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先週は「米Kindleで献本機能実装も日本は未対応」「2017年度電子出版市場は2556億円」「2018年上期の紙+電子出版市場は7827億円」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年7月23日~29日分です。
『進撃の巨人』が第3巻まで【特別定価220円+税】に!キャラ名刺がもらえる企画も実施中〈ほんのひきだし(2018年7月20日)〉
紙の本を期間限定で定価を変更して販売するという珍しい事例。もちろん講談社側が主導しているから実現できるわけですが、これでもし大きな実績が残せたら、再販制度の見直しとかCDのような時限再販制の大規模導入、といった話へ進む試金石になるような気がします。
面白いことに、Kindle版は元の価格のままなので、電子より紙のが安いという逆転現象が起きています。
講談社はエージェンシーモデルなので、Kindle版の価格はアマゾンではなく講談社の設定なのですよね。電子の価格を連動させなかったのは恐らく、こういう状況下でのデータ収集が目的と思われます。
米アマゾン・キンドルの新機能「Buy For Others」でEブック献本や販促が可能に〈hon.jp DayWatch(2018年7月23日)〉
現時点では、日本のKindleストアは献本はおろか、ギフト機能も未実装です(ヘルプ参照)。なお、日本の電子書店でギフト機能に対応しているのは、私の知っている限りで以下のところです。「まんが王国」が対応したのはつい最近ですが、他の電子書店は数年前から対応しています。
電子図書館「Rakuten OverDrive」が神戸市と大阪市で試験導入開始〈hon.jp DayWatch(2018年7月23日)〉
OverDrive Japanの公共図書館向けでは、浜松市に次ぐ2件目、3件目の事例。ラインアップがちょっと少なめですが、とにかく最初の一歩を踏み出したことを評価したいところ。部外者でも試せるので音声読み上げを聴いてみましたが、とてもスムーズに聞こえました。
見開き表示対応電子ペーパー端末「全巻一冊」に3作品が追加、TSUTAYAと蔦屋書店にて数量限定で予約販売を開始〈hon.jp DayWatch(2018年7月23日)〉
新たに『沈黙の艦隊』&『ジパング』、『シティーハンター』、『ミナミの帝王』が追加で、コンテンツカセット式にバージョンアップ。「全巻一冊 北斗の拳」の実物を見せてもらったとき、日本語版と英語版が即座に切り替えられて比較できるのが結構インパクトがあったので、今回追加された3作品では非対応というのが少し残念。
2017年度電子出版市場は2556億円で前年度比12.2%増と推計 ~ インプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2018』〈hon.jp DayWatch(2018年7月24日)〉
毎年恒例の調査報告書。こちらの数字は4月~3月の年度です。データの取り方も異なるため、後述する出版科学研究所の数字とはズレがあります。
リリースには電子書籍、電子雑誌、電子出版の順で数字が記載されていますが、記事にするとき電子出版、電子書籍、電子雑誌の順に入れ替えています。これは、「電子書籍市場」という単語だけを見て電子出版市場全体と勘違いする人がいるため、それを防ぐことが目的です。
また、「コミック」の市場占有率を、電子書籍と電子出版の両方書いたのも、電子雑誌を除外したまま「コミックが8割以上」と言ってしまう人が散見されるためです。72.2%でも充分多いのは確かなのですが、「コミックが8割以上」を鵜呑みにされて「どうせ文字ものは売れない」といったイメージだけが先行してしまうのも怖いと思うのです。文字もの市場も、地味にではありますが伸びているんです。
西日本豪雨被災者のためコミック誌の無料公開相次ぐ ~ 小学館、集英社、講談社、秋田書店より〈hon.jp DayWatch(2018年7月25日)〉
4社5誌をまとめて書いてしまったんですが、発表は横並びではなく、バラバラに行われています。小学館が真っ先に無料公開へ踏み切ったのは、正直驚きました。
Amazon Kindleパブリッシング・ガイドライン日本語版が改訂 ~ Real Page Number の有効化やMathML サポートなど〈hon.jp DayWatch(2018年7月25日)〉
「Real Page Number の有効化(印刷版のページ番号表示)」や「MathML サポート(数式を記述するためのマークアップ言語)」は大きな変化だと思います。
講談社が「STOP! 海賊版マンガサイト」キャンペーンを開始 ~ キャッチフレーズは「マンガに、未来を。」〈hon.jp DayWatch(2018年7月25日)〉
一足先に同様のキャンペーンを展開している小学館は経産省とCODAの明記されていたのに対し、講談社のリリースには見当たらないため単独で行っているものと思われます。「ユーザーへの啓蒙」も必要なアクションの1つ。とはいえ、小学館・講談社と同じく、海賊版サイトについての緊急声明でブロッキングを歓迎した集英社・KADOKAWAには、まだ動きがないのが気になるところです。
2018年上期の紙+電子出版市場は前年同期比5.8%減の7827億円 ~ 出版科学研究所調べ〈hon.jp DayWatch(2018年7月26日)〉
こちらは紙を含めたデータ。暦年なので、上期は1~6月です。紙はムックやコミックスの落ち込みが激しいのに対し、電子コミックは2桁成長をキープしています。電子雑誌の減少は、「dマガジン」がキャリアショップでの「レ点商法」をやめたことが影響しています。以前、MAUが「2割強」という数字が明かされたことがあります(2015年4月東洋経済)。要するに、月に1回も使わずお金だけ払っている人が8割近くいたわけですから、ある程度の反動はやむを得ないところでしょう。