相互販売を開始したとのこと。「comico」のオリジナルコミックが他サービスで販売されるのは、これが初めてだそうです。「Renta! タテコミ大賞」受賞作のタテコミ対応前後を見るに、相当な手間がかかってますから、販路を広げてきっちり元を取って持続性のある事業にしていって欲しいところです。