「違法ダウンロード範囲拡大へ」「マンガBANG!で著作権トラブル」など、出版業界気になるニュースまとめ(2018年12月3日~12月9日)

出版業界気になるニュースまとめ
noteで書く

《この記事は約 6 分で読めます》

 2018年12月3日~12月9日は「違法ダウンロード範囲拡大方針まとまる」「マンガBANG!で著作権トラブル」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

マンガアプリ「GANMA!」で広告収益に加え、プレミアム会員の会費収益の一部も作家へ還元する支援プログラムを開始〈HON.jp News Blog(2018年12月4月)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/14597
 定額読み放題モデルを採用。会費収益の一部を作家に還元します、というのを明確にうたっているあたり「わかっている」感があります。

違法ダウンロード、罰則拡大へ 文化庁、漫画や小説も対象〈共同通信(2018年12月7日)〉

https://this.kiji.is/443712999839695969
 インターネット(自動公衆送信)で違法配信されている「事実を知りながら」ダウンロードした場合は、私的使用のための複製にあたらない(著作権法第30条1項3号)という範囲を、現状の「デジタル方式の録音又は録画」から、他の著作物にも拡大する案がまとまったとのこと。本稿執筆時点ではまだ、文化庁の文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会(↓)に第7回の中間報告資料がアップロードされていませんが、近いうちにパブリックコメントが募集されることになりそうです。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/index.html

 これまでの資料を確認してみたところ、「(違法配信の)事実を知りながら」の要件を厳密にし、「違法だと当然に知っているべきだった」「違法か適法か判断がつかなかった」などの場合は、ダウンロードが違法とならないことを前提にするようです。

 私は、録音録画が刑事罰化されるときには、反対しました。ただ、心配されていた別件逮捕などの濫用は、結局いまのところ起きていませんし、それどころか逮捕者1人出ていないのが現状です。また、ACCSの調査によると、Winny / Share などのファイル共有ソフトのノード数は違法化・刑事罰化後に大きく減少しており、ある程度の抑止効果が認められるのは事実のようです(↓)。
http://www2.accsjp.or.jp/research/reserch12.php

 違法合法の区別がつかない問題も、解消しようと努力しています(ABJマーク)。なので、今回は積極的に反対する理由があまりない、というのが正直なところです。

漫画家に無断で全巻無料公開? Web漫画サイト「マンガBANG!」で著作権トラブル、複数作品が一斉公開終了に〈ねとらぼ(2018年12月7日)〉

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1812/06/news096.html
 ちょっと首を傾げてしまったニュース。中島弁護士の“販売するものは「電子出版」と呼べますが、今回のように販売せず、無料公開している作品については電子出版の範囲に含まれないと考えます”という意見に、私は賛同できません。

 「マンガ図書館Z」のような、無料公開&広告で収益を還元するモデルは、いまや珍しくありません。同じ作品を単品販売していたとしても、売れるとは限りません。単品販売で売れ行きが落ちた作品は、むしろ広告モデルのほうが稼げる可能性もあります。つまり、より稼ぐための方法としての無料公開なのに、それを「電子出版の範囲に含まれない」と言ってしまうのは、かなり無理筋に思えます。

 記事への反応を見ていると、日本文芸社が「Amazia社には一切の非はございません」と言っているにもかかわらず、Amazia社が運営する「マンガBANG!」に対する批判の声がかなり目立ち、ちょっと可哀想。単に出版社の、作者に対する説明が不足していた「俺は無料公開するなんて聞いてない」的なトラブルに思えます。

日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由〈東洋経済オンライン(2018年12月9日)〉

https://toyokeizai.net/articles/-/253083
 文化通信社・星野渉氏によるオピニオン。日本の書籍は粗利率が低すぎる点を問題視しています。Facebookの視界内で独立系書店関係者が何人も、だから取次を介さない直接取引&買い切りを拡大して粗利率を改善しているのだ、という反応をしていてさもありなん。

海外

ブラジル、2大書店の倒産で出版危機が深刻化〈HON.jp News Blog(2018年12月4日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/14593
 売上シェア4割を握る2大書店が相次いで倒産申請というのは、相当深刻な状況。「書店」というビジネスモデルが、世界的にも転換しつつあるということなのでしょうか。

アメリカ最大手取次が2位を買収か? 連邦取引委員会が調査を開始〈HON.jp News Blog(2018年12月6日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/14602
 日本でも先日、トーハンと日販が物流連携の検討を始めたという報道がありましたが(↓)、アメリカでは1位が2位を買収に向けて動き出したそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37927970Z11C18A1X30000/
 もっとも、日本はトーハン・日販による寡占状態ですが、アメリカは直接取引の割合がかなり高いようなので、日本でイメージするほどのインパクトはなさそう? 日本でも、直接取引率が高まっていくと、同じようなことが起きそうです。

メルマガについて

 本稿は、HON.jpメールマガジンに掲載された内容を、1週間遅れで掲載しております。最新情報を入手したい場合は、ぜひメルマガに登録してください。無料です。

noteで書く

HON.jp News Blogをフォローする

広告

著者について

鷹野凌
About 鷹野凌 524 Articles
HON.jp News Blog 編集長。NPO法人HON.jp 理事長。明星大学/二松學舍大学/実践女子短期大学の非常勤講師で、デジタル編集論/表象メディア演習/デジタル出版論/デジタル出版演習を担当。出版学会員/デジタルアーカイブ学会員。主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)。アイコンは©鈴木みそ氏
タグ: / / / / / / / / / / / / /

関連記事&広告