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【編集部記事】※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。
hon.jp DayWatchでは毎週末、あまり語られることがなかった「商品管理」という観点で、電子書籍の本質に迫っていきます。そして、すでに複数出版社で使われている「hon.jpターミナル」という電子書籍書誌管理システムを使いながら、その業務対策について考えていきます。出版社勤務の方は、ぜひ研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部
前回、日本国内の電子書籍の「書誌(しょし)」データ項目はどんどん増えており、その多くはコンピュータシステム側によって使われるためにあることを説明しました。
出版社の大・中・小を問わず、「hon.jpターミナル」を電子書籍担当者にデモ実演するときには、その会社のシステム責任者の人もよく傍聴に来ます。そして、そのシステム責任者の方々に必ず聞かれるのが、「こういうシステムを社内のRDBMS上で独自開発したら、ものすごいお金がかかるのだろうか?」という質問です。
そこでいつも「作ろうと思えば、MySQL等のフリーなRDMSでもつくれます。設計抜きで、5人月くらい(人件費換算で約500〜700万円)ってところでしょう」と答えています。実際、コーディングやテストにかかるコストはその程度のものです。ただし、これはもっとも重要な「設計」の部分を抜いた試算です。
設計作業は、原則として電子書籍に詳しい電子書籍担当者とシステム責任者が話し合いながら行なうことになりますが、それには社内外調査や部署間の調整なども含めて、1年〜2年(人件費換算で約2,000〜4,000万円)くらいかかると見ておくべきでしょう。なぜこんなに時間がかかるかというと、たいていの出版社には電子書籍の書誌管理のエキスパートがおらず、10年以上の運用に耐えうる書誌管理システムとは何なのか、ゼロから調査を始めることになるからです。
結局、「hon.jpターミナル」導入がもっとも合理的な選択になるのですが、それでもどうしても社内事情により独自開発しか許されない場合もあるでしょう。そこで、これからゼロからシステム設計しなければならない電子書籍担当者やシステム責任者の方にとても重要なアドバイスを1つしておきましょう(我々も鬼ではないので)。
これはすでに欧米の図書館系・出版SCM系システム研究者にはよく知られていることなのですが、紙書籍の書誌管理システムをひな形にして、長期運用に耐えうる電子書籍の書誌管理システムはつくれません。まったく新しいデータモデルで考える必要があります。その新しいデータモデルは何か、いろいろ研究者間で議論があるのですが、現在もっとも有力なのが、「グラフ理論」の考えを元にした設計アプローチです。この辺とかこの辺も手がかりにしながら、頭のウォーミングアップも兼ねていろいろと調査してみるといいでしょう。
※次回、第28回「書誌のデータ項目を理解する(4)」はこちらからどうぞ。【hon.jp】
問合せ先:hon.jpターミナルの製品概要ページ( http://hon.jp/doc/honjpterminal.html )