ラジオ番組で新刊の間違いを指摘されたフェミニスト作家の対応

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 日本でも『ヴァギナ』『美の陰謀』などの著書が翻訳されているリベラル・フェミニストのナオミ・ウルフだが、新刊「OUTRAGES: Sex, Censorship, and the Criminalization of Love」で、19世紀の文献の意味を誤解していることをBBCラジオとのインタビューの最中に指摘されるというハプニングがあった。

 これはウルフが著書で書いた、19世紀のイギリスではヴィクトリア時代の詩人、ジョン・アディントン・シモンズを含む、何十人もの男性が同性愛が理由で処刑されたという部分に関するもの。BBCのラジオ番組で、聞き手役のマシュー・スチュワート氏から、ウルフが見つけた “death recorded” という記述は、恩赦を受ける余地があるとした被告に対し、裁判官が死刑を宣告しなくてもよいという意味で、実際に死刑を免れている例を示した。

 米版元のホートン・ミフリン・ハーコートは「不運な間違い」として認めるも、この本全体の論調に影響するものではないという見解を示した。出版社は、プロの編集者や校正者を雇い、すべての本に最善を尽くすが、最終的には著者による研究の誠実性と事実確認に委ねるしかない、とコメントした。

 この指摘に対しウルフは、資料を見直した結果、自分の誤読を認め、スウィートに感謝するツイートをした。その後ブックフェスティバルに出席したウルフは「71~72ページに2箇所、間違いがあります。これからの増刷分では修正されるので、コレクターズアイテムとしてとっておきましょう」と余裕の発言も。

 だが、スウィートは、誤読はこれだけにとどまらず、オールド・ベイリー(イングランドとウェールズの中央刑事裁判所とそのアーカイブを指す)からの資料は、著書から削るべきでしょうとも言っている。

参考リンク

ニューヨーク・タイムズの記事 
https://www.nytimes.com/2019/05/24/books/naomi-wolf-outrages.html
ハフィントンポストの記事(音声あり)

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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