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先週は「日本漫画家協会による海賊版サイトについての見解」「ルパン帝国再誕計画」「Chromeで劣悪広告ブロック開始」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年2月12日~18日分です。
漫画の危機!? 海賊版サイトの実態〈NHKニュース(2018年2月11日)〉
1週前の記事ですが取りこぼしていたのでピックアップ。日本漫画家協会の「海賊版サイトについての見解」という声明文に合わせた、海賊版利用実態やブロッキング規制、出版社による削除申請や、捜査機関との連携、セキュリティリスクなど、海賊版にまつわるさまざまな問題を丁寧にまとめた記事です。NHKの取材に対し「海賊版を利用しないように働きかける啓発活動」だけでなく、「今より使いやすい正規版配信サービスの整備」を挙げている出版社、ぐっじょぶ。どこだろ?
AIが書いた小説は面白いのか? SF作家とSFマガジン元編集長が語る「AI作家」の限界〈ビジネス+IT(2018年2月13日)〉
私が理事長をやっている、NPO法人日本独立作家同盟主催イベントのレポート。このテーマで、この登壇者で、面白くないはずがないのに、なんで集客苦労したんだろう……。
講談社、「ヤンマガ」「モーニング」など6誌横断の定額制購読サービス〈ITmedia ビジネスオンライン(2018年2月13日)〉
私も昨年「コミックDAYS」編集部ブログで短期集中連載させていただいた関係で、かなりおおがかりなプロジェクトだというのは聞いていたのですが、定額読み放題サービスを含む形だったとは。しかも月額720円。毎月「月刊アフタヌーン」を買っているのですが、これだけで元がとれちゃうな……。
ブックウォーカー、国内外で売上げ急増〈新文化(2018年2月13日)〉
「BOOK☆WALKER」の売上が、国内2桁成長なのに加え、英語版・台湾版でも急成長しているとのこと。講談社・野間社長が挨拶で「『dマガジン』がなければ廃刊した雑誌もあったのではないか」と功績を讃えた、というのがすごい。
「ルパン帝国再誕計画」始動、森田崇が再編集した「アバンチュリエ」Kindle版〈コミックナタリー(2018年2月14日)〉
マンガ家・森田崇氏の挑戦。単なる自己出版ではなく「ルパン帝国再誕計画」というプロジェクトにしているところがうまい。1巻は3月末まで99円です。実は森田氏とはFacebookで「友だち」になっているので、いろいろ工夫されている様子がダイレクトに伝わってきています。応援したい。
Google、Chromeブラウザでの劣悪広告ブロック開始、仕組みを説明〈ITmedia NEWS(2018年2月15日)〉
以前から予告されていたことですが、ついに。とはいえ、ブロックされたことを示すポップアップは、本稿執筆時点でまだ目撃していません。すでにサイト側の対策が進んでいるのかな? これまではビジネス系のサイトで、イラッとさせられることが多かったように思うのですが。[追記:日本はまだ対象外だった……orz]
自民党が自らを追い込む、新たな「改革潰し」パターンの出現|岸博幸の政策ウォッチ〈ダイヤモンド・オンライン(2018年2月16日)〉
おなじみ、エイベックスの顧問をやっている岸博幸氏が、またポジショントークを……と思ったら、エイベックス・グループ・ホールディングスのページから岸氏の名前が消えています。あれ? なにがあった。
4ページ目ではありますが「私は音楽業界に関わっていて権利者の立場を理解しているので」と、ちゃんと立場を表明しているのも珍しい。「自民党の政治家が」うんぬんというのは、山本一太議員が「党の提言を全く反映していない」と怒っていることへのカウンターなのかな?
ちなみに岸氏はこの記事中で「フェアユース」という呼称を何度も使っていますが、今回検討・審議されている中では「フェアユース」という呼称は使わず、一貫して「柔軟な権利制限規定」と呼んでいるはずなんですよね。なんでわざわざ「フェアユース」って言うんだろう。
ところで、岸氏の言う「AIの深層学習」うんぬんって、すでに著作権法第47条の7(情報解析のための複製等)でクリアになってるという認識だったのですが。早稲田大学法学部教授の上野達弘氏が少し前に「日本は機械学習パラダイス」とおっしゃっていますし。
文化庁、政策推進の要に 法改正案を閣議決定〈日本経済新聞(2018年2月16日)〉
京都移転を機に、いろいろ機能強化されるそうです。文科省の業務が文化庁に移管されると、なにがどう変わるんだろう?
ニューヨーク連邦裁判所が埋め込みツイートは著作権侵害となり得ると判断〈TechCrunch Japan(2018年2月17日)〉
アメリカの話ですが、embed が著作権侵害になり得るというのは、なかなか危険な判断。「リンクは著作権侵害になるか?」というのは、ずいぶん前に決着したはずの議論なのですが、リーチサイト問題などによって再燃している感があります。EUでも以前似たような判決が出たことがありますが、「リンク先が侵害コンテンツと知りながら(または知るべきであったにもかかわらず)リンクを張る行為」に限定されていました。ところが、このアメリカの地裁判決は「著作権法のどこを見ても、画像の表示とみなされるためにはそれを所有する必要があるとは書かれていません」と、かなり踏み込んだ判断。もちろん、電子フロンティア財団(EFF)は批判しています。
図書館・書店を拠点とした地域活性化への展望~日本における「サードプレイス」の可能性〈財務省(2018年2月17日)〉
なんとこちら、財務省広報誌「ファイナンス」平成30年2月号に掲載されている記事。内容も面白いのですが、なんで財務省? とびっくりしました。ブラウザビューアまで搭載しています(PDFですが)。図書館・書店・出版の現状概観から始まり、コミックが雑誌に分類されていること、小売全体を俯瞰すれば人口減少が主要因である「不都合な真実」、文化庁「文化経済戦略」に「本」や「書店」という言葉が存在しないことなど、なかなか関係者の痛いところを的確に指摘した痛快な記事になっています。寄稿者は渡部晶氏、沖縄振興開発金融公庫副理事長とのこと。いつでもふらっと立ち寄れる「サードプレイス」という概念、好きだなあ。そういう場を作りたい。
(活字の海で)即興で小説創作、電子書籍に 自己出版の書き手育てる〈日本経済新聞(2018年2月17日)〉
こちらもNPO法人日本独立作家同盟主催で、2月10日から3日間行っていた出版創作イベント「NovelJam」。なんと、日本経済新聞に載りました。現物ももちろん確保。1カ月後にグランプリ授賞式があるので、まだ終わってませんよ! Twitterのハッシュタグ #noveljam を追っていただくと、参加者の方々がいまなお盛んに情報発信されている様子が窺えると思います。